hyperclub

パソコン教室アイラブハイパークラブです。
教室に流れるBGMなどを紹介します。

久闊(きゅうかつ)を叙(じょ)す

2008-04-20 23:59:00 | 音楽

Nanpei

 俳優の原田芳雄に似てなくもない。高校時代の友人、ナンペイである。名ではなく苗字だ。職業は大工。彼の方から年に何度か教室に逢いに来てくれる。ぼくが彼の伊勢にある家に行ったのは「昭和」の時代と記憶する。教室に来て授業中であれば黙々とタッチタイピングの練習をする。寡黙で、一人遊びの上手な男なのだ。

 高校時代の彼はそれなりにモテた。スタイリストで、絵描き志望で、男性ファッション雑誌「メンズクラブ」を教科書にしていたぐらいの男だ。元祖読者モデルと言えば言い過ぎだろうが、見せ方を知っていた。オトコマエ度でいえば当然のように2番目になるが…。

 似てなくもない、という表現、便利だ。この伝でいけば、

ぼくはアンディ・ガルシアに似てなくもない

のだ。ハハハ。

 彼がキュートな瓶入りコカコーラを初めて呑んだ瞬間を知っているし、登校直後に下駄箱で好きだった子に振られた瞬間に立ち会ってもいる。生徒会の役員選挙でぼくの応援演説を買って出てくれたが、「オレ、ナンペー」とだけ言って、候補者のぼくの名を一言も告げずに降壇したのにはたまげた。豪傑なのか、ずぼらな奴なのか、未だによく分かっていない。

 プレスリーとビーチボーイズが下火になって、ボブ・ディランがエレキギターに換えて罵声と怒号にさらされ、皆がビートルズに憧れた頃。そして、ぼくのお尻にはニキビができていた。

 ぼくの人生の節目というか、ターニングポイントという時にフラリ現われて背中を押してくれる。本人は何も言わない、口下手だから。あたかも彼を通してぼくに啓示が降りるようだ。

 今回顔を見せたのは一年ぶりどころではない。二人とも忘れてしまうぐらい昔のことだ。コーヒーを呑みつつ久闊を叙し、近況を語り合った。で、ぼくは久々にポートレートを撮った。写真家志望のぼくは彼をモデルに習作を何枚となく撮ったものだ。画家志望の彼はぼくをモデルに油絵を描く…なんてことは一枚たりともなかったことに、今、気づいた。

 デジカメの使い方には未だに慣れてなくてもどかしいが、それでも黒縁の額にリボンをかけるにふさわしいのが一枚だけ撮れたように思う。こうしておけば彼も長生きしてくれるだろう。