ぼくはサイード
パリ生れのパリ育ち
といっても、「花の都」なんていうイメージとは全然違う、北の方の、地区。
ぼくのようなアラブ系や、アフリカ系が多く住む地域。
ぼくのおじいちゃんは、北アフリカからフランスに来て、ごみ掃除など白人がやりたがらない仕事でこつこつ金を貯めた。
そしてぼくの親父は、その金を資金にして小さな食料品店を立ち上げ、家族を養ってくれた。
移民の暮らしは相変らずよくない。
就職なんかでも、アラブ系の名前というだけで差別される。
ぼくの周りには、サルコジの野郎が言うところの「ごろつき」がいっぱいいる。
親の汚れ仕事を引き継ぐより、ぶらぶらしていたり、もっとひどい奴だと、麻薬の密売人になってるような奴もいる。
ぼくも一歩間違えればそうなっていたかもしれない。
でも、それを救ったのは芸術的な才能。
親父によると、ひいおじいちゃんは有名な工芸職人だったらしい。
隔世遺伝で、その才能がぼくの所に来たようだ。
学校でも、他の教科は全然だめだったけど、美術の時間だけは、先生はいつもぼくの作品をうっとりと見つめてくれた。
おかげで奨学金をたくさんもらい、上級の美術学校へ行く道を開いてくれた。
今ではそこでわけのわからないオブジェの制作に没頭する日々。
さすが文化の国フランス。こんなことが十分できるようなシステムを作ってくれている。
まあ、カエサルの時代から、戦争に負け続けたフランスのことだから、文化を伸ばすしかしょうがなかったらしい。
それはそれで結構な事。
おかげでぼくなんかものうのう生きていける。
たとえナポレオンがたまたま勝っても、後に残るは死体のみ。
今は家を出て、日本からの留学生、ヨウコと一緒に暮らしている。
といっても、彼女のアパルトマンに居候しているような感じ。のら犬と変わらない。
彼女、かわいいけど気は強い。
もともと、日本女性って、「おしとやか」というイメージがあったんだけど、ヨウコを見る限り、そんなことば、どこかに消え去ってしまう。
ヨウコは自分の出身地を「コメディの街」といっていた。
うるさくなければ生きていけないらしい。
そんなある日、ぼくたちの学校に、素晴らしいニュースが飛び込んできた。
パリ市立近代美術館で、みんなの作品を出展できるかもしれない、というのだ。
もちろんパリ市のお墨付きである。
こんなチャンスめったにない。
さすがぼくらの講師はすごい。ゲイで見かけはなよなよしているが、さすが芸術界では顔が利く。
クレイジーでいつもべたべたまとわりついてくるけど、ぼくらに道を開いてくれた。
さすがパリ、市長もゲイの街は違う。
まわりのみんなは準備を始めたが、ぼくは何もいいアイディアが思い浮かばない。
一方ヨウコは着々と準備を進めている。
透明なテントを買ってきて、天井から吊るす。
その中に丸いテーブルを置き、小物を散乱させる。
そして白いタンスを置く。半開きの中からは女の子の下着が半分取び出ている。
それでもまだ物足りないらしい。
パリ生れのパリ育ち
といっても、「花の都」なんていうイメージとは全然違う、北の方の、地区。
ぼくのようなアラブ系や、アフリカ系が多く住む地域。
ぼくのおじいちゃんは、北アフリカからフランスに来て、ごみ掃除など白人がやりたがらない仕事でこつこつ金を貯めた。
そしてぼくの親父は、その金を資金にして小さな食料品店を立ち上げ、家族を養ってくれた。
移民の暮らしは相変らずよくない。
就職なんかでも、アラブ系の名前というだけで差別される。
ぼくの周りには、サルコジの野郎が言うところの「ごろつき」がいっぱいいる。
親の汚れ仕事を引き継ぐより、ぶらぶらしていたり、もっとひどい奴だと、麻薬の密売人になってるような奴もいる。
ぼくも一歩間違えればそうなっていたかもしれない。
でも、それを救ったのは芸術的な才能。
親父によると、ひいおじいちゃんは有名な工芸職人だったらしい。
隔世遺伝で、その才能がぼくの所に来たようだ。
学校でも、他の教科は全然だめだったけど、美術の時間だけは、先生はいつもぼくの作品をうっとりと見つめてくれた。
おかげで奨学金をたくさんもらい、上級の美術学校へ行く道を開いてくれた。
今ではそこでわけのわからないオブジェの制作に没頭する日々。
さすが文化の国フランス。こんなことが十分できるようなシステムを作ってくれている。
まあ、カエサルの時代から、戦争に負け続けたフランスのことだから、文化を伸ばすしかしょうがなかったらしい。
それはそれで結構な事。
おかげでぼくなんかものうのう生きていける。
たとえナポレオンがたまたま勝っても、後に残るは死体のみ。
今は家を出て、日本からの留学生、ヨウコと一緒に暮らしている。
といっても、彼女のアパルトマンに居候しているような感じ。のら犬と変わらない。
彼女、かわいいけど気は強い。
もともと、日本女性って、「おしとやか」というイメージがあったんだけど、ヨウコを見る限り、そんなことば、どこかに消え去ってしまう。
ヨウコは自分の出身地を「コメディの街」といっていた。
うるさくなければ生きていけないらしい。
そんなある日、ぼくたちの学校に、素晴らしいニュースが飛び込んできた。
パリ市立近代美術館で、みんなの作品を出展できるかもしれない、というのだ。
もちろんパリ市のお墨付きである。
こんなチャンスめったにない。
さすがぼくらの講師はすごい。ゲイで見かけはなよなよしているが、さすが芸術界では顔が利く。
クレイジーでいつもべたべたまとわりついてくるけど、ぼくらに道を開いてくれた。
さすがパリ、市長もゲイの街は違う。
まわりのみんなは準備を始めたが、ぼくは何もいいアイディアが思い浮かばない。
一方ヨウコは着々と準備を進めている。
透明なテントを買ってきて、天井から吊るす。
その中に丸いテーブルを置き、小物を散乱させる。
そして白いタンスを置く。半開きの中からは女の子の下着が半分取び出ている。
それでもまだ物足りないらしい。
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