無煙映画を探せ  

映画のタバコシーンをチェック。FCTC(タバコ規制枠組条約)の遵守を求め、映画界のよりよい発展を願うものです。

思い、思われ、ふり、ふられ

2020-08-29 | 2020映画評


「思い、思われ、ふり、ふられ」 三木孝浩監督 ○

 咲坂伊緒原作の人気コミックを実写版で映画化しました。
 同じマンションに暮らす由奈(福本莉子)と和臣(赤楚衛二)は幼馴染です。由奈の親友朱里(浜辺美波)と親同士が再婚し義理の弟になった理央(北村匠海)が同じマンションに暮らすことになりました。由奈は子どもの頃から憧れていた絵本の中の王子様そっくりの理央に恋をします。いつも下を向いて自分を出せない由奈に対し朱里は気をもみます。一方、実は理央は朱里に関心があり朱里も理央が気になる存在ですが、義理とはいえ姉弟なので感情を隠していました。それぞれが思い思われてはいるもののなかなか思うようには話は進みません。そんな折、朱里と理央の家庭に新たな問題が起こります。

かつてのキラキラ映画から映画そのものの成長を感じる作品です。恋物語ではあるものの「思い、思われ」だけでなく、親の都合で子どもの生活が揺らいで不安定になることを、子どもは子どもなりに波風が立たないよう配慮しながら生活している、という切実さが感じられます。お互いに励ましあって一歩踏み出すという設定で、妙な悪役がいないところも素直に爽やかです。
また、朱里が「通訳になる」という夢に向かって勉強をしている姿がきちんと描かれ「恋だけではなく勉強もしている」という姿に好感を持ちました。
彼らの数年後の姿も見てみたいです。

ところで、高校生の映画ではほとんど制服姿ですが、そろそろ「制服なし」の学校が登場してもいい時代ではないでしょうか。「持続可能な魂の利用」(松田青子著)を読んでいて思いました。

タバコは、なし。無煙です。


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弱虫ペダル

2020-08-28 | 2020映画評


「弱虫ペダル」 三木康一郎監督 ○ 

 渡辺航原作の人気コミックを実写映画化しました。
 友達のいない小野田坂道(永瀬廉)はアニメ研究会に入部してアニメの話で盛り上がることを期待した高校入学でしたが、アニ研は休部中でした。ところが、毎週のように秋葉原までママチャリで片道40キロを当然のように往復するパワーを買われ自転車部、それも自転車競技部に勧誘されます。
仲間がいることや「誰かのために力を尽くす」ことの楽しさに目覚め、自転車競技部勝利のために期待を背負ってペダルを踏むのでした。

アニメ映画でも人気の作品ですが、実写映画ということでは、自転車に乗れるそれも早く走れる俳優でないと成立しない制約があり、「えっ、この人顧問じゃなくて3年生だったの?」と思われるキャストになっていましたが、ここでは触れないことにします。
競技中ライバル校の選手を取り囲んで前に出られないようにしたり、風よけになる選手がいたり、チームとしての駆け引きの面白さを知ることができました。素人向けに字幕などを使ってもう少しルールをわかりやすくしてくれるともっと面白くなったかもしれません。

タバコは、なし。無煙です。


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ペイン・アンド・グローリー

2020-08-19 | 2020映画評


「ペイン・アンド・グローリー」 R15+ ペドロ アルモドバル監督 スペイン ✗

 アルモドバル監督自身がモデルになっているような作品です。
 脊椎の痛みで映画の制作も脚本を描くことも億劫になり、もんもんと痛みとともに生きている映画監督サルバトール(アントニオ バンデラス)でしたが、32年前の作品がリバイバル上映されることが決まり当時喧嘩別れした主演俳優の元を訪れます。それがきっかけとなり鬱々としながらも過去の自分を思い出し、幼児の頃の美しい母(ペネロペ クルス)との輝く日々、かつての恋人への思いを振り返り、その結果きちんと医療を受け健康を取り戻すことで自分自身を再生させるのでした。

美しい作品です。特にオープニングの背景の色合いの見事さ、そして途中描かれる人体や地理などを表現するアニメーションの素晴らしさ、圧巻はラストのほんの数秒です。まるで絵画のような計算され尽くした存在感のある母親と無垢な子どもの構図は既視感のまったくない新鮮な場面でした。一瞬しか見せないところがニクイです。
「デスペラード」のバンデラスが好きなので、家の中を動くのも大儀な役ではじめはなんだかなあと思いましたがラストで生き返ってよかったです。

タバコは、普通のタバコは1回だけでしたが、なんとヘロインが度々出てくるのでいかがなものかとは思いますが。マドリードの現実なのでしょうか。


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ステップ

2020-08-14 | 2020映画評


「ステップ」 飯塚健(いいずかけん)監督 ○ ☆

幼い娘を残し妻に先立たれた父親が子育てに奮闘する重松清原作の小説を映画化しました。
会社員の健一(山田孝之)は妻を亡くし2歳の娘美紀を一人で育てることを決意します。会社の理解もあり妻の両親も何かと気を使ってくれますが、男手のみの子育てには時折限界を感じることもありました。それでも日々成長する娘と二人三脚で問題を解決しているうちに10年が過ぎていたのでした。

会社の上司や仲間が協力的で保育園の職員も親切で、基本的に悪役のいない作品です。シングルマザーのドラマではあまり感じないのですが、シングルファーザーだとなぜか「あはれ」を感じてしまうのはジェンダー的に役割分担の固定化に縛られてしまっているのかもしれません。(すいません。筆者の勉強不足ですが・・・。)
山田孝之が「怒らない」「子どもにあたらない」理想的な父親を演じました。「ウシジマくん」もいいけどこういう普通の人の役もいいですね。10年後のちょっと歳をとったメイクが大変自然でよかったです。(☆)

タバコは、なし。無煙です。


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2020-08-13 | 2020映画評


「糸」 瀬々敬久(ぜぜたかひさ)監督 ✗ ☆

 中島みゆきの名曲「糸」から平野隆が原案を書き、林民夫が映画の脚本にしました。
 北海道の中学生高橋漣は親友の竹原とともに花火大会に出かけ葵と出会います。葵は家庭内で暴力を受けていましたが、「もう少しだから我慢する」と健気です。漣は「逃げよう」と誘いますがあっけなく捕まりその後ふたりは遠く離れてしまいました。大人になって地元のチーズ工房で働く漣(菅田将暉)は竹原(成田凌)の結婚式で葵(小松菜奈)と再会しますが葵にはメルセデスに乗る恋人(斎藤工)がいたのです。そして漣もチーズ工房の先輩(榮倉奈々)と結婚しますが・・・。
「糸」の歌詞を考えれば、いずれふたりはつながるとわかっていても、かつての「君の名は」(真知子巻きの方)や「冬のソナタ」の二人同様微妙なすれちがいが繰り返されます。その場面は映像ならではの演出が効果的で観客は「ほら、そこにいるのに・・・。」とわかっていてもハラハラします。
見せ場はいくつかありますが、おすすめは、仕事で騙され怒りを飲み込むかのようにカツ丼をガッツリかっこむ小松菜奈の食べ方で、かつての彼女のイメージを払拭する「負けない女」を見事に演じました。カツ丼が食べたくなります。
中島みゆきファンの期待を裏切らない上に(「糸」だけでなく「ファイト」や「時代」が効果的に使われています。)単なる恋愛映画にとどまらず、家庭内暴力、こども食堂、東日本大震災など社会性も取り入れた内容で平成という時代を描きました。個人的には出演している竹原ピストルの「ファイト」も聞きたかったのですが・・・。
 タバコは、大変残念なことに斎藤工が何度か喫煙しました。特に沖縄の海で釣りをしながら喫煙している場面がありましたが、あの吸い殻はどうしたのか気になります。まさか海にぽいすてしてないでしょうね。社会性がありながら、タバコには甘いのが本当に残念な作品です。


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21世紀の資本

2020-08-09 | 2020映画評


「21世紀の資本」 ジャスティン ペンバートン監督 仏ニュージーランド合作 △

 2014年日本でも翻訳書が発売され、世界的にベストセラーになった同名の経済書を誰にでも理解できるよう著者のトマ ピケティ自身が出演し解説したドキュメンタリー作品です。
世界で300万部販売されたものの完読するのがなかなか困難と言われた原作書ですが、今作ではアニメーションや「レ・ミゼラブル」「プライドと偏見」「怒りの葡萄」などの様々な名作映画の映像を取り入れわかりやすく演出しています。ピケティ入門映画としておすすめです。
とは言うものの、字幕スーパーと映像を同時に見せられるとどうしても理解が追いつかず「ちょっとまって」とストップボタンを押したくなってしまいます。こういうお勉強映画は別に俳優の声を楽しむことはあまりないので(ピケティの声を聞きたい、という人もいるかも知れませんが)ぜひぜひプロの声優で吹き替えてほしかったです。
お勉強映画に名作の場面を取り入れる手法はこれからもどんどん使ってほしいものです。
タバコは、過去の映像などで度々登場したので(△)です。



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ルース エドガー

2020-08-02 | 2020映画評


「ルース エドガー」 PG12 ジュリアス オナー監督 米 △

ひとつの課題レポートをめぐり、模範生ルースと教師、そして彼の養父母らの心の内部を探るサスペンスタッチの人間ドラマです。
アフリカの紛争地域から有能な白人夫妻の養子となったルース(ケルビン ハリソン Jr.)は秀才な上に陸上の花形選手でもあり、弁論も卓越し、学校の希望の星です。世界史の教師ウィルソン(オクタヴィア スペンサー)はルースの提出したレポートに「気になる記述」があり両親と話し合います。養父母のエイミー(ナオミ ワッツ)とピーター(ティム ロス)はその指摘に対し初めてルースを「よくできた息子」から「理解できないこともある息子」へと対応が変わります。一方、ルース自身も教師ウィルソンが生徒に対し些細なことでレッテルを貼り決めつけることに反発を感じていました。そして事件は起きます。

黒人差別の問題がアメリカで大きなうねりとなっている今、大変深い内容の作品です。「良い息子、良い生徒」をうまく演じられるルースは優等生の自分と教師の評価によって「おちこぼれ」のレッテルを貼られた仲間と本当の姿は大して変わらないことに気づいています。また、教師のウィルソンも実は大きな問題を抱えています。両親にしても、実子を望まず養子を育てることにした選択への葛藤もあります。自分自身の価値観を再認識させる秀作です。

タバコは、出ませんがドラッグが出てくるので△です。


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グッド・ボーイズ

2020-08-01 | 2020映画評


「グッド・ボーイズ」 PG12 ジーン スタプニツキー監督 米 △

 小学6年生の男子が「初キス」のために巻き起こす珍騒動を描きます。
 マックス、ルーク、ソーの3人は女子から「初キスパーティー」に誘われます。キスのなんたるかを探り検索サイトを見ますが要領を得ず、いわゆる実践の場面を「のぞき」見るため「触ってはいけない。」ときつく言って出張に出かけたパパの大切なドローンを持ち出します。ところが、ドローンが壊れるてしまったり、覗かれた被害者二人からしつこく追い回されるはとんでもないことが次々起きるのでした。

思春期の男子の「あるある」を描いていて笑えます。ドラッグや怪しい「大人のおもちゃ」が登場しPGがついてしまいましたが、大人が当時を思い出して苦笑して楽しむ作品となりました。3人の男子の性格のバランスが良く、それぞれのめざす道を行くラストが清々しいです。

タバコは、直接は出ませんが、ドラッグが重要な小道具となっているため(△)です。


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