Dr. Jason's blog

IT, Engineering, Energy, Environment and Management

「環境安全工学」 9 海外の環境規制

2006-11-28 | Mech Eng
 某大学の機械系の学科での「環境安全工学」の9回目の講義。
 概要は、以下のとおり。

0. 本日の参考書等
 この記事の最後に示した。

1. 世界の環境規制
 欧州 EU
 米国
 その他の国として 中国

2. 欧州の環境規制
 EUの主要指標
 EU加盟国
 EUのなりたち
 EUの環境政策 EC条約第174条
 製造業者、メーカーに関係する主な新しい環境規制
  WEEE (ウィー)
  RoHS (ローズ)
  ELV (イーエルヴィー)

3. WEEE
 WEEE (Waste Electrical and Electronic Equipment)
 "電気・電子機器の廃棄に関する欧州議会及び理事会指令"
 WEEEは、電子・電気機器の廃棄に関する欧州連合(EU)の
 指令である。2003年2月にRoHS指令と共に公布・施行された。
 原文は、
  "DIRECTIVE 2002/96/EC OF THE EUROPEAN PARLIAMENT
  AND OF THE COUNCIL of 27 January 2003 on waste electrical
  and electronic equipment (WEEE)"
 電気・電子機器について、収集・リサイクル・回収目標を規定
  1. 大型家電
  2. 小型家電
  3. ITおよび通信機器
  4. 耐久消費財
  5. 照明
  6. 電気・電子工具(大型の固定式産業用工具を除く)
  7. 玩具、レジャーならびにスポーツ用機器
  8. 医療用機器
  9. 監視・制御装置
  10. 自動販売機

4. RoHS
 RoHS (Restriction of Hazardous Substances)
 "電気・電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限に
 関する欧州議会及び理事会指令"
 電子・電気機器における特定有害物質の使用制限についての
 欧州連合(EU)による指令である。2003年2月にWEEE指令と
 共に公布・施行された。
 原文は、"DIRECTIVE 2002/95/EC OF THE EUROPEAN
  PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL of 27  January
  2003 on the restriction of the use of certain hazardous
  substances in electrical and electronic equipment"
 2006年7月1日以降は、EU加盟国内において、以下の物質が
 (基準値を超えて)含まれた電子・電気機器を販売することはできない。
  1. 鉛 :1,000ppm以下              
  2. 水銀 :1,000ppm以下
  3. カドミウム :100ppm以下
  4. 六価クロム :1,000ppm以下
  5. ポリ臭化ビフェニル (PBB) :1,000ppm以下
  6. ポリ臭化ジフェニルエーテル (PBDE) :1,000ppm以下

5. ELV
 ELV (End-of-life Vehicle) 指令
 使用の目的を終了した使用済自動車(廃自動車)への規制。
 自動車リサイクル法では、引取業者に使用済み車として引き
 取られた車が使用済自動車となる。
 その車は、後にリサイクル事業者において適正処理・リサイクル
 される。自動車メーカーは、使用済自動車から発生するフロン類、
 エアバッグ類、シュレッダーダストをリサイクル事業者から引き取
 り、適正処理・再資源化を実施しなければならい。
 環境負荷物質に関する要求事項:
  ・対象車両:2003年7月1日以降の新規販売車両(乗用車、
   積載3.5トン未満の商用車。2輪車は除く)
  ・対象物質:鉛、水銀、カドミ、6価クロムの原則使用禁止
  (適用除外部品リストとして免除規定あり)

6. 米国の環境規制
 アメリカ合衆国:主要指標(2005, 2006年)
 アメリカ合衆国の環境関連法規:
  連邦法
   連邦環境関連法規集
   Code of Federal Regulations (CFR) Title 40
  州法
   州毎に法律が異なる。
   連邦法と州法との両方を確認する必要がある。
  EPA (Environmental Protection Agency: 環境庁)
 もっとも環境関連法規が厳しい州:カリフォルニア
  Proposition 65
  California Safe Drinking Water and Toxic Enforcement Act of 1986
  安全な飲料水と有毒物質執行法 (1987年発行)
   有害性のある物質が人体に暴露する可能性がある場合、
   メーカが警告責任を負う。

7. 中国の環境規制 
 中華人民共和国:主要指標(2004, 2005) 
 中華人民共和国環境保護法 (1989年)
 電子信息産品生産汚染防治管理弁法
  2006年7月1日以降販売する電子信息産品に、「国家重点監管目録」
  に示された、鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、PBB、PBDE 等の含有を禁止。
  EUのWEEE&RoHS指令を参照して策定されており、使用禁止の6物質を規制。


参考文献等:

図解 よくわかるWEEE&RoHS指令―欧州環境規制でモノ作りが変わる

日刊工業新聞社

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参考URL:

http://jpn.cec.eu.int/
ja.wikipedia.org/wiki/欧州連合
www.jmf.or.jp/japanese/wold_topic/EU/eu1_1.html
eu-info.jp/law/env1.html
kankyo.kkc.or.jp/key/kkeyk_0409.html
www.scas.co.jp/company/news/21/frontier1_1.pdf
ja.wikipedia.org/wiki/WEEE 
ja.wikipedia.org/wiki/RoHS  
www.meti.go.jp/report/downloadfiles/g10625dj.pdf
www.toyota.co.jp/jp/environment/communication/glossary/glossary_02.html
www.scas.co.jp/company/news/21/frontier1_21.pdf
http://www.jeol.co.jp/envi/regulation/
http://europa.eu.int/eur-lex/pri/en/oj/dat/2003/l_037/l_03720030213en00240038.pdf
http://europa.eu.int/eur-lex/pri/en/oj/dat/2003/l_037/l_03720030213en00190023.pdf
ja.wikipedia.org/wiki/アメリカ合衆国
www-06.ibm.com/jp/company/environment/products/voc.html
www.nedo.go.jp/bioiryo/kagaku/event/prtr/kobayashi.pdf
www.plm4eco.org/technology/solution015.html
http://www.oehha.ca.gov/prop65/law/P65law72003.html
www.eic.or.jp/qa/?act=view&serial=10153
ja.wikipedia.org/wiki/中華人民共和国
www.sepa.gov.cn/japan/env_info/3_2_1_01.htm
www.rieti.go.jp/jp/papers/journal/0410/bs01.html
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「環境安全工学」8 ヒューマンファクター、組織事故

2006-11-28 | Mech Eng
 某大学の機械系の学科での「環境安全工学」の8回目の講義。
 概要は、以下のとおり。

0. 本日の参考書等
 この記事の最後に示した。

1. 人と組織による事故
 例: JR福知山戦脱線 (2005年4月25日)
 制限速度を超えた運転をした運転士だけの問題だろうか?
 その他の教訓的な人と組織による事故
  東海村 JCO 臨界事故 1999/9/30
  横浜市立大患者取り違え事故 1999/1/19
  チェルノブイリ原子力発電所事故 1986/4/25
  スペースシャトル チャレンジャー爆発 1986/1/28

2. 巨大技術システム
 背景
 技術システムとは
 巨大技術システムとは
 なぜ巨大化したのか
 人間-機械系システムとは
 巨大技術システムの事故

3. ヒューマン・ファクター
 ヒューマン・ファクター
  ヒューマン・ファクターの定義:
  「機械やシステムを、安全に、しかも有効に機能させるために
  必要とされる、人間の能力や限界、特性などに関する知識の
  集合体」
 ヒューマン・エラー
  ヒューマン・エラーとは、人間の過誤(ミス)のこと。
  人為ミスとも呼ばれる。不本意な結果を生み出す行為や、
  不本意な結果を防ぐことに失敗すること。
 ヒューマン・ファクターの分類
 ヒューマン・エラーの分類

4. 組織事故
 個人事故と組織事故
  個人事故
   個人のミスや問題による事故。
   その影響が個人レベルでおさまる事故。
  組織事故
   組織体制のに内在する欠陥による事故。
   その影響が組織全体におよぶ事故。
   原子力産業、航空産業、石油産業、
   化学産業、海運業、鉄道輸送業、
   金融業、医療。
 ヒューマン・ファクターとしての組織事故
  システムで問題を発生させる人間==ヒユーマン・ファクターは、個人
  とは限らない。
  システムが、組織で運営されている場合、組織の様々なところで、
  組織を構成する人々のヒューマン・ファクターが発生する。
  多くの巨大技術システム事故では、設備の問題、人間のミスや
  違反(不安全行為)が引き金となってはいるが、その背景を探って
  いくと、組織要因の問題に突き当たる。
 組織事故の構造
 組織事故を防ぐ組織
  高信頼性組織(HRO)の特徴
   失敗から学ぶ
   単純化を許さない
   オペレーションを重視する
   復旧能力を高める
   専門知識を尊重する
   現場重視
   組織のメンバー全体をセンサーとする
 JR西日本の場合
 組織の安全文化
  組織の安全文化:安全実積低下の段階
  自信過剰 良好な安全実積からくる。
  慢心 軽妙な事象が起こりはじめるが、実積から慢心する。
  否定 軽妙が事象が増える。調査などで問題を否定する。
  危険 潜在的に大きな事象がおきる危険な状態。
  崩壊 明らか崩壊。経営者の交替が必要。

5. 組織事故 事例研究 

 JR福知山線脱線事故 2005/4/25
 東海村 JCO 臨界事故 1999/9/30
 横浜市立大患者取り違え事故 1999/1/19

 宿題:
 上記の3つのうちから、1つの事故をえらび、
  事故の概要
  問題点
  自分の考える対策
 などについて、A4の用紙 1-2ページにまとめる。
 2000文字以内。
 提出: 2006/12/04 の講義で手渡し


参考文献等:

「信じられないミス」はなぜ起こる―ヒューマン・ファクターの分析

中央労働災害防止協会

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安全と安心の科学

集英社

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組織事故―起こるべくして起こる事故からの脱出

日科技連出版社

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安全学
 
青土社

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安全学の現在―村上陽一郎対談集

青土社

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最悪の事故が起こるまで人は何をしていたのか

草思社

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参考URL:
ja.wikipedia.org/wiki/JR福知山線脱線事故
www.nikkeibp.co.jp/sj/interview/04/
keitai.sfc.keio.ac.jp/ja/pdf/books/scot_system.pdf
www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/hyoujun_gijutsu/plant/2-2.pdf
www.jniosh.go.jp/old/anken/kenkyu/results/pubs/TN/abst/TN-76.htm
http://gc.sfc.keio.ac.jp/class/2002_14630/slides/13/37.html
http://www.n-seiryo.ac.jp/~usui/news/2005/jr_fukuchiyama_accident.html
http://nippon.zaidan.info/seikabutsu/2002/00508/contents/004.htm
http://staff.aist.go.jp/toru-nakata/humanerror.html
http://www.sbbit.jp/article/2525/
http://www.sbbit.jp/article/2741/
http://www.sbbit.jp/article/3035/
http://safety.mri.co.jp/colum/vol092.html
ja.wikipedia.org/wiki/東海村JCO臨界事故
www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n1999dir/n2327dir/n2327_04.htm
http://criepi.denken.or.jp/jp/hfc/DB/Bunken/2004-03595.html
http://criepi.denken.or.jp/jp/hfc/DB/Bunken/2002-03175.html
www.nsc.go.jp/abunka/panel2-1.pdf

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ICPF セミナーのお知らせ

2006-11-12 | IT

   情報通信政策フォーラム (ICPF) より、のお知らせです。

-------------------------------------------------

 最近、日本の企業が共同で検索エンジンをつくろうという「情報大航海プロジェク
ト」、通称「日の丸検索エンジン」が話題になっています。Web2.0と呼ばれるイン
ターネットの新しい動きに日本企業が立ち遅れていることは明らかですが、これに
よって日本は立ち直れるのでしょうか?

また、このような政府主導の産業政策はもう時代遅れだという批判もあります。一
方、経産省は日の丸検索エンジンという理解は誤解だといっています。日本のIT産
業を活性化するために政府は何をすべきなのでしょうか? また何をすべきでない
のでしょうか?経産省の政策の真の狙いはどこにあるのでしょうか?

11月のセミナーでは、経済産業省 情報政策課の久米孝さんをお招きし、IT産業と
政府の役割について議論します。


スピーカー:久米孝(経済産業省 商務情報政策局 情報政策課 課長補佐)
モデレーター:原淳二郎(ジャーナリスト)
日時:11月30日(木)18:30~20:30
場所:「情報オアシス神田」    
    東京都千代田区神田多町2-4 第2滝ビル5F    
    地図:http://www.jo-kanda.com/map/m_top.html
入場料:2000円 ICPF会員は無料(会場で入会できます)
申し込みはinfo@icpf.jpまで電子メールで氏名・所属を明記して(先着順で締め
切ります)
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環境安全工学 7 化学物質

2006-11-08 | Mech Eng
某大学の機械系の学科での「環境安全工学」の7回目の講義。
 概要は、以下のとおり。

0. 本日の参考書等
 この記事の最後に示した。

1. 生物の基本
 細胞や、生物の営み、活動を、化学、プロセス工学の視点で捉えると色々なことが見えてくる。
 代謝:
  生体内の化学反応 == 化学的プロセス。
  異化:外部基質の分解反応
  同化:生体高分子の合成反応
  ==> 代謝 == 化学的プロセス。
 呼吸:
  細胞呼吸
  外呼吸
  ==> 呼吸 == 化学的プロセスである
 細胞: 
  植物
  動物
 人体の化学成分比:
  約60% は水
  ==> 水に溶けるものは、人体に入る。金属、鉱物はイオンとして水に溶ける。
 神経細胞:
  ==> イオンを輸送して電位の変化を情報として伝達する。== 化学的プロセスである。
 人体の活動 == 化学的システム

2. 化学の基本
 周期表を復習しよう! 文部科学省「一家に一枚周期表」
 ベンゼン環 憶えていますか?
 芳香族炭化水素の中には、強い発ガン性を持つものがある。
 化学式だけでなく、分子の構造図に着目しよう。
  対象形の構造をもつ分子は、比較的安定している。
  人工的に合成された物質は:
  対称性が高く、過度に安定である場合が多い。
  ==> 過度に安定
  ==> 分解されにくい
  ==> 水、土壌、生物中等に残留しやすい。
 分子式は同じだが、構造が異なる分子、またはそのような
  分子からなる化合物を異性体(isomer)という。
  人工的に合成された物質は異性体がうまれやすい:
  ==> 異性体は、物質としての性質が異なる。
  ==> 薬の異性体が猛毒になることもある。
  サリドマイド:睡眠薬、催奇性を有する物質

3. 化学物質
3-1. 化学物質 DDT
 DDT(Dichloro-diphenyl-trichloroethane)
 IUPAC名:1,1,1-トリクロロ-2,2-ビス(p-クロロフェニル)エタン
 分子式:ClC6H4)2CH(CCl3)
 かつて使われていた有機塩素系の殺虫剤、農薬。
 左右対称。ベンゼンを含む。塩素がくせもの!
 自然界で分解されにくいため、長期間にわたり土壌や水循環に残留し、食物連鎖を通じて人間の体内にも取り込まれる。
  半減期: 水中 220日  土壌中 約2年

3-2 .化学物質 PCB
 ポリ塩化ビフェニル(ポリえんかビフェニル)
 ポリクロロビフェニル (polychlorinated biphenyl)
 ビフェニルに塩素が置換した化合物の総称で、一般式 C12HnCl(10-n) (0≦n≦9) で表される。
 左右対称。ベンゼンを含む。塩素がくせもの!
 熱に対して安定で、電気絶縁性が高く、耐薬品性に優れている。
 一方、生体に対する毒性が高く、脂肪組織に蓄積しやすい。発ガン性があり、また皮膚障害、内臓障害、ホルモン異常を引き起こすことが分かっている。
 燃やすと、ダイオキシンを発生する。

3-3. 化学物質 ダイオキシン類
 ダイオキシン類:
 ポリ塩化ジベンゾパラジオキシ (PCDD)
 ポリ塩化ジベンゾフラン (PCDF) の総称。
 1~4と6~9の位置に塩素がつく。
 塩素の数や付く位置によっても形が変わる。
 PCDDは75種類、PCDFは135種類もの種類がある。また、コプラナーポリ塩化ビフェニル (Co-PCB) のようなダイオキシン類と同様の毒性を示す物質をダイオキシン類似化合物と呼ぶ。
 無色無臭の固体で、ほとんど水には溶けない。脂肪などには溶けやすいという性質を持っている。
 他の化学物質や酸、アルカリとは容易に反応しない安定した性質をもってる。太陽からの紫外線で徐々に分解される。

3-4. 化学物質 フェノール類
 ノニルフェノール (Nonylphenol)
 C15H24O
 ベンゼンに、CH2 や CH3のしっぽ。
 ノニルフェノールエトキシレート(NPEO)は非イオン系界面活性剤である。ノニルフェノールはその原料である。その用途は工業用の洗浄剤、分散剤としてゴム・プラスチック、繊維工業、機械・金属工業、農薬工業などで使われている。
 ノニルフェノールはガンや奇形を発生させることからドイツやスイス、デンマーク等、ヨーロッパでは家庭用合成洗剤の原料として使用することが規制されている。日本でも90年代に入って、大手メーカーを中心として自主的な
製造規制が行われてきた。しかし、法的に規制されていないため、いまだにノニルフェノールを原料とした洗剤が家庭用として店頭で売られている。ノニルフェノールは95年頃から環境ホルモンとしての作用があると言われはじめ、現在も研究が続けられている。
 4-オクチルフェノール (Octylphenol)
 商品化されているのは主として4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(C14H22O)で、4-tert-オクチルフェノールなどとも
呼ばれる。油溶性フェノール樹脂や界面活性剤の合成原料などの用途がある。
 平成14年6月14日に開催された環境省の「内分泌攪乱化学物質問題検討会」で、4-オクチルフェノールが魚類に対して内分泌攪乱(環境ホルモン)作用を持っていることが確認された。

 ※ダイオキシンと内分泌攪乱化学物質については「環境ホルモンとダイオキシン」を参照。

3-5. 化学物質 有機スズ
 有機スズ化合物(ゆうきスズかごうぶつ)またはスタナン (stannane) は炭化水素などの有機置換基を持つスズ化合物である。
 商業的にはポリ塩化ビニルを製造する際の塩酸の捕捉剤や熱的安定化剤、あるいは殺生物剤として利用される。
 酸化ビス(トリブチルスズ) (TBTO) は材木の防腐剤として広く用いられている。トリブチルスズ誘導体はフジツボなどの付着生物を船体から除去する薬剤としても使われた。1リットルあたり1ナノグラムの濃度でも海洋生物に影響を与える。
 既に使用禁止だが、まだ、TBTOをぬった船は沢山航行している。
 (CH3+(CH2)3)3+Sn+O+Sn+((CH2)3+CH3)3
 日本全国でインポセックス状態のイボニシ(巻貝)が確認されている。

3-6. 化学物質 有機水銀
 有機水銀:
 無機水銀に比べ毒性が非常に強い。
 日本国内ではさほど使用されなかったものの、世界中において有機水銀はかつて農薬として広く使われた。1970年代にイラクでは、メチル水銀で消毒した小麦を使ったパンによる有機水銀中毒で400人以上が死亡する事件がおきた。そして、その毒性から現在は使用が禁止された。
 メチル水銀:
 メチル水銀(Methylmercury)とは、水銀がメチル化された有機水銀化合物であり、ジメチル水銀 (CH3)2Hg とモノメチル水銀 CH3HgX(X = Cl, OH など)が知られており、いずれも毒性が強い。
 水俣病、第二水俣病:
 水俣病は、20世紀に起きた世界でも最大・最悪の公害事件。
 1932年以降、新日本窒素肥料(現在のチッソ)水俣工場が行ったアセトアルデヒド生産時の触媒による副産物であるメチル水銀を含んだ廃液が汚染処理を十分行わないまま海(八代海)に流されたことによる。この廃液中のメチル水銀が生体濃縮され、付近で獲れた魚介類を摂取した住民に水銀中毒の被害が発生した。
 1960年には新潟県阿賀野川流域でも同様の患者の発生が確認され、新潟水俣病と呼ばれる。これは、阿賀野川上流の昭和電工鹿瀬工場が廃棄したメチル水銀による住民の被害である。
 水俣病、第二水俣病の症状:
 手足のしびれが起き、その後歩行困難などに至る例が多い。
 重症例では痙攣、精神錯乱などを起こし、最後には死に至った。
 発病からは3か月で重症者の半数が死亡した。昭和30年代前半から、水俣周辺では脳性麻痺の子どもの発生率が上昇していたが、1961年、胎児性水俣病患者がはじめて確認された。水俣では少なくとも16例の胎児性患者が確認されている。※臍の緒に、メチル水銀が確認された。
 厚生労働省はキンメダイやカジキ、マグロなどの魚類、クジラ、イルカなどの海棲哺乳類に含まれる水銀が、胎児の発育に影響を及ぼす恐れがあるとして、妊娠中かその可能性の有る女性は、魚介類の摂取量や回数を制限するように注意を喚起
している。
 ※水俣病については「水俣病の科学」を参照のこと。

3-7. 化学物質 ホルムアルデヒド
 ホルムアルデヒド (formaldehyde) は有機化合物のうち、最も簡単なアルデヒドのひとつ。
 アルコール類を酸化するとアルデヒドになる。
 構造式は CH2O。酸化メチレンとも呼ばれ、 IUPAC命名法では メタナール (methanal) と表される。
 触媒存在下にメタノールを空気酸化して得られる。さらに酸化が進むとギ酸となる。融点 -92 ℃、沸点 -19.3 ℃、分子量 30.03である。刺激臭を持つ無色の気体である。
 水などの極性溶媒に可溶で、37% 以上の水溶液はホルマリンと呼ばれる。ホルムアルデヒド及びホルマリンを含むホルムアルデヒド水溶液は、毒物及び劇物取締法により医薬用外劇物に指定されている。
 人体へは、粘膜への刺激性を中心とした急性毒性があり、蒸気は呼吸器系、
目、のどなどの炎症を引き起こす。皮膚や目などが水溶液に接触した場合は、
激しい刺激を受け、炎症を生ずる。
 接着剤、塗料、防腐剤などの成分であり、安価なため建材(特に合板、木質
系接着剤)に広く用いられている。しかし、建材から空気中に放出されることがあり、その場合は低濃度でも人体に悪影響を及ぼす、いわゆる「シックハウス症候群」の原因物質。
 ==> 症状には、個人差があることに注意。(酒酔いの個人差と同様)


   
参考書等:
人間・環境・安全―くらしの安全科学
及川紀、北野(著)
共立出版

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環境安全科学入門
玉浦 他 (著)

講談社

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環境安全論―持続可能な社会へ
北爪 他 (著)

コロナ社

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環境ホルモンとダイオキシン―人間と自然生態系の共存のために
彼谷 邦光 (著)
裳華房

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水俣病の科学
西村 肇、 岡本 達明(著)
日本評論社

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参考URL:
http://stw.mext.go.jp/0603.html
http://webmap.torikyo.ed.jp/ipa/
http://humanbody.jp/
http://www2.health.ne.jp/library/0800/w0801024.html
ja.wikipedia.org/wiki/代謝
ja.wikipedia.org/wiki/呼吸
ja.wikipedia.org/wiki/神経細胞
ja.wikipedia.org/wiki/神経系
ja.wikipedia.org/wiki/イオン
http://www1.accsnet.ne.jp/~kentaro/yuuki/yuuki.html
ja.wikipedia.org/wiki/ベンゼン
ja.wikipedia.org/wiki/異性体
ja.wikipedia.org/wiki/キラル
http://www.applc.keio.ac.jp/~asakura/asakura_j/chiral.html
ja.wikipedia.org/wiki/DDT
ja.wikipedia.org/wiki/ダイオキシン
ja.wikipedia.org/wiki/DDT
ja.wikipedia.org/wiki/PCB
ja.wikipedia.org/wiki/ダイオキシン
ja.wikipedia.org/wiki/ダイオキシン類
http://www.erc.pref.fukui.jp/news/d00.html
ja.wikipedia.org/wiki/環境ホルモン
ja.wikipedia.org/wiki/内分泌攪乱物質
de.wikipedia.org/wiki/Nonylphenol
en.wikipedia.org/wiki/Nonylphenol
http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&serial=2114
http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&serial=296
wwwsoc.nii.ac.jp/jec/ecinfo/kagakubussitu_risuk_ka_1_2_6.htm
ja.wikipedia.org/wiki/有機スズ化合物
http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&serial=1985
http://www.fsinet.or.jp/~miura/endocrin.htm
ja.wikipedia.org/wiki/水銀
ja.wikipedia.org/wiki/メチル水銀
ja.wikipedia.org/wiki/水俣病
ja.wikipedia.org/wiki/ホルムアルデヒド

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環境安全工学 6 食の安全

2006-11-08 | Mech Eng
 某大学の機械系の学科での「環境安全工学」の6回目の講義。
 概要は、以下のとおり。

0. 本日の参考書等
 この記事の最後に示した。

1. 食の安全
 人間の活動、食料の生産活動のために、結果的に
  大気汚染
  水質汚染
  土壌汚染
 が引き起こされている。
 その結果、地球の環境汚染、環境破壊が少しづつ進んでいる。
 食品は生命、健康維持に直接かかわるものである。安全性の確保が大前提である。しかし、現実には色々問題がある。

2. 食品事故の歴史
 1955年 森永ヒ素ミルク事件 
 1968年 カネミ油症事件 
 1985年 ジエチレングリコール汚染ワイン事件 
 1996年 O-157集団食中毒事件
 2001年 牛海綿状脳症(狂牛病)の発生
 2002年 中国産ホウレンソウの残量農薬

3. 食品安全基準
 食品安全基本法
 
4. 食品自給率
 各国の食料自給率
 日本の食料自給率の推移
 食料自給率の低下の理由
 農業構造の変化
 --> 貿易がとまれば、日本人の半分以上は飢えることになる。
   食に関する一番のリスクは、自給率の低さではないか?

5. 食品添加物
 食品衛生法
 食品添加物の定義
 食品添加物として指定される要件
 食品添加物の安全性
 食品添加物の例

6. 食品に含まれる有害物質
 カドミウム (Cadmium、Cd) の例 イタイイタイ病
 水銀 (mercury、Hg) の例 水俣病
 英国食品基準局、厚生労働省の警告
 その他の有害物質
  トリブチルスズ (Tributyltin Compound、[略]TBT )
  ポリ塩化ビフェニル (Polychlorinated Biphenyl、[略]PCB)
  ダイオキシン類 (Dioxins、[略]DXN)

7. 遺伝子組み換え作物
 遺伝子組換作物(Genetically modified organism、GMO)
 米国のモンサント社 (Monsanto Company)
  PCB、ベトナム戦争で使われた枯葉剤のメーカー。
  除草剤ラウンドアップとラウンドアップに耐性をもつ遺伝子組み換え作物をセットで開発、販売している。
  http://www.monsanto.com/monsanto/layout/
  http://www.monsanto.co.jp/

8. 環境問題の教訓と原則
 「レイト・レッスンズ」より:
 1)不確実性のみならず、無知にも配慮すること
 2)“早期警告”のための研究と観測・追跡
 3)学的知識にある「盲点」と欠落を見つけ出して指摘する
 4)異なる分野間で学び合うための障害を特定し、減らす
 5)現実の世界の状況が完全に考慮されることを保証する
 6)主張されている“是”と“非”の内容を系統的に検証し正当性を判断する  
 7)代替案を吟味し、堅実で、多様性があって適用可能な解を推進する 
 8)関係する全分野の専門家のみならず、“普通の人”と地域の知識をも用いる
 9)より広い社会的利益と社会的価値を考慮する
 10)経済的政治的利益から規制の独立を保つ
 11)調査と行動に対する制度的障害を特定し、減らす
 12)分析による麻痺に陥らないようにする


   
参考書等:
人間・環境・安全―くらしの安全科学
及川紀、北野(著)
共立出版

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環境安全科学入門
玉浦 他 (著)

講談社

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環境安全論―持続可能な社会へ
北爪 他 (著)

コロナ社

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レイト・レッスンズ―14の事例から学ぶ予防原則
欧州環境庁(編著), 松崎 早苗, 安間 武, 水野 玲子, 山室 真澄(訳)
七つ森書館

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※本書の概要については、Amazon.co.jp のカスタマーレビュー『失敗から学ぶ,教訓から学ぶ「環境問題」事例, 2005/10/14』を参照。

沈黙の春
レイチェル・カーソン (著)、青樹 簗一(訳)
新潮社

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参考URL:

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/index.html
www.fsc.go.jp/hourei/kihonhou160227.pdf
www.kantei.go.jp/jp/singi/shokuhin/houan/030523/houbun.pdf
http://www.ron.gr.jp/law/law/shok_anz.htm
http://www.n-shokuei.jp/eiseihou/
ja.wikipedia.org/wiki/森永ヒ素ミルク中毒事件
ja.wikipedia.org/wiki/カネミ油症事件
www.eco-union.jp/open/pdf/17_1.pdf
http://www.ne.jp/asahi/ecodb/yasui/PCBKanemi.htm
http://homepage3.nifty.com/kuebiko/biology/chptr_1/1-1-3/di_et_gl.htm
http://qsar.cerij.or.jp/SHEET/F99_16.pdf
http://ja.wikipedia.org/wiki/O157
ja.wikipedia.org/wiki/牛海綿状脳症
ja.wikipedia.org/wiki/クロイツフェルト・ヤコブ病
http://www.cjd-net.jp/1PART1/110Yakobu_towa/112yakobu_biyou_kouzou/yakugai.htm
www.mhlw.go.jp/topics/0103/tp0308-1.html
www.mhlw.go.jp/houdou/2003/12/h1226-3.html
http://www.rieti.go.jp/users/china-tr/jp/ssqs/020913ssqs.htm
www.geocities.co.jp/Technopolis-Mars/7314/kiken_yasai.htm
http://www.maff.go.jp/syohi.html
http://www.kanbou.maff.go.jp/www/jikyuuritsu/index.html
http://www.jafa.gr.jp/
http://www.city.kumagaya.lg.jp/kakuka/shimin/kenkodukuri/oshirase/tenkabutu1/index.html
ja.wikipedia.org/wiki/イタイイタイ病
ja.wikipedia.org/wiki/カドミウム
ja.wikipedia.org/wiki/遺伝子組み換え作物
http://www.eic.or.jp/


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