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無煙映画を探せ  

映画のタバコシーンをチェック。FCTC(タバコ規制枠組条約)の遵守を求め、映画界のよりよい発展を願うものです。

極北のナヌーク

2018-12-28 | 2018外国語映画評


「極北のナヌーク」 ロバート フラハティ監督 米 ◯

 1922年にカナダ北部の極寒の地で暮らすイヌイットナヌークの家族を追ったドキュメンタリー映画の原点と言われる作品です。日本では1924年に公開されました。今回は同じ監督の「モアナ」公開に合わせ同時公開されました。白黒サイレント映画ですが、音楽は後に加えられています。
 日本人と殆ど変わらない顔や体ですが、氷の世界で鮭、アザラシ、セイウチ、ホッキョクグマ、北極キツネなどの狩りを生業にし、生肉を食べ、水は獣油を燃やし石の鍋で雪を溶かして飲んでいます。衣類は動物の毛皮や魚の皮で、住居は雪の塊をブロック型にして組み上げて作ります。家族仲良く、今考えればほとんど環境負荷のない生活です。しかし、撮影して数年後ナヌークは餓死をしてしまったという事実は現実の厳しさも伝えていました。
 タバコは、なし。無煙です。


ガンジスに還る

2018-12-27 | 2018外国語映画評


「ガンジスに還る」 シュバシシュ ブティヤニ監督 インド ◯

 年老いて「死」を受け入れようとする父親と息子家族との心の交流を描きました。
 77歳のダヤ(ラリット ベヘル)は、毎日今はなき母親が自分を呼んで探しているという同じ夢で目覚めるようになりました。母が呼んでいると察したダヤはバラナシの「解脱の家」へ行くことを決めます。仕事が忙しい息子ラジーヴ(アディル フセイン)は「まだ、元気なのに・・・。それにしても、孫娘の結婚式を済ませてからでもいいのでは。」と渋りますが、ダヤの決意は固く結局二人は出かけることになります。「解脱の家」では、ダヤは仲間に囲まれ新たな体験を楽しみますが、「解脱」の兆候はありません。仕事に追われている息子は父親の世話を続けることに疑問を感じることもありました。そんな折ダヤは体調を崩してしまいます。
 ガンジスの様々な表情がラジーヴを解きほぐすように観客も雄大な水の流れとちょっとコミカルでもある「解脱の家」の関係者たちの姿に「死」をテーマにした作品とは思えない開放感もあります。祖父から孫娘へスクーターが渡されたようにこの家族にも新しい風が吹いてきそうなラストが若い監督(27歳)らしい爽やかな作品です。
 さすがにインド映画ですがマハラジャダンスはおとなしめでした。
 タバコは、なし。無煙です。ただ、「バング」とかいうドラッグは登場していました。


パッドマン 5億人の女性を救った男

2018-12-27 | 2018外国語映画評


「パッドマン 5億人の女性を救った男」 R バールキ監督 インド ◯

 2000年のインドで、貧しいため清潔な生理用品を使えない多くの女性達のために偏見や困難を乗り越え安価で安全な生理用品を開発することに奔走した男の実話です。
 インドの小さな村にすむラクシュミ(アクシャイ クマール)は新婚の妻が生理のときにボロ布を使っていることに驚きナプキンを買ってきますが、それは大変高価で毎月妻や二人の妹が自由に使える値段ではありませんでした。そこで、物作りが仕事のラクシュミはなんとか自分でナプキンを試作し妻に使ってもらおうとしますが、当時の村社会では「血の穢れ」はタブーとなっていて何度も試作するラクシュミは狂人のように扱われ村を追い出されてしまうのでした。しかし、そこでめげず工科大学の教授のメイドとなってなんとかチャンスをつかもうとするのでしたが。
 女性たちに安価なナプキンを提供しただけでなく、働く場まで作り出し、自分だけ金を儲けようとはしないラクシュミの哲学は貴重です。何億もの報酬を当然のことのように受け取る大企業のトップには「爪の垢」でも飲ませたいくらいです。
 インド映画の見せ場でもあるダンスシーンも織り交ぜられ楽しく経済学が学べる作品です。
 タイトルにハリウッドへのおちゃめな対抗心も感じられその点もよろしい。ハリウッドだけが映画じゃないから。
 タバコは、なし。無煙です。


アリー/スター誕生

2018-12-26 | 2018外国語映画評


「アリー/スター誕生」 PG12 ブラッドリー クーパー監督 米 ☓NTS

 何度も映画化されている「スター誕生」をレディ ガガとブラッドリー クーパーの共演でリメイクしました。
 しがないウェイトレスのアリー(レディ ガガ)は夜は小さなバーで歌っていました。そこへロックスターのジャクソン(ブラッドリー クーパー)が偶然立ち寄ります。アリーの「ラヴィアンローズ」を聴いたジャクソンは彼女の虜となります。一方、アリーは自分の容姿にコンプレックスがあり大舞台で歌うことはすっかり諦めていました。しかし、ジャクソンに励まされ大観衆の前で歌い一気にスターの道を進むのですが・・・。
 主役二人はそれぞれ好演しています。ただ、楽曲にあまり馴染みがなく、「ボヘミアン ラプソディ」のようなのりの良さは体験できませんでした。
 冒頭でのライブシーンはカメラが動きすぎて「カメラ酔い」しそうでした。カメラは止めてね。
 タバコは、少々、ドラッグなどの場面もありましたが、NTSです。 


タクシー運転手 約束は海を超えて

2018-12-25 | 2018外国語映画評


「タクシー運転手 約束は海を超えて」 チャン フン監督 韓国 ☓ ☆

 1980年韓国光州で起きた民衆と韓国軍との内乱を取材しょうとしたドイツ人記者とタクシードライバーの交流を描きました。
 幼い娘と二人暮らしのタクシー運転手(ソン ガンホ)はいつも金欠病で家賃も溜まっています。金になるいい仕事の話を小耳に挟みドイツ人記者を乗せルンルン気分で光州へ向かいます。しかし、光州へは軍隊が封鎖していて侵入できません。何事が起きているのか訝りながらもなんとか山道を越え光州いりするのですが、そこでは地獄の景色に変わっていたのです。私服刑事に追われながらも地元のドライバーたちの協力を受けながらなんとかドイツ人記者に現実を報道してもらうため走り回るのでした。
 今ならばツイッターなどでライブ映像が全世界に発信できますが、当時は8ミリビデオでの命がけの撮影のみが映像として伝えられ記者がいなければ真実は闇に葬られていたのではないでしょうか。能天気だったドライバーが変化していく様子をソン ガンホが絶妙に演じていました。ラストで本物のドイツ人記者を登場させ真実の重さを強調しました。
 この作品を見ると戦場へ取材に入りトラブルに合ったジャーナリストを「自己責任」などと突き放す人がいますが、命がけで取材をする記者がいるからこそ真実が少しは伝わるのではないでしょうか。
 日本でも、沖縄の現実を知ろうとせず、国家権力の差別的仕打ちを黙認している多くの人々がいますが、幸い日本ではまだ沖縄の基地反対の姿をある程度は自由に見ることができます。現実を見ることで今作のドライバーのように自分の頭で考える切っ掛けになるのではないかと思いました。
 タバコは、タクシー運転手が喫煙者で、何回か喫煙していました。(☓)


セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー!

2018-12-24 | 2018外国語映画評


「セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー!」
       エルネスト ダラナス セラーノ監督 米キューバスペイン合作 ☓☓

 1991年ソ連の宇宙船ミールに残されていた宇宙飛行士セルゲイ(ヘクター ノア)はソ連の崩壊で帰還の道が閉ざされます。そんな彼に救いの手を差し伸べたのがアメリカのNASAで、このときから米ソの宇宙競争は終わりました。実話に基づくフィクションです。
 社会主義体制の崩壊の波が押し寄せキューバでは経済危機が訪れます。大学職員のセルジオ(トマス カオ)は趣味の無線でアメリカ人の無線仲間ピーター(ロン パールマン)に愚痴をこぼしていました。そんな折、宇宙船ステーションからの無線をたまたま傍受したセルジオはソ連留学の経験があったのでロシア語でセルゲイと会話ができました。そして孤独なセルゲイをなんとか地球に帰還させるためアメリカ人のピーターにも相談するのでした。果たしてセルゲイは無事帰ることができるのでしょうか。
 セルジオとセルゲイはラテン語のセルギウスという貴族の名が語源で同じ名前ということが二人をより親密にするきっかけになりました。ときのキューバ政府の通信傍受など多くの制限と困難を明るく逆境に立ち向かうセルジオとその周囲の人々がラテン的です。一方、元共産圏のロシア人も結構いい加減で、良い結果に貢献します。また、ピーターにはソ連に侵攻されたポーランド出身という複雑な過去を持ちながらもそれを乗り越える人間性の豊かさが描かれました。
 セルジオの幼い娘が語っているという流れがほのぼの感を出しました。
 戦争を始める人がいる一方で、ひとりのために一肌脱ごうとする多くの人がいるから人類はなんとか生き延びているのかもしれません。
 タバコは、キューバが舞台ですからセルジオがいつも喫煙していました。また、老母の内職も葉巻にシールを貼る仕事でした。
 

グリンチ

2018-12-19 | 2018外国語映画評


「グリンチ」 スコット モシャー、ヤーロウ チェイニー監督 米 ◯

 ドクター・スース原作の名作絵本に登場する「グリンチ」をイルミネーションスタジオがアニメ映画化しました。
 子ども時代は愛くるしかったグリンチは孤独な生活をしているうちにすっかりへそ曲がりで意地悪な大人に成長していました。村のハズレの山頂にある洞窟に暮らし、相棒は献身的に彼を支える愛犬のマックスだけです。クリスマスが近づき村の人々はプレゼントの準備や飾り付けを楽しんでいます。孤独な過去を持つグリンチにとってクリスマスは特に嫌いなイベントだったのです。そこでなんと「クリスマスを盗む」というとんでもない計画をたてるのでした。一方、シングルマザーに育てられているシンディは「お母さんを楽にさせたい」という願いをサンタにするのでした。グリンチの計画とシンディの願いが交差するのですが・・・。
 予想ができるラストですが、悪役が登場せず動物たちも活躍し、ファミリーで楽しめる作品です。ストーリーには直接関わりませんが、村の乗り物とかお店のからくりとかさり気ない見せ場がたくさんありました。
 タバコは、なし。無煙です。この点でもファミリーにおすすめですね。


ボヘミアン・ラプソディ

2018-11-23 | 2018外国語映画評


「ボヘミアン・ラプソディ」 ブライアン シンガー監督 ☓☓☓

 ロックバンド「クイーン」のヴォーカルで1991年に45歳の若さで亡くなったフレディ マーキュリー(ラミ マレック)の半生を描いたドラマです。現メンバーが音楽を担当し、フレディ自身の音声も加えられ名曲の数々が紹介されます。音楽ドラマとしても楽しめますが、それだけでなくパキスタン人であることや、口元のコンプレックス、そして複雑な性的嗜好などのフレディが抱えていたさまざまな苦悩を描きました。
 ラストのライブエイドはクイーンを知らず、そのうえロックファンでなくても感動する21分です。まさに音楽の力です。クラシック界のモーツァルトを描いた「アマデウス」と並ぶ音楽映画の名作です。
 タバコは、主役やメンバーが喫煙します。(☓☓☓)ただ、あの時代を描いていますが、ライブハウスなどの群衆の中では煙はなく、受動喫煙の被害は限定的でした。


華氏119

2018-11-07 | 2018外国語映画評


「華氏119」 マイケル ムーア監督 米 ◯

 アメリカのトランプ大統領誕生に至る経緯とその後の荒んだアメリカ社会、そしてかすかな希望をムーア監督独特の突撃取材を含めたドキュメンタリー作品です。
 本人もまさか本当になるとは思っていなかったアメリカ大統領。しかし、大群衆に囲まれると「いい気分」になってしまったのか、言いたい放題やりたい放題をしています。人間として「言ってはいけない事」「やってはいけないこと」も堂々と行うと誰も咎めず、行動言動はますますエスカレートしていきます。一方、対する民主党陣営も実は共和党陣営同様企業から献金を受け、生活者の立場にはありません。社会の格差は広がり収入だけでなく生存権すら格差が大きくなり環境破壊がすすむのでした。フリントという街で起きた水源汚染はまさに形を変えた民族浄化です。乗り込んできたオバマ大統領がとんでもない「大芝居」をうち、トランプもだめだけどオバマも大したことはできない。と絶望的になりますが、立ち上がった集団があるのでした。
 中間選挙を目前にムーア監督が「あきらめずとにかく投票をしよう」と強く呼びかけています。日本でも露骨さはアメリカほどではないかもしれませんが、同じようなことが起きています。日本の若者も「とにかく投票しよう!!」
 ちなみにアメリカ中間選挙は上院と下院がねじれ現象を起こす結果となり、今度は簡単には思い通りのことはできなくなりましたね、トランプさん。
 タバコは、なし。無煙です。


顔たち ところどころ

2018-10-14 | 2018外国語映画評


「顔たち ところどころ」 アニエス ヴァルダ、JR 監督 仏 ◯

 フランス映画会の名匠ヴァルダ監督が若い写真芸術家の「JR」青年と出会い、フランス各地を回って「顔」の写真を撮って張り出す活動をする姿を追ったドキュメンタリーです。
 「ヌーベルバーグの祖母」と言われている88歳のアニエスは参加型アーティストで写真家の「JR」と出会います。50歳の年齢差を超えてふたりはフランス各地を回って市井の人々の飾らない姿を撮り、拡大印刷をして張り出します。その行動は人々に「芸術」を間近に感じさせ、二人も様々なことを語り合うのでした。
 かつて栄えた炭鉱街、港湾労働者、ヤギを飼育する農家、廃墟などなど。どこでも人々の「顔」は生きる喜びを表しています。芸術の国らしく一般の労働者が芸術を感じる感性が育っていることを羨ましいです。また、労働者であることに誇りを持っていることもすばらしいです。
 デコボコのふたりにはユーモアもあって会話が楽しいです。こういう高齢者になりたいものです。また、若いJRが相棒のヴァルダに対しきちんと尊敬し、優しく接するところもいいですね。
 タバコは、なし。無煙です。