散日拾遺

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4月25日 フランス国歌が一晩で作曲される(1792年)

2024-04-25 03:14:23 | 日記
2024年4月25日(木)

> 1792年4月25日、ストラスブールのライン軍工兵大尉で、アマチュア音楽家でもあったルジェ・ド・リールは、前線に出立する兵士たちの壮行会の席上、市長から作曲の依頼を受けた。依頼された曲は「ライン軍のための軍歌」であり、期限は翌日までだった。
 軍歌なのだからもちろん歌詞も必要である。彼はその夜、手近にあった兵士の士気を鼓舞するパンフレットなどから歌詞を寄せ集め、一夜のうちに軍歌を作曲したという。それが、現在のフランス国歌「ラ・マルセイエーズ」である。翌日にはこの曲は、ライン軍兵士の前で演奏されたが、この曲が有名になったのはもう少し後になってからである。
 記録では、6月22日にフランス南部に侵攻したライン軍によって、この歌が歌われている。そして8月10日、テュイルリー宮襲撃の後、マルセイユ義勇軍がパリまでこの歌を歌いながら進軍したため、「マルセイユ人の歌(ラ・マルセイエーズ)」と呼ばれるようになったという。
 1795年7月14日に国歌として制定されたが、内容が革命賛美で過激だとして、いく度か時の為政者から歌唱禁止の処分を受けた。つい最近も、子供が歌うには歌詞が過激だとして問題になっている。
晴山陽一『365日物語』(創英社/三省堂書店)P.121

https://ja.wikipedia.org/wiki/クロード=ジョゼフ・ルジェ・ド・リール
Claude-Joseph Rouget de Lisle(1760年5月10日 - 1836年6月26日)


 1789年の革命勃発以来、これを敵対視するヨーロッパ中の列強を相手にフランスは戦争に明け暮れた。1792年4月にはオーストリア大公国に宣戦布告し、これを受けて出征しようとするライン方面軍の壮行の場で、この歌が誕生したという次第。この時点でのタイトルは『ライン軍のための軍歌 (Chant de guerre pour l'armée du Rhin) 』 であった。 
 1792年は激動の年で、とりわけ8月10日のテュイルリー宮殿襲撃(Prise des Tuileries)はそのピークを画す。この日、パリの民衆と軍隊がテュイルリー宮殿を襲撃してルイ16世とマリー・アントワネットおよび国王一家を捕らえ、タンプル塔に幽閉した。これを機に王権が停止され、フランス革命は新段階に入る。「マルセイユ義勇軍がパリまでこの歌を歌いながら」云々は、この時のことである。
 そう聞かされても、まだ分からない。4月に作曲された場所は独仏国境に近いストラスブール、8月に義勇軍が出発したのは南仏のマルセイユで、直線距離にして東京・広島間ぐらいの隔たりがある。「この曲が有名になったのはもう少し後」とあるところは、「その間にこの歌がパンフレットの形で全国に流布された」と補わねばならない。それがマルセイユにも届いたのである。
 そして8月10日事件(Journée du 10 août 1792)の約2週間前、マルセイユ義勇軍がパリ入城の際にこの歌を口ずさんでいたことからパリ市民の間で流行し、一躍人々の知るところとなった。そういう次第で元の題名に代わって『ラ・マルセイエーズ』と呼ばれるようになったのである。ちなみに、まもなく華々しく歴史に登場するナポレオン・ボナパルトはこの年23歳、政争のあおりで家族とともにコルシカを追放されマルセイユに移っている。
 というわけで、この歌は誕生以来「フランス人の愛国心」と「革命称揚」という二重の意味を託されてきた。後者をどう見るかで採否が分かれてきたわけだが、どちらにせよ個人的にはこういう国歌を歌わされなくてもっけの幸いである。音楽的な良さも、正直なところよくわからない。
 ただ、マルセイユの人々の魅力については少々知るところがあり、「らしさ」がよく現われた逸話だと思う。
 

 以下、https://ja.wikipedia.org/wiki/ラ・マルセイエーズから
> ラ・マルセイエーズの歌詞には、複数のバージョンが存在するが、ここでは公式版のフランス語歌詞を掲載する。
 7番まで歌える国民は少なく、そもそも歌詞を覚えてすらいない人も多いとされる。学校で習うのは1番までで、国歌斉唱の際に歌うのも1番のみのことがほとんどである。

1番 
Allons enfants de la Patrie,
Le jour de gloire est arrivé !
Contre nous de la tyrannie,
L'étendard sanglant est levé,
L'étendard sanglant est levé,
Entendez-vous dans les campagnes
Mugir ces féroces soldats ?
Ils viennent jusque dans vos bras
Égorger vos fils, vos compagnes !
行こう 祖国の子らよ
栄光の日が来た!
我らに向かって 暴君の
血まみれの旗が 掲げられた
血まみれの旗が 掲げられた
聞こえるか 戦場の
残忍な敵兵の咆哮を?
奴らは汝らの元に来て
汝らの子と妻の 喉を掻き切る!
*ルフラン
Aux armes, citoyens,
Formez vos bataillons,
Marchons, marchons !
Qu'un sang impur
Abreuve nos sillons !
武器を取れ 市民らよ
隊列を組め
進もう 進もう!
汚れた血が
我らの畑の畝を満たすまで!

2番 
Que veut cette horde d'esclaves,
De traîtres, de rois conjurés ?
Pour qui ces ignobles entraves,
Ces fers dès longtemps préparés ?
Ces fers dès longtemps préparés ?
Français, pour nous, ah ! quel outrage
Quels transports il doit exciter !
C'est nous qu'on ose méditer
De rendre à l'antique esclavage ! 
何を望んでいるのか この隷属者の群れは
裏切者は 陰謀を企てる王どもは?
誰のために この卑劣な足枷は
久しく準備されていたこの鉄枷は?
久しく準備されていたこの鉄枷は?
フランス人よ 我らのためだ ああ!なんという侮辱
どれほどか憤怒せざるを得ない!
奴らは我らに対して企んでいる
昔のような奴隷に戻そうと!
*ルフラン

3番 
Quoi ! des cohortes étrangères
Feraient la loi dans nos foyers !
Quoi ! ces phalanges mercenaires
Terrasseraient nos fiers guerriers !
Terrasseraient nos fiers guerriers !
Grand Dieu ! par des mains enchaînées
Nos fronts sous le joug se ploieraient
De vils despotes deviendraient
Les maîtres de nos destinées ! 
何と! 外国の軍勢が
我らの故郷に来て法を定めるだと!
何と! 金目当ての傭兵の集団が
我らの気高き戦士を打ち倒すだと!
我らの気高き戦士を打ち倒すだと!
おお神よ! 両手は鎖で縛られ
頸木をはめられた我らが頭を垂れる
下劣なる暴君どもが
我らの運命の支配者になるなどありえない!
*ルフラン

4番 
Tremblez, tyrans et vous perfides
L'opprobre de tous les partis,
Tremblez ! vos projets parricides
Vont enfin recevoir leurs prix !
Vont enfin recevoir leurs prix !
Tout est soldat pour vous combattre,
S'ils tombent, nos jeunes héros,
La terre en produit de nouveaux,
Contre vous tout prêts à se battre ! 
戦慄せよ 暴君ども そして国賊どもよ
あらゆる徒党の名折れよ
戦慄せよ! 貴様らの親殺しの企ては
ついにその報いを受けるのだ!
ついにその報いを受けるのだ!
すべての者が貴様らと戦う兵士
たとえ我らの若き英雄が倒れようとも
大地が再び英雄を生み出す
貴様らとの戦いの準備は 整っているぞ!
*ルフラン

5番 
Français, en guerriers magnanimes,
Portez ou retenez vos coups !
Épargnez ces tristes victimes,
À regret s'armant contre nous.
À regret s'armant contre nous.
Mais ces despotes sanguinaires,
Mais ces complices de Bouillé,
Tous ces tigres qui, sans pitié,
Déchirent le sein de leur mère ! 
フランス人よ 寛大な戦士として
攻撃を与えるか控えるか判断せよ!
あの哀れなる犠牲者を撃つ事なかれ
心ならずも我らに武器をとった者たち
心ならずも我らに武器をとった者たち
しかしあの血に飢えた暴君どもには
ブイエ将軍の共謀者らには
あの虎狼どもには 慈悲は無用だ
その母の胸を引き裂け!
*ルフラン

6番 
Amour sacré de la Patrie,
Conduis, soutiens nos bras vengeurs
Liberté, Liberté chérie,
Combats avec tes défenseurs !
Combats avec tes défenseurs !
Sous nos drapeaux que la victoire
Accoure à tes mâles accents,
Que tes ennemis expirants
Voient ton triomphe et notre gloire ! 
神聖なる祖国への愛よ
我らの復讐の手を導き支えたまえ
自由よ 愛しき自由の女神よ
汝の擁護者とともに戦いたまえ!
汝の擁護者とともに戦いたまえ!
我らの旗の下に 勝利の女神よ
汝の勇士の声の下に 駆けつけたまえ!
汝の瀕死の敵が
汝の勝利と我らの栄光とを見んことを!
*ルフラン

7番(子供の詩)
 Nous entrerons dans la carrière
Quand nos aînés n'y seront plus,
Nous y trouverons leur poussière
Et la trace de leurs vertus !
Et la trace de leurs vertus !
Bien moins jaloux de leur survivre
Que de partager leur cercueil,
Nous aurons le sublime orgueil
De les venger ou de les suivre 
僕らは自ら進み行く
先人の絶える時には
僕らは見つけるだろう 先人の亡骸と
彼らの美徳の跡を!
彼らの美徳の跡を!
生き長らえるよりは
先人と棺を共にすること欲する
僕らは気高い誇りを胸に
先人の仇を討つか 後を追って死ぬのみ!
*ルフラン

Ω