Dr. Jason's blog

IT, Engineering, Energy, Environment and Management

そろそろ貴重な化石==石油を燃やすのはやめよう.

2005-05-11 | Energy
 本書は,私が博士課程の研究の準備を始めた,2000年に出版された.
 5年前のデータや予測が含まれているが,基本的な自動車のエネルギー問題のトレンドに対する考察は,現時点でみても全く色褪せるものではない.

 筆者の舘内 端氏は元自動車設計エンジニアの自動車評論家であり, 日本EVクラブ を主宰しており,低公害車の普及啓発に貢献などにより,1999年に,環境庁長官より表彰を受けている.
 日本で自動車評論をしている人には,実は「工学」がちゃんと判っている人が少ないなかで,ちゃんとした「科学」「工学」を前提とした,評論,執筆ができる数少ない人材である.
 
 私自身は,水素+燃料電池には懐疑的だ.(国内向け分だけでも,どうやって,毎日 FCV 4000-5000万台分の水素を作るのかだれも研究していない!カナダは水力による電力が余っているのでFCのバラード社に国も投資しているのだ.)
 我が国は,自前のエネルギー資源を殆ど持たず,大きな自動車産業を抱えており,国内の自動車登録台数も増え続けているので,次世代自動車のエネルギー源の選択は非常に大きな問題である.
 いずれにしても,エネルギーとして化石を燃やすのは,そろそろやめなければダメだという話しである.

 また,本書の「あとがき」は,非常に示唆に富んでおり,私のその後の研究にも参考になった.


 自動車だけでなく,広くエネルギー問題に,関心のあるすべての方にオススメの一冊.


ガソリン車が消える日

宝島社

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我々は,いつまで石油に依存しつづけるのか?

2005-01-30 | Energy
 先週は,色々いそがしくしている間に体調を崩して書き込みが滞ってしまった.
  NHK は組織そのものがだめになってきていると各方面から言われているが,今夜のNHK特集「石油高騰」は色々と考えさせられる内容だった.
 この数年の原油価格の高騰の主な理由は,受給バランスの問題ではなく,株や不動産からひきあげられたヘッジ・ファンドからの巨額の投機マネーが,石油の先物に集まったためだという説明であった.さらに,ベネゼイラの政情不安,中東での戦争やゲリラ活動,メキシコ湾のハリケーンなどの不安要因が,それにを助長しているという.
 ロイヤル・ダッチ・シェルのような次世代エネルギー開発に大きな投資をしているように見える企業でも,この2年ほど原油先物価格の高騰を前提に,リスクの高い新しい大規模油田開発 "big cats"プロジェクト に膨大な投資を決断している.もちろん,環境問題には眼中にはなさそうだ.
 タンザニア政府は,国策として外国資本による海底油田の開発に大きく期待しているようだが,それによる環境負荷はどれほどのものになるだろうか?ナイジェリアではすでに開発がはじまっており,周辺の環境に悪影響がでているが,民衆の生活がよくなっている様子はない.貴重な原油はもっぱら輸出され,ガソリンはメジャーからの輸入にたよっている状態だ.
 中東のテロのスポンサーと目されていたリビアでは,経済制裁がとかれたとたんに,海外資本による新しい油田開発が活発化している.この油田開発の入札には,ヨーロッパ大手だけでなく,中国,ブラジル,さらには,つい少し前までは戦争状態だった米国の企業までが応札している.フランスからはシラク大統領自らが石油会社の幹部をつれて,ガダフィ大佐を訪問したそうだ.
 これまで,石油先物取引きで利益をあげていた,サンフランシスコのヘッジ・ファンドの会社までが,みずから,カナダの オイル・サンド(石油を大量に含んだ土壌) の開発に乗り出している.
 ある程度石油依存が続くことは現状の社会インフラの面からみても避けられないが,いずれは,化石燃料以外のものを主なエネルギー源とする必要があることははっきりしている.地下資源をほとんどもたない日本こそ,その先鞭をつけるべきだと考えるのは私だけだろうか?
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