『雪の多い年は豊作』
そういう格言みたいなものが当地にはある。広い山形県の、私が知っている各地の人達が言っているから、信憑性の高い言葉なのだと思う(大雪と戦った冬の苦労に対する報いを求めたい気持ちも含まれた言葉なのかもしれない)。
で、この冬は大雪でした。
だったら、豊作なのかな。そういう期待を抱きながら各地の山菜を採り歩いているんですけど、確かに豊作のような気がするし、そうでもないような気もする。ちょっとモヤモヤしていたんだけど、今回の山菜採りで、何となく真相が分かってきた気がするので書き留めておきます。
今回訪れたのはS川。1週間あまりの間が空いての訪問だ。前回は、倒木と残雪に圧倒されて帰ってきた。
「採れないかもしれないけど、どうなっているか見ておきたいんだ。」
とマタギが言うと、
「俺も行く。」
という返事。A氏との同行が決まり、1年ぶりにS川の渓底を探訪することになった。
そして当日。林道は、倒木と落石と残雪とで埋まっていて、とてもでないけれど車は入れません。これは、想定通り。林道入り口付近に車を置いて歩き始める。
埋まっているとは言え、林道を歩くんだから、前回のI川と比べたら遙かにラクチンです。足元や頭上の季節の進み具合を点検しながら渓の降り口へ。
多分、これまでで残雪の量は最大でしょう。
急斜面を枝に捉まりながら降りていくと川床に着いた。今年も地形・沢の流路とも変わっていた。昨年以上に土砂の流出と堆積が進んでいる感じ。斜面の下方には、まだ雪がたっぷりと残っている。
やっぱり雪は多い
ただ、頭上の山菜は、それなりに育っているみたい。
タラノメのシルエット(まだ暗かった)
雪渓の上の様子を観察
何かを見つけたようです
何が出ているのかな?
「お~い。出てるよ!」
と声がかかる。どれどれ?マタギも登ってみる。
おおっ、食べ頃ですね!
こっちのは根が深そう
これは「貰い!」ですね。
今シーズン初物のウド
斜面の上の方から顔を出し始めていました。下の方は、まだ早すぎるものや、『ウドガラ』(去年の茎の残骸)だけの場所も多数。更に下は、雪です。
ふむふむ、次回の訪問は、1週間以上の間が空くけど、問題なく楽しめそうですね。
そうして、コゴミの広場へ。
食べ頃のものと
出始めのものと
まだ、顔を出していない株も多数ありました。マタギは前回採ったばかりなので採らなかったんだけど、前回採らなかったA氏は、いいところを選んで採っていました。
「ここまで様子が分かれば、俺は満足なんだけど、戻ってもいいか?」
「俺もこれでいいよ。」
「じゃあ、戻りますか。」
戻るといっても、引き返すのではなく、そこから斜面を登って林道の上流部に入るということです。その間にも収穫がありますから。
食べ頃のコシアブラを戴きました
カタクリが花盛り(カタクリの開花と山菜の旬は重なることが多い)
林道にも日が射してきました。
林道を覆い尽くす残雪
遙かな月山にも日が射していた
ああ、楽しかった。今回の収穫物はそんなに多くないけれど、季節の進み具合を実感できた気がします。ちょっと詳しく言うと、雪の多い年は、雪の消えた順に山菜が出るから、雪がなくなるまで、長い期間、山菜採りを楽しめる。ただし、頭上の山菜(タラノメ・コシアブラ等)は、雪の消え方よりも日差しや気温の影響を受けるので、意外と早く出たり遅く出たりする。今年は、平年より早いと思う。
雪が多い年は、確かに地上を潤す水分が多く、しかも、長く供給されます。それだけで、生き物にとっては大いなる恵みになるはずです。この辺りの条件を加えて考えると、『雪の多い年は豊作になる』のも、当然のことなのかもしれません。
いずれにしても、このような恩恵に与らせて戴けていることに感謝しかありません。
山の神様、天気の神様、ありがとうございます。