ひと日記

お気に入りのモノ・ヒト・コト・場所について超マイペースで綴ります。

Check tweed jacket

2010-12-11 04:00:00 | 白井さん


 今日は白井さんの着こなしについて触れる前に、信濃屋さんの紳士フロアを少しだけ覗いてみたいと思います(笑)。

                        

   

 遂に『 SHINANOYA SHOES COLLECTIN 』の準備が整ったようです。

 紳士フロアの一部屋をぐるりと取り囲んだ靴・靴・靴。白井さんご愛用の靴を筆頭に、古今東西の名靴が一同に会した様子は“圧巻”の一言!その総数なんと98足!それらを背景に写した白井さんのスナップはかなり“絵になる”一枚です(汗)。
 
 もちろん写真に写っている靴は一部のみ。ここでは詳細についてはご紹介いたしかねますので、写真で会場の雰囲気をお伝えするのみに留まりますが、密度の濃い空間に靴好きな方なら間違いなく興奮を覚えるでしょう。近くにお越しの際は信濃屋さんに立ち寄られて、その全容をご覧になってみては如何でしょうか。

  

 さて、今回の“白井さん”はリラッ~クス感漂うカントリースタイル。

 その代表的な素材“チェック柄のツイード”を使用したジャケットはルイジ・ボレリ(伊)。

 『これは見たこと無いでしょう~フフ(笑)。』

 と、ちょっと悪戯な微笑の白井さん。ご期待を裏切ってしまい申し訳ありませんでしたが、実は今日のジャケットは、私が信濃屋さんで白井さんと2回目にお会いした時に白井さんがお召しになっていた、私にとっては大変思い出深いジャケットなのです。

 “うわ~外国映画の田園風景に登場する人みたいだ~。”

 と、それまでの私の人生の中では見たことも無い着こなしに圧倒されたことを憶えています。因みに、初めてお会いした時は緊張の余り、白井さんが何を着ていらしたのかさっぱり憶えていません(汗)。

 『色が気に入ってね。良いでしょ(笑)。』

 と、白井さん。確かに、私の記憶に鮮明に残っていたほどですから、その色柄はまさしく“田園風景”を思わせる素晴らしい配色です。
 
 但し、私が憶えていたのは色と柄だけ(苦笑)。今回伺って初めて判りましたが、今日のジャケットは“一重仕立て”、そして“ピークラペル”という、この種の服としてはちょっと捻りの効いた一着。一重仕立てで内ポケットが無いため、普段はそこに収まっているご愛用のペンは胸のパッチポケットにお引越し。ポケットチーフまで挿すと“うるさくなる”ので今回は省略されたとのこと。

 当時はそこまで見たり伺ったりする余裕もありませんでしたから、今思えば隔世の感があります。

   
 

 それから、白井さんは3ボタンの下だけを留められています。以前、白井さんのお散歩お友達のKさんが同じように段返りのジャケットの一番下のボタンだけを留めてご来店されたことがあり、それを見た白井さんがすかさず、

 『ほら、Kさん一番下だけ留めてるよ。あの人も着こなしが上手だよね~。ああいうのを見ないとダメだよ(笑)。』

 と仰っていたことがありました。それを聴いた私が早速、

 『Kさん、一番下だけ留めてるんですね!』

 とKさんに伺うと、

 『あ、間違えちゃった(笑)。』

 と(もちろん“間違えちゃった”んじゃないんですが)、実に小粋に応えておられました。

 それ以来、私も密かに何度か真似していますが、私がやるとただの“お○○さん”になってしまうのでかなり危険です。やはり着こなしにはある程度の“熟練”が必要だということを痛感させられました。“雰囲気”という無言の説得力を身に纏った者のみに許される行為なのかもしれません。

 

 

 今日のお帰りはコリンズ(墺)のチロリアンハット。柔らかいカシミアガーゼ織りの深いグリーンのマフラーを襟元に、手にはご愛用の鞄、そして超肉厚ペッカリーのグローブ。当然人差し指の内側には革の継ぎ目の無いクラシックな作りの手袋です。白井さんが所有されているペッカリーの手袋は全て長年ご愛用されているものばかりで、経年変化で何ともいえない渋い色艶を放っています。

 白井さんのものとは革の質や厚みや作りが比べものになりませんが、私もペッカリーの手袋を2つ所有しており、最初に購入した黄色は今年で3年目を迎えています。指先がだいぶ汚れてきましたので、白井さんは手袋を洗われるのですか?と伺ったところ、

 『洗わないよ。一応“WASHABLE”ってなってるけどね。昔一度洗ったことがあるけど、やはり革がカサカサになっちゃったね。』

 とのこと。“やっぱり!”という感じです(笑)。

 『僕は不精だから。』

 と、白井さんはよく仰います。でも、その言葉は白井さん一流の“諧謔”で、白井さんに接すると白井さんは決して“無精者”ではないことがすぐに解ります。ただ、だからと云って“神経質”な方なのかといえばそれも全く当て嵌まりません。若輩者の私がこんなことを言うのは生意気なのですが、白井さんのモノとの付き合い方には独特な“メリハリ”があるような気がします。

 いつも感じるのは、経験第一主義。伝聞は鵜呑みにはされず、ご自身で経験して得た感覚を最も重視されます。

 それから、白井さんは所有されているもの全てをご自身の“支配下”に置かれている、“従えている”な、と感じます。“主従関係”がハッキリしているんです。その上で、手をかけるべきところには手間を惜しまず、でも決して“過保護”にはならない。モノが主と同じように歳を重ねるような、そんな“距離感の取り方”なような気がします。

 ちょっと抽象的でとりとめの無い筆になってしまいました。現在信濃屋さんで展示されている白井さんの靴を見て、なんとなくそんなことを考えてしまったものですから。
 


“白井さんならどうする”~9~ Build a basic wardrobe

2010-12-11 03:59:59 | “白井さんならどうする─後編─”
  

“How would Lubitsch have done it?”

 映画『昼下がりの情事』『お熱いのがお好き』『アパートの鍵貸します』などを手掛けたハリウッド・コメディーの巨匠ビリー・ワイルダー(監督・脚本家)の仕事場には、自身が尊敬する映画監督エルンスト・ルビッチへのオマージュを込めたこの一文が額に飾ってあったそうだ。曰く、“ルビッチならどうする?”

 そして私もまた、毎朝ワードローブの前で一人こう呟く・・・“白井さんならどうする?”と・・・

                                       

 今10回の更新で特筆すべきは、やはり“SHOE SHINE MAN”(連載85回目)。
 
 私がこの項“白井さん”を始めた当初、いえ、もっとそれ以前からずっと抱いていた“いつか白井さんの靴磨きを見せていただけたら”という想いが結実した感慨深い、そして生涯の思い出となる回でした。

 ただ、白井さんに靴磨きを、しかも動画での撮影をお願いするという暴挙に打って出るにはかなりの勇気を必要としました(苦笑)。

 夏が終わり、秋がだいぶ深まってきたある日、私は勇を鼓して白井さんにその旨をお願いしたのですが、白井さんはごくあっさりと“いいよ”とお許しくださり、またこんなことを書くと白井さんに怒られてしまいそうですが(苦笑)、早速、その日ご来店されていたお馴染みのお客様に、“今度、靴磨きの撮影するんだよ”とお話されていました・・・言葉にはされていませんでしたが、密かに白井さんもかなりノリノリだったと思われます(笑)。

 撮影当日、更に私を驚かせたのは、白井さんが本職の“SHOE SHINE MAN”さながらの靴磨きを実演してくださったことでした。

 『どうせやるんだったらちゃんとやらないと。』

 前かがみになった白井さんは大きな背中越しにそう仰っていました。

 自分が“楽しむ”こと、

 同時に“相手にも”楽しんでもらうこと、

 そして、やるからには“徹底して”こだわること。

 あの映像にはそんな白井さんの、上手く言えないんですけど、お人柄、というか、う~ん・・・“Entertainer”なところを収めることもできたような気がします。あ、そっか、それって今までの白井さんの全ての着こなしにだってちゃんと表現されていたんですよね!(笑)。

 That's SHIRAI STYLE !!