Dr. Jason's blog

IT, Engineering, Energy, Environment and Management

23年前の約束

2006-03-27 | Education
 土曜日に,母校のある会合に出席した.
 その会は,母校で博士の学位を取得した人,あるいは,母校の出身者で他の大学から博士の学位を取得した人で構成されている,いわば,博士号取得者のOB会である.

 その会合の懇親会に,前理事長のH先生が来賓として出席されていた.
 H先生は,東大の出身で,若いころは母校で助教授,教授を務められ,その後東大で教授となり,東大を定年して東大名誉教授となってからは,母校で再び教授,主任教授,さらに,学長,理事長を歴任された,80代半ばの大先生である.


 23年前,学部4年生の秋,修士課程への進学を審査する面接試験があった.その面接試験は,私の所属する学科の殆どの教授が出席されていた.H先生は丁度東大を定年して教授として復帰し,わたしの指導教授のとなりに座っていた.何人かの先生の質問のあと,H先生は最後の質問として以下のようなことをおっしゃった.

  「君は,修士に進んだあと,博士までやる気はありますか?」

 私はちょっとドキッとした.それほど,自信があったわけではないが,以下のように答えた.

  「はい.修士修了後すぐには無理かもしれませんが,最終的には博士号を目指しています.」

 このやりとりは,H先生との約束として,私の頭の片隅にいつもとどまっていた.
 5年前の博士課程の入学の口頭試問でも,私はこの約束のことを説明した.


 懇親会の中盤,私は窓際に腰掛けられていたH先生の前に進み,身をかがめながら名刺を出して自己紹介した.そして,23年前のH先生とのやりとりを説明し,昨年博士号を取得できたことをご報告した.H先生はもちろん23年前のことはすっかり忘れておられたが,それでも大変喜んでいただけた.

 23年前の面接に参加していた先生方の殆どはすでに他界されている.修士論文の指導教授や副査の先生方もすでに他界された.昨年の学位取得時には,それぞれの先生の御霊前へのお手紙と論文での報告となった.

 今回,お元気なH先生に,直に学位取得を報告し23年前の約束を果たしたことは,とても幸いなことであると思う.

 
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Ruby on Rails は楽し!

2006-03-22 | Software
 話題のRuby の Webアプリケーション・フレームワーク Ruby on Rails の解説書(翻訳)が Amazon.co.jp から届く.

 原書は昨年の6月,訳書は先月発売されたものだが,色々忙しかったので注文しておらず,やっとつい先日注文したものだ.2006/2/24第1版第1刷で,21日に到着した版がすでに,2006/3/20第1版第2刷となっている.相当売れているようだ.

 深夜になって,ぱらぱらと読み始めると,とても面白い.
 お風呂から上がってから,とうとう,我慢しきれなくなって,最新版の Ruby(言語処理系) や, RubyGems(Rubyのパッケージ管理システム) のソースをダウンロードして,コンパイルするところから始めてしまった.
 
 最近のオープンソースソフトウェアは,OS毎の移植性について十分に考慮されているので,私の iBookG4 の MacOSX 10.3 の上でもすぐにインストールできて,一時間弱で,デモプログラムの
 Welcome aboard
 You’re riding the Rails!
というWeb画面を見ることができた.

 Rubyの大きな特徴の一つは,「同じ処理をするのに,他の言語に比べてコーディング量が少ない」ことだと思っていたが,本書の一部をみただけでも,Rails のフレームワーク上での,RubyによるWebアプリケーションは,さらにその特徴が顕著であることがわかる.
 また,Rails プリケーションの
  controllers/  helpers/  models/  views/
という,ディレクトリ構造の名前の付け方が非常に直感的である点にも好感がもてる.これは,Rails の開発者達のセンスの良さを感じさせるものだ.
 
 この Rails の環境で,ある程度の規模のWebシステムを構築にトライしてみたい!


 Webアプリケーション開発に興味のあるすべての人に,オススメの一冊.


RailsによるアジャイルWebアプリケーション開発
前田修吾(監訳)
オーム社

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シンビオティック情報システム研究会へのおさそい

2006-03-20 | Informatics
 私は, 情報システム学会 (Information Systems Society of Japan) という,比較的新しい学会の会員である.
 この学会は,「人間中心の情報システムを志向し,ビジネス・研究領域の融合や情報システム人材の育成を目的」としている.

 昨年,夏からこの学会の,「シンビオティック情報システム」研究会 という研究会の,幹事を仰せつかっている.
 簡単にいうと,人,人の生活,人の集まりとしての地域や都市,その中での人々の創造的な活動,文化的社会的活動を促進するフレームワークとしての「情報システム」について研究する研究会である.

今年度は,5回の研究会(うち研究発表3回)を開催した.研究会の会合は,早稲田大学の社会学部で開催された.

 研究発表

  o 「家庭と地域を結ぶ情報化について」 
    武蔵野大学 大学院 人間社会・文化研究科 教授 佐藤佳宏 氏

  o 「行政と地域を結ぶ情報化について」
    東海大学 政治経済学部政治学科 講師 小林 隆 氏

  o 「コンテンツの二次利用促進モデル」 
    早稲田大学 IT研究機構
     オープンソースソフトウェア研究所 講師 芦田良貴 氏

 来年度は,さらに研究を進めるにあたって,研究会の参加者を広く募集する方針である.この研究会は,情報システム学会の会員以外の方でも参加できる.(研究会への参加費は無料)
 

 ITの技術的側面だけでなく,「人,地域,文化,社会」をささえる「情報システム」に興味のある(東京近郊の)方々からの参加を希望しています.
 当研究会への参加希望の方は,左の「Jasonへメール」から,私まで,プロフィールとともにメールをお送りください.
 もちろん,これを機会に, 情報システム学会に入会 される方も大歓迎!!
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複合システムとしての情報システム

2006-03-13 | Informatics
  2/14のブログで紹介した情報処理学会の創立45周年記念イベント「日本のコンピュータ生誕50周年記念シンポジウム」 の前半に参加した.


 シンポジウムの前半には,以下の特別講演と基調講演があった.
 平日の日中にもかかわらず,西垣先生の特別講演が始まるころには,工学院大学の大教室がほぼ満席となり,一部には立ち見の参加者もいた.45周年記念ということで,60歳代後半から70歳代の学会のベテランの会員の方が多数参加されていた.


 特別講演:
  「情報学的転回とは何か」
  西垣 通 先生 (東京大学 大学院 情報学環 教授)

 基調講演:
  「ユニバーサル・コミュニケーションの時代 -充実した情報空間の建設に向けて-」
  長尾 真 先生 (独立行政法人 情報通信研究機構 理事長,元京都大学総長)


 西垣先生の講演は,昨年12/30のブログでも紹介した, 「情報学的転回」 をキーワードにしたお話だった.講演の最後の方で,
  情報システムは「人間=機械」複合システムである
という主旨のことおっしゃっていたが,全く同感である.
 通常のソフトウェア技術者は,情報システムの設計/開発/運用において,システムの構成要素としての人間のことをあまり考えていなし,人間についてあまり勉強していない.また,分業が進んだため,工学的な意味においても全体を「複合システム」として捉える視点が不足していると思う.

 長尾先生の講演は,今後のコンピュータ・ネットワーク上のサービスとコンテンツを展望したものであった.いくつかのトピックスが,会場にいた比較的若い世代の会員への長尾先生からの「宿題」のように聞こえたのは,私だけだったろうか?


 私は,この数年,情報学について,西垣先生にその著作等を通じて勝手に師事して来たが,当日は,始めて先生ご本人にお会いした.やはり,たった一時間弱の講演でも,著者の話しを直にきくと,更に理解と思索が深まる.

 講演のあと,名刺をお渡しご挨拶して,著書「情報学的転回」にサインをいただいた.良い記念になった.



情報学的転回―IT社会のゆくえ
西垣 通
春秋社

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米国,国語,満州

2006-03-06 | Education
 最近は, 昨年 12/18の blog で紹介した「国家の品格」でベストセラーランキングに名を連ねる,お茶の水女子大教授 藤原正彦 の新旧のエッセイの中から2冊.
 
 「若き数学者のアメリカ」は,藤原先生が1972年から,米国ミシガン大学に研究員として招かれ,そこからさらにコロラド大学の助教授となったときのさまざまな話しを綴ったもの.米国での3年間の体験を,独特の語り口で生き生きと伝えている.
 1972-74年ごろの話しなので,現在とは違う部分もあるが(特に,ベトナム戦争の影響の等),全体的にとても楽しく読める.
 英語の話し,人種の話しなどは,私も同じような体験をもっているので非常にリアリティを感じた.

 「祖国とは国語」は,国家の根幹を,国語教育にあるとする「国語教育絶対論」をはじめとして,新聞や雑誌にかかれた色々なエッセイのオムニバス.
 近年,ドイツでも「国力の低下は国語力の低下から」といわれているらしい.
 私の父親の家族も朝鮮からの引き上げ者だったので,母親との出生地訪問の旅を綴った巻末の「満州再訪記」は特に感慨深いものがある.


 いつもは,仕事関係の本や専門の本ばかり読んでいる方に,お勧めの教育的示唆に富んだエッセイ.


若き数学者のアメリカ
藤原正彦
新潮社

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祖国とは国語
藤原正彦
新潮社

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