自分が安心したいが為に他人を怒らないように

受験の結果がすべて出て、これからに向けて悲喜こもごものご家庭があることでしょう。
先日も高級ホテルに打ち合わせで呼ばれて行きますと、隣のテーブル席のご家族は、大学受験に合格したお祝いの家族旅行のようでした。

でも息子さんは、友達の誰々は合格旅行が外国の◯◯だとか、そういう例をうらやましそうに言っていました、笑。
地位の有りそうなお父さんでしたが、昨今の海外事情から家族の安全を考えて国内旅行を選ばれた感じでした。

私の仕事関係者の息子さんも有名国立大学に今春合格しましたので、ご家族と食事を共にする機会が有りました。
その息子さんは、昔からなかなか面白い視点が有る子供さんでした。
高校は私立の進学校でしたので、クラス分けが校内試験で厳格にされていましたが、１番目のクラスへ振り分けがされそうになりますと、あえて最後の試験を休んだり、手を抜いて２番目のクラスにわざと留まるという作為をするような生徒でした。

この時の親は怒っていました。意味不明なことをする奴だと非常に心配して怒っていました。
その頃に私が息子さんと会話して分かったことは、

＊　１番目のクラスは、息子さんが聞くにはムダで膨大な宿題が多くて、あれでは自分の弱い教科への自主勉強が出来無いので、逆に大学受験には落ちるだろう。
その時間があれば、もっとテニスをしたい、笑。

＊　大学受験に合格が目的なのに、１番目のクラスは校内試験で良い成績を収めることが目的に「すり替わっている」。
だから先生は、自分が安心したい為の勉強を生徒に強要している。
アレでは、大学受験には落ちると思う。

＊　親も１番目のクラスに自分がいれば、「何か知らんが安心する」というのが本音の理由であり、受験のことが分かって無い。

こういう話を息子さんから聞かされて、私は父親から説得と説教を頼まれていたのですが、逆に息子さんに納得させられました、笑。
何故かと言いますと、老子こそは、まったくこれと同じだったのです。

老子は、学問が非常に優秀でしたので、当時の国家の図書館を管理する官僚として数千倍の倍率の受験に合格します。
しかし、国家官僚に採用されてからも昇進試験の連続であり、赤点を取れば直ぐに首という厳しい生活でした。

その時の様子を、
＊　街を行く人々は、山桜を楽しみ、行楽に酒に食事に異性にと人生を謳歌している。
それなのに自分は、食事もやっとの収入で、勉強につぐ勉強で刑務所に居るようだ。
いったい自分は、何をしているのだろうか。
（老子の言葉　第二十章　「生かされていることに感謝できれば、すべてはOK」）

老子は図書官僚のトップに何度も推薦されますが、わざと試験の点数を低めにして自己調整し、中間の位置に居ることを優先されました。
その理由は、官僚のトップは政治に関わる仕事が増えるからでした。老子はこれを非常に嫌いました。

私は、息子さんのもっとテニスをしたいという希望（肉体を鍛えること＝将来の自分への財産）と、
「大人は形（クラスや環境）で、自分が安心したいだけである」
という指摘に感心してしまいました。
また、本当の意味での知恵と、物事の本質を「最初に」見抜く知能を感じました。

親御さんには、いずれにせよ大学受験には受かるだろうと言って、様子を見るように言っていました。
その結果は、今春にやはり現役合格となり、有名大学の受験結果は１番目のクラスも２番目クラスも合格人数に差異は無かったそうです。むしろ１番目のクラスは、何人かは病んでしまった生徒がいるそうです。
人生とは、「塞翁が馬」。何が幸いするのかは未知なのです。

人間は、相手の為と言いながら、
「自分自身が安心したいが為に他人（家族・会社でも）に怒る」
というサガも有ることを知って置きましょう。

生かして頂いて　有り難う御座います

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