○『鳥取駅南の鉄道公園・「鳥取鉄道記念物公園」のはなし』シリーズ記事一覧
・鳥取駅南の鉄道公園・「鳥取鉄道記念物公園」のはなし(あらまし編)→こちら
・鳥取駅南の鉄道公園・「鳥取鉄道記念物公園」のはなし(展示物観察1:線路まわり編)←現在地
・鳥取駅南の鉄道公園・「鳥取鉄道記念物公園」のはなし(展示物観察2:機器類展示コーナー編)→こちら
・鳥取駅南の鉄道公園・「鳥取鉄道記念物公園」のはなし(展示物観察3:地上駅再現ホーム編)→準備中
前回(あらまし編)の記事では「鳥取鉄道記念物公園」についてのあらましと、過去の『とっとり市報』などの資料を参考にしながら、この鉄道公園は鳥取駅の高架化事業などの完成を記念して、かつての地上時代の鳥取駅の雰囲気を残すために「沢井手公園」内に開設されたという話を書きました。
さて、今回からは現在の鉄道公園に残っている(あえてこう書きます)色々な展示物についてご紹介する記事を書いていこうと思います。
この公園には敷地の中央を南北にのびる線路が敷かれており、その周辺にホーム、信号機、踏切などの展示物が配置されています。
ただ残念なことに、それらの展示物について解説する案内板は現状ではほぼ失われてしまっています。
(2020年4月追記:鉄道公園開設の経緯と展示物の名称を記した案内板が設置されました→こちら)
そこで本記事では、大変差し出がましいながらも、筆者の浅い知識でもってネット上の詳しい情報の助けを借りつつ、これら展示物についての解説を試みようというものです(汗) まあ、多分に自己満足的なものが強いのですが・・・
(ネットの鳥取鉄道記念物公園について書かれたブログ記事などでも、自分が見た限りは個々の展示物についての解説は意外と少ないです)
以下、筆者のうろ覚えの記憶に頼っている記述もあり、もしかしたら覚え違いによる事実との誤りなどがあるかもしれませんが、なにとぞご容赦ください。
では、まずはこの鉄道公園において最も「鉄道」っぽさを感じさせる要素である線路とその周辺にあるものから見ていきましょう。
(特記のない写真は2018年8月・鳥取鉄道記念物公園にて撮影)
○展示物観察1:線路まわり編もくじ
(見出し文字列または写真クリックで該当項目へジャンプします)
・線路・分岐器(ポイント) |
・おもり付転換器 |
・特殊信号発光機 |
・入換信号機 |
・踏切警報機 |
・踏切遮断機 |
・踏切渡り板 |
・車止め |
・腕木式信号機(場内信号・通過信号) |
・腕木式信号機(出発信号)の設置跡? |
○展示物観察1:線路まわり編
- 線路・分岐器(ポイント)
プラットホーム付近から分岐器(ポイント)・踏切側を見たところです。
一応、線路はマクラギの上にレールが固定された一般的なスタイルですが、バラスト(敷石)は敷かれていないようです。
もっとも、線路にバラストがないのは、投石によるイタズラ防止的な意味合いもありそうな気がします。
線路と右側の広場のスペースとは細長いコンクリートブロックで区切ってあったようですが、部分的に削られてなくなっています。
同じくホーム付近より低いアングルから。レールは背が低くて細く、古びた赤黒い色をしています。
このレールは列車の行き来の少ないローカル線や駅の側線で用いられた30kgレールか37kgレールあたりでしょうか?
レール幅(軌間)は測っていませんが、たぶん国鉄在来線標準の1067mmでしょう。
現状はレールだけを残して線路は土に埋もれ気味で、石がごろごろした普通の線路のイメージとは異なりますね。
廃線跡ともちょっと違うような・・・。
前回の再掲写真ですが、線路づたいにホーム先端部まで進んでみたところです。
分岐側がぶつっと途切れた不自然な配置の片開き分岐器と、線路脇に設置された背の高い・低い2基の信号機が見えてきます。
ささやかなストラクチャーながら、ただ線路が敷かれているよりもなんとなく鉄道施設っぽい雰囲気が盛り上がりますね(?)
分岐器付近はホーム付近と比べてマクラギがほぼ完全に土に埋もれており、雑草が生えてきて線路が次第に草生しつつあります。
その分岐器自体はちゃんとした本物のようで、色々な形状に加工されたレールが組み合わされてできていることがわかります。
分岐器の構造についての詳しい解説はウィキペディア「分岐器」の項目へどうぞ。
分岐器を線路が分かれる根元側から見てみます。ここで線路は直進あるいは右方向へと分岐しています。
この部分は手前の細長くとがった形状のトングレール(先端軌条)が左右に動くようになっていて、そのトングレールに誘導されて列車の進路が切り替わる、分岐器の中でも特に主要な部分です。
しかしながら、この分岐器の可動部分は上述の通り土で詰まったり埋もれたりしており、もう分岐の向きを切り替えるのは無理そうです。
傍らには一応、分岐器切り替え用のレバー(おもり付転換器)が設置されていますが、そこからトングレールに繋がっているはずのロッドも、土に埋もれています。
(おまけにすっかり錆びきっていることでしょう)
- おもり付転換器
分岐器の傍らにある切り替え用のレバーです。
これは「おもり付転換器」と呼ばれるタイプで、ダルマ式とも通称されるものです。
駅や車庫などの側線にある手動分岐器を切り替えるのに古くからよく用いられました。
おもり付転換器はレバーを起こして内部のクランクを動かし分岐器を切り替える仕組みだそうですが、
そのレバーにおもりが付いているのは、その重みでクランクを介してトングレールを基本レールにしっかり密着させるためで、
これで車両通過時に分岐器が不意に切り替わり脱線するのを防ぐ意味合いがあるそうです。
現在では別項で紹介するポイントリバーS形転換器など後継の手動転換器や電動式転轍機などに取って代わられているようですが、
まだ現役で使われているものも見かけることがあります。
なおこの転換器については
ブログ「懐かしい駅の風景~線路配線図とともに」さんの記事「手動の転てつ器 その2」
(http://senrohaisenzu.cocolog-nifty.com/blog/2014/12/post-9c4d.html)
が参考になります。
(おもり付転換器の設置例、2011年6月・長野電鉄須坂駅)
(おもり付転換器の設置例、2015年10月・上毛電鉄大胡電車庫一般公開)
レバーに付いているおもり部分の半分が白、もう半分が黒くなっているのは分岐器の開通方向を見分けるための目印のようなものです。
上半分が白く見える場合は分岐器が定位(いつも開いている方向)に開通していることを示し、上半分が黒く見える場合は分岐器が反位(使うときだけ開く方向)に開通していることを示します。
ちなみにこの鉄道公園の転換器には途中にレバーの動きをブロックする棒(南京錠が掛かっている部分)が仕込まれていて、
むやみに分岐器を切り替えられないようになっています。
このレバー部分のおもりはかなり重さがあり、
分岐器や転換器の可動部分に足や手を挟まれると大変なケガにつながるので、
事故防止のためにもともと切り替えられなくしてあるのでしょう。
- 特殊信号発光機
分岐器付近にある背の高いほうの信号機です。正五角形の本体に赤いレンズが5つ組み込まれています。
この信号機は「特殊信号発光機(回転形)」と呼ばれるもので、異常時に赤色灯が2つ反時計回りに回転して走行する列車に直ちに停車するよう知らせる仕組みです。
詳しい解説はウィキペディア「日本の鉄道信号#特殊信号発光機」の項目へどうぞ。
(特殊信号発光機(回転形)の点灯例、2019年8月・京都鉄道博物館)
ゲーム「電車でGO!」シリーズの踏切事故イベントで「非常ブレーキ使え」のテロップと同時に出てくるお馴染み(?)のアレですね。
この鉄道公園での設置例は、前方に見える踏切が自動車の立ち往生などで支障され、非常ボタンが押された場合に緊急停止を知らせるという想定なのでしょう。
ちなみに信号機本体の背面には、内部の電球交換用と思しき蓋があります。
見づらいですが、上に取り付けられている蓋には逆三角形の刻印があります。
たぶんこの信号機を製造したメーカーのものなのでしょうか?
- 入換信号機
次に、もうひとつの背の低いほうの信号機を見てみましょう。かまぼこ形の本体に3つ、その下に1つ点灯する部分があります。
これは「(灯列式)入換信号機」と呼ばれるもので、駅や操車場の構内で車両を移動させる(入換する)場合に用いられる信号機です。
やはり詳しい解説はウィキペディア「日本の鉄道信号#入換信号機」の項目へどうぞ。
ちなみに、鳥取駅と湖山駅近くにある車両基地(西鳥取車両支部)の間を回送する列車は、通常の信号機ではなくこの入換信号機の現示(信号の表示内容)に従って運転されているようです。
(入換信号機の点灯例、2018年9月・日光線日光駅)
灯列式の入換信号機はかまぼこ形の本体に3つある白色灯のうち、2つの白色灯の並びによって車両の進行・停止を指示します。
点灯例の写真は停止現示で、近年は右下が赤色灯になっているタイプも見かけます。
本体の下にある青紫色に点灯する部分は「入換信号機識別標識」と呼ばれるものです。
この標識灯が点灯していれば上の本体は「入換信号機」、点灯していないもしくは設置がない場合は「入換標識」として機能します。
ところで、入換信号機の本体背面には塗りつぶされながらも製造銘板が残っていました。
それによると
「電気入換信号機機構、製造番号6497、製造年月昭和49年7月、東邦電機工業株式会社」
と書かれているようです。
また、入換信号機識別標識にも同様な製造銘板があり、
「入換信号機識別標識、種類柱上(?)用、製造番号3283(?)、製造年月昭和49年7月、東邦電機工業株式会社」
とありました。
メーカー名の「東邦電機工業株式会社」は現在も盛業中の会社で、おもに鉄道用の通信・信号・保安機器の設計製造を手がけているそうです。
それにしても鉄道公園の入換信号機はレンズが割られていて無残な姿です。
背が低いため破壊活動の標的になりやすく、石をぶつけられたり棒でつつかれたりしたのでしょう。
2018年当時、レンズ部分にはガラスの残骸があり危ない状態でした。
(2023年10月訂補・追記)
(2019年4月撮影)
その後、この入換信号機のレンズ部分に残っていたガラスの残骸は除去されていました。
- 踏切警報機
さて、今度は分岐器から線路の終端のほうへ進んで、踏切周辺を見ていきます。
まずは踏切全体を若干引いたアングルから。よく見かける黄色と黒の塗り分けの警報機が備わった意外と立派な(?)踏切です。
設備としての踏切の詳しい解説はウィキペディア「踏切」の項目へどうぞ。
この付近は踏切一式、おもり付転換器、車止め、腕木式信号機など、この鉄道公園では展示品の密度が高い一角となっています。
踏切の東側、山白川沿いの入口方面から踏切を見たところです。
こちら側には赤色の警報灯が横に並んだタイプの踏切警報機(非常ボタン付き)が設置されています。
こちら側の踏切警報機ですが、全体的に傷みが進んでいて、×字形の踏切警標(クロスマーク)は左下の部分がなくなっています。
警報灯のレンズが割られていないのがまだ救いでしょうか。
見えづらいですが、柱の上には警報音を鳴らすスピーカーが取り付けられていたと思しきステー(支持具)があります。
しかしスピーカーそのものはありませんでした。
踏切警報機の柱に取り付けられている非常ボタンスイッチです。
踏切で自動車が立ち往生した場合など、非常時にはこのボタンを押して・・・、と言いたいところですが、このスイッチは肝心の押しボタン部分がなくなってしまっています。
黒く塗られていますが、ところどころ色がはげて下地が見える部分から察するに、かつては水色っぽい塗装だったようです。
この非常ボタンにはわかりやすいことに正面に製造銘板が取り付けられていました。
それによると
「踏切支障報知用操作器、定格DC24V、接点電流容量3A、製造番号476410、
製造年月昭和47年2月、東京 株式会社三工社 幡ヶ谷」
とあります。
メーカー名の「株式会社三工社」は鉄道用信号機器や鉄道車両部品はじめとして、交通信号機器、道路標識、ガス機器など様々な製品の設計製造を手がける会社として現在も盛業中のようです。
逆三角形の会社のマークが目立ちますが、そういえばこのマークは上で紹介した特殊信号発光機にもありましたね。
次に踏切を渡って西側にある踏切警報機です。
こちら側のものは赤色の警報灯が縦に並んだタイプです。非常ボタンはありません。
反対側の警報機とは対照的に、こちらはそんなにボロボロになっている感じではなく、ちょうど傍らのヒマラヤスギの木に雨風から守られている格好のようでした。
- 踏切遮断機
一見するとこの鉄道公園の踏切は踏切警報機だけが設置された踏切(第3種踏切)の再現に思えますが、上の写真の所々で写っているように、遮断棒がなくなって動作部分の本体だけになった遮断機が2つあります。
したがって、一応は警報機や遮断機一式がすべて備わった踏切(第1種踏切)の装いではあるようです。
こちらは東側(入口側)の遮断機です。
遮断棒は取り付け部に保持されている部分を残して折れてなくなっています。
遮断棒の取り付け部はつり合い用おもり(見えづらいですが)の作用で斜め上を向いた状態で止まっています。
遮断機本体に製造銘板が残されていたので、記録しておきます。
「腕木式電機踏切しゃ断機、種類B形、定格電圧D.C.24V、
会社形式MCG-6SD、製造番号A32526、昭和49年12月製造、株式会社京三製作所」
と書かれています。
メーカー名の「株式会社京三製作所」は鉄道信号システムや交通管理システムに関係する製品を手がける会社で、身近なところだと街中に設置されている道路信号機などでもよくその名を見かける、お馴染みのメーカーですね。
こちらは西側の遮断機です。こちらも遮断棒はありません。
こちらの遮断機は反対側のものとは異なり遮断棒の取り付け部が線路から見て外側にあります。
同じ正面向きから見た場合、遮断棒が降りる向きの左右が入れ替わったタイプと見ることもできそうですね。
(2019年4月撮影)
こちらの遮断機の製造銘板は写真の通りで、
「腕木式電機踏切しゃ断機、種類B形、定格電圧D.C.24V、
会社形式MCG-6SD、製造番号A32571、昭和49年12月製造、株式会社京三製作所」
と書かれていました。
ところで、うろ覚えの話ですが自分が子供の頃はまだこれら遮断機の遮断棒が健在で、手で上げ下げして遊んだりした記憶もあります。
ところがいつの間にか遮断棒は根元からぼっきり折れていて地面にうち捨てられてしまい、気がついたときには姿を消してしまっていました。
以後、修復されることはなくやはりそのまま放置です。
- 踏切渡り板
さて今度は踏切の渡り板を見てみます。
コンクリートではなく白っぽい材質の石でできた渡り板で、いかにも古めかしそうなタイプです。
ちゃんと脱線防止ガードレール(護輪軌条)にフランジウェイ(車輪のふちが通る溝)が設けられた本格的なものですね。
渡り板の幅は測っていませんがそんなに広くなく、だいたい幅3mちょっとくらい、普通乗用車1台分程度といったところでしょうか。
線路の両脇にある渡り板と走行用レールの間にすき間がありますが、ここには以前、木の板が敷き詰めてあったような気がします。
(踏切渡り板の例、2017年1月・一畑電車一畑口駅付近)
この実例ではコンクリート製の渡り板ですが、雰囲気は似ています。
木の板はまさに渡り板と走行用レールの間にこんな風に設置されていたような気がします。
しかし結局、現在はその木の板も朽ちて取り払われ、固定していた釘だけが残っています。
(その釘やらすき間やらにつまづくと危なそうですね・・・)
前述の折れた遮断棒も、一時期はこのすき間の中に放り込まれていたような・・・。
石の板の並びがガタガタになり、まだらに黒ずんだ渡り板のこの雰囲気が、設置されてからの年月の長さを物語っているような気がします。
- 車止め
今度は踏切の渡り板の先、というかすぐ隣にある車止めです。
車止めとは読んで字の通り、線路の終端部分において車両が線路外に逸走してしまうのを防ぐために設置される設備です。
設置された場所は公園の敷地の端、道路までぎりぎりになっています。
車止め標識はありませんが、黄色と黒の警戒色でここで線路は終わりなんだ、と強く主張していますね(笑)
このようなレールを曲げて作った車止めは「第3種車止め」と呼ばれるタイプに分類されます。
詳しい解説はウィキペディア「車止め」の項目へどうぞ。
(第3種車止めの例、2017年8月・若桜鉄道若桜駅)
このタイプの車止めはおもに駅や車庫の側線の終端部に設置されることが多いようです。
車止め本体には設置例の写真のように色が塗られることもあれば、無塗装のものなどもあり様々です。
ちなみに写真の手前方向、駅のホームから続いてきた線路は、踏切を過ぎると数十cmも行かないうちに車止めで終了です(笑)
現実にはおよそなさそうなシュールな状況が、この車止めの存在感をいっそう際立たせているような気がします。
- 腕木式信号機(場内信号・通過信号)
つぎに、踏切のそばにある背の高い信号機です。
これは「腕木式信号機」と呼ばれる古いタイプの信号機で、電球やLEDの光の色で信号の現示(信号の表示内容)を知らせるいわゆる色灯式信号機とは異なり、腕木式の名の通り上下する信号腕木の傾き具合で機械的に信号の現示を知らせるものです。
腕木式信号機は色灯式信号機や自動閉そく方式などが普及する以前は全国の鉄道で広く使われましたが、2019年現在では保存目的で残っているものを除き、現役で使われているものは青森県の津軽鉄道にわずかに残るのみです。
鳥取近辺では、因美線の智頭~津山間、美作加茂駅で1999年まで使われていたものが最後だと思います。
腕木式信号機は鉄道にあまり詳しくない人でも、なんとなく蒸気機関車の時代のイメージというか、古い時代の鉄道設備であることは伝わりやすいのではないかと思います。
したがって、この手の鉄道公園では割と見かけやすい定番(?)アイテムだといえるでしょう(荒廃しているものも多いですが・・・)。
腕木式信号機の解説についてはウェブサイト「きはゆに資料室」さんの「特集 腕木式信号機」というページ
(http://www.kihayuni.jp/SP/sp-udeki-1.html)や、
ウェブサイト「LazyJack」さんの「信号装置 腕木式信号機の細部」というページ
(http://www.lazyjack.co.jp/home/non.php?catid=31&page_3.html)
が参考になります。
信号腕木部分のアップです。もはや隣のヒマラヤスギの枝葉の中に埋もれてしまっています。
この信号機は信号腕木が2つ付いていますが、上の赤と白の腕木が場内信号機(主本線用)、下の黄と黒の腕木が通過信号機です。
場内信号とは駅などの停車場の入口に設けられるもので、その停車場の線路に進入してよいかを指示し、通過信号とは停車場を通過する列車に対し、出発信号機の現示(その停車場を停車せずに通過できるか)を予告する信号です。
写真の状態の場合、どちらも信号腕木が水平の状態なので、この信号機は「場内停止」「通過注意」を示していることになります。
信号腕木の右側には夜間など腕木の状況が確認しづらいときに補助手段として信号の現示を知らせる色付きレンズの点灯部分があります。
レンズの後ろからカンテラや電灯で照らすものですが、上の場内信号のレンズはなくなっています。
(場内・通過用腕木式信号機の保存例、2019年8月・鹿児島本線門司港駅)
なお、腕木式の場内信号機は青=進行、赤=停止、通過信号機には青=進行、黄=注意のレンズがはめ込まれますが、この鉄道公園の通過信号機に残っているものは気のせいか注意現示が妙に赤っぽく見えるような・・・。
腕木式信号機根元の部分です。ここには信号腕木を動かすリンク機構が設置されており、柱の上の信号腕木から下へのびていた動作ロッドが写真右上のエスケープクランクに接続されています。
さらにこのエスケープクランクは円盤状のおもりが付いた動作かんと組み合わされています。
(この信号機の場合、場内信号機と通過信号機それぞれの動作用に2組あります)
(腕木式信号機の動作かんとワイヤーの接続例、2019年8月・京都鉄道博物館)
この動作かんの上がっている側の端部、リング状の部品があるところは実際には動作用ワイヤーが接続されていた部分で、これを駅の信号扱い所にある信号てこで操作することにより、信号腕木を上下させていました。
ちなみにおもりが下がっている状態が腕木式信号機の定位(いつも表示している現示)、信号てこでワイヤーを操作し、おもりが上がった状態が反位(使うときだけ表示する現示)です。
もし動作用ワイヤーが切れてしまっても、おもりの作用で自動的に信号機が定位(この信号機の場合は停止信号)に戻る仕組みとなっています。
- 腕木式信号機(出発信号)の設置跡?
ところで、この鉄道公園の腕木式信号機ですが、実はかつてもうひとつ存在していたようです。
写真は上の項目で紹介した特殊信号発光機とおもり付転換器との間にあるコンクリートの土台ですが、信号機の柱を固定するための4本のピンの跡が土台に残っています。
ここに出発信号用と思われる腕木式信号機が設置されていたようです。
出発信号機とは駅などの停車場から出発する(通過する)列車に対して、文字通り出発してもよいかを指示する信号機です。
(出発用腕木式信号機の保存例、2017年8月・岡山県美咲町柵原ふれあい鉱山公園)
この腕木式信号機は今も残っている場内・通過信号用腕木式信号機が駅のホームを背にして建っているのとは逆に、出発信号用ということで駅のホームを向いて建っていたようです。
現存しない理由は定かではありませんが、老朽化のため撤去されてしまったのでしょうか?
撤去には仕方ない事情があったのだろうとは思いますが、せっかく駅のホームが再現され、場内信号機・出発信号機とそれらしいシチュエーションで揃っていたのに、出発信号機だけがなくなってしまったのは惜しいことだと思いました。
なお、この腕木式信号機はあらまし編で紹介した『とっとり市報1981(昭和56)年12月号』の記事内に設置された当初の姿が写されています。
(白黒写真でほぼ柱の部分しか写っていないのでちょっと分かりにくいですが)
また『とっとり市報1999(平成11)年11月15日号』の記事「シリーズ 公園に行こう⑥ 沢井手公園(鳥取鉄道記念物公園)」に掲載されている写真にもこの信号機の姿が見られるので、1999年の時点ではまだ健在だったようですね。
以上で鉄道公園の線路まわりにある展示品についてのはなしは終わりです。
次回は公園西側の隅にある鉄道用器具の展示コーナーについて記事にしていこうと思います。
→展示物観察2:機器類展示コーナー編へ