無煙映画を探せ  

映画のタバコシーンをチェック。FCTC(タバコ規制枠組条約)の遵守を求め、映画界のよりよい発展を願うものです。

「密輸 1970」

2024-07-22 | 2024映画評


「密輸 1970」 リュ スンワン監督 韓国 ✗✗✗✗

 1970年半ばの韓国の漁村クンチョンが舞台です。
 ジンスク(ヨム ジョンア)をリーダーに海女たちはアワビなどの潜水漁を営んでいました。しかし近くにできた化学工場の排水が原因でせっかくとった貝がほとんど死んでいて収入がなくなってしまいました。そこへ海底に投げ込まれた密輸品を拾い上げるヤバい仕事をすることになります。一時は大儲けしますが、税関に摘発されてしまいます。うまく逃げたチュンジャ(キム ヘス)は2年後密輸王とともにクンチョンに戻って来るのですが・・・。

 1970年代日本の品物が密輸の対象という今では考えられない社会情勢や70年代風ファッションが興味深い作品です。ワイロで動く税関や警察にはお灸をすえたいですね。70年代とはいえタバコを吸いすぎです。女も男も事ある毎にタバコに火を付ける場面が強調されていました。
 また、化学工場の公害が取り上げられているのにタバコについてはサラリと流してしまったのは大変残念です。日本の水俣のような運動にはならなかったのでしょうか?興味のある問題です。

 タバコは、前述の通り多くの出演者が能動喫煙の被害、今の言葉ですとスモークハラスメントをほとんどの場面で受けていました。俳優を傷つけない作品にしてほしいものです。


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「ディア・ファミリー」

2024-07-07 | 2024映画評


「ディア・ファミリー」 月川翔監督 ✗✗

 心臓疾患を改善する日本人の体系に合ったバルーンカテーテルの誕生に貢献した実在する父親の姿を描きました。
 プラスティック製品を製造する会社の坪井(大泉洋)は娘の佳美(福本莉子)が心臓疾患で余命10年と宣告されます。担当医はそばにいてあげてください、と言いますが、妻陽子(菅野美穂)は「何もしない10年と何かを作り出す10年とどっちがいい?」と二人で人工心臓を作るために動き始めます。学閥の弊害や閉鎖的な医療業界が行く手を塞ぎますが、諦めかけた二人を佳美が励ますのでした。

 壁にぶつかるたびに「次はどうする?」と次の手を考え出す家族の姿に対し、学内の派閥というしがらみに縛られ才能を潰していく医学部関係者の姿は「白い巨塔」以来変わっていないようです。同じようなことが他の研究でもなされているとすれば残念です。常には居丈高で素人を蔑んでいながら状況が変わるとおもねってくるいやな教授役を光石研が好演しました。
 なお、この作品は大手シネコンで「日本語字幕付き」という回を選んでみました。セリフが聞き取れないというイライラが皆無となり、作品に集中できました。こういうサービスをもっと増やしてほしいものです。

 タバコは、時代考証の一つとして新幹線内で喫煙させることで70年代を表していましたが、時代のシンボルは俳優の健康を犠牲にするタバコではなく、東京新聞日曜版で連載している初見健一の「これなんだっけ」で紹介しているようなグッズを利用してほしいものです。
 その他の生活家電やファッション、車などの時代考証はたいへん練られていて「あの冷蔵庫実家にあったな。」など懐かしかったです。でもタバコは「嫌な時代だったな。」と悪い印象しかありません。


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「九十歳。何がめでたい」

2024-07-06 | 2024映画評


「九十歳。何がめでたい」 前田哲監督 △

 作家佐藤愛子のベストセラーエッセイ「九十歳。何がめでたい」を実際に九十歳になった名優草笛光子の記念映画としました。
 断筆宣言をして3年になる愛子(草笛光子)を、職場では「化石」と陰で言われている編集者吉川(唐沢寿明)が連載エッセイの交渉に訪れます。交渉は難航しますが、なんとか書いてもらえることになります。しかし、吉川のプライベートでは娘と妻が家を出て離婚届が送られてくるのでした。
 
 仕事に追われることで生活そのものが充実し、ますます元気になる愛子を草笛が名演技で演じています。一方「昭和の化石」吉川を演ずる唐沢もセクハラ、パワハラ親父と改心していこうとする実直な編集者を演じ二人のコラボが大変おもしろかったです。贅沢なカメオ出演者が全体を盛り上げています。ラストもさすが女性脚本家(脚本大島里美)、男性だとこうはならない、(これって差別かな?)そしてまた、犬の「ハチ」のパルムドッグ賞なみの名演が映画に色を加えています。また、音楽がうるさすぎず効果的でした。
 高齢の女性だけでなく男性にこそ見てほしい作品です。
 ただ、一つだけ要望をさせていただくと、愛子が新聞をめくるときに指を舐める癖がありました。あのシーンでは娘か孫が「指舐めるのやめたほうがいいよ。」と一言はいると教育的効果が上がりました。コロナでずいぶん気をつけるようになっていますが未だに図書館の新聞や本を指なめでめくる人いるので、さりげなく気づかせてほしかったです。

 タバコは、大変残念なことに愛子が通う美容院の担当者(LiLiCo)が外の喫煙所でタバコを持つシーンがありました。タバコ臭い美容師って恐怖でしかありません。でも、煙は映っていなかったので△です。


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「瞼の転校生」

2024-07-03 | 2024映画評


「瞼の転校生」 藤田直哉監督 ◯ ☆

 大衆演劇の一座に所属する中学生とたった一ヶ月心を通わせたクラスメイトたちの姿を描きました。川口市の市制90周年記念の作品です。
 
 中学生の裕貴(松藤史恩)は旅回りの演劇一座に所属しているので、いつも劇団員とともに1ヶ月毎に各地を移動しています。学校に行っても友達を作る気も勉強する気もありません。しかし、たまたま空気を読めない担任に「帰り道だから」と稽古のため早退する裕貴に不登校の健(齋藤潤)の家へ届け物を頼まれます。それがきっかけとなり裕貴と健、それに健の元カノ(葉山さら)も加わりお互いにお互いから刺激され成長していくのでした。

 大衆演劇という題材が新鮮でした。冒頭の役者たちが全員で小屋に搬入する場面や化粧したり稽古をしたりする姿に引き込まれました。裕貴が自分の環境に誇りを持っていることも好感が持てました。女形も嫌味がなく演じていました。ちょっと奇妙なタイトルの意味がラストになって判明し納得、二人の演技にウルウルさせられました。
 全く期待せず見た映画が拾い物だと感動も倍増ですね。上映館のあまや座に感謝です。
 ところで、川口市といえば「キューポラのある街」の舞台でしたね。食事をしたお店にあの映画のポスターがあったら往年のサユリストが喜んだことでしょう。惜しかった、、、煙突は映っていましたが。

 タバコは、なし。無煙です。爽やかさ倍増!


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「東京カウボーイ」

2024-06-19 | 2024映画評


「東京カウボーイ」 マーク マリオット監督 米 ◯

 やり手のブランドマネージャーが仕事でモンタナ州の牧場へ出かけ、価値観が異なる「カウボーイ」たちの中で自分を取り戻す物語です。
 職場の上司であり婚約者でもあるケイコ(藤谷文子)が渋る案件、経営不振のアメリカの牧場を和牛で収益増を狙う、というヒデキ(井浦新)は和牛のプロ和田(國村隼)をアドバイザーに迎えスーツにブリーフケースで現地に乗り込みます。しかし、初日からアクシデントが続きヒデキは単身で交渉に臨みます。いつものようにパワポでプレゼンを行いますが、牧場のスタッフたちは関心を示さないのでした。それでも牧場主のベグ(ケビン ハイアート)はハビエル(ゴヤ ロブレス)に「案内してやんな。」と声をかけてくれるのでした。

 「カウボーイ」という独自の文化を受け入れていくヒデキの姿が健気です。そんなヒデキを受け入れていくカウボーイたちもみんないい奴です。
 ヒデキが特に心を打たれるハビエルの姪の誕生パーティで父親が「この子が生まれたときに植えたこの木がこんなにおおきくなって・・・。(たぶんそんなことをスピーチしていた)」とスペイン語で語る場面は翻訳字幕も出ないので観客もヒデキ同様言葉そのものはわからなくても何を言っているかよくわかりヒデキと同じように感動します。
 ただ、國村の関西弁のセリフが聞き取りにくかったのが残念です。

 タバコは、なし。無煙です。


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「あんのこと」

2024-06-18 | 2024映画評


「あんのこと」 PG12 入江悠監督 ✗✗✗

 入江監督が新聞記事から織りなした社会から阻害された少女の姿を描きました。
 杏(河合優実)は母親からの虐待と小学生の頃からの売春の強要という少女時代を過ごし今は覚醒剤なしには生きられません。出会った刑事多々羅(佐藤二朗)はそんな杏に対し救いの手を差し伸べます。一方、記者の桐野(稲垣吾郎)は多々羅の取り組みを付き添うように取材していました。
 杏は母親から離れシェルターで暮らしながら夜間中学に通い高齢者施設で仕事をするようになりますが、母親の魔の手が伸びてくるのでした。

 食べるための万引きの常習を理由に小学校4年で放りだしてしまった教育現場はどう対応したのか、小学生を買っている大人たちはなぜ裁かれないのか、という疑問が頭をよぎります。
 できれば、監督なりの救いを映画に表現してほしかったです。

 タバコは多々羅が度々喫煙し吸い殻をそこらにポイ捨てする姿がありました。杏を救う前に自分自身をなんとかしろよ、と思いました。


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「ありふれた教室」

2024-06-05 | 2024映画評


「ありふれた教室」 イルケル チャタク監督 独 ☓

 中学校1年生の教室でおきた出来事がきっかけで教室だけでなく教師自身も崩壊していく姿を描きました。
 新任教師のカーラ(レオニー ベネシュ)は盗難事件の犯人にクラスの子どもが疑われていることがきっかけとなり真相を糾明するため職員室の自身のテーブルに隠しカメラを仕掛けます。そこにはある行為が映っていました。犯人がわかるかと思いきや事態は予期せぬ方向へ向かいカメラを仕掛けたカーラ自身が追求されることになってしまいます。

 見どころは職員会議に生徒代表が参加したり、学校新聞を自主的に発行したりする民主的な教育現場です。もちろん制服などなく人種や宗教によってさまざまなファッションで登校しています。保護者も学校にすべてお任せというわけではなく、積極的に教育内容にも物申します。小規模な軍隊のような日本の教育現場とはちょっと違うようです。

 タバコは、二人の人が外で喫煙している姿が遠景で後ろ姿で映りました。タバコの宣伝効果は無いに等しいのですが教育の場で喫煙はアウトです。


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「劇場版 再会長江」

2024-06-04 | 2024映画評


「劇場版 再会長江」 竹内亮監督 中国 おまけ◯

 10年前に取材で訪れた長江でしたが、その時は源流までたどり着くことは叶いませんでした。その後、中国語を学び南京市に移住した監督が再び源流を目指す6300キロの旅に挑戦しました。10年経って驚くほど変わった長江とその周辺、そして全く変わっていない「南極北極に続く第三の極地」と呼ばれる長江源流。そこの最初の一滴は捉えることができるのでしょうか。

 インターネットの普及がどこに住んでいても世界の情報を目にすることができるようになったことが変化の源です。女性の活躍も目覚ましく羨ましいくらいでした。
 監督自身の変化が実は一番大きかったようで、巧みな中国語で中国国内で活躍するインフルエンサーとなりましたが、体力面では残念ながら10年の変化がやはり気になりました。

 タバコは、取材した人がタバコを吸っていたようですが、はっきり映らなかったのでおまけの◯です。
 

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2023年無煙映画賞

2024-06-03 | 2023年無煙映画賞
5月31日、世界禁煙デーに合わせて巣鴨の高岩寺で2023年無煙映画賞の発表と表彰式を行いました。

**2023年無煙映画賞各賞と推薦理由**

<作品賞> 「ミステリと言う勿れ」 松山博昭監督 東宝

 田村由美原作の人気漫画を実写ドラマ化の劇場版です。広島を舞台にして平和記念公園なども紹介されたことで単なる人気作品を超え社会性のある娯楽映画となりました。ジェンダーの問題を男性主人公がきっぱり指摘するセリフも秀逸です。また、原作者によるモノクロのアニメーションが印象的でした。
 観客動員数も高い作品が無煙映画で大変素晴らしいです。


<主演俳優賞> 劇団ヨーロッパ企画 「リバー、流れないでよ」・配給トリウッド

 京都貴船神社と旅館「ふじや」の全面協力で、ある理由で同じ2分間をなんどもくりかえす、というタイムループ作品です。芸達者な劇団員が旅館のスタッフや利用客を演じたドタバタ喜劇はイヤミのない笑いを提供してくれます。劇団のファン以外の人は名前と顔が一致しないような地味な俳優たちが一級の演技を競演しています。
 かつて劇団といえば「灰皿が飛ぶ」という伝説がありましたが、そんな時代は遠い過去に流れていったことを実感させてくれる無煙映画のコメディです。

<監督賞>  三原光尋監督 「オレンジ・ランプ」「高野豆腐店の春」

「オレンジ・ランプ」
39歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断された主人公が周囲の理解と協力の中人生を諦めずに生きる姿を描きました。

「高野豆腐店の春」
理由のある父(藤竜也)と娘(麻生久美子)がこだわりの豆腐店を営む姿を淡々と時折コメディタッチで描きました。
 

<特別賞> 「No選挙、 No LIFE」 前田亜紀監督 配給ナカチカピクチャーズ

 選挙取材歴25年のフリーランスのライター畠山理仁の情熱と苦悩を追ったドキュメンタリー映画です。
 国政から地方選挙、時には海外まで出かけて候補者全員の取材をする、という信条を掲げ、秒単位で候補者を追う姿は感動的です。観たあとは次の選挙には投票に行きたくなり投票率アップに貢献する作品です。選ばれた政治家の皆さんには畠山さんに負けず真摯に仕事をしてほしいものです。


<アニメ映画賞> 「かがみの孤城」 原恵一監督 松竹 

 直木賞作家辻村深月のベストセラー小説を長編アニメ化しました。
 家に閉じ困っている主人公は部屋にあるかがみに導かれ孤城の世界に入り込みます。そこには7人の同世代の少年少女が同じような悩みに苦しんでいました。「オオカミさま」の指示で願いが叶う鍵を探すことになりますが・・・。
 時空を超え個性もバラバラな中学生が仲間と力を合わせて問題解決をする姿が観客にも生きる勇気を与える作品です。


<外国語映画賞> 「燃えあがる女性記者たち」 
リントゥ トーマス、スシュミトゴーシュ監督 インド 配給きろくびと 

 インドの最下層カーストの女性たちが立ち上げた新聞社「カバル ラハリヤ」の記者たちが手強い男性たちに揉まれながらもめげずに取材をしていく姿を追ったドキュメンタリー映画です。
 日本政府は「価値を共有する国」としてインドを捉えていますが、実はインドの一部ではヒンズー至上主義の集団が牛耳っている実情をさらけ出しています。
「非暴力」の価値観はどこかへ消えてしまったのか、大きな剣をむき出しに持って出歩く男たちの姿は怖いです。
映画の世界ではハリウッドに並ぶかそれ以上のインドですが、これからもいい映画が撮れるよう平和な国であり続けてほしいものです。

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「ミッシング」

2024-05-27 | 2024映画評


「ミッシング」 吉田恵輔監督 ☓☓

 監督のオリジナルストーリーです。幼児の失踪で壊れていく家族の姿と「失踪事件」を伝える報道の姿を描きました。
 沙織里(石原さとみ)が娘の美羽を弟(森優作)に預けライブに行っている間に美羽は失踪してしまいます。夫(青木崇高)とともに必死になってビラを配り情報を集めようとしますが手がかりはありません。一方、地方局の砂田(中村倫也)は報道番組として沙織里に取材し番組を制作しますが、上司からは視聴率が取れるような内容にしろといわれ沙織里自身もその要請に無意識に応えてしまうのでした。

 SNS上での無責任な誹謗中傷で心を壊されていく沙織里を石原が熱演していますが、ラスト近くの青木や森の演技も素晴らしいです。
 くれぐれも子どもをひとりにするのはやめましょう。

 タバコは、青木が何回か喫煙していました。


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