黒沢明の「生きる」という映画は印象的な映画だった。市役所の役人がガンに罹り、余命を感じつつ人が変わったように良い仕事をするという話である。
生きるということが、反対のリアルな死を意識することで新たにされるという話でもある。
こころの健康を考える時に、一つの大切な柱がある。U先生の「生き甲斐の心理学」では、自己実現の領域とされるものである。�自分とは何か?�生き甲斐は何か?�自分を大切にしているか?(魂、生育史、身体)の三つの自分への問いかけとも言える。
それは、まさに「生きる」ということのポイントでもある。
しかし、自分を考えても、なかなかポイントをつけない。それは性格形成論を考えると納得する。人は自分を生きるという傾向もあるが、他人(の価値)を生きるという傾向もあるからだ(ロジャースの性格形成論命題10)。 他人の作った価値を自分で作った価値と錯覚するのだ。
時には、自分を生きるということに想いを馳せるのは良いことのようだ。他人を生きるのは、日々の表面的な生活では波風が立たず、平穏であるが、深層心理的には不健康。反対に、自分を生きるのは、波風がたっても、こころは自由。
この世を考える 9/10