sirius

SiriusとAldebaranとPolaris

その日

2015-06-19 16:37:00 | 日記

小さな田舎町。

日が暮れてあたりが闇に包まれる頃、ちらほらと赤や青の灯りが見えてくる。

提灯を提げた居酒屋。けばけばしい色の灯りを付けたスナックやバー。

 

引き戸をあける。

「いらっしゃい!」と店の男が挨拶する。ああやつらか。

三人の男が続いて入ってきた。

「どこにする?」と一人が坐る場所を確認。

「ああ、そこでいいさ」

ちょうど三人が坐る場所が空いていた。そこに胡坐かいて坐った。

「めずらしいね?」と、店のオヤジ。

「何か知らんけどあちこち満員でよ。やっとここでラッキーってこと」と、男がいかにも疲れた風に言う。

「そうかい。なにかあったかな?」くびを少しかしげて。

「何呑む?」と、店のオヤジ。

「とりあえずビールだな」と、男は他の二人を見ながら注文。

二人とも肯いて、それを見た店のオヤジが奥にむかい、

「生、みっつ!」といって引っ込んでいった。

 

三人は、仕事仕舞ってどこか呑みに行くことにしてここまで来た。

どれほどの時間いるかわからんが、いつもどおり車で来て店の前に止めてある。

 ビールがきた。

三人でグラスを持って「カンパーイ!」といって旨そうにごくりと呑んだ。

いつもの通り仕事や女の話でガハガハ言いながらである。

「社長がよう、帰り何かごちゃごちゃ言ってんだ。やってらねえからこっそりづらかった。あ、ハハハ」

「そらおめえ明日、くびだってな、あ、ハハハー」

「もう腹へってるしよお、明日は、あしただな」

 

「オヤジさん、生三つ!」

「それにしてもこんでるな!」

 

入り口が開いたとこで、何も言わず男が二人店の中を見回している。

空席がないのを確かめて店を出ようとしたとき、先の三人づれの一人と目があった。

「おお、ここにいたのか!」

「どこもいっぱいでよ」

「おれらもちょっと前に来たとこだ。ここ入れよ狭いけど」

 

「じゃ、そうすっか」

二人は先の三人連れの中に入り呑み始めた。

みんなこの辺りで働いていて知り合いである。

 

男五人で大いに盛り上がった。

2、3時間も呑んでいたか。

「ここは狭いし、そろそろでるか?」と、一人が言った。

「そうだな」

「オヤジさん、勘定!」

店のオヤジが伝票片手に

「ずいぶん呑んだな。くるまでないのか?大丈夫か?」

「これくらい、いつもだ。心配ないって」

「それならいいけど。クルマ少ないけど気つけてな!」

「おう」

「またな」

といって、五人は店を出た。

「ああー、まだはええなあー」

「ああ」

「タキいくか?」

二人連れが「どうする?いくか」

何となく下向いたのが、OKと見た。

「よしいくか」

「二台だからどっちが先か勝負だな?」

「やるか?おお」

二台に分乗して、北へ向かう。

午後十時を廻っている。大通りにクルマはほとんどいない。

酔いもあってかふざけながらアクセルペダルを踏み込む。

対向車もたまに一、二台。

 

前の歩行者・交差する側のクルマに感知して変わる信号機。

昼間でも数えるほど、ましてこの時間ほとんどいない。

百キロは優に超えている。後の車も遅れずに来ている。

「おい、後どうだ?」

「うん?来てる来てる」

 

そのとき、頭の中で何かがはじけた。

なにがあった?

すごい衝撃を感じたが何が起きたのか、何かが起こったのか?

意識が。

 

 

 

 



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。