Dr. Jason's blog

IT, Engineering, Energy, Environment and Management

JR福知山線事故の本質  企業の社会的責任と科学

2007-06-10 | Transportation
 先日、知人の紹介で Amazon.co.jp で購入した一冊。

 昨年から、某大学で「環境安全工学」という講義を担当しており、そのため、様々な事故に関する参考書、解説書を集めている。
 本書は、JR福知山線事故に関する、最新の解説書の一つである。

 筆者は、元NTT基礎研究所主幹研究員で現在同志社大学大学院教授の 山口栄一 先生 と、2両目の車両に乗っていて重傷を負った事故の被害者である 宮崎千通子さん

 本書は、今回の事故について、
   被害者の受けた様々な不利益とその実態
   JR西日本の賠償の姿勢
   事故が「脱線」ではなく「転覆」であった事実の解明
   JR西日本の非科学的な体質
   JR西日本社会的責任
 などについて、被害者の手記や、物性物理と技術経営を専門とする筆者の考察だけでなく、鉄道工学、医学、心理学、弁護士などの様々な分野の専門家の支援のもとにまとめられている。

 JR西日本の経営陣/技術陣が、事故がおこったカーブの実際の転覆限界速度を、事前に知らなかったという事実は、非常に衝撃的である。つまり、あのカーブは、1997年の経路変更の時点から、ずっと欠陥設計だったのである。


 「鉄道」だけでなく広く「交通システム」や「公益事業」にかかわる経営者、技術者、さらに「システムの安全と組織」について興味のある学生、エンジニア、ビジネスパースン必読の書。



 目次

 序章  JR福地山線事故とは何だったのか?
 
 第一章 宮崎千通子の手記
     悲劇のはじまり
     ガレキの中で
     生と死のはざま
     生きるパワー
     社会復帰を目指して
     新しい希望

 第二章 どのように事故は起きたのか
     事故調査報告書を読み解く
     物理学的な考察
     国枝正春博士の証言
     JR西日本非科学性

 第三章 社会から尊敬される会社になるために
     JR西日本の被害者対策の非合理性
     企業の社会的責任とは何か
     チーフ・サイエンス・オフィサー(CSO)設置の必要性

 終章  JR西日本は生まれかわるか?

 あとがき

 参考・引用文献


JR福知山線事故の本質―企業の社会的責任を科学から捉える
山口栄一、宮崎千通子
エヌティティ出版

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春の読書月間 「研究する意味」

2007-06-02 | Education
前日、知り合いの先生からお借りして、読んだ本。

以下の、11名の大学や研究所の先生方の対談やインタビューをまとめたもの。
# 肩書きは、出版時のもの

それぞれの、先生が、これまでの研究者としての生い立ちや、研究に取り組む心得や信念等について、述べている。

対談
 小森陽一 東京大学大学院総合文化研究科教授 (監修)
 金子 勝 慶応大学経済学部教授
 高橋哲哉 東京大学大学院総合文化研究科教授

インタビュー
 大澤真幸 京都大学大学院人間・環境学研究科 助教授
 藤原帰一 東京大学大学院法学政治学研究科 教授
 竹村和子 お茶の水女子大学大学院人間文化研究科 教授
 刈谷剛彦 東京大学大学院教育学研究科 教授
 岡 真理 京都大学大学院人間・環境学研究科 助教授
 吉見俊哉 東京大学社会情報研究所 教授
 臼杵陽  国立民族博物館地域研究企画交流センター 教授
 神野直彦 東京大学大学院経済学研究科 教授

 膨大な量の脚注がついており、専門用語等について、読者の理解を助け、新しい分野を勉強するとっかかりにもなるように考慮されている。

 インタビュー記事の中でも、刈谷先生、神野先生の章の記述が参考になった。
 特に、神野先生のやや過激な発言にはとても共感が持てる。浅学のため、本書を読むまで、神野先生を存じ上げなかったが、この本をきっかけに、神野先生の本を何冊か Amazon.co.jp に注文した。

 多少なりとも「研究」に興味のある人、大学院の学生で将来何らかの形で、研究に関わる職業を目指す人には、特におすすめしたい一冊。


研究する意味

東京図書

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 ※小森先生のお名前がまちがっていましたので、訂正いたしました。
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