明礬緑礬泉という、いかにも効きそうな泉質がある。草津など火山性の高温泉で出ることもあるが、山中の一軒宿に冷鉱泉としてひっそりと湧いているようなものが多い。その多くは、「硫化鉱物の酸化溶解」+「有機的メカニズム」という成因(詳しくは、「関東周辺立ち寄り温泉みしゅらん『温泉の科学』byやませみさん 」参照)によるもので、低温で湧出量の少ないのがふつうである。
飛びぬけた量の鉄分を含み、赤茶に変色したにごり湯は強烈なインパクトがあって、おもわず身を沈めるのをためらうほどである。
諏訪大社春宮の山手に湧く毒沢鉱泉もそのようなお湯で、清澄なお湯の多い諏訪の温泉のなかにあってひときわ異彩を放っている。
毒沢鉱泉の歴史は古く、永禄年間に武田信玄が金山発掘の際、怪我人の治療に利用したと伝えられる、いわゆる”信玄の隠し湯”のひとつである。”毒沢”の読みは古いガイドで”ぶすざわ”と紹介されていた記憶もあるが、最近ではほとんど”どくさわ”が使われているようだ。
「神乃湯」、「宮乃湯」、国民宿舎「沢乃湯」の3軒の宿があって「神乃湯」が最奥、どこも同一源泉と思われる。
平成13年に改装され、いわゆるデザイナーズ旅館系の女性好みの宿に仕上がっている。
別棟の総木造の浴室は男女別でこぶり、窓の外に緑濃い沢筋を見下ろす風情あふれるもの。
木づくりの加熱浴槽(4.5人)と源泉槽(1人)を隣り合わせて配置。浴槽は改装前と同じ規模のようで、むやみに浴槽を大きくしたり、露天を造ったりしない姿勢にお湯に対するお宿の見識を感じる。
加熱槽はおそらく循環と思われるが、源泉槽は、飲泉用の湯(水)だめからごく少量を流し込み、オーバーフローはなく、ごく軽い底面吸湯か自然流下でかけ流しかと思う。
お湯のイメージは加熱槽と源泉槽ではかなり異なる。かなり熱めの加熱槽は、まったりとした暗いオレンジ色で透明度1cmの濃いにごり湯に赤茶の浮遊物。冷たい源泉槽は、うすこげ茶色ささにごりで茶色の浮遊物がたくさんただよい、金気をベースにして、弱いながら焦げ臭とドクダミ臭がまじる複雑な温泉臭が香る。
酸性泉らしいレモン味に微甘味と渋味と微炭酸味をミックスした複雑な味は、美味しくはないが、なぜかクセになる。pH2.5の酸性泉ながら肌にピリピリくる感触はなく、キシキシ感のある奥深い浴感が楽しめる。
加熱槽はかなり熱いが、温まるというよりは身体に染み込んでくるような独特なもの。焦げ臭とドクダミ臭が肌に残ってキトキトとする浴後感は、かなり好き嫌いのわかれる個性的なものかと思う。
明礬緑礬泉を謳う温泉宿はけっこうあるが、湧出量が少ない低温泉は湯づかいがむずかしく、生の源泉にふれられるのは、関東周辺ではここと、栃木の赤滝、山梨十谷の「山の湯」くらいしか思い当たらない。貴重なお湯である。
日帰り受け入れは昼前後の数時間と短いので、泊まりでじっくりと冷温交互浴を楽しむのが○かもしれない。
含鉄(2)-Al-硫酸塩冷鉱泉((Al)-SO4型) 2.0℃、pH=2.5、陽・陰イオン計=1509.2mg/kg、H^+=2.5、Na^+=5.0mg/kg (0.91mval%)、Mg^2+=31.7 (10.81)、Al^3+=120.0 (55.27)、Fe^2+=132.4 (19.64)、Fe^3+=5.6、Cl^-=1.5 (0.17)、HSO_4^-=92.7 (3.98)、SO_4^2-=1107 (95.59)、陽イオン計=307.2 (24.14mval)、陰イオン計=1202 (24.11mval)
文・画像 別働隊@うつぼ
飛びぬけた量の鉄分を含み、赤茶に変色したにごり湯は強烈なインパクトがあって、おもわず身を沈めるのをためらうほどである。
諏訪大社春宮の山手に湧く毒沢鉱泉もそのようなお湯で、清澄なお湯の多い諏訪の温泉のなかにあってひときわ異彩を放っている。
毒沢鉱泉の歴史は古く、永禄年間に武田信玄が金山発掘の際、怪我人の治療に利用したと伝えられる、いわゆる”信玄の隠し湯”のひとつである。”毒沢”の読みは古いガイドで”ぶすざわ”と紹介されていた記憶もあるが、最近ではほとんど”どくさわ”が使われているようだ。
「神乃湯」、「宮乃湯」、国民宿舎「沢乃湯」の3軒の宿があって「神乃湯」が最奥、どこも同一源泉と思われる。
平成13年に改装され、いわゆるデザイナーズ旅館系の女性好みの宿に仕上がっている。
別棟の総木造の浴室は男女別でこぶり、窓の外に緑濃い沢筋を見下ろす風情あふれるもの。
木づくりの加熱浴槽(4.5人)と源泉槽(1人)を隣り合わせて配置。浴槽は改装前と同じ規模のようで、むやみに浴槽を大きくしたり、露天を造ったりしない姿勢にお湯に対するお宿の見識を感じる。
加熱槽はおそらく循環と思われるが、源泉槽は、飲泉用の湯(水)だめからごく少量を流し込み、オーバーフローはなく、ごく軽い底面吸湯か自然流下でかけ流しかと思う。
お湯のイメージは加熱槽と源泉槽ではかなり異なる。かなり熱めの加熱槽は、まったりとした暗いオレンジ色で透明度1cmの濃いにごり湯に赤茶の浮遊物。冷たい源泉槽は、うすこげ茶色ささにごりで茶色の浮遊物がたくさんただよい、金気をベースにして、弱いながら焦げ臭とドクダミ臭がまじる複雑な温泉臭が香る。
酸性泉らしいレモン味に微甘味と渋味と微炭酸味をミックスした複雑な味は、美味しくはないが、なぜかクセになる。pH2.5の酸性泉ながら肌にピリピリくる感触はなく、キシキシ感のある奥深い浴感が楽しめる。
加熱槽はかなり熱いが、温まるというよりは身体に染み込んでくるような独特なもの。焦げ臭とドクダミ臭が肌に残ってキトキトとする浴後感は、かなり好き嫌いのわかれる個性的なものかと思う。
明礬緑礬泉を謳う温泉宿はけっこうあるが、湧出量が少ない低温泉は湯づかいがむずかしく、生の源泉にふれられるのは、関東周辺ではここと、栃木の赤滝、山梨十谷の「山の湯」くらいしか思い当たらない。貴重なお湯である。
日帰り受け入れは昼前後の数時間と短いので、泊まりでじっくりと冷温交互浴を楽しむのが○かもしれない。
含鉄(2)-Al-硫酸塩冷鉱泉((Al)-SO4型) 2.0℃、pH=2.5、陽・陰イオン計=1509.2mg/kg、H^+=2.5、Na^+=5.0mg/kg (0.91mval%)、Mg^2+=31.7 (10.81)、Al^3+=120.0 (55.27)、Fe^2+=132.4 (19.64)、Fe^3+=5.6、Cl^-=1.5 (0.17)、HSO_4^-=92.7 (3.98)、SO_4^2-=1107 (95.59)、陽イオン計=307.2 (24.14mval)、陰イオン計=1202 (24.11mval)
文・画像 別働隊@うつぼ