Dr. Jason's blog

IT, Engineering, Energy, Environment and Management

Jason's Library くたばれ悲観論!

2005-07-17 | Business
  伊藤洋一氏 の名前をみても,ピンと来ない人も,日曜日の夜, フジテレビ系列の「情報ライブ EZ!TV」で切れ味の良いコメントをいう「髭のキャスター」言えば判るだろうか?.
 伊藤氏は,あまり企業人のように見えないが,住信基礎研究所 という信託銀行系シンクタンクの主席研究員という肩書きのエコノミストであり,国際経済・金融・マーケット等がご専門である.
 これまでも,テレビのコメントやWebサイトの記事をみて,「波長があうなぁ」と感じていたが,今回初めて,伊藤氏の著作を読んで,その意を強くした.

 本書は,
  日本の技術と企業の強み
  中国,韓国,インドの実態や弱点
  日本の文化と経済
 について,一歩さがって,冷静に分析して,日本で蔓延している「悲観論」へのアンチテーゼとしてまとめたものである.

 GNPについて,人口一人当たりの数字に着目すべきことを強調している点は, 7/14 7/3 の blog の記事での私の視点と共通するところがあると思う.

 また,将来に関して,エネルギー問題と,教育についての重視している点も,普段からの私のスタンスと一致している.しかし,もう少し掘り下げた記述を望みたいところだ.いっそうのこと,エネルギー,教育を中心にすえた続編を書かれてはどうだろうか?
 

 最近の日本悲観論に,あきあきしているすべての人にオススメの一冊.


日本力 アジアを引っぱる経済・欧米が憧れる文化

講談社

このアイテムの詳細を見る
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ちゃんとした日本語をあやつるアメリカ生まれの詩人

2005-07-17 | Weblog
 先日,調べものをしていて, 小学館のWeb日本語 を訪れた.そのとき,初めて アーサー・ビナード氏の「アーサーの日本語つれづれ草」 を読んだ.

 米国のミシガン生まれの普通の米国人で,日本人との混血だとか,子供のころから日本に住んでいたというわけでもなく,大学の卒論で日本語に接したというビナード氏は,驚くほどちゃんとした日本語文章を書く.イタリア語もできるようだが,言葉に関しては「特別な才能」に恵まれているようだ.
 文章だけみると,「とても英語が達者な日本人」が書いたと信じても不思議ではない.
 


 休日に読むエッセイとして,だれにでもオススメできる一冊.


日本語ぽこりぽこり

小学館

このアイテムの詳細を見る
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

人間の脳の並列処理の限界と自動車の交通事故

2005-07-17 | Transportation
 北大の某先生による 5号館のつぶやき blog の 7/15 の記事 は「ハンズフリーでも携帯で事故4倍増」というテーマだった.この記事から,以下の, 米道路安全保険協会(IIHS) の研究の概要について知った.

 「運転中に携帯電話を使用すると、負傷して病院へ運ばれるほどの衝突事故を起こす確率が4倍に高まる――米道路安全保険協会(IIHS)が12日(米国時間)、このような調査結果を発表した。」
( Hot Wired 7/15, Excite エキサイト ニュース. この調査結果に関するIIHSのニュースリリースの原文ははこちら. 関連する詳細な記事は IIHS Status Report July 16 2005 (英文) をダウンロード.調査結果の British Medical Journal に発表された論文(英文) はこちらをダウンロード. )


エキサイト ニュースから,引用すると,以下のような,非常に明解な方法で調査されている.
--------
 研究者たちは、携帯電話の通話記録を用い、実際に衝突事故を起こす前の10分間における携帯電話の使用と、同じドライバーによる1週間前の運転の際の携帯電話の使用状況とを比較した。

 調査対象となったのは、パース(オーストラリア、ウェスタンオーストラリア州)の、携帯電話を所有しているか使用している456人のドライバーで、2002年4月~2004年7月に自動車で衝突事故を起こして救急処置室に運ばれたことがある人々だ。

 事故発生前10分間の各ドライバーの携帯電話の使用状況と、事故が起こらなかった前週の同時刻の状況とを比較した。この調査では、各ドライバーが事実上、それぞれの対照群となっている。

 IIHSはこの調査を米国で実施しようとしたが、電話会社から通話記録を入手できなかったため断念した。通話記録が入手できたウェスタンオーストラリア州では、2001年以降、携帯電話を手にした運転が禁止されている。
----------

 場所が,オーストラリアに限られていること,サンプルが 456人であることで,データがやや偏っているという指摘はあると思う.


 人間の「見る,聴く,話す」という活動の間には,脳の情報処理において相互作用があることは,心理学,認知科学,脳科学等の分野では知られている. 特に,「話す」という活動は,一般に考えられている以上に,脳の中で色々な情報処理が行われる.「話す」ことは,脳の言語野だけでなく,運動に関わる部分も使うのである.また,「見る,聴く,話す」という活動の相互作用は,手足の動作にも影響していることも,生理学,スポーツ科学の分野では知られている.
 つまり,脳における「情報処理の並列性」には,ある種の「限界」あるいは「弱点」があると考えられている.

 今回のIIHSの研究の結果は,音楽をBGMとして聞き流すことは運転動作には大した影響がなくても,電話等で他者と何かの話題について「聴く,話す」という活動が,脳の処理において,運転動作に大きな影響(反応が遅れる,動作が不正確になる等,事故の確率を高くするような影響)可能性があるということを,間接的に示していると思う.

 上記の仮説にもとづいて,ある種の会話==通話が,運動の反射や正確さに与える影響を定量的にテストする実験をすると,もっと色々なことが判るだろう.
 (自動車の運転よりも航空機の操縦の方が影響が重大なので,もしかすると,米国の空軍,海軍では,既にそのような定量的なデータを持っているのではないかと思う.)


 結局のところ,人間の脳は,「話しながら,他の動作を充分に俊敏に行うようには設計されていない.」と考えるべきなのではないだろうか?

  
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする