遺伝屋ブログ

酒とカメラとアウトドアの好きな大学研究者です。遺伝学で飯食ってます(最近ちょっと生化学教えてます)。

植物のコントロールシステム

2011-08-01 22:07:50 | BIONEWS
「花咲かじいさん」夢じゃない 奈良先端大、細胞内メカニズムを世界初の発見・解明
農学的に植物の開花をコントロールする物質の発見とメカニズムの解明は非常に意義のある発見と思われます。その開花を誘導するホルモンが「フロリゲン」。フロリゲンを「花咲かホルモン」と呼ぶのは・・・分かり易すぎですな。w 上手いことゆう・・・。
実は、開花に必要なホルモンの存在は戦前から予言されていたのですが、その実体をFT/Hd3a遺伝子がコードしてることが証明されたのは2007年のことでした。約70年。科学ってこんだけ時間かかんのだよ。最近の風潮は技術の進歩や新しい発見を簡単に考えすぎるんでむかつきますなぁ。ま、それはそれとして、次の展開としてはそのホルモンの受容体が何かなんですが、それが14-3-3であると奈良先端大のグループが発見したとのこと・・・このニュースをネットで見つけたのは研究室の自分のパソコンでだったんですが、「フォーティーン・スリー・スリィ??」と声を上げてしまいました。この番地みたいな名前のタンパク質は、どうも2次元電気泳動でこのタンパク質のマップされる位置を示してるそうっす。つまり、ほんとに14-3-3ってのは、「14丁目3番3号」っていうノリでつけられたらしい。詳しくは知らないけど・・・とにかく生化学屋さんは、よくこういう生物物理化学的で無味乾燥な名前を付けます。
14-3-3はGタンパク質rasとMAP kinaseカスケードの最上流因子Rafとの相互作用やミトコンドリアへのタンパク質ソーティングを仲介するタンパク質として古くから知られてます。酵母からヒトに至るまで真核生物で広く利用されているタンパク質なんすよ。14-3-3はターゲットのタンパク質にくっついて、あるべき場所へ運んで、あるべきパートナーと結合するのを仲介してるんだろうと僕は解釈してました。それならホルモン受容体として働いてもいい・・・んだけど、それはちょっとspecificityの高すぎる機能な気がしたんで、驚いたんですよ。

DNA傷つけ食糧増産? 植物細胞肥大化、奈良先端大が解明

せっかくですから、奈良先端大の業績をもうひとつ。5月の二ュースだったんでちょっと古いですけど。
我々の細胞はDNAを損傷すると、それを修復するか、損傷をもった細胞を死滅させるかを選択するんですが、後者のApoptosisという細胞死を使えるのは我々の動物細胞の構成する組織がフレキシブルだからで、植物細胞のようにその細胞の位置が細胞壁できちんと仕切られて固定されてると、なかなか細胞死という選択が出来ないそうです。そこでどうするかというと、殺さずに分裂を止めDNA量を増産して肥大化するそうな。損傷して使えない部分がDNAにあるわけだからコピーを増産して補うってことかもしてません。たぶん、分裂の方を止めるっていう仕組みはチェックポイント・システムを使ってるんじゃないかな。しかし、DNA量を増やすならDNA複製系は動かしてたことになります。そういう意味では、細胞周期制御を選択的に止めたり動かしたりしているわけで、これは面白い現象です。
コメント
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