まさに「誰得」なマイナンバー制度、政治家がゴリ押すウラにある「あまりに不幸な日本の未来予想図」(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース
まさに「誰得」なマイナンバー制度、政治家がゴリ押すウラにある「あまりに不幸な日本の未来予想図」
8/29(火) 8:03配信
政府の隠された狙い?
韓国、エストニアなど番号制度の先進国と言われる国々には、冷戦構造下で周辺国と鋭く対立してきた歴史がある。こうした国では、国民に番号を付与することは反逆者やスパイを炙り出し、いざというときの動員をスムーズにするための仕組みでもあったのだ。
すなわち、>徴兵制?
これは、国民総背番号制といわれた1970年代くらいによく言われたことでしたか。
現代ビジネス
photo by gettyimages
一体、マイナンバーって誰が得するんだ? 国民はみんなそう思っているのに、「もう決まったことだから」と開き直るそぶりすら見せる政治家たち。その裏で、「現場」である役所や医療機関では大パニックが起こり、関与する大手企業は莫大なマネーを懐に収めている。前編<総額2兆円! 巨額のマイナンバー予算を懐に納める「巨大企業」の実名>に続いて、なぜこのような「怪物」が生み出されたのかを検証する。
【写真】中国にマイナンバーと年金情報が「大量流出」していたヤバい事実
必死にプラスイメージを作る
Photo by gettyimages
「ベンダーにとってマイナンバーのような巨大システムは、開発・維持・手直しと三重に業務が発生する美味しい仕事です。しかも、マイナンバー関連業務の入札は8割以上が随意契約や一者応札で企業間の競争がなく、発注先が大手ベンダーに偏っていることが判明しています」(ITジャーナリストの佃均氏)
前述した5社のうち富士通、日立、NTTデータ、NECの4社は自民党の政治資金団体「国民政治協会」に多額の献金を行ってもいる。終わりなき増改築と保守点検が求められるマイナンバーはまさに、彼らにとって夢のような「完成することのない大聖堂」であるといえる。
「本当は、マイナンバーカードもマイナポイントも、『便利そう』とか『トクしそう』というプラスイメージを作るための手段でしかありません。だって、マイナンバーの本質は『国民の背番号』なんですから」
ある財務官僚はこう声を潜める。驚くべき言い草だが、実はこれが政府と霞が関の本音である。
多くの国民が勘違いしていること―それは、「マイナンバーとマイナンバーカードは別物」という事実だ。マイナンバーカードを受け取らないことや返納することはできるが、マイナンバー付与を拒否することはできない。好む好まざるにかかわらず、すでに役所や税務署はマイナンバーを使って国民の納税状況や保険給付を把握・管理している。
もう後戻りはできない
Photo by gettyimages
「そもそも、マイナンバーは当初『社会保障・税番号』という名前で、国民のカネの動きを効率的に捕捉することを念頭に起案されました。推進してきた政治家には財務省と関係が深い人物が多く、民主党政権では大蔵省出身の古川元久元官房副長官らが、その後の第二次安倍政権では麻生太郎元財務大臣などがいます。
特に麻生氏は'19年、『将来的にはマイナンバーカードで買い物の決済をできるようにして、ポイントをつければいい』と発言している。レジのPOS(販売時点情報管理)システムのように、全国民の購買情報を把握して、架空経費計上や所得隠しを防ごうという構想が透けています」(経済ジャーナリストの磯山友幸氏)
巷では「マイナンバー制度の言い出しっぺは民主党政権だ」「いや安倍政権だ」という「起源論争」に明け暮れる人々もいるが、実際には'60年代から「国民番号制度」の議論は始まっていた。'80年には元大蔵官僚の総理・大平正芳氏が「納税者番号制度法案」を成立させてもいる(導入前に頓挫)。マイナンバーとは、半世紀にわたる財務省・霞が関の悲願がついに結実したものなのだ。
しかし、そんなお上の都合を国民が簡単に受け入れてくれるはずもない。そこで冒頭の官僚が言うように、捻り出されたのが「マイナンバーの書かれたカードを作れば、便利でトクしますよ」と喧伝する策だった。
カード製造やシステム構築が必要になるから、前章で触れたベンダーをはじめ、関係業界に予算を配って仕事と権益を生み出すこともでき、霞が関にとっては一石二鳥だ。デジタル庁を発足させた菅義偉前総理は、マイナンバーカードを「デジタル社会のパスポート」として流れを加速させた。
「ですが、日本では行政システムの縦割りが強すぎるうえ、それぞれのシステムとマイナンバー・マイナンバーカードをつなぐ仕組みの開発は、ベンダーの能力不足で困難だとわかった。官僚が余計な仕事を増やした結果、進むことも引くこともできない窮地に陥ってしまったのが現在の状況なのです」(磯山氏)
「敗戦」の失敗を繰り返す気か
Photo by gettyimages
現行の仕組みですら座礁しかけているにもかかわらず、政府は懲りることなく、'26年にアップデートを施した「次期マイナンバーカード」への移行を画策していることも付記しておこう。
かつての日本は役人や軍人の暴走で自滅の道をたどり、悲惨な敗戦を迎えた。今まさに、同じような失敗を犯そうとしているのかもしれない。
「国として、統一した個人認証システムを作ろうという方針自体は正しいと思います。しかし、問題はあまりにも設計が稚拙で、実際の運用方法も練られていないことです。
マイナカードには名前・住所・顔写真が印刷されていますが、落とせば即、個人情報がダダ漏れになる。付属のケースで目隠しするというのも奇妙な仕様だと思います。'13年のマイナンバー法成立時点で、すでにスマホは国民の3割台まで普及していたのですから、セキュリティ面を考えても、カードではなくスマホを中心にした仕組みを設計すべきだったのではないでしょうか」
こう指摘するのは、ソフトウェア開発会社「サイボウズ」社長の青野慶久氏だ。
世界の主要国には、日本よりはるか前に番号制度を導入した国が多い。アメリカやイギリス、フランスなど欧米諸国では1930~'40年代に、韓国や台湾でも'60年代に制度が確立している。
こうした国々では日本と違って、すでに「生まれた時から自分の番号を持っている」国民が大部分を占めるため、番号制度自体の是非が問題になることはない。そして、個人情報は「漏れて当たり前」というのが常識だ。
個人情報がダダ漏れ
Photo by gettyimages
アメリカでは、マイナンバーにあたる「社会保障番号」とそこに紐づいた与信情報は長い間ダダ漏れ状態で、クレジットカードのなりすまし被害が多発している。'17年には大手信用情報会社がハッキングに遭い、国民の半数近い1億4000万人分のデータが盗まれた。
人口約5200万人の韓国にいたっては、過去に少なくとも1億3000万件の住民登録番号が漏洩している。全国民が平均3回近くも漏洩被害に遭っている計算だ。
情報セキュリティの専門家で、情報安全保障研究所首席研究員の山崎文明氏が言う。
「行政手続きがすべてオンラインで可能なデジタル先進国と言われるエストニアでさえ、'17年に国民の個人情報を特定するための秘密鍵(暗号通信を解読するための数字)が漏洩し、80万人分の個人カードを作り直す事態に見舞われました。
日本は番号制度の後発国なのですから、こうした先例を踏まえて、たとえばカードへの記載は顔写真と氏名にとどめ、本人識別のためのICチップだけを搭載するといった形にもできたはずです」
'18年には、日本年金機構がマイナンバーや年金番号を含む個人情報501万人分の入力作業を民間企業「SAY企画」に委託したところ、同社がデータを中国の業者に丸投げして大問題になった。第1章でも触れたように、マイナンバーと各種個人情報の紐付け作業はあまりに作業量が膨大なため、まだ向こう数年は終わらないはずだ。ただでさえ人為的ミスが多発する中、どんな思わぬルートから情報が漏れるかわからない。
参考:中国にマイナンバーと年金情報が「大量流出」していた…厚労省が隠蔽し続ける「不祥事」の全容
政府の狙い
Photo by gettyimages
日本中を震え上がらせた「ルフィ強盗団」は、闇市場で出回る個人情報名簿をもとにターゲットを物色していたとされる。個人番号導入の「最後発国」である日本のマイナンバーは、犯罪者にとっては、いわば手付かずの宝の山だ。もはや国民にできるのは、腹を括ることだけである。
今年6月、デジタル庁が公表した「デジタル社会の実現に向けた重点計画」に関する資料には、こう書かれている。
〈2025年度 運転免許証とマイナンバーカードの一体化〉〈2026年度 介護保険証のペーパーレス化 全国実施〉
つまり、健康保険証の廃止は序章にすぎない。向こう数年の間に、さまざまな本人確認書類をマイナンバーカードに統合する。さらには、交通系ICカードやクレジットカードと同等の機能をも持たせ、支出や移動履歴、病歴などのあらゆる個人情報を集約する「究極のカード」をめざす―これはすでに、政府内では既定路線なのである。
しかし、保険証廃止だけでも国民の猛烈な反発を招き、内閣支持率は30%台前半まで急落した。運転免許証、介護保険証の廃止にまで手をつければ、与党が瀬戸際に追い込まれるのは確実だ。
なぜ政府は、これほどまでにマイナンバーとマイナカードの浸透・普及を急いでいるのか。
「本当の目的」として囁かれているものが二つある。まずは、すでに触れたカネの流れの把握、特に富裕層に対する資産課税である。エコノミストの田代秀敏氏が言う。
「いま富裕層の間では、『これほど政府がマイナンバーと資産などの情報の紐付けを急いでいるのは、日本が万が一、財政破綻をきたした時に備えているのではないか』という憶測が広がっています。財務省の官僚たちは国の財政破綻を本気で憂えていますから、『その日』が来たら富裕層の口座を封鎖し、資産に税を課して財源を調達するつもりなのではないか、と」
国の形が変わってしまう
Photo by gettyimages
そしてもうひとつは、古今東西、国民番号制度が裏に秘めてきた重大な目的―有事の備えだ。
韓国、エストニアなど番号制度の先進国と言われる国々には、冷戦構造下で周辺国と鋭く対立してきた歴史がある。こうした国では、国民に番号を付与することは反逆者やスパイを炙り出し、いざというときの動員をスムーズにするための仕組みでもあったのだ。
「これほどの混乱が生じても突き進む政府の様子には、どうしてもマイナンバーとマイナカードをすぐ定着させたいという思惑を感じます。それは、日本が明日をも知れぬ状況に陥った時の備えのためだ―と考えるのは、穿ち過ぎでしょうか」(田代氏)
われわれはもう、後戻りするには大きすぎるカネと労力をマイナンバーに費やしてしまった。いずれにせよこの先、日本はこれまでと全く異なる国になってしまうことだけは、間違いなさそうだ。
「週刊現代」2023年8月26日・9月2日合併号より