スローなブギにしてくれ

これを最後にしばらく片岡ネタは休んで、次は片岡以降に読みあさった本の話を書こうかと思っています。
で最後は『スローなブギにしてくれ』から・・・・・


三日後、ゴローがそのスナックのカウンターでコークを飲んでいた。
店が開いたばかりなので、ほかに客はいず、バーテンと二人きりだった。
ドアが開き、二人が首を向けると、さち乃が入ってきた。
決まり悪そうにちょっと微笑してゴローのところまで歩いてきて、となりの椅子にすわった。
さち乃は、じっとゴローの目を見た。
「ニャーン」と長く引っ張って、ゴローは猫の声をまねた。と同時に、さち乃の目からぽろぽろと涙がこぼれ、頬を伝わり、スカートに落ちた。
「帰ってきたのいさせて」
口を「へ」の字に曲げ、さらに泣きながら、さち乃が言った。
ゴローは黙って笑っていた。
すぐにさち乃は化粧室に駆け込んだ。
カウンターから出てきたバーテンが、ゴローに体をつけんばかりにして、声をひそめた。
「詳しくはしらねぇけど、初めて捨てた女がやがて帰ってきて、ぽろぽろ泣きながらゴローさんいさせてくださいなんざあ、できすぎた話しじゃねぇか」
ゴローはただ黙っていた。
「おまえの人生これからだぜ。記念に音楽を贈ってやるよ。なにがいい?」
バーテンは、店の奥のジュークボックスを顎でしゃくった。
バーテンの顔をまっすぐ見たゴローは、声がふるえなければいいがと思いながら、
「スローなブギにしてくれ」
とゆっくり言った。
「なにを言いやがる。それでもセリフのつもりかよ」
そうは言いはしながらも、バーテンは首をふりつつ、ジュークボックスに歩いていった。スローなブギが、鳴りはじめた。
・・・
学校に行かずにホンダCB500で走ることでしか生の実感を感じない少年と仔猫に切ない愛情を注ぐ少女との出会いから始まる二人のストーリー「スローなブギにしてくれ」のエンディング部分。
実は昔からずっと気になっていたことがある。
それはここのラストシーンで流れる『スローなブギ』ってどんな曲なのだろう?
映画で流れた『ウォンチュー・オレの肩を抱きしーめてくれ~♪』という南佳孝の曲は残念ながら原作を読んでいる時には違和感が多く・・どうにもその気分ではない。
自分の頭の中ではローリングストーンズの"Time is on my side"が流れてくる。
『Time is on my side, yes it is
Time is on my side, yes it is

Now you always say that you want to be free

But you'll come runnin' back

(Bet you will baby)

You'll come runnin' back

(Like I said so many times before)

You'll come runnin' back to me』・・直訳すれば「時間はいつもボクの味方。やがて彼女は戻ってくるだろう』というような歌詞でこのラストシーンにもあっている。・・と思うのだが。
でもストーンズはイギリスだからできればやっぱりアメリカンな香りがする曲の方が雰囲気なのだろうがピッタリくる曲をまだ自分は知らない。

果たしてこの本を読んだ人は頭の中でははどんな曲をイメージしたのだろうか?
また当の片岡自身はどんな曲を思って書いたのだろう。


(写真は多賀城のポリテクの通学路の途中にある桜木飲食街の『チョッパー』という店。壁画と入口上のネオンサインが気分です)


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