翌日、午後3時、ヨウコに誘われて学校を出る。
彼女と一緒に、カルチェ・ラタンのサン・ミッシェル通りの緩やかな坂道を下り、セーヌ方面に向かう。
シテ島の手前で、左に折れ曲がる。どうも警視庁のそばには近寄る気がしない。
ブキニストのそばを通りながら、一番古いくせに、名前だけはポン・ヌフ(新しい橋)という橋にたどりつく。
国語の授業で習った、昔のパリ市民が残したフレーズを思い出す。
「パリのどこどこの場所は別のどこどこの場所から遠いのかと聞く農民たちに、パパは答える『ふん、川を渡るだけだよ』」
ぼくらも川を渡り、シテ島の端っこを抜ける。バトー乗り場の近くではパントマイムをしている奴がいた。
結局地下街というには中途半端な場所、フォーロム・デ・アールにたどりつく。そこのスポーツショップが彼女の目当てだったようだ。
そこで彼女は陸上競技用のブルマと、真っ白なトレーニング用Tシャツを買った。
下宿に戻り、彼女はそれらを身に着ける。
ブルマには、なぜかモコモコと余計な布を入れる
そして頭を細長い布でしばる。
そんな彼女の姿を見て「それって何?」思わず聞いてしまう。
「日本の学校の原風景なの」と真剣な表情でヨウコは答える。
訳がわからない。
そんなふざけた格好にもかかわらず、真面目な顔でぼくを見て、
「そこのビデオで私を撮って」と真剣に言われる。
しかたなく、カメラを構え、彼女に向ける。
スイッチを入れると、彼女は一生懸命、デンマーク体操(のようなもの)をしはじめた。
延々と、手を振ったり、腰をひねったり、足踏みをしたりしている。
さんざん動いたあと、だめだめだめと手を振りながら、カメラの枠から外れていく。
さすがに疲れたらしい。
ビデオを再生しながら、彼女に尋ねる。
「これって何」
「日本では、毎朝こんな体操をやっているの。私も小さい頃は、夏休みでもちゃんと早起きをして、参加してたの」
今の寝ぼすけな彼女からは想像もつかない。
また、いくら現代芸術といっても、なぜこんな体操なのかわからない。
「これこそ日本の原風景、朝の公園の一場面なの」と彼女
ふーん、またゲンフーケーかよ。
ヨウコが着々と準備を進めている一方、自分は何も思い浮かばない。
このままではさすがにまずい。予備審査にも間に合わなくなってしまう。せっかくのチャンスが台無しだ。
何かデッカイものを表現したいな、と思うが、いいアイディアが出てこない。
考えていても仕方がない。パリ市立近代美術館に下見に行ってみよう。
ヨウコと学食で昼食をとった後、二人でセーヌ沿いにひたすら下っていく。結構距離はあるが、何かヒントを見つけないといけない。歩いていく。
といっても、途中川に浮かぶ船のカフェで休みながらだけど。
ポンデザールそばの船上カフェでだべっていると、ちょうど橋の上でモデルが撮影されているのが見える。
歩行専用の橋で、背景がルーブルや学士院だったりして、撮影にはちょうどいい場所だ。
反射板がピカピカ光って眩しい。そこでポーズを決めるモデルたち。
ふん、と眺めるヨウコ。現代芸術家の目は厳しい。私の体操のほうが芸術的でしょ、といわんばかりだ。
何も言えない。
彼女と一緒に、カルチェ・ラタンのサン・ミッシェル通りの緩やかな坂道を下り、セーヌ方面に向かう。
シテ島の手前で、左に折れ曲がる。どうも警視庁のそばには近寄る気がしない。
ブキニストのそばを通りながら、一番古いくせに、名前だけはポン・ヌフ(新しい橋)という橋にたどりつく。
国語の授業で習った、昔のパリ市民が残したフレーズを思い出す。
「パリのどこどこの場所は別のどこどこの場所から遠いのかと聞く農民たちに、パパは答える『ふん、川を渡るだけだよ』」
ぼくらも川を渡り、シテ島の端っこを抜ける。バトー乗り場の近くではパントマイムをしている奴がいた。
結局地下街というには中途半端な場所、フォーロム・デ・アールにたどりつく。そこのスポーツショップが彼女の目当てだったようだ。
そこで彼女は陸上競技用のブルマと、真っ白なトレーニング用Tシャツを買った。
下宿に戻り、彼女はそれらを身に着ける。
ブルマには、なぜかモコモコと余計な布を入れる
そして頭を細長い布でしばる。
そんな彼女の姿を見て「それって何?」思わず聞いてしまう。
「日本の学校の原風景なの」と真剣な表情でヨウコは答える。
訳がわからない。
そんなふざけた格好にもかかわらず、真面目な顔でぼくを見て、
「そこのビデオで私を撮って」と真剣に言われる。
しかたなく、カメラを構え、彼女に向ける。
スイッチを入れると、彼女は一生懸命、デンマーク体操(のようなもの)をしはじめた。
延々と、手を振ったり、腰をひねったり、足踏みをしたりしている。
さんざん動いたあと、だめだめだめと手を振りながら、カメラの枠から外れていく。
さすがに疲れたらしい。
ビデオを再生しながら、彼女に尋ねる。
「これって何」
「日本では、毎朝こんな体操をやっているの。私も小さい頃は、夏休みでもちゃんと早起きをして、参加してたの」
今の寝ぼすけな彼女からは想像もつかない。
また、いくら現代芸術といっても、なぜこんな体操なのかわからない。
「これこそ日本の原風景、朝の公園の一場面なの」と彼女
ふーん、またゲンフーケーかよ。
ヨウコが着々と準備を進めている一方、自分は何も思い浮かばない。
このままではさすがにまずい。予備審査にも間に合わなくなってしまう。せっかくのチャンスが台無しだ。
何かデッカイものを表現したいな、と思うが、いいアイディアが出てこない。
考えていても仕方がない。パリ市立近代美術館に下見に行ってみよう。
ヨウコと学食で昼食をとった後、二人でセーヌ沿いにひたすら下っていく。結構距離はあるが、何かヒントを見つけないといけない。歩いていく。
といっても、途中川に浮かぶ船のカフェで休みながらだけど。
ポンデザールそばの船上カフェでだべっていると、ちょうど橋の上でモデルが撮影されているのが見える。
歩行専用の橋で、背景がルーブルや学士院だったりして、撮影にはちょうどいい場所だ。
反射板がピカピカ光って眩しい。そこでポーズを決めるモデルたち。
ふん、と眺めるヨウコ。現代芸術家の目は厳しい。私の体操のほうが芸術的でしょ、といわんばかりだ。
何も言えない。
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