2022年1月27日(木)
ひとりの人、心ゆくまでに、他の人の
ものたるを得べきや?
長き夜を思ひつゞけて「否」と答へし。
さらばわれひとのものたり、ひとわが
ものたるを得じとや?
闇黒をもれて我胸の衷に喜びのきらめく
「われ神と心ゆくひとつになりて
あるを得ざるべきや?
今日わがかくなるに何の妨げかある」
あまきおどろきわが身ぬちをはしる!
あやしきはそをあやしとせる我よ
つちに居て神をわがものといだくを!
新しき恋
メリケ(独逸)
> 三谷隆正「問題の所在」(1929)の扉に配された詩です。きっと氏が訳しておられるのでしょう。
> けれども私にはまずもって、言葉が分からず、意味を取ることができず、この詩を読むことがかないませんでした。
そうおっしゃるあなたは、よりこなれた訳を求め、それを図書館に見出したのですね。
ひとは欲するとおりにこの世で
他のひとのものになりきることができるだろうか?
—— 長い夜思いを巡らし 否といわざるをえなかった
ではわたしはこの世で誰のものでもなく
誰もわたしのものではないのだろうか?
—— 暗闇から一筋の歓喜の光が心にひらめく
神となら欲するとおりに
わたしのもの あなたのものとなりえないだろうか?
今日そうならないのは 何が妨げているのだろうか?
甘美な驚きが身体をつらぬいて走る!
不思議なことに この世で神自身を所有することが
奇蹟になりかけていたのだ!
新しい愛
『メーリケ詩集 改訂版』/森孝明訳
しかしなお、見比べるにつけオリジナルへの渇望やみがたく、長い夜を思い巡らしているらしい御様子に、ついついお節介をいたしました。
http://www7b.biglobe.ne.jp/~lyricssongs/TEXT/S519.htm
この訳者は謙遜にも「特に最終連が非常に難解で意味がとりにくいが、自分なりに解釈してみた」と記していますが、私にはとても誠実な訳であるように思われます。翻訳という裏切りを、それらしい修辞で韜晦などしていないという意味において。
この詩とりわけ wundern と Wunder が重ねられた最終連の思想は、少々 wunderlich であり実にwunderbar であるようです。
感謝
Kann auch ein Mensch des andern auf der Erde
Ganz, wie er möchte, sein?
¯ In langer Nacht bedacht ich mir's und mußte sagen, nein!
So kann ich niemands heißen auf der Erde,
Und niemand wäre mein?
¯ Aus Finsternissen hell in mir aufzückt ein Freudenschein:
Sollt' ich mit Gott nicht können sein,
So wie ich möchte, Mein und Dein?
Was hielte mich, daß ich's nicht heute werde?
Ein süßes Schrecken geht durch mein Gebein!
Mich wundert, daß es mir ein Wunder wollte sein,
Gott selbst zu eigen haben auf der Erde!
"Neue Liebe"
Gedichte von Eduard Mörike für eine Singstimme und Klavier
Ω