Dr. Jason's blog

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環境対策は道楽ではない! 先進国の責任

2005-07-14 | Environment
  ニューズウィーク日本語版 の2005.7.20 号 pp.38-39 に『「緑の党」のブルーな未来』と題した,最近のドイツにおける「緑の党」の人気低落についての記事があった.

 その中に
 ------
 ...自然保護や平和主義,フェミニズムといった緑の党の伝統的な争点のは,
 多くの有権者から道楽の一種とみなされている.「仕事がない人間は,オゾン
 ホールのことなんか気にしていられない」...
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 という気になる文章があった.

 確かに,最近,ドイツでは,高い失業率(12%)と経済の不振が政治問題となっている.
 しかし,それでも,2002年の統計では,ドイツの国民総所得(GNI)は,1876320百万ドルであり,依然としてヨーロッパで一番である.世界でも,米国,日本につぐ値である.また,ドイツでは失業しても,餓えて死んだり,飲み水に困ったりはしない.


ヨーロッパのGNI 1000億ドルクラブ  (2002年,百万ドル)

 ドイツ  1876320
 イギリス 1510771
 フランス 1362007
 イタリア 1100713

メンバーは,たった4カ国しかない.

ちなみに,

 米国   10207039
 日本   4323919
 中国   1234157

つまり,日本は好況ではないが,イギリス,フランス,イタリアの3カ国の合計よりもGNIが多いということである.


ヨーロッパの一人当たりGNI 2万ドルクラブ (2002年, ドル)

 ルクセンブルグ 39470
 ノルウェー   38730
 スイス     36170
 デンマーク   30260
 アイスランド  27960
 スウェーデン  25970
 イギリス    25510
 フィンランド  23890
 オーストリア  23860
 オランダ    23390
 アイルランド  23030
 ベルギー    22940
 ドイツ     22740
 フランス    22240

一人当たりのGNIは,人口が少ない小国の方が総じて高めであることがわかる.
ちなみに,
 イタリア    19080
であり,2002年度は,2万ドルクラブからは落選であった.

また,
 米国      35400
 日本      34010
 カナダ     22390
 シンガポール  20690
 オーストラリア 19530
 台湾      12858
 韓国       9930
 ブラジル     2830
 ロシア      2130
 中国       960
 インド      470

 世界の大半の国は,一人あたりのGNIは,5000ドル以下である.
ドイツは,一人あたりの GNIで,ヨーロッパの2万ドルクラブの中では,低位ではあるが,世界的にみれば上位に位置している.このような国で,自然保護や環境対策が道楽とみなされるというのは,少々狭いものの見方であると言わざるを得ない.

 米国,日本,EUのGNI上位の先進国こそが,エネルギー対策や環境対策の新技術を開発して,それを発展途上国に提供していかなければならないはずだ.
 

 中国の物価は日本の1/20~1/30といわれているが,一人あたりのGNIは1/35 以下である.(2002年の統計) ここから,中国やインドが先進国の本当の仲間に入るのはそう簡単ではないことがわかる.

コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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僕にはわかる気がします (けいすけ)
2005-07-14 14:58:55
だってトップのアメリカが京都議定書にも生物多様性条約にも加盟せず(関連記事を引いておきました)、ひたすら経済最優先なのだから、僕には理解できないこともないですが。その上、EUは今precautionary principleを進めようとしていて、これは僕は基本的には賛成だけど、これを足かせにしてドイツの工業をこれ以上延ばさないようにしようとの他のEU諸国の算段もあるとかないとか。。。
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ドイツの成長とEUの未来 (Dr. Jason)
2005-07-14 23:03:49
 ドイツだけが突出しないように,フランスやイギリスが牽制するでしょうが,ドイツの技術や経済の発展なしに,EUの発展が成り立つとはとても思えません.



 また,不況が続くと,ワイマール共和国が持たなかったときと同じような,内政的な圧力が発生して過度に保守派が台頭し,非常にマズい状態になると思います.



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