高田明和 『脳の栄養失調』
1 満腹感をもたらすのは、あくまで、炭水化物、脂肪、タンパク質など、体や脳に必要なものです。
2 アミノ酸のうちのトリプトファンが少ないと空腹を感じ、多くなると満腹を感ずる。
トリプトファンが脳内でセロトニンになり、セロトニンが満腹中枢を刺激する。
トリプトファンは食肉に多い。もし、肉を食べないでいると、血中のトリプトファンが減り、脳内のセロトニンが少なくなる。
3 セロトニンが少ないと、攻撃的になる。お腹が減ると怒りっぽくなる。セロトニン不足です。
だから、肉不足ではダイエットに失敗する。
4 脂肪について大事なことは、脂肪細胞で作られるレプチンです。
5 「自分は甘いものが嫌いで、アルコール派」だという人がいる。
しかし、たいてい柿の種やせんべい、ポテトチップス、鮨などが好きだと思います。じつはこれらが炭水化物、ブドウ糖の宝庫です。
では、酒のみはどうか?
塩を肴に飲むなどという人がいる。このような人は肝臓を壊します。肝臓は、ブドウ糖があれば、アルコール分解できる。ブドウ糖がないと、アルコールに障害されやすい。だから、酒を飲むときは甘いものを一緒にとることを勧めます。
6 国民栄養調査によると、この二四年間に日本人の摂取カロリーは約一二パーセント、炭水化物の摂取量は約二〇パーセント減少。
しかし、糖尿病患者や予備軍が数倍に増えている。
なぜ、痩せた人にも糖尿病が多いのか。
実は、糖分摂取をあまりに制限すると、逆に糖尿病になる。「糖尿病パラドックス」です。
7 糖尿病は「なるべく甘い物を食べるな」と言うが、「甘い物をどの程度の食べ方をいうのか」と聞かれると、急に不明確になる。
8 ブドウ糖は脳のエネルギー原と同時に精神を安定させるセロトニンの原料になる。
ブドウ糖が少なければ、精神不安定になり、ストレスへの抵抗が弱まり、細胞はますますブドウ糖を取り込めなくなる。結果、血糖値が上がり、糖尿病になる。
9 うつ病の人は、セロトニンの量が少ない。
10 トリプトファンは必須アミノ酸で、食べ物として摂る必要がある。肉に多く、魚ではカツオ、マグロの赤身。野菜、果物、植物性タンパク質にはほとんどなし。
11 インスリンがあると、トリプトファンが効率的に脳に摂りこまれる。インスリンはブドウ糖を摂取することで分泌される。
だから、肉と一緒に糖分、砂糖などを摂るのが望ましい。欧米では、食後のデザートに甘いものを食べたり、コーヒーに砂糖を入れて飲む。理にかなっている。
12 現在は、ストレス社会。
環境変化の少なかった時代には、たとえセロトニンが不足しても、うつ病にならないか、少なかった。
「昔は、菜食で生きられた。魚といっても煮干しで十分だった」と言う人がいる。
昔と今では環境が全く異なる。現在は、競争の激しい時代です。不安要因に抵抗するために、心の強さが必要。
故に、脳を元気にするには、セロトニンが必要。原料のトリプトファンが欠かせない。だから、肉食を勧めます。
13 血中の二酸化炭素が増えると、セロトニンの放出が増える。
呼吸が心のあり方や思考に影響する。その深さも変える。
息を、苦しくてもう少し速く吐いていきたいと思うくらいゆっくり吐く。それにより、血中の二酸化炭素がある程度高くなる。二酸化炭素はセロトニン神経を刺激するので、海馬や扁桃でセロトニン放出が高まる。その結果、精神の安定となる。
14 牛乳だけで育った子供は、小学校へ入ってから行動が、母乳で育った子供より落ち着きがない。アラキドン酸を添加した牛乳を飲んだ子供は、母乳で育った子供と同様に、落ち着きがあった。
六十歳を過ぎると、アラキドン酸が減る。アルツハイマー病は、脳内のアラキドン酸が減るから。
高齢者は刺激に対する反応が鈍い。しかし、アラキドン酸を与えると反応時間が短くなる。
脳の発育には肉のアラキドン酸が必須。
15 イヌイットはうつ病が多い。自殺率が非常に高い。魚のEPAを豊富にとっているので、アラキドン酸がグリセロールと結合しにくく、結果、アナンダマイドが少なくなり、うつ病になりやすい。
しかし、アラキドン酸を多く摂取すればいいのではない。多く摂ると、EPAやDHAとの結びつきが弱まり、心筋梗塞のリスクが高まる。
大事なことは、体に必要なものを、摂りこむほど、不健康になる。或る程度の摂取が必要。ここがポイント。
16 脳とそれ以外の臓器の必要量のバランスを保つ事が最重要。
これは医者に聞いても、わかりません。個人によって、体質が別個であり、結局は、自分自身の体と対話しながらどの程度、食べるか決めるべき。
17 ビタミンDも、コレステロールが紫外線を受けて作られる。
18 コレステロール値が180以下になると、ガンにかかりやすい。
コレステロール値が240くらいまでは、上昇とともに、ガン発生率が減る。
脳卒中もコレステロール値が240までは、高い方が発生率は低い。
現在、総コレステロール値は240、LDLも140までは安全。
しかし、日本では、これまで、総コレステロール値が220を超えると高脂血症だとしていた。日本政府は謝るべきだ。
19 高齢者はコレステロール値が低いと、うつ病になる。自殺する人も多い。
20 コレステロール含む食事はテストステロンが多い。
テストステロンは、精子を形成。精液は2・5ミリリットルから3・5ミリリットル。精液一ミリリットルあたり6000万以上の精細胞あり。これが4000万以下になると、不妊になる。
21 現在の少子化の原因は、ダイエットが原因。
22 20代の20パーセントは味覚障害。
亜鉛が不足すると、味覚異常になる。
亜鉛は肉レバーに特に多い。他に、牡蛎、小魚、煎茶。
豆類にフィチン酸が入っているので、カルシウムと一緒に摂ると、亜鉛の吸収ができない。
だから、植物性食品だけや、加工食品に頼る人は亜鉛不足になる。
23 亜鉛が少ないと、フリーラジカルの量が増える。老化の原因になる。
フリーラジカルは脳細胞を損傷。認知症は亜鉛不足で。
24 ビタミンEが脳血管性痴呆症、心臓病、脳梗塞を減。
25 ビタミンB12の欠乏で神経異常、記憶障害に。
26 葉酸は記憶減退、うつ、痴呆を防ぐ
27 ビタミンB6は長期記憶を改善
28 ビタミンB12の食材は、圧倒的に肉。他、牡蛎、貝類。生ノリ。
B6はニンニク、ビスタチオ、鶏肉、牛レバー。
葉酸は、ほうれん草、大豆。
29 「昔の日本は生活習慣病はなかった。健康だった」と言うが本当か。
今は、平均寿命80歳を超えている。
1935年までは、男性48歳、女性50歳だった。1950年頃から徐々に伸びだした。
昔は出産前後や、乳幼児の死亡率が高かった。治療も不十分だった。しかし、もっと大きい理由は病気の抵抗力がなかった。かつての日本食で長寿を望めず。
戦後、急に、動物性タンパク質と脂肪を摂取しだした。栄養が良くなったから、寿命が伸びた。
だから、昔の日本食が健康的だったわけではない。
30 栄養が悪いとアルブミン値が低下。アルブミン値が低いと、心筋梗塞などの心疾患の増加。
31 BMIが23から25の小太りが最も長寿。
だから、今の若者の痩せ志向は将来の早死の可能性大。
32 巨人の長嶋茂雄さんが脳梗塞になったのは?
長嶋茂雄さんの主治医は「長嶋さんは、高脂血症も、高血圧も、高血糖も、動脈硬化もなかった。肥満でもなかった」という。
健康優良児そのもの。
すると、その原因は何か。著者はストレスだという。
血液がさらさらになるような物を食べ、運動欠かさずしても、心の平安が保てないと、血栓ができる。
同様の事が、糖尿病にも。
痩せて、血糖値が低い人にも起こる。一見、健康な人でも、ストレスにさらされると、血糖値が上がり、細胞がブドウ糖を取り込めなくなり、糖尿病になる。