山口 香の「柔道を考える」

柔道が直面している問題を考え、今後のビジョン、歩むべき道を模索する。

強い日本が復活

2010-09-11 22:09:17 | Weblog
 大会3日目。日本は3階級すべて(男子73kg、女子57kg、63kg)で金メダルを獲得した。久しぶりに日本柔道は強い!と思った。

 今日の日本勢の強さは、寝技がポイントであったように思う。秋本選手も事実上の決勝戦と思われた韓国のワン選手との試合で寝技の攻撃が勝敗を分けた。作戦であったかどうかはわからないが、随所で、寝技で攻め込んだことがポイントにはつながらなくても相手へのプレッシャーとなり、スタミナも奪った。

 松本選手も寝技の強烈な印象が相手をひるませ、試合を常に優位に運ばせた。最近では寝技をじっくり見る審判が少なく「待て」が早いせいか、海外の選手達に寝技のスペシャリストが少ない。その点において寝技という武器を持った選手は非常に有利である。57kg級はこれまで唯一金メダルのなかった階級である。今日の闘いぶりを見る限り、しばらくは彼女の時代が続くのではないかと思うほどの強さだった。強い選手が出れば自然とその階級は強くなる。57kg級も今後は常に金メダルが狙える階級となっていくに違いない。

 秋本選手は昨日の高松選手同様に高校時代から注目されていた。内柴選手を破って世界の代表になったこともある。しかし、怪我と減量に苦しみ、階級変更に踏み切った。今日の結果を見れば「もっと早くに階級を変えていれば」という人もいるだろうが、逆に言えば、その頃の苦労があったからこそ今日があるとも言える。決勝戦のあと、噛み締めるような表情がそのことを物語っていた。

 63kg級は日本人同士の決勝戦となった。これ自体は喜ばしいことだが、予想通り、といってはなんだが試合自体は非常に面白みのないものだった。二人とも勝ちにこだわるあまり慎重になる気持ちも、必死さもわかるのだが、見ている人間としては、もっと迫力のある攻防が正直みたかった。日本人は柔道が世界に広まって様々な柔道スタイルが出てきたことを嘆く人が多い。しかし、今日のような決勝戦をみると、違ったスタイル同士が闘うから面白いのでは?と思ってしまう。外国人と試合をするから日本人の柔道が引き立つのかもしれない。となれば一概に外国人の柔道を否定することはできない。

 また、強豪国の選手が勝ち上がって同じ国の選手が闘う試合が多くなれば、手の内を知っているだけに平凡な試合となってしまう可能性が高い。そういった点でも一カ国2名の出場というのは今後検討されていくだろうと予想される。

 松本選手の金メダルは日本人通算100個目の金メダルだそうである。日本の強さはこういった伝統に支えられてのものである。日本男子は近年苦しい闘いが続いてきたが、今日の闘いをみて「やっぱり底力はある」と感じた。明日の選手達にも自信と誇りを持って思い切って闘ってくれることを期待したい。

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24 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (泰輔)
2010-09-11 22:44:03
山口先生 本日は

お疲れ様で御座いました
誠に有り難うございました。
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寝技の力はすごいですね (Unknown)
2010-09-11 23:17:05
秋本選手の表情、素敵でした。

筑波大出身選手はなぜかクールで謙虚に見えてしまいます、かっこいいですね。
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4日目観戦 (一柔道家)
2010-09-12 22:54:45
今日4日目は昼から観戦に行きました。
相変わらず勝ち上がり表が掲示されてなく、また進行表もないので、どこの試合場でどの階級のどのプールが行わるのかわかりませんでした。もう3日目なんだから、そのくらい改善してよと言いたいです。
審判について疑問を持ったのは、山口先生がご指摘された通り、足取りの反則が今回は甘くなったらしいことと場外の扱いです。相手を押し出したという指導が散見された一方、寝技を嫌がって場外に這って逃げることを繰り返しても指導が与えられないのは不思議です。
女子48kg級と52kg級決勝の日本人対決には会場が大いに沸きました。浅見選手は本当に強くなりましたね。福見選手はどこか痛めているのか調子が今一つだったようです。中村選手と西田選手の対決の判定は私の周りでは「おかしい」と言っている人が結構いましたが、2年前の嘉納杯東京グランプリの再現ですね。日本人審判ならどうだったのでしょうか。森下選手の一本勝ちによる優勝はもう最高でした。若手が育ってくれてうれしいです。あすも若手の活躍に大いに期待したいです。
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説明してほしいです!! (柔道大好き)
2010-09-12 23:42:15
今日の試合-52㎏決勝の判定はよくわかりません。
しかも3-0はとくに理解できません。テレビとかでは日本人同士なのか誰も何も説明してくれないし、わかりません。勝った選手はあんなに喜んでたけどそれほど明確に何かあったんでしょうか??私にはわかりません。教えてください。判定は試合の全体を見るのですか??
何を見るんですか??


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Unknown (泰輔 2)
2010-09-13 02:31:29
体調不良になりまして
まぁ、夏の疲れか精神的な物か 12日は観戦を
断念しようかなと思いましたがせっかくのご厚意でのチケット入手でしたので午後から会場に行きました。福見さんも中村さんも
このまま終わる訳ではないと思います。ケンドちょうらい?で頑張って下さい。まだもう1日有りますが 未だに強く残っているのが 杉本選手と松本選手です。これからもケガなく身体に充分に留意され更なる精進に励まれ
ロンドン五輪の金メダルを是が非でもお取り下さい。
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西田対中村 (彦左衛門)
2010-09-13 09:36:57
家族で決勝戦を見ていたが、ワシ以外、やはりみんな中村の勝ちだと思っていたらしく、判定に驚いていた。
現在の僅差判定の基準としては先ず、技の効果を見て、それが無ければ技の掛け数で決めるのが主流だ(後で書くけどこれも変なんだけど)。じゃあ西田の掛かりそうもないかけ逃げ気味の技はどう見るかといえば、掛け逃げの反則を取られてない以上あれは攻撃と見なされていたと考えるのが正しい。だから技数で西田の勝ちだ。
じゃあなんであれは掛け逃げをとられないのかというと、ルールブックには掛け逃げの技の明確な基準は書かれていない、審判の主観に任されているだけなんだ。だから審判は他の反則と違い非常にとり辛い。
例えば場外注意だと選手が場外に出ると誰が見てもはっきりわかる。じゃあ掛け逃げに関しては、「この技のどこが掛け逃げか見てわかるように説明しろ」といわれても「うーんなんとなく」しかいえないものである。
技が崩れてるだろと言っても単に掛ける技が下手なだけかもしれない。ヘタな技を掛けても反則にはならないからね。外国には技のヘタな選手はたくさんいる。西田もそういう選手として外国の審判に見られたのかもしれないね。

ほとんどの観客は中村の試合内容に好感を持っていたのに判定の結果が反対にいってしまったのは柔道人気にとってはマイナスだ。
この「掛け逃げ」問題は昔からあって柔道がつまらなくなった大きな要因のひとつだ。
国際柔道連盟にはこの件に関して早く対応してもらいたいね。

最後にもう一言、例えばボクシングにはノックアウト以外の判定の明確な基準はちゃんと文章で決められている(有効打、防御など。)
しかし、柔道の僅差判定基準はルールブックには全く書かれていない、つまり存在しない。ということは、本来審判は僅差判定できないんだよね、だって判定基準が無いんだから。でも誰が決めたかわからない、ijfも認めてない「技の効果、なければ技数」という誰がいつ定めたかわからない基準で判定してるんだよね。だから「俺は中村がかわいいからこっちに挙げよう。これが俺の基準だ」というのもありなんだよね

これっておかしいよね
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Unknown (Unknown)
2010-09-13 11:21:08
西田の方が可愛いから
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Unknown (Unknown)
2010-09-13 11:37:33
判定基準を、明確にすると日本人が勝てなくなりますから曖昧にしているのです。
素直に勝者を褒めてあげてください。
全日本のコーチー・監督でも、はっきりとした明確な判定基準は、理解していません。一本勝ちすれば良いと思っているのです。ルールブックに書いていない・ルールを明確にしようとしない柔道は、衰退していきます。スポーツはルールがあって成立しますが。 
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質問 (彦左衛門)
2010-09-13 13:03:22
何故判定基準を明確にすると日本人だけが勝てなくなるのか?

日本が故意に判定基準を明確にしないようにしてるのは本当なのか、日本にそんなことができるのか?その情報はどこからきたのか?

適当にアンタの口からでまかせで言っているのではないか。
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Unknown (Unknown)
2010-09-13 13:46:45
何故なら、柔道は日本で出来たスポーツだから。日本人は(日本語は)、根本的にイエスかノーでは無く曖昧な言葉で成り立っている。本来の柔道を否定してルール改正され、外国の選手が曖昧なルールに対応すればヨーロピアン柔道に完敗してしまう。そんな中、ルール改正されたが、今も曖昧な部分が多い。
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