中小企業のES=人間性尊重経営のパイオニア/有限会社人事・労務 ES組織開発・人事制度改革ブログ

社員の幸せ、職場の幸せを基準に経営を、社風を変えたいと本気で思っている社長さん・人事担当者の方へのエールをあなたへ!

地域に根差した自律分散型組織・HSAさんのお話を伺いました

2019-12-26 10:13:11 | 組織開発・社風改革
11月に行なった、自律分散型の組織運営をしている神奈川のHSAさんの職場見学会。
(地域に根ざした持続的な経営を実践する HSAのES(人間性尊重)を軸とした 自律分散な組織づくり▼)



これまで、千葉のビュートゾルフ柏さん や、福岡のココシスさん 、そしてダイヤモンドメディアさん など、日本で自律分散な組織運営を実践している企業を訪問させていただくごとに“目から鱗”な感覚を得てきましたが、今回のHSAさんも同様に「このような組織を実現することができるのだ」という一つの道しるべをいただく学びの機会となりました。

自律分散型組織については、しばしば「給与を自分たちで決める」「あらゆる情報を見える化する」「リーダー不在のフラットな形」など、普通の組織とは異なる先鋭的な策がクローズアップされます。

HSAさんにおいても、
✔「見える化」を徹底し、毎月各事業部の損益計算書・キャッシュフロー計算書・通帳残高等を公開
✔就業規則は毎年見直し、皆で話し合いながら変更
✔評価制度をなくす
✔”働き方提案シート”をもとに、各事業部で個々の希望も踏まえ働き方や給与を決めていく
といったユニークな取り組みを実践し、”働く個々が自ずと動きイノベーションが生まれるしなやかな組織”を創りあげています。



しかし、そのような策を施せば自律分散な組織を運営できるかと言えば、そうではなく、パソコンで言う最新のアプリ(策)をうまく稼働できるようにOS(組織風土)そのものをアップデートしていく必要があります。
もし皆さんの会社が更なる変化を目指す場合には、この「OSがアップデートされているかどうか」という点に着目し、いきなり自律分散を目指すのではなく一つひとつ段階を上げていくための道筋をまずは考えていかねばなりません。



HSAさんの「OS」に搭載されているのは、「選択制民主主義」「社会学校」、更に小田原の地域全体に根付いているとも言える二宮尊徳の「報徳思想」という柱です。
自らが自社の仕事を通した働き方を選びキャリアの道筋を描いていくことを促す選択制民主主義という思想。
社会の縮図とも言える”会社”において、仕事を通した人間的成長を促し”一人ひとりの成長が組織の成長となり、地域の成長・日本の成長に結びつく”という社会的な学校としての役割意識。
そして、「万物にはすべて良い点(徳)があり、それを活用する(報いる)」という報徳思想。
このような理念が、OSがアップデートされてもさまざまな施策に一貫しているからこそ、”毎年一つの新規事業を興す”というイノベーティブな組織が実現できているのではないかと思いました。

今回、このHSAさんとのご縁をつないでくださった横浜市立大学・影山摩子弥先生によるまとめの中で、「”語る社長”と”説明できる社長”の違い」というお話がありました。



未来像を語る社長の会社だと個々の社員もモチベーションは高いが戦略まで考えられる社員がなかなか育たない。それに対して、”なぜこれをやっていくのか”を社会全体の視点から自社を捉え説明できる社長のもとでは、社員自ら現実を見据えながら現場基点で発想し学習していくことができる―。



HSAさんはまさに、この”説明できる社長”としての田中社長の存在のもと、一人ひとりが社会の一員として自ら考え働く目的を探求しながら仕事を共にする集団であると言えます。
その背景として、「対話の習慣」が根付いている、という点があります。

私たちが見学させていただいた施設「ひなた」では、会議・ミーティングと名の付く場は、「月一回の会議と日々の申し送り」のみ、という話がありました。



これは、なるべく会議の時間を削減しよう、という方針の表れではなく、日々の対話の習慣がいかに職場に根付いているかということを表しています。
職員と共にてきぱきと洗濯物を折りたたむ利用者さんの姿。
週末で学校が休みということで職員のお子さんが来て、親が働く間に事務室で宿題をしている様子。
遠くで大きな物音がした時に、誰が指示せずともどこからともなく職員たちが集まり声をかけあって様子をうかがう様子(※この時は単に立てかけてあった物が倒れただけで何事もありませんでした)。



すみずみに職員の皆さんの感度高いアンテナが張り巡らされながらも、利用者さんを中心に穏やかな時間が過ぎていく職場の空気感は、対話という潤滑油が自律した個々をつなぎ合わせ、しなやかに物事に対処する有機体のよう。

日本の中小企業が実現したい自律分散な組織の形を示していただくひとときでした。