醉蝗茶房

80's&水滸&異常な日常

ダメな人たち 補足資料2

2007年10月21日 08時53分22秒 | ダメな人たち
はい、予告通り第二弾資料の部長論文っす。
しかし、課長昇格の半年後に部長昇格させるのって如何なもんか(^_^;
10年前なんで時代を感じるねぇ(笑)

--------------------------------------------------------------------

 かつては絶対に倒産はしないと言われていた銀行、大手証券の倒産が相次ぐ昨今の状況は、バブル景気の際の過剰な投資、多角経営の失敗等に端を発し、さらには金融業界の不祥事、ならびに日本版ビッグバンの到来と目の廻るような変化とあいまって、加速度的に経済に打撃を与え続けている。
 当社においても、主要取引銀行である拓銀の倒産と言う事態を迎え、決してそれらが人事ではないことを実感させられることとなった。
 このような環境にあっては、銀行自体も経営の立て直しを迫られ、現在の貸し渋り傾向に拍車がかかるのも、ある面やむを得ないと言わざるを得ない。
 以上のような外的要因による経営の圧迫への対応、ストレートに言ってしまえば経営資金の供給源の確保は内部資金の留保の少ない当社においては資本コストが高かろうとも必須であり、当面銀行からの融資が主な資金源となるのは避けがたい。
 あえて言うまでもなく、これらの金融機関に対するスタンスは企業としての社会的な信用の確立以外にはなく、具体的には安定した業績の拡大、特に収益性を主眼とした経営を心掛けねばなるまい。

 平成9年度の決算はまだ出ていないが、現在までの状況から類推するに、全社的には前年度並の収支、各部毎に見た場合、利益計画を満たせそうもない部も見受けられ、平均した安定性を誇っているとは言い難い。これらを改善して、全社の利益体質が平均的な収益性によって成り立つ状況を造ること、言い換えればそれぞれの部がそれぞれ本来の責任を果たすことが当社の課題となろう。
課題に取り組むには、目的とする状態に対しての現在の阻害要因を見極め、これを排除もしくは改善していくことから始めなければなるまい。これから、それらの問題となる要因について述べていきたいと思う。
 まず、現状において発生しているトラブルの事象を考察すると、以下ようなものが挙げられる。

 ・予定外の工数、要員の追加投入によって、原価が増大した
 ・顧客調整がうまく取れず、外部要因乃至内部要因に起因する追加稼働の対価が獲得できない

 これらを分析すると、いくつかの問題点が思い当たるが、主要なものについて述べて見たい。
 一つは品質の問題で、これは今更語るまでもなく、我々の仕事においては最も重要なファクターである。高品質の仕事をすることは(生産物に限らず、無形の提案等においても)、顧客から見た信頼感を高める近道である。まず、品質の向上によって顧客の信頼を勝ち得ていれば、単価交渉においても追加工数の交渉においても、我々の発言の持つ説得力の重みが違ってくるため、有利な展開が期待できる。
 また、当然のことながら、品質の低下は無用の稼働を伴うため、原価の増加に直結する。顧客から見た場合、劣悪な品質の改善を意図した稼働は発注先の持ち出しで行うことが基本であり、本来受注側の責任で行う品質の維持に対して、顧客が責任を負う必要性は極めて少ない。これを前提に考えれば、障害等による追加稼動を顧客に対して請求することは、顧客の信頼を失って当然とも言える行為である。
 現在では、ISO9000対象のプロジェクトも珍しくなくなってきており、各顧客の各プロジェクト毎に品質向上策が検討されてはいるが、上述したように本来が我々の業務範疇であるからには、当社としての品質管理の指標、手法の確立は必須であり、早急に具体的な検討に着手する必要性があろう。
 品質の裏付けとなる要因は、上記のプロジェクト管理技術と開発技術である。プロジェクト管理はリーダ、マネージャクラスに対しての技術要件であり、開発技術は開発要員に対しての技術要件であるが、これらの当社としての取り組みの方向性についても、一考を要する。
 プロジェクト管理技術は手法に依存する部分が大きいため、例えばISO9000に則った管理要領等を遵守することで、ある程度の水準を維持することが可能である。当社では、全社標準となる要領等は存在しないことから、コストをかけてでも全社の水準を保つ努力が必要である。
 一方、開発技術についてであるが、現在の市場動向を見てもこれと特定できる方向性は決めにくい。これは、ハード、ネットワーク、OS、言語、ツールとどれを取っても多様化が進み、顧客の要件に合った最適なシステム要素の範囲が広がったことによる。このような状況の中で、技術教育を行っていくことは無論重要であるが、現実問題として何にでも対応できる要員の育成など、一朝一夕にできるものではない。
 であれば、多少消極的ではあるが、引き合いを選択する際に当社の体力に見合ったものを受注する配慮も必要であろう。これは、決して未見の技術に手を出さないと言うことではなく、予想外の稼働を積んでも収支があうよう、安易に受注せず、受注以前の計画段階で十分に検討した上で(他部門への相談も含めて)受注の可否を決定すると言うことである。

 もう一つはプロジェクトの受注時点での収支計画についてである。我々の業界、特に当社のように受託開発が主流のソフトハウスにとっては、残業費は変動費に相当し、原価の設定を難しいものとしている。当社では見積額の設定に対しての基準は特にないが、普通に考えた場合、見積額の決定は安全率を含んだ原価に利益を積んだものが基本である。
 つまり、営業努力の目標値が利益率であり、受注確定時点の利益率分は年度内の粗利として管理されるべきものである。これに対して受注確定時点の原価率は安全率を含んでいることと既に確定している数値であることから、目標値ではなく基準値であって、現場の努力はこれを下げることにある。
 現在、当社で年度初頭に決定される原価率は、部門の最終的な目標値であって設定時の論理的な根拠が甚だ曖昧である。当社の収支はプロジェクト毎の収支の積み上げで成り立っていることを考えれば、プロジェクト単位での利益管理、コスト管理は避けて通れない。
 現状発生しているトラブルを見ると、このような視点からの管理がなされていないことに起因すると思われるものもあり、これを改善しない限り過ちが繰り返される危険を常に孕んでいると言える。
 また、別の観点からこのことを論じれば、昨年から実施されている新人事体系は、主任クラスより上に対して実績を基にした評価を行うこととなっているため、数値化した評価基準としての利益率、原価率は最もこれに適応するものと考えることができる。
 いずれにしても、現在の当社のシステムでは主任クラスはもとより、課長クラスにおいても収益に対する意識が希薄で、経理もしくはプロ管のみが全体の収支を管理している状態では、安定した収益性を図ることには程遠いと言わざるを得ない。

上記の二点に比べれば小さな要因と言えるが、情報の共有という面でも問題は多々あると思われる。
現在の当社は開発セクションが3つに分かれているが、お互いがお互いの内容を良く知らないと言うのが実状である。
これによる弊害は意外と大きいと思われるので、ノウハウの平準化・人材の有効活用・ビジネスチャンスの効率的な獲得と言う観点から例証を挙げてみたいと思う。

新たな技術をベースにした新規プロジェクトが発足した場合、通常は業務要件とともに技術要件の調査/習得から入っていくこととなる。この時、書籍やセミナー等で習得できる内容は極一般的なものであって、ノウハウと呼べるものではない。この状態で開発を進めるとよく起こるのが、システム上の禁忌を犯してしまって、品質の低下、工数の増加を招くと言う事態である。
これは、誰が(どこが)そのノウハウを持っているかさえ押さえていれば、事前に相談することで避け得るトラブルであって、全く無駄なコストである。他部のメンバとの連携が図れることは、一からノウハウの習得を行うことに比べて、スキルアップのスピードが速くなり、特定技術の技術格差低減の即効薬である。

当社の規模と業績からすれば、何処においても人材不足は頭痛の種であるが、状況によってはプロジェクトの切れ目等でつなぎがうまく行かず空き工数が発生する場合が存在する。
現在は、各部内の空き工数についてはほとんどが不明確で、対処も各部内で閉じた形で行われるのが通常である。
しかし、その一方で要員不足のため、社外の要員の調達に頼らざるを得ないケースが頻繁に見られる。ここでも、社外要員の使用は原価の高騰を招き、調達できない場合はさらに品質・スケジュール等に影響を及ぼし、原価上昇の一因となる。
これは他部の空き要員の状況を把握し、適宜要員配置を行うことで、全社としては大幅なコスト低減となり、少ない人材の有効活用となる。

営業経由ではなく直接現場に引き合いが来るケースがよくある。このような場合、その引き合いは受けると受けないとに関わらず、そのセクション内でのみ判断されることが多い。特に見送られる引き合いでは、要員の状況、工数の大小、技術的な問題、開発期間、提示された単価等の様々なことが理由となるが、先々の展開を考えるとつないでおきたいものもある。
これも、他のセクションではそこの状況に適合するものも有り得ることで、全社で全ての引き合いを共有していないことが、みすみすビジネスチャンスを逃していることになる。

以上のような例は枚挙に暇がなく、その他にもデメリットはいくらも挙げられよう。小なりとは言え、積み重なれば大きな損失若しくは利益に直結するものである。「愚公山を移す」の譬えのように、派手ではないが地道に小さな無駄を省いて利益を上げる努力は比較的容易なことであり、改善にさほどの労力を要するものでもない。
少なくも情報処理を以って業務としている我々にとって、情報の共有がなされていないということは「紺屋の白袴」の謗りは免れ得ず、自戒したいところであろう。

さて、通産省発表の平成9年度12月特定サービス産業動態統計・月報によれば、情報サービス業の12月の売上高は前年同月比16.4%増と好調である。同速報でも10.3%増と他業種に比較してもかなり上向き傾向である。
中でも、我々の主業態である受託開発が同22.5%増とアウトソーシングと並んで突出している。
内容的には公官庁、通信業向けの開発、イントラネット構築関連の開発の需要が好調である旨、同資料は伝えている。
これらのことは、我々が現在手掛けている、または既に終了した最近のプロジェクトを見ても、首肯できるものである。コモンキャリアについて言えば、競争の激化から同業他社との差別化を図るための新サービス開始によるシステム投資であり、拡大する需要に対応するためのシステム投資であろう。最近の状況を見る限り、ここしばらくは勢いは衰えないかと推測される。
また、未だ同資料上では現れていないが、今年度はビッグバン関連で金融関係の開発増加があるであろうことは、引き合い等からも想像するに容易である。
しかし、これらの流れはいずれも好況な経済を背景にしたものではなく、企業の生き残りを賭けたものであるから、長期的な傾向と見ることは危険であろう。

このような状況は、今後も業種を変えて起こり得るものと考えられるが、それに対して当社の取り得る経営指針の一つとして、短期限定のスポット的な特化政策の採用は検討の余地があろうかと思われる。
この発想は至って簡単で、必要な時に・必要なものを・必要なだけ集めて投入すると言うプロジェクト制の根本をより先鋭的に拡大解釈したものと、特化の美味しいところだけを融合したものに過ぎない。
以前、バブル全盛の頃に銀行の三次オンを狙って特化政策を取ったソフトウェア開発会社は、知っての通り、大手から中小まで相当のダメージを受け、倒産・経営縮小をせざるを得ない状況に追い込まれた。かれらの失敗は、概ね現状のプラス要因が永久に続くと勘違いして、過剰な採用・新技術の軽視・教育の手抜きを行い、先に対する読みと対策を怠った結果である。別の表現をすれば、不要になった時に不要なものを(スキルを)次にどうするかを忘れていたということであろう。
スポット特化は、精々数年をターゲットに、特定の業種/技術に対してのノウハウを当社のセールスポイントとして営業を進め、これをその時点の当社の企業色として他社との差別化を図ると共に、社内に偏在する技術的・業種的なノウハウを各部を乗り越えた形で協力することで共有し、全社としての売上・技術・生産性の向上、人材の有効活用を図ることを目的とする。
これに伴い、事前の検討課題として、社内受発注制度の確立、管理会計とプロジェクト会計の明確な分離、要員公募制度の検討等は必須である。
気を付けなければならないのは、常に次に何に特化して行くのかと言うことに対しての注意を忘れると前者の轍を踏むことになるのと、各部が協力することが前提となるため、全社の意志統一がなっていなければ、効力が期待できないことである。
また、これはまず実験的に行うべきであって、まず1プロジェクトをモデルケースとして実施し、形的には社長直下の特命プロジェクトのようなものとして、各部から独立したプロジェクト形態が望ましい。
もし、これがうまく行くようなら、全社の次代の形態として各部内のプロジェクトにも適用していくことで、現在当社が抱えている問題のいくつかは解決されるのではなかろうか。

組織と言うものは、一度形作られると保守的になってしまい、いろいろな問題が内在していても急激な変化に対して拒否反応を起こし勝ちで、さらに状況を悪化させるものである。企業の老化とは、まさにそのような状態を指す言葉で、常にMore Betterな状態を考え、組織を活性化させていくことなくして、これを止めることはできない。上述の内容は、それに対する一つの方向性として、愚考したものである。

 冒頭で当社の課題としてとして挙げた、本来の責任を各部門がそれぞれ果たすと言うことは、平易な言葉で言いかえれば、各開発部門が品質を維持し、原価の削減を図り、人材の有効活用を行い、開発部門の計画に従って人事が中途採用を促進し、プロ管は協力会社を投入し、それらをベースに営業が利益を確保して、経理が財務を総括し、総務が全体をバックアップすると言うような、極めて当たり前のことを有機的に連携して行うことである。
 そのためには、それぞれが他部門を非難するのではなく、当社としての今後を如何にすべきかを真剣に話し合い、協力していくことが必要であろう。
現在の当社の組織を見ていると、それぞれの動きがばらばらで、統一性が取れているとは思えない。当社も創業20周年を迎えたが、次の20年を乗り切るためには、それぞれの意識改革を含めて企業としての改革を考えなければならない時期に差し掛かっているのではなかろうか。

以上