1941年12月8日に向かって日本が崖っぷちに立っての日米開戦までの巻。
ハインリッヒの法則が出てくる。
会社勤めのころよく研修をうけた。
アメリカの大手損害保険会社の調査部に席をおいていた人が発見した法則。
一つの重大事故の裏には29件の軽微な事故があり、その裏には300のヒヤッとした事象、ハッとした事象がある。
300と29をきっちり調べることで一件」の重大事故を防ぐことが出来る。
著書から・・・
私は、ハインリッヒの法則を、日本の敗戦にあてはめてみたいと、かねがね思っていた。
日本はどこで誤り、どこで失敗をし、どんな敗着を打って最後は三百万人という国民の命を奪い、国土を焦土と化す大災害に至ったのか。
それを探りたいこともあって、この”花へんろ”を書き始めたのである。
しかし、日本人というのは、なんと敗着の研究、失敗の研究を嫌がるのだろうか。
「すんだことはもういい」
「嫌なことを掘りかえしてみて、どうする」
「早く忘れるのが、一番いいんだ・・・・」
戦後六十年の今年(二〇〇六)は、その六十年の検証が行われているが、すべて情緒的な回顧、思い入れたっぷりの回顧がほとんどと言っていい。
辛くても、痛くても、厭な事でも、失敗の研究、敗着の研究をしなければならない。
なんのために―。
さっきも書いたが、二度と同じ失敗と誤ちを繰り返さないためである。
敗着について。
著者は次のように書いている(概略)
将棋や碁の世界では勝負が終わると、直ちに検討会に入る。
第三者をまじえ、どこがどう失敗して負けたのか、の検討に入る。
そして敗着の一手を見つけてそれを確認する。
これが決まらない限りプロの棋士たちは散会しないそうだ。
ここで敗着の言葉が出てくる。
広辞苑によると、囲碁・将棋で負けを決めた一手、とある。
くしくも戦後七十年。
安倍首相は首相談話を出す。
はたして、十年前のような情緒的な回顧や思い入れたっぷりのものとなるか?
はなはだ疑問である。
戦後レジームからの脱却と言い放つ首相だから。
レジームなる言葉も最近調べた。
政治制度[形態]のこと。
残念ながら、著者の思いは遠くなっているようだ。
もはや敗着などどこにも存在しない。