顧客を偽造・盗難キャッシュカード被害から守る預金者保護法が成立した。
被害補償を金融機関に義務付けたのは前進で、来年二月にも施行される。カード被害の急増を受けて金融機関の補償制度を確立するのが狙いだ。新法を契機に金融機関は顧客の信頼回復に努めてもらいたい。
現金自動預払機(ATM)からの預貯金の不正引き出しに、金融機関は原則的に被害を全額補償する。預金者に過失がある場合は金融機関が立証責任を持ち、過失の程度に応じて補償割合を減らす仕組みだ。
ただし預金者に「重過失」があれば補償されない。具体的には▽暗証番号を他人に知らせる▽暗証番号をカードに記す▽カードを安易に他人に渡す―を付帯決議に示した。盗難の場合には補償が75%になる「軽過失」もある。暗証番号を書いたメモをカードと一緒に携帯し盗まれる▽暗証番号を推測される書類と一緒にカードを盗まれる―を例示している。
偽造カードの被害は増える一方だ。このため金融庁は今年二月に被害補償ルールを検討する有識者の研究会を設け、金融機関に補償やICカード化などの対策を求めた。全国銀行協会(全銀協)の調べによると、被害は二〇〇一―〇二年度で計五件(約三千万円)だったが、〇四年度には約四百件(約九億七千万円)に上っているから、当然の措置である。
銀行業界は補償に難色を示していたが、これにかまわず民主党、さらに自民、公明両党も対策チームを発足させて議員立法化を進めた。今日のカード社会を思えば、偽造、そして盗難カードの被害補償の実現は、むしろ遅すぎた感すらある。
全銀協は早ければ九月にも補償を定めた約款のひな型の改定作業を終え、来年の法施行を待たずに自主的に補償を始める方針だ。全銀協がどこまで透明で公平なルールを構築できるかが問われている。
預金者保護法の成立で、日本もやっと欧米並みの補償制度が整ってきた。だが積み残された課題が多いのも事実だ。補償対象をカードに限定し、盗難通帳による引き出し被害の補償は先送りした。被害額は二〇〇〇―〇四年度の累計で百億円を超しているから、放置しておくわけにはいかない。
民主党案では盗難通帳を含めていたが、与党は「印鑑による本人確認という商取引全体に議論が広がり過ぎる」として、今回は対象からはずしている。インターネットを使った不正引き出しを含めて、速やかな見直しが必要だ。
金融機関側には盗難カードでは預貯金を引き出せない「生体認証」などのシステム普及を急いでもらいたい。カード被害に遭ったふりをして補償金をだまし取る「なりすまし」の防止策も課題の一つといえる。
カード被害を補償する新法は預金者にとって心強い。しかし預金者の側にも、生年月日を暗証番号にしないなどカード管理の徹底が必要だ。
愛媛新聞 2005年8月6日
Link