Dr. Jason's blog

IT, Engineering, Energy, Environment and Management

Jason's Library くたばれ悲観論!

2005-07-17 | Business
  伊藤洋一氏 の名前をみても,ピンと来ない人も,日曜日の夜, フジテレビ系列の「情報ライブ EZ!TV」で切れ味の良いコメントをいう「髭のキャスター」言えば判るだろうか?.
 伊藤氏は,あまり企業人のように見えないが,住信基礎研究所 という信託銀行系シンクタンクの主席研究員という肩書きのエコノミストであり,国際経済・金融・マーケット等がご専門である.
 これまでも,テレビのコメントやWebサイトの記事をみて,「波長があうなぁ」と感じていたが,今回初めて,伊藤氏の著作を読んで,その意を強くした.

 本書は,
  日本の技術と企業の強み
  中国,韓国,インドの実態や弱点
  日本の文化と経済
 について,一歩さがって,冷静に分析して,日本で蔓延している「悲観論」へのアンチテーゼとしてまとめたものである.

 GNPについて,人口一人当たりの数字に着目すべきことを強調している点は, 7/14 7/3 の blog の記事での私の視点と共通するところがあると思う.

 また,将来に関して,エネルギー問題と,教育についての重視している点も,普段からの私のスタンスと一致している.しかし,もう少し掘り下げた記述を望みたいところだ.いっそうのこと,エネルギー,教育を中心にすえた続編を書かれてはどうだろうか?
 

 最近の日本悲観論に,あきあきしているすべての人にオススメの一冊.


日本力 アジアを引っぱる経済・欧米が憧れる文化

講談社

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ちゃんとした日本語をあやつるアメリカ生まれの詩人

2005-07-17 | Weblog
 先日,調べものをしていて, 小学館のWeb日本語 を訪れた.そのとき,初めて アーサー・ビナード氏の「アーサーの日本語つれづれ草」 を読んだ.

 米国のミシガン生まれの普通の米国人で,日本人との混血だとか,子供のころから日本に住んでいたというわけでもなく,大学の卒論で日本語に接したというビナード氏は,驚くほどちゃんとした日本語文章を書く.イタリア語もできるようだが,言葉に関しては「特別な才能」に恵まれているようだ.
 文章だけみると,「とても英語が達者な日本人」が書いたと信じても不思議ではない.
 


 休日に読むエッセイとして,だれにでもオススメできる一冊.


日本語ぽこりぽこり

小学館

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人間の脳の並列処理の限界と自動車の交通事故

2005-07-17 | Transportation
 北大の某先生による 5号館のつぶやき blog の 7/15 の記事 は「ハンズフリーでも携帯で事故4倍増」というテーマだった.この記事から,以下の, 米道路安全保険協会(IIHS) の研究の概要について知った.

 「運転中に携帯電話を使用すると、負傷して病院へ運ばれるほどの衝突事故を起こす確率が4倍に高まる――米道路安全保険協会(IIHS)が12日(米国時間)、このような調査結果を発表した。」
( Hot Wired 7/15, Excite エキサイト ニュース. この調査結果に関するIIHSのニュースリリースの原文ははこちら. 関連する詳細な記事は IIHS Status Report July 16 2005 (英文) をダウンロード.調査結果の British Medical Journal に発表された論文(英文) はこちらをダウンロード. )


エキサイト ニュースから,引用すると,以下のような,非常に明解な方法で調査されている.
--------
 研究者たちは、携帯電話の通話記録を用い、実際に衝突事故を起こす前の10分間における携帯電話の使用と、同じドライバーによる1週間前の運転の際の携帯電話の使用状況とを比較した。

 調査対象となったのは、パース(オーストラリア、ウェスタンオーストラリア州)の、携帯電話を所有しているか使用している456人のドライバーで、2002年4月~2004年7月に自動車で衝突事故を起こして救急処置室に運ばれたことがある人々だ。

 事故発生前10分間の各ドライバーの携帯電話の使用状況と、事故が起こらなかった前週の同時刻の状況とを比較した。この調査では、各ドライバーが事実上、それぞれの対照群となっている。

 IIHSはこの調査を米国で実施しようとしたが、電話会社から通話記録を入手できなかったため断念した。通話記録が入手できたウェスタンオーストラリア州では、2001年以降、携帯電話を手にした運転が禁止されている。
----------

 場所が,オーストラリアに限られていること,サンプルが 456人であることで,データがやや偏っているという指摘はあると思う.


 人間の「見る,聴く,話す」という活動の間には,脳の情報処理において相互作用があることは,心理学,認知科学,脳科学等の分野では知られている. 特に,「話す」という活動は,一般に考えられている以上に,脳の中で色々な情報処理が行われる.「話す」ことは,脳の言語野だけでなく,運動に関わる部分も使うのである.また,「見る,聴く,話す」という活動の相互作用は,手足の動作にも影響していることも,生理学,スポーツ科学の分野では知られている.
 つまり,脳における「情報処理の並列性」には,ある種の「限界」あるいは「弱点」があると考えられている.

 今回のIIHSの研究の結果は,音楽をBGMとして聞き流すことは運転動作には大した影響がなくても,電話等で他者と何かの話題について「聴く,話す」という活動が,脳の処理において,運転動作に大きな影響(反応が遅れる,動作が不正確になる等,事故の確率を高くするような影響)可能性があるということを,間接的に示していると思う.

 上記の仮説にもとづいて,ある種の会話==通話が,運動の反射や正確さに与える影響を定量的にテストする実験をすると,もっと色々なことが判るだろう.
 (自動車の運転よりも航空機の操縦の方が影響が重大なので,もしかすると,米国の空軍,海軍では,既にそのような定量的なデータを持っているのではないかと思う.)


 結局のところ,人間の脳は,「話しながら,他の動作を充分に俊敏に行うようには設計されていない.」と考えるべきなのではないだろうか?

  
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EUの抱える問題

2005-07-15 | Weblog
  7/14 の記事 に,ドイツの保守的傾向のと環境問題への対策への国民の声等について,経済の視点から意見を述べた.

  SAPIO 7/27 号 pp.71 - 89 には,「ユーロの幻想から目覚めよ」題された,EU特集がある.現在のドイツをとりまく問題や,EU全体の問題についてとても参考になった.

 簡単にいえば,
  「EU東方拡大」:旧東欧諸国,旧ソ連諸国のEU加盟 -> 安い労働力
  「イスラム教」:トルコなどのイスラム教国加盟候補
  「主要国指導者の黄昏」:ドイツ,フランス,イギリスの指導者の任期と影響力の低下
  「歴史と文化の軋轢」:第一次大戦,第二次大戦等の経緯,終わり方
 などの,問題がからみあっているという.

 欧州合衆国の理想への道は遠い.


 SAPIOは,やや偏った意見の記事もあるが,日本の新聞では判らない色々な記事がある.

 中学校,高校の社会科でも,ぜひこのような問題をちゃんと教えてほしいものだ.
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環境対策は道楽ではない! 先進国の責任

2005-07-14 | Environment
  ニューズウィーク日本語版 の2005.7.20 号 pp.38-39 に『「緑の党」のブルーな未来』と題した,最近のドイツにおける「緑の党」の人気低落についての記事があった.

 その中に
 ------
 ...自然保護や平和主義,フェミニズムといった緑の党の伝統的な争点のは,
 多くの有権者から道楽の一種とみなされている.「仕事がない人間は,オゾン
 ホールのことなんか気にしていられない」...
 ------
 という気になる文章があった.

 確かに,最近,ドイツでは,高い失業率(12%)と経済の不振が政治問題となっている.
 しかし,それでも,2002年の統計では,ドイツの国民総所得(GNI)は,1876320百万ドルであり,依然としてヨーロッパで一番である.世界でも,米国,日本につぐ値である.また,ドイツでは失業しても,餓えて死んだり,飲み水に困ったりはしない.


ヨーロッパのGNI 1000億ドルクラブ  (2002年,百万ドル)

 ドイツ  1876320
 イギリス 1510771
 フランス 1362007
 イタリア 1100713

メンバーは,たった4カ国しかない.

ちなみに,

 米国   10207039
 日本   4323919
 中国   1234157

つまり,日本は好況ではないが,イギリス,フランス,イタリアの3カ国の合計よりもGNIが多いということである.


ヨーロッパの一人当たりGNI 2万ドルクラブ (2002年, ドル)

 ルクセンブルグ 39470
 ノルウェー   38730
 スイス     36170
 デンマーク   30260
 アイスランド  27960
 スウェーデン  25970
 イギリス    25510
 フィンランド  23890
 オーストリア  23860
 オランダ    23390
 アイルランド  23030
 ベルギー    22940
 ドイツ     22740
 フランス    22240

一人当たりのGNIは,人口が少ない小国の方が総じて高めであることがわかる.
ちなみに,
 イタリア    19080
であり,2002年度は,2万ドルクラブからは落選であった.

また,
 米国      35400
 日本      34010
 カナダ     22390
 シンガポール  20690
 オーストラリア 19530
 台湾      12858
 韓国       9930
 ブラジル     2830
 ロシア      2130
 中国       960
 インド      470

 世界の大半の国は,一人あたりのGNIは,5000ドル以下である.
ドイツは,一人あたりの GNIで,ヨーロッパの2万ドルクラブの中では,低位ではあるが,世界的にみれば上位に位置している.このような国で,自然保護や環境対策が道楽とみなされるというのは,少々狭いものの見方であると言わざるを得ない.

 米国,日本,EUのGNI上位の先進国こそが,エネルギー対策や環境対策の新技術を開発して,それを発展途上国に提供していかなければならないはずだ.
 

 中国の物価は日本の1/20~1/30といわれているが,一人あたりのGNIは1/35 以下である.(2002年の統計) ここから,中国やインドが先進国の本当の仲間に入るのはそう簡単ではないことがわかる.

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Jason's Library ソフトウェアの設計表現方式 必読!

2005-07-14 | Software
 本日,Amazon.co.jp から,「UML モデリングのエッセンス 第3版」が届く.
 全くお恥ずかしいことに,つい先週まで,第3版の邦訳が 6月に出版されていたことに,全く気がつかなかった.
 本書は, Unified Modeling Language : UML の基礎的解説書の「定本」である.

  Unified Modeling Language : UML は,1997年に登場した,ソフトウェアの構想や設計を,普通の人がみたらポンチ絵に見えるような図で,表現する記法である.Language と呼ばれのは,特定の図に意味があり,図の書き方に文法が定められているからである.1980年代から1990年代始めにかけて,色々な会社や研究機関が,それぞれ独自の設計記述法を発案/提唱していたが,それらのうちの有力な方式の良いところをあつめて,統合した形で設計されているので,Unified と呼ばれている.
 UML は,現在 Object Management Group : OMG という国際的な標準化団体で,策定,管理されている.

 建築にしても,機械にしても,電気回路にしても,その構想や設計を表現する方法==「設計図」の書き方/読み方が確立されており,それは工学的に,国際的に標準化されている.
 しかし,ソフトウェアの世界では長いあいだ,ブログラミング言語による記述以外で,ソフトウェアの構想や設計を表現する標準化された方法はなく,それは,長い間ソフトウェア工学の最大の課題の一つだった.UML は,(たとえ,それがまだ多くの問題を含んでいても)その課題への現時点での最も有力な回答の一つである.
 また,UMLはソフトウェアの設計だけでなく,ビジネス・プロセスあるいはビジネス・モデルの構想や設計の表記にも使用できる.


 ビジネス,情報システム,ソフトウェアの設計にかかわるすべての人の必読の一冊.


 

UML モデリングのエッセンス 第3版

翔泳社

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異分野の専門家との交流と「考えあう技術」

2005-07-11 | Weblog
 私は,自分の普段の守備範囲外,専門外分野の専門家の話しを直接聞いたりするのがとても好きだ.話しだけでなく,自分の知らないあるいはあまり詳しくない分野について,その分野の第一人者の書いた解説書等を紹介してもらうと,とて嬉しい.
 それは,学術的専門分野と,生業としての専門分野が異なるという,学際的な生活を20年も続けてきていることも影響しているかもしれない.


 世間には,自分の知らないあるいはあまり詳しくない専門領域の専門家の話しを聞くという場合に,極端に言えば二種類のパターンの人がいる:

 A) 異分野の専門家から,自分の知らない分野の生の知識等が得られて,嬉しい,楽しい.

 B)自分の知らないこと専門でないことを異分野の専門家から聞くと,相手が偉そうにしていると感じる,あるいは,自分は無知だといわれているように感じて,不快だ.

 私は,専門家,特に知的職業の専門家は,その業界や職位に関わらず、基本的に A)のタイプだと認識していた.「新しいことを,見聞きして吸収するのが,嬉しい,楽しい」というのが,専門知識で勝負している人の本質だと思っているからだ.
 私にとっては,「異分野の専門家との交流」は,「学び」そのものである.


 たまたま最近,長年専門家としてやってきているような人,工学博士の学位をもっているような人で,B) のタイプの人に遭遇する機会を得た.
 この B) のタイプの人の場合,ごく一般に広く知られている事実や考え方を確認のために淡々と説明されたような場合でも,「君はこんなことも知らないのか」と言われているように感じるらしい.
 
 何かの議論の中で,議論の前提となるような,事実や考え方を論理的に列挙するような説明を,そのような事実や考えかたたあることを,確認あるいは認識してもらいたいために説明をすることがある.
 私の限られた経験の範囲でも,特定の分野の専門家ではないような人の場合,あるいは,いわゆる文系の大学教育だけをうけている人の場合,このような説明を「私が知らなこと==無知であることを指摘するために説明してる」「私をばかにしている」と被害妄想的に取る人はいる.
 しかし,今回のようなケースは,非専門家,文化系の例とは違う.理工系の専門家の場合である.これは,単に「プライドが高い」というようなこととは,少し違うように思われる.むしろ,なにかのトラウマやコンプレックスの現れかもしれない.

 日本のにおいては,業界によっては,強い封建的な階層構造がのこっている.そのような業界では,普段は必ず,
   発注元:出入り業者
   上司:部下
   先輩:後輩
 というような,人間関係の上での力学の場がコミュニケーションの前提となっている.また「年功序列」も根強い.しかし,長くこのような場の中で活動していると,このような階層的な力学場が成り立たない,一般の世界でのコミュニケーションでは「何は普通か」が判らないということもあるだろう.そのことも,上記の B) のタイプの人の考え方に影響があるかもしれないと感じた.

 * 上記の記述については,是非,昨日の記事もあわせてご覧ください.


 以下の「考えあう技術」は,「知識の共有」「教えあう」「学びあう」ということについて,学校の中だけでなく広く社会の視点で,議論している.非常に興味深い内容である.

 教育だけでなく,広い意味での,学び,知識社会に興味のある方にオススメの一冊.



考えあう技術

筑摩書房

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この違和感は何だろう...

2005-07-10 | Weblog
 最近,ある団体での委員会的活動にかかわるやりとりで,色々と勉強になることがあった.

 
 [会議と実際の仕事,参加の立場]
 まず,委員会活動のあり方について.委員会では「会議で色々相談したい」という面もたしかにあるが,各委員に何らかの具体的な仕事をアサインした場合には,(時間的なリソースが限られている場合)どちらかと言えば,「会議」よりも「アサインされた仕事==作業を実際に行う」ということがより優先であると思う.なぜなら,会議は他にも沢山出席者がおり私が欠席することの損失の大半は私の意見が反映されないという部分だけだが,アサインされた仕事は私がやらなければ他の人は(特に補助や後任としてアサインされなければ)やらないことは自明である.(少なくとも,私にとっては,このことは「自明」である)

 団体の性格や委員会の内容によっては,各委員は勤務先の体面,名誉,社会的責任,間接的な利益等を担っている場合がある.例えば,勤務先が,地元の大企業や,地元の教育機関だったりする場合には,明らかに,委員の活動に勤務先の看板が否応無しについてくる.そのような場合には,会議への参加そのものは,(その人ではなく,その人が所属する勤務先とともに)非常に重要な意味をもっているだろう.
 しかし,大半の委員がそうであっても,委員によっては,その団体や委員会の活動が,完全に個人的なものである場合もある.そのような場合には,私の意見が反映されないことは,私だけの個人的な問題に近いだろう.この立場の違いについて,理解できない,もしくは,無視する人もいる.

 このような状況においては,委員会活動の委員としての,役割あるいは貢献について
   会議への参加
   委員としてアサインされた仕事==作業の実行
 とは,別々に評価されるべきものであると,私は考えているが,人によっては,そうでないと考えている人もいる.
 会議に出席せず,実際の仕事も何もアサインされていない人も沢山いる状態で,私が委員としてアサインされた仕事については,少しづつではあっても,目に見える形で実行されているのに,それには言及せず,「(貴方は会議に)参加されていないから...」というフレーズを使う人を見ていさかか驚いた.


 [忙しい]
 このような社会情勢であるので,大都市近郊では,程度の差はあれ「忙しい」と感じている人は少なくないはずだ.昔から「貧乏暇なし」ともいう.
 人によって,業界によって,実際に何時間働くと「忙しい」と感じるかは大分差があると思う.「忙しい」という言葉は,本来,相対的,主観的なものであるはずだ.
 一日に50通しかメールを受け取らないには一日に200通以上メールがくる人の忙しさは理解できないかもしれないし,残業しても一月200-250時間までしか働かない人には一ヶ月で350時間以上働く人の忙しさは想像できないかもしれない.

 そいういう中で,
  『「忙しい」というのは,「私は,貴方よりも重要な仕事をしているので忙しい」と聞こえる,よって,失礼である.』といった人もいる.
 これは,場合によってはもちろん一理あるだろう.

 しかし,一般的には,ざっと考えても,様々なパターンや意味があると思う.
  単に忙しいといいたい (口癖敵な発言)
  (同僚,同業者への牽制として)私は忙しといっておきたい
  (自分の能力が相対的に足りないので)忙しい
  たまたま(今は)忙しい
  (定常的に)いつも忙し
  私の業界は(貴方の業界より)忙しい
  私の役職は(貴方の役職より)忙しい
  私は(デマンドが高い仕事をしているので)忙しい
 
 このような,言葉の意味や状況の多様性は斟酌せずに,ただ
  「私は忙しいので...」
 と言われたり,書かれたりすると
  「私は貴方よりも重要な仕事をしていて,貴方よりも忙しいので...」
 と読めてしまうというのは,とても違和感を感じる.何かコンプレックスやトラウマがあるのだろうか?
  

 [事前の打診]
 ある種の委員会では,委員に,色々な役割,役職等を割り振ることがある.役職の中には,形式的なもの,実務的なもの,名誉的なもの,様々である.
 一般に,ある会議の席で,ある役職なり委員の「候補に推挙したい」「XXXX委員一覧案に名前を載せたい」などという場合には,事前に(その会議の前に),「貴方を,XXXX委員の候補としたいが,いかがか?」というような,打診が,メールや電話であるのが,普通であると考えている.たとえ,その会議が,準備会議的なものであっても,何らかの「事前の打診」があるのが,普通だと考えている.(少なくとも,私のまわりで活動している色々な団体では,そのようにしている.逆に,準備会議をメール上の討論ですませることはある.)
 しかし,これも,「こっちだって忙しいだから,そんなことしてられないでしょう~」ですませてしまう人もいる.同じ勤務先の上司と部下,先輩後輩,同じ出身大学の先輩後輩,仕事上の貸し等,しがらみがある場合には,「多分OKしてもらえると思った」ということで「事前の打診」を省略するということがあるのは理解できるが,そのような関係が一切ない,委員相手の場合には,やはり,予備会議の場合でも,「事前の打診」は礼儀だと思うが,そうは思わない人もいる.


 [前提の共有,異なる意見の説明]
 委員会の活動の中で,意見の相違あるいは,意見のすれ違いがあるときに,私は,前提なり,スタンスなりもふくめて,こちらの趣旨を説明して理解がされるように努力する.つまり,「前提を共有」することが重要であるという,考え方で行動している.
 しかし,ある人に,色々なやり取りの過程で「私の立場あるいは主張について,その前提がそちらに通じていないと思う.前提やスタンスは重要なので,それを改めて説明しようとしている.というのは,ご理解いただけますね?」というと,
 前提の説明などはどうでもいい
 そんな議論は不毛だ
 落としどころが聞きたい
 結論がききたい
と言われたので,非常に驚いた.

 確かに,同じ職場の,上司と部下のような関係で,上司が「結論が聞きたい」ということはありうる.また,判断の単純化/高速化ということが,ある場面で最も重要であるということもあろう.
 しかし,同じ勤務先の中での職位などの関係が無い場合に,つまり,特別な上下関係や貸し借りがない場合の,少なくとも,私のまわりで活動している人々(企業人も,大学人ともに)で,このようなことをいう人はいない.今回初めて遭遇した.
 この人が,会社の中でどのような立場で,どのような業務をされているのかは,実際には全くわからない.しかし,なにかの議論について,自分の判断の単純化あるいは高速化を強く指向して,表面的な結論だけを求め「その前提となる事項の共有」を軽視するスタンスは,今日的な「組織における知識共有」「組織における学習」「組織における知的生産」などの最新の知見からは,だいぶ違和感がある.

 もしかすると,本質的に,「意見の多様性」そのものを認められないということか?


 ご意見,コメント,ご遠慮なくどうぞ!
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人間におけるコミュニケーションの意味 その3

2005-07-06 | Education
  6/27 , 6/30 , 7/2 の blog で,紹介した,東大の 福島助教授 による,エッセイ集.

 89年から95年までに書かれたものなので,やや古い内容,あるいは,ややくどい表現などもある.しかし,健常者は決して気づくことができない,人間のコミュニケーションの本質,重要性について,示唆に富んだ内容である.
 盲聾者の国際シンポジウムに関する記述を読むと,まさに,これは想像を絶する「多重異文化コミュニケーション」であると感じた.

 カバーの内側に,小松左京氏のメッセージがあるが,その最後の文には,以下のようにある.
 『彼との会合を通じて,私は,逆境にも負けない,「人間の魂」のすばらしさ,美しさ,力強さ,想像力というもののすてきな力をあらためて感じさせられ,年甲斐もなく泣いてしまった.』

 障害者のコミュニケーションや教育に興味のある方はもちろん,広く,人間のコミュニケーションの意味に,興味のあるすべての方にオススメしたい.



渡辺荘の宇宙人―指点字で交信する日々

素朴社

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*表紙の画像が出ないのが残念ですね.
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Jason's Library 物理学の復習

2005-07-05 | Education
 現役高校教師のkkhrpen さんこと,ほり先生の 「考えるのが好きだった」blog 7/1 の記事に「物理ができない理由」という話しが出ている.

「高校の時、物理ができなかったから理系に行くのを止めた。力学が分からないのだからお話にならない。それがずっとトラウマ?になって、でも、養老先生から、物理は人間が世界をどう見るかという世界観の一つだと聞いて(読んで)、目から鱗でもあり、(自分が物理ができなかったからこそかもしれないが、)物理学には以前から並々ならぬ関心を持っている。で、また、自分が何故あれほど物理ができなかったのか、知りたい気持ちもある。」とある.

 私は,工学屋でプロの物理の先生ではないが,力学や物理学というのは,数式よりも,原理や原則の意味やイメージの理解がより,重要だと思う.

 そううい意味で,次に上げる2つは,プロの物理の先生による本だが,物理学の歴史,人物,発想,発見,原理等の説明に重点がおかれている.
 「こわくない物理」は,縦書きで,科学思想史的よみものとしても読める.参考図書の一覧が詳しいので,次の段階の勉強の手引きにも好適である.
 「図解雑学 重力と一般相対性理論」は,文章1ページ図解1ページという構成であり,直感的なイメージがつかみやすい.
 
 物理を復習したい人への,第一歩として,推薦したい.
# いわゆる,文系の人でも楽し見ながら読み進めると思います.


こわくない物理学―物質・宇宙・生命

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*文庫本もあります.ISBN4-10-118941-2


図解雑学 重力と一般相対性理論

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*重力についての直感的な説明は,pp.110-111, p.119, p.123, p.135 などにあります.
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日本の文系問題 理系音痴「政経バカ」の始まり?

2005-07-04 | Education
 私は,色々なところで,日本の中枢にいる人が所謂文系にかたよっていて,理学的,工学的な考え方がうまく活用されていないことを危惧している.特に,官僚や政治家の場合は,この弊害が顕著であると常々考えている.


 そんなところで,たまたま入手した,板坂 元 先生の「知的仕事の技術 遊びの技術」を読んでいたら,「考える - 発想術 頭は逆の使い方が発見を生む」という章で,面白い記述があった.

 一つは,ロッキード事件の際の渡部昇一先生と,立花 隆 先生の議論のすれ違いについて述べ,渡部先生の「定性的視点による過度の一般化」「定量的考察の欠如」を指摘していた.
 板坂先生自身は,江戸文学がご専門の学者なので,生粋の文系であると思われるが,長くケンブリッジやハーバードで講じておられたので,アングロサクソン的な科学的発想がより強く染み付いていたのだろうか?渡部先生も合理主義のドイツで学位をとられていることも考え合わせると,この立場の違いはとても興味深い.

 さらに,もう一つは,明治の宰相,伊藤博文 による「教育義」という論文についての記述である.これは,明治天皇に,伊藤博文が,「日本の高等教育はいかにあるべきか」を上申したものであるらしい.
 『その中で,伊藤は,「学生には,政論などはいわせる必要はなく,「百科の学」をやらせろといっている.』らしい.板坂先生は,これが「専門バカ」輩出の始めであると,いう意味のことを書かれている.

 私は,このことが,「専門バカ」だけではなく,後に,政治,法律,行政,マクロ経済などしか判らない,理系音痴の「政経バカ」を沢山輩出する最初の一歩になったのではないか?と感じた.


知的仕事の技術 遊びの技術―仕事と余暇のバランス感覚の下手な人へ

文化創作出版

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P.S.
 「教育義」について,知っているひとがおられたら,どうぞ,教えてください.
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世界195カ国中の2つのクラブ

2005-07-03 | Environment
 思うところ会って,昨日,imdas 2005 を購入した.「各国データ一覧」(pp. 1259 - 1269)という資料のページをパラパラと眺めていて,2つのグループが目についた.


以下の数字は,なんでしょう?

3万○クラブ:
 リヒテンシュタイン 50000
 ルクルセンブルグ  39370
 スイス       37930
 ノルウェー     37850
 アメリカ合衆国   35060
 日本        33550
 デンマーク     30290


以下の数字は,きっとすぐに判りますね.

一億○クラブ:
 中国        130420万
 インド       106540万
 EU         45460万 (imidas 2005, p.480)
 アメリカ合衆国   29400万
 インドネシア    21990万
 ブラジル      17850万
 パキスタン     15360万
 バングラデシュ   14670万
 ロシア       14320万
 日本        12770万
 ナイジェリア    12400万
 メキシコ      10350万



 結局,両方のクラブに属しているのは,いまのところ,米国と日本だけだ.EUは後者には入るが,前者にははいらない.

 まず,世界における日本のあり方を考えるとき,小学校の社会科では,このようなことから,ちゃんと教えないとダメだと思う.
 さらに,日本に生まれ育っただけで「恵まれた」という視点も必要だ.
 



imidas イミダス 2005

集英社

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Jason's Library  Linuxの中身のお勉強

2005-07-03 | Software
 しばらく, Linux の カーネル(Kernel: OSの中核となる部分の機能モジュール群)についての勉強していなかったので,比較的新しい参考書「Linux Kernel Development」の第二版をを買った.

 筆者の Robert Love 氏 は,Linux の 世界では有名なエンジニアであり,カーネルのスケジューラ,仮想記憶や, デスクトップ環境GNOME などで,多くの業績がある.また,彼は Linux Journal 誌 に,様々な記事を寄稿している.
 日本でも,米国でも,プログラムだけでなく,ちゃんとした文章(Webではなく,紙で出版される専門書や専門雑誌の記事)を書けるエンジニアはそう多くはない.

 彼は,以前は,組込システム用Linuxの開発会社であるMontaVista Software 社 の real-time and performance group に勤務していたが,現在は,Novell 社Ximian Desktop Group に勤務している.そのため,本書の版元も,以前の SAMS 社 から,Novel Press 社 にかわった.


 本書は,Linux カーネルの内部構造全般を400ページの中でコンパクトに解説している.彼の得意分野である,プロセス管理,スケジューラ,メモリ管理などの説明はとても分かりやすと思う.2005年の1月の出版であり,現在主流となりつつあるバージョンの 2.6 Kernel についてもカバーしている.


 仕事で Linux を本格的に使っているエンジニア,OSについて学んでいる学生に広く推薦したい.
 Linux以外のOSを使っている人にも,マルチタスクのOSの内部構造の参考書として読める.
 いずれ,翻訳が出るだろうが,プロ,あるいは,プロを目指す人は,まず,原書にも目を通しておいてほしい.


Linux Kernel Development (NOVELL PRESS)

Novell Pr

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Google Maps

2005-07-03 | IT
  ある研究室HP管理人のぼやき-blogの6/28の記事 で, Google Maps を知った.

 まだベータ版だが,なかなか凄い.アメリカだと,地図と,航空写真をいったり来たりできる.
 # 移動も拡大も,とても早い.Google 独自の技術が使われているようだ.


 座標がわからなくても,入力フィールドに,以下のように住所を入れて,

  "930 Arques Ave., Sunnyvale, California"
  "950 DeGuigne Drive, Sunnyvale, California"

 「Search」のボタンを押せば,すぐに,その場に,マークが出でる. (ちなみに,これらは,私の昔の勤務先の本社があったビルです.)
 
 Direction To-here From-here という吹き出しも出る.とても便利だ.
 知らない町への出張などのときにも,役にたちそうだ.
 

 日本も,東京周辺のある範囲は,航空写真がある.座標が判っていれば,以下のように,座標を入れれば,新宿のビル街が出る.

  35.689173,139.694123


 座標が,日本の色々なMapシステムと少しずれている?のかとおもったら,分以下を60進から10進に変換して与えるようになっているようだ.
 経度,緯度の場合には,以下のように入力する.

 +35° 40' 52.12", +139° 46' 39.33"

 測地系の違いか,Yahoo.co.jp の地図の座標とは少しずれがあるように見える.

 また,東京の航空写真は,少し古いことがわかった.(六本木ヒルズが工事中)
 しかし,日本では,普通は撮影できないような地域や建物もちゃんと撮影されている.
 
 
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人間におけるコミュニケーションの意味 その2

2005-07-02 | Education
6/30のblog で紹介した 東大 福島智 助教授 奥様である,光成沢見氏のエッセイ.

 単に,多重障害者の妻としてではなく,すでに紹介した「ゆびで聴く」とは全く異なる視点で,日本の障害者を取り巻く環境について考察している.また,全盲聾の福島氏とのかかわりを通して,人間のコミュニケーションに関して普段我々がなにげなく見過ごしていることや,現代における結婚の意義等についても,改めて考えさせられる.

 教育,福祉に関わるすべての人に広く推薦したい.



指先で紡ぐ愛―グチもケンカもトキメキも

講談社

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