愛情深い人々

高齢の患者を、自宅で臨終まで家族で向き合いながら介護をする様子のドキュメンタリー番組を見ました。
その介護を行う子供さんも、既に７０歳を過ぎた御方の家庭もありました。
老老介護、すなわち親子であっても、老人が老人を介護する時代が日本で始まっています。

そして、その老老介護の自宅を訪問して診察する医師も高齢者であるという、「老老医療」という事態が今の日本で始まっています。

・　患者も、介護者も、医師も、あと何年自分は生きるのだろうか？

このように死を見詰めている者同士が、１つの部屋で向き合っている様子に、恥も外聞もない、魂の本音と「真の思いやり」を見た思いがしました。

番組の中でも特に感じるものが大きかったケースは、末期ガンの父親を全盲の娘さんが介護をするという二人だけの家庭の様子でした。
家の頼りだった母親は、既に他界しておられません。
この娘さんというのが、丁寧な言葉遣いをされて、非常に立派な態度であることに感銘を受けました。

目が見えないながらも、呼ばれれば慎重に歩きながら枕元に駆け寄り、寝床を動かしたり、親の食べ物をけなげに用意しようとする様子が映されていました。
火事は大丈夫なのだろうか？　泥棒に入られないのだろうか？　
暖房は、まさか灯油で無ければ良いのだが。　買い物は、どうするのだろうか？

誰もが自分自身に置き換えれば、コノ世の極限の厳しさを改めて考えさせられることでしょう。
娘さんが、父親と最期に会話が出来た内容が、些細なことの口喧嘩だったことを気にされていました。
その悩みに対して老医師は、それが親子というものであり正常な姿だから安心するように慰めておられました。

老医師は、この親子の家庭だけは、診療日以外の日も気にかけて訪問されていました。
銭金の問題ではなく、心からの心配心が医師にそうさせていたのでしょう。
高齢の医師は、御自分の寿命も考えて、現場での医療を自分の修行とすると誓った現代の観世音菩薩（世間の音と声を聞く菩薩）だと私には観えました。

文豪の森鴎外の孫であり、東大病院では年間１０００件の手術をこなした現場主義の医師だったようです。
学内営業で出世して行く同期には目もくれず、現場主義・職人主義を貫いた医師だと感じます。
「死を生きた人びと」（https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4622086905/isehakusandou-22）

老人同士が助け合う世界には、本音がぶつかり合い、その人間の真の姿が出ていると感じます。
高齢になっても引退せずに、誰もが望む在宅医療に尽力する理由に、
「人間への興味が尽きないから」
という愛情深い言葉を漏らされていました。

マザー・テレサが発言した「無関心こそは罪」。
老医師は、まさに人間への愛情からの関心が尽きない御方でした。

＊　天気の良い地域は、防災意識で静観です。

生かして頂いて 有り難う御座います

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