Dr. Jason's blog

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「空飛ぶ教授」の研究者として成功する条件

2005-04-10 | Education
 知人のblogを通じて知った「空飛ぶ教授」こと,九州大学の生物(生態科学)の教授, 矢原徹一先生 のblogが面白い.

 4/9の記事は,新学期らしく「研究者として成功する条件」である.この条件には,研究者に限らず,広い意味での知的専門家に共通するポイントがあると思ったので紹介しよう.
 
 その条件とは,「...好きなことに没頭できること、人と違った道を歩けること、そして人並み以上の実行力。もちろん、これだけで十分ではないが、この3点を満たせば、研究者としてやっていけると思う。」とのことだ.
 この3つの点は,「専門家」にはとても重要だと思う.でも,この3点を満たせば「研究者としてやっていける」?かどうかは,私には判らない.

 研究のテーマについては,「学生と議論し、学生の興味・関心を見極めながら、ある程度は確実性があり、なおかつチャレンジングなテーマを考える。私はどうも、後者に重点を置きがちなのかもしれない。自分でやっても、苦労しそうなテーマを出したりする。しかし、先がすっかり見えているテーマは、やる気がしないのだ。」「学生も、私も、ともにわくわくできるテーマに相談が落ち着けば、その研究は6割程度成功したに等しいと思う。あとの4割は学生の実行力が左右する。」とある.
 基本的には賛成だ.チャレンジグな命題の方がワクワクする.しかし,大学院の研究は「人材育成」の視点も重要なので,(ここでは,さらっと「確実性」としてしか言及されていないけど)手持ちの設備,研究室のスタッフや生徒の能力を見極めた上でテーマを選び,規定の期間内にちゃんと修士や博士の学位が取れるような研究指導ができるかどうかもポイントだと思う.
 
 私の独断では,日本の大学教授には,おおまかにいって,以下の3つのタイプがある:
  A  学生の能力をうまく活かした研究指導をしコンスタントに博士を出せる
  B  自分の研究はするが研究指導がヘタで教え子に博士を出せない 
  C  教授になるともう研究しない
 世の教授をよく観察すると, B, C のタイプの教授がとても多くて,実は博士取得者の多くは,Aのタイプの教授の研究室から偏って輩出されている.そういう意味では,生徒の側からみた,成功の条件には,Aのタイプの「教授を選ぶ目」も重要だと思う.(矢原教授は当然Aのタイプだと思う)
 
 さらに,実行力について,「たとえば論文。毎日必ず1時間、論文の原稿を書ける人は、数ヶ月程度で原稿を完成できる。これを実行できない人は、1年かかっても、論文が書けない。このような、ちょっとした実行力の差が、1年経てば大きな差になり、5年も経てば圧倒的な差になる。」という.この,「ちょっとした実行力の差」がその実行の継続によって「圧倒的な差」を生むというのは,本当だと思う.そういえば,私も,修士課程2年目のころは,シミュレーションプログラムの開発,シミュレーションの実行と解析,論文の執筆などを毎日していた.社会人として兼業で博士課程をやっていたときは,さすがに「毎日,論文執筆」とはならず,学位取得には4年かかった.
 私は,情報系が大学での専門ではないのに情報系の仕事についた.それを補うために,殆どの情報工学/ソフトウェア工学のことはずっと独学している.例えば,同僚や友人が酒を飲んでいる時間に,こっちは,毎日とは云わないが,睡眠時間を削って本を読んだり,仕事とは別のソフトウェアをいじったりしてきた.こんなことを20年も続けると,やはりその蓄積の差はまさに「圧倒的」である.
 
 それから,矢原教授には"「不機嫌なジーン」南原教授のモデルだという「うわさ」がある"らしい.
コメント (2)
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