goo blog サービス終了のお知らせ 

無煙映画を探せ  

映画のタバコシーンをチェック。FCTC(タバコ規制枠組条約)の遵守を求め、映画界のよりよい発展を願うものです。

2020年無煙映画大賞

2021-10-22 | 2020年無煙映画大賞
2020年無煙映画大賞の発表です。
先日、大分県で開催された日本禁煙学会で報告されました。

**2020年無煙映画大賞**

<作品賞> 「スパイの妻」 黒沢清監督  

<主演俳優賞> お笑い芸人バカリズム 「架空OL日記」 住田崇監督

<話題賞> 「鬼滅の刃 無限列車編」 外崎春雄監督

<特別賞> 「はりぼて」 五百旗頭幸男、砂沢智史監督
 
<東日本大震災10年記念賞> 「風の電話」 諏訪敦彦監督

推薦理由
<作品賞> 「スパイの妻」 黒沢清監督
 第77回ヴェネチア国際映画祭で「最優秀監督賞」受賞作としても有名です。
 1940年軍部が社会を掌握する中、貿易商の夫は仕事で訪れた満州で掴んだ情報をアメリカに流すため画策します。命をかけ夫とともに戦おうとする妻を描きました。
 権力にとって都合が悪い情報をコントロールするのは今も同じです。時代を超えた普遍性のある作品です。
 
<主演俳優賞>  お笑い芸人バカリズム 「架空OL日記」
お笑い芸人として活躍しているバカリズムさんが自身で脚本を書きOL役として主演しました。変にかまえず、会社で働く女性職員の本音のアレコレをコメディタッチで女性の一人として自然に演じました。ラストで本人役を演じている姿もあり「女優」「男優」と区別する必要もなく第1回の「主演俳優賞」に選びました。
 なお、来年以降も性別に対する時代の変化を踏まえ「主演俳優賞」といたします。

<話題賞> 「鬼滅の刃 無限列車編」 外崎春雄監督
 第44回日本アカデミー賞長編アニメ映画賞受賞作です。
 2020年の映画界を語る上でこの作品をはずすことはできません。320億円を超える興行成績はコロナで青息吐息だった映画館をこの一作が救ったと言っても過言ではありません。2021年4月現在も上映継続中)

<特別賞> 「はりぼて」五百旗頭幸男(いおきべ ゆきお)、砂沢智史監督
 富山県のローカルテレビ局のスタッフが地元の政治家の不正を明らかにし、次々議員辞職に追い込まれます。その顛末と自身のその後を描いたドキュメンタリー映画です。
 税金を自分の懐に入れたり、税金で美味しいものを食べたりする議員さんが国会にもいるようですが貧しさの現れですね。
 自身の姿もさらけ出した監督たちには拍手をおくりましょう。

<東日本大震災10年記念賞> 「風の電話」 諏訪敦彦監督
 東日本大震災で家族を亡くした17歳の少女が育ててくれた叔母と住んでいた広島から福島までを辿ったロードムービーです。
 壊れかけた魂が出会った人々によって少しずつ回復していく姿をドキュメンタリー風に描きました。

*汚れた灰皿賞(モクモク賞)
・「影裏」(大友啓史監督 ソニー)
・「酔うと化け物になる父がつらい」(片桐健滋監督 ファントムフィルム たばこと塩の博物館協力)
・「ミッドナイトスワン」(内田英治監督 キノフィルムズ)
・「窮鼠はチーズの夢を見る」R15+(行定勲監督 ファントムフィルム)
 
 

「17歳の瞳に映る世界」 PG12 エリザ ヒットマン監督 △

2021-10-22 | 2021映画評


「17歳の瞳に映る世界」 PG12 エリザ ヒットマン監督 △

 予期せぬ妊娠をしてしまった女子高生の旅する姿を暖かな眼差しで描きます。第70回ベルリン映画祭で銀熊賞受賞しました。
 ペンシルベニアの高校生オータム(シドニー フラニガン)は友達は少なく発表会で歌えば意地の悪いヤジで挫けそうになりながらもなんとかとどまり仕返しもちゃんとします。そんな彼女が予期せぬ妊娠をしてしまいますが、親とはそんな話ができる関係ではなく、相談できるのは同じスーパーでバイトをしているいとこのスカイラー(タリア ライダー)だけでした。両親の許可なく中絶ができるニューヨークへお金もなんとか工面して古臭いスーツケースを引きずりながらふたりでバスに乗り出かけるのでした。

 タイトルが原題は「Never Rarely Sometimes Always」でこれは「決してない、めったにない、時々ある、よくある」の意味です。この言葉は中絶をする医療機関でスタッフがする質問で何度も使われます。質問が進むことでオータムの体験があらわになり表情が変わっていき彼女の辛さが観客に伝わってくる見せ場となっています。ただ、邦題の「17歳の瞳に映る世界」というのも二人の顔を映す場面が多く観客は「今、何をかんがえているのだろう?」と彼女たちに寄り添うことになります。どちらのタイトルも的を射ていると言えます。

 ところで、本作は今年話題の女性映画の一つです。この作品でもある意味では女子高校生にしてはたくましくもありますが、女性だから負わなければならない苦しみが痛々しくもあります。犬にしか相手にされない義父をはじめ、バイト先のセクハラ上司や地下鉄内の露出男などどうしょうもない男ばかり登場します。

 タバコは、その存在感の無い義父が隣の部屋で喫煙する場面がありましたが、遠景な上にだらしがない男の小道具なので△です。