良作時代劇『あかね空』(2007年10本目)

   
平成の時代小説の第一人者といわれる山本一力の直木賞受賞作品の映画化。


オレは邦画の時代劇というと
戦国時代や大名を描いた歴史物や
いわゆる『チャンバラ』の剣豪モノというイメージが強い。

だからこの映画のような江戸町人の生活を中心に描いた映画は
とても新鮮だった。

前半の永吉とおふみ、それをとりまく長屋の人々、
同業のライバル、相州屋の夫婦が織り成す人情話はベタだが
ベテランの芸達者たちの演技で質の高い芝居に仕上がっていて
とても楽しめた。

しかし、話が一気に二人の18年後を描いた後半へ展開していくのは
唐突すぎて面喰らった。
あれだけ仲の良かった永吉とおふみの夫婦が
長男の栄太郎のことで夫婦仲も冷え切っているのには
それ以上に驚いた。

あとでおふみが栄太郎を溺愛するのは、
自分の不注意で栄太郎に火傷を負わせ
体に傷跡を残したことに対する負い目と
その息子への不憫さからだとわかるが、
ここはあまり凝らずに、シンプルに時系列で
話を展開した方がよりストーリーが活きたのではないだろうか?

非常に長い時間の話を2時間に収めるのだから、
一気に18年後に話がとぶのは仕方がないと思う。
だからこそ、その一気に飛ばした部分の出来事はなるべく
わかりやすく進めた方が良かった。

そんな注文はあるけど、
永吉を生き別れた実の息子のように想い応援する
岩下志麻演じる相州屋の女将さんとその永吉の作った店の危機を救うのが
実の息子の傳蔵親分というこの話の一番の見所・・・・
それを内野聖陽の一人二役で芝居にしたアイディアは実に素晴らしいと思った。

夫婦愛と親子愛そして傳蔵の数奇な運命・・・
映画全体のまとまりという点では今一歩だったし、
名画や秀作ではないかもしれない。
でもオレには観終わった後に
心にしっとりとした余韻が残るよい映画だった。




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