【33日目】7/28(水) Gonzar → Casanova
6:00前には起きて出発の準備をするも、ルーの準備がちょっと遅れ気味。
外はまだ暗いが、次々と巡礼者が出発して行く。
私たちの出発予定時刻は6:30だったので、とりあえずルーを置いて公営アルベルゲにスィナの様子を見に行く。
きっとスィナも遅れてるに違いない。
公営アルベルゲのベッドルームに侵入してみると、案の定というか、それ以上に悪く、スィナはまだ起きたばかりでベッドの上に座ってこちらに向かって手を振っている。
周りの巡礼者はガサゴソと出発の準備中。
「他の人が下にいるからベッドから降りられない」と、殴りたくなるような言い訳をするスィナ。
ようやく人気が引いて来て、ベッドを降りたスィナに「ねえ、ちょっと見せたいものがあるの」と言われ、連れて行かれたのはシャワールーム。
「見てよ、これ」と言われたその先には、なんと2つのシャワーの間に仕切りも何もない。
なるほど、他人と裸でコンニチハ状態のシャワーなのですね。
それは予想外だ。
日本の温泉や銭湯で慣れている私でも、このシャワーは嫌だ。
昨日、最後に到着したスィナは、他の巡礼者のシャワーは終わっていたので運よく1人で浴びられたそうだ。
さて、ルーが準備を終えて公営アルベルゲまでやってき、さらにスィナの準備が整うのを待っていたら、結局出発できたのは7:00。
まだ薄暗く、霧がかかっている中、ドイツ人のベティも加わり4人でスタート。
スィナとベティの話では、昨夜公営アルベルゲではとあるスペイン人男性の携帯が夜中に何度も鳴りまくり、大声で話しまくりだったので、ほとんど眠れなかったとのこと。
他の巡礼者も皆、舌打ちしてたらしいが、当人は気にする様子もなかったそうだ。
またスペイン人の評判が下がったケースだ。
お誕生日なのでよかれと思って公営アルベルゲのベッドをスィナに譲ったが、かえって眠れぬ夜となってしまいかわいそうだった。
歩きだしてわりとすぐに1軒のバルが出て来た。
コーヒーを飲んでいくと言うベティがここで早くも離脱し、私たち3人は歩き続ける。
ベティと別れてからわりとすぐにVentas de Narónという小さな集落が現れ、そこで朝食休憩。
どうやらここにはアルベルゲもあるようだ。
バルでクレデンシャルにスタンプをもらい、朝食を食べているとベティが追いついてきた。
そして彼女もスタンプをもらおうとクレデンシャルを探すが見つからない。
「ここまで来てクレデンシャル失くしたなんて言ったらマヌケよね」と笑っていたベティだが、リュックの中をいくら探しても見つからず、次第に焦り始める。
「どうしよう!クレデンシャルがない」
みんなで心配して、「もっとしっかり探せば?」「全部のポケット探してごらんよ」と言ってみるが、青ざめたベティは首を振る。
「きっと昨夜のアルベルゲに忘れて来たんだわ」
昨夜のアルベルゲからここまでの距離は6kmぐらいである。
歩いて戻れない距離ではないけど、せっかく歩いた道をまた戻るのは気がめいる。
しかも上り坂だったし。
まずはアルベルゲに電話して落し物があるか確認しようということになったが、誰も電話番号を知らない。
バルのマスターに聞けば知ってるか、イエローページみたいなのがあるんじゃないかと言って相談してみるが、全く分からない。
それではタクシーを呼んで戻ろうかというと、この小さな集落にはタクシーがない。
Portomarín辺りから呼び寄せないといけなくなり、結構な費用もかかってしまう。
う~ん、困った。
悲壮感漂うベティ。
スィナやルーが、「クレデンシャルがないと、これまで歩いた記録がないので、最後に巡礼証明書はもらえないけど、言ってみればただそれだけのこと。来た道を戻るのが嫌なら、諦めて新しいクレデンシャルを次の町で買うという選択肢もあるよ」と提案する。
が、悩んだ末彼女は覚悟を決め、リュックはこのバルに置いて、身一つで来た道を戻ることにした。
かなり落ち込んでいるが、荷物がなければそんなにつらい道のりじゃないので、がんばってほしい。
無事クレデンシャルが見つかりますように!
ベティのクレデンシャル紛失事件があったため、かなり長い時間このバルにとどまっていた。
ただでさえ出発時間が予定より遅れたのに、今日の行程にさらに遅れが生じるなと思ったのは私だけだろうか。
Sarria以降、確実に人が増えているし、昨夜初めてベッドを確保できないという事態に陥ったこともあり、心に余裕がなくなっている自分がいる。
ところでこのバルで休んでいる時、昨夜の公営アルベルゲで「一晩中、携帯電話が鳴ってばかりで大声でしゃべって迷惑なスペイン人」が到着した。
スィナは「本人に『あなたはお忙しい方なんですね』って皮肉のひとつも言ってやりたかったけど、勇気が出なかった」と言ってた。
その張本人が目の前に現れたのだ。
意を決したスィナは、極力明るく「あなたは電話ばかりして、お仕事がお忙しいのね」と声をかけた。
おお~、やるな、おばちゃん!
すると返ってきた返事は意外なものだった。
「友人が病気になり、その連絡が入ってきてた。病院を探したり色々してたので」とのこと。
もちろん「迷惑かけてごめんね」的なセリフは皆無なのだが、そういう事情があったのならしょうがないのかな。
でも一言周りの人たちに事情を話してくれれば、みんなあんなに殺気立たずに済んだのに。
JJなんか、かなり怒ってたよ。
バルを出発し、しばらくカミーノを進んでいくと、広場の様な場所で何か集会をしており、その前でパンフレットを配る人がいたり、小さな小屋の前にビスケットやコーヒーが用意されている場所に出た。
巡礼者のための休憩所のようだ。
するとそこで思いがけない人に再会
馬で旅をしていたハビエルだ。
嬉しくて抱き合って再会を喜ぶ。
で、相棒のグリンゴは
「あそこで草を食べているよ」とハビエルが指さした方向を見ると、ほんとだ、グリンゴちゃんがいる。
「グリンゴ~」と抱きつきに行くと、一応顔は覚えているらしく、「おお、お前か」ぐらいの反応があった。
が、鞍を外したグリンゴの背中を見ると、背骨が浮き出るほど痩せている。
スィナがハビエルに「ちゃんとご飯食べてるの?」と聞くと、「う~ん、まあ、食べれたり、食べれなかったり」とのこと。
そこでスィナは、20ユーロ札を取り出し、ハビエルの手に握らせた。
ハビエルは「いや、そんなことをしてもらっては困る」と辞退したものの、スィナが「これでちゃんとご飯食べなさい」と無理に受け取らせる。
う~ん、どうなんだろ。
キリスト教徒だから施しの精神があるのは分かる。
でも食べ物とかシェアするならまだしも、直接的にお金渡すのってどうなんだろう。
ここまできてもまだ私はハビエルの正体が分からないし。
でもポーランドのマリアが、同じくお金を持たずに巡礼しているメキシコ人のダニエルにお金を渡していたように、彼女らの感覚ではそういう困っている人に寄付することが徳を積むことと言うか、クリスチャンとして正しいことなんだろうなあ。
ちなみにそのダニエルにもこの場所でかなり久しぶりに再会した。
相変わらずスペイン語しか通じないが、元気そうではあった。
さて、人間のハビエルはともかく、グリンゴがかわいそ過ぎる。
ただでさえ重い荷物を背負わされ、ハビエルを乗せてこの長い長い距離を巡礼しているのだから。
しかもこの先まだアメリカにまで行かされようとしている。(ハビエルの説が本当なら)
ふと、リュックにリンゴが入っていたのを思い出し、一応スィナと共同で買った食材なのでスィナの許可を得て、グリンゴにリンゴの差し入れをしたら、嬉しそうに食べてくれた。
こんなことならもっと沢山果物を買っておけばよかったよ。
本当にかわいそうなグリンゴ。
胸が痛む。
そうこうしているうちに、マークが82歳のフランス人を伴って現れた。
名前は忘れてしまったが、巡礼者の中で最高齢ではなかろうか?
これまで何度もカミーノを歩いてるが、さすがにもう体力的にきついので、今回を最後にしようかと思っているらしい。
ここから次の町、Palas de Reiまで、マーク、82歳のフランス人と一緒に歩く。
昨日からルーも私たちと一緒に歩くこととなった。
スィナと2人だけでもちょっとしんどかったのに、ますます人が増えて、団体行動がちょっときついなあと思い始める。
Palas de Reiは、日本語のガイドブックに「人口800人の村」と書いてあるが、手持ちの地図には4,500人と書いてあるのはどうしたことか?
アルベルゲもお店もたくさんあるので、そこそこ大きな町に見える。
途中通り過ぎたアルベルゲ前には、ものすごい数の人がいた。
多くの巡礼者がこの町に宿泊するとみられる。
マークも今日はここでストップするらしい。
教会でスタンプをもらい、ランチの場所を探す。
ルー、スィナと3人でランチしていると、遠くにエリザベスを発見。
手を振ると気づいて近づいてきた。
エリザベスは昨夜、Portomarínのホテルでぐっすりと快適に眠り、今日もここでホテルに泊まるそうだ。
いいなあ、お金持ちって。
しばらくすると向こうのテーブルに東洋人のおじさん2人を含む巡礼者のグループがやってきた。
ルーは中国で英語を教えたこともあるので、アジア人の顔の区別にはある程度自信を持っている。
ルーの見立てでは、日本人。
私は、微妙なところだけど、韓国人ではないかと思う。
確認のため、声をかけてみたら、やっぱりおじさんたちは韓国人だった。
このように、ルーが加わってからまたアジア人巡礼者の国籍当てクイズが始まることとなる。
そういえば今日、ここに至る前に休憩したバルで、アジア人の若い男の子がいた。
長髪で、なんとなく日本人っぽい風貌だったので、ルーも私も「日本人に違いない」と思い、ルーが話しかけてみると韓国人だった。
日本人と確信していたルーは、かなりショックを受けていた。
その韓国人の男の子、私が日本人と知るとかなり興奮した様子で、「日本人?日本人?トモキに教えてあげなきゃ!」と喜びだした。
彼のかなり入門編な英会話と、一緒にいたオーストリア人の男の子のまあまあな英語から察するに、トモキと言う名の日本人と一緒に歩いてきたけど、彼は少し手前のバルで休憩しているらしい。
トモキはこの2人についてこれなかったのか?
ランチ後、次の村San Xuliánに向けて出発。
Palas de Reiからは若干の下り坂。
それでも今日も炎天下を20km近く歩いているのでしんどい。
1軒目に出て来たアルベルゲは、残念ながらフル。
もう1kmほど進むともう1軒あると言われたので、ベッドが開いていることを祈りつつ目指す。
2軒目はベッド1つだけ空いている。
昨日と同じパターンか。
どうしようかと相談していると、オスピタレロの1人が「3名1室で30ユーロの部屋ならある」と言ってきた。
背に腹は代えられないので、それでもいいと返事をしたが、なにやら手違いだったようで、実はその部屋はすでに他の巡礼者が押さえていた。
またかよ…。
そういう手違い多いよね、スペイン。
「しょうがないから先へ進もう」と、スィナとルーが歩きはじめる。
え?ちょっと、さっきのベッド1台は?!
私的には、何も3人一緒の場所でなくていいからさ、せっかくベッドが1つ空いてるんなら、この中の誰か1人が泊まればいいんじゃない??
が、2人は「あのベッド、あとからベティがやってきて確保できるといいわね」って、あんたたち一体どんだけ善人なんですか
もしかして、自己中心的なのは私だけ?
なんか、何が何だか分からなくなる。
西洋人と一緒に歩いてみて分かったことだけど、やっぱり彼らは体格が大きい分、基礎体力がある。
普段山歩きなどしていなかったスィナでさえ、この巡礼中にメキメキと力をつけてきている。
西洋人軍団と一緒に歩いていると、結構歩くペースが速かったりして、ついて行くのが大変だ。
彼女らはまだそれほどでもないかもしれないが、こちらは疲れがピークに達して来ている。
次のアルベルゲでまたベッドが1つだけとかなら、絶対誰か1人がそれを確保することを主張する!
もし2人が遠慮して取らなかったら、その時は私が取る!
こんな時にチームワークなんかいらない!
気遣い、思いやりはいらねえ!
と、半分怒りながら歩く。
Casanovaという標識が現れたので、そろそろこの辺りにアルベルゲがあるはず。
目の前に現れた建物がアルベルゲかと思い、中庭に足を踏み入れてみると、そこは普通の民家だった…。
おばあちゃんが中庭の井戸でベリーを洗っている。
「あの~、すみません。アルベルゲどこですか?」と聞いてみると、「この先よ」と教えてくれたついでに、「このベリー、1ユーロで買わない?」と。
あ、巡礼者相手に商売してるんですね。
でもブルーベリーやら木イチゴやらいくつか種類があっておいしそう
何かフレッシュなものを口にしたかったので、迷わず購入。
私がベリーを買っている間に、スィナとルーはどんどん先へ進んでしまった。
しばらく坂を上って16:00、ようやく小奇麗な私営アルベルゲに到着。
幸いにもベッドはたくさん空いていたので、ここに決まり!
宿泊料は5ユーロだった。
オスピタレラのおばさんの話によると、この辺りには食べるところが全くないので、希望者は宿の車で1つ先の村にあるアルベルゲのレストランまで連れて行ってくれるという。
ディナーは8ユーロ。
車は19:00に迎えに来るとのこと。
アルベルゲに入ると、今日途中で会った韓国人とオーストリア人の青年2人も到着していた。
あいかわらず「トモキ」の姿は見えないようだが、追いつけなかったのか。
ベッドルームに入ると、大柄でスキンヘッドのスペイン人の若者がいた。
名前はマルコス。
早速ルーがスペイン語会話の練習をしている間に、私とスィナはシャワーと洗濯を済ませる。
夕方になり、お迎えの車で夕食場所へ。
人数が多いので、ピストン輸送だ。
レストランがあるアルベルゲは、車ではすぐだが、この道を歩くとなるとやはりきつかったと思う。
Casanovaでベッドが確保できてよかった。
ディナーの席にはマルコスの他にスペイン人の19歳と24歳の青年たちがいた。
19歳の方は警察学校に行ってるらしい。
24歳の子は、かかとにとてつもなくひどい靴ずれを起こしており、見ていて痛々しい。
「大丈夫?」と声をかけると、「大丈夫じゃない」という素直な答えが返ってきた。
そ、そうだよね…。
その他、オーストラリア人女性2名、スロバキア人男性1名がテーブルを囲む。
第1皿はミックスサラダ、第2皿は肉団子にしてみた。
デザートはサラダ。
帰りはまたピストン輸送で、元来た道を戻る。
寝る前にスィナがまた足のマッサージをしてくれた。
タイガーバームをたっぷり塗って、プロの技で疲れを癒してくれる。
ルーもタイで買ったというタイガーバームみたいな軟膏を持っており、それを使ってマッサージを受ける。
その後は就寝時間まで、スペイン人のマルコス、スロバキア人のトマスを交えて話に花が咲く。
到着時にはたくさん空いていたベッドだが、夜になって人がたくさん到着し、最後には空きベッド1つのみとなっていた。
本日の歩行距離:約24km
本日の歩数:33,714歩
6:00前には起きて出発の準備をするも、ルーの準備がちょっと遅れ気味。
外はまだ暗いが、次々と巡礼者が出発して行く。
私たちの出発予定時刻は6:30だったので、とりあえずルーを置いて公営アルベルゲにスィナの様子を見に行く。
きっとスィナも遅れてるに違いない。
公営アルベルゲのベッドルームに侵入してみると、案の定というか、それ以上に悪く、スィナはまだ起きたばかりでベッドの上に座ってこちらに向かって手を振っている。
周りの巡礼者はガサゴソと出発の準備中。
「他の人が下にいるからベッドから降りられない」と、殴りたくなるような言い訳をするスィナ。
ようやく人気が引いて来て、ベッドを降りたスィナに「ねえ、ちょっと見せたいものがあるの」と言われ、連れて行かれたのはシャワールーム。
「見てよ、これ」と言われたその先には、なんと2つのシャワーの間に仕切りも何もない。
なるほど、他人と裸でコンニチハ状態のシャワーなのですね。
それは予想外だ。
日本の温泉や銭湯で慣れている私でも、このシャワーは嫌だ。
昨日、最後に到着したスィナは、他の巡礼者のシャワーは終わっていたので運よく1人で浴びられたそうだ。
さて、ルーが準備を終えて公営アルベルゲまでやってき、さらにスィナの準備が整うのを待っていたら、結局出発できたのは7:00。
まだ薄暗く、霧がかかっている中、ドイツ人のベティも加わり4人でスタート。
スィナとベティの話では、昨夜公営アルベルゲではとあるスペイン人男性の携帯が夜中に何度も鳴りまくり、大声で話しまくりだったので、ほとんど眠れなかったとのこと。
他の巡礼者も皆、舌打ちしてたらしいが、当人は気にする様子もなかったそうだ。
またスペイン人の評判が下がったケースだ。
お誕生日なのでよかれと思って公営アルベルゲのベッドをスィナに譲ったが、かえって眠れぬ夜となってしまいかわいそうだった。
歩きだしてわりとすぐに1軒のバルが出て来た。
コーヒーを飲んでいくと言うベティがここで早くも離脱し、私たち3人は歩き続ける。
ベティと別れてからわりとすぐにVentas de Narónという小さな集落が現れ、そこで朝食休憩。
どうやらここにはアルベルゲもあるようだ。
バルでクレデンシャルにスタンプをもらい、朝食を食べているとベティが追いついてきた。
そして彼女もスタンプをもらおうとクレデンシャルを探すが見つからない。
「ここまで来てクレデンシャル失くしたなんて言ったらマヌケよね」と笑っていたベティだが、リュックの中をいくら探しても見つからず、次第に焦り始める。
「どうしよう!クレデンシャルがない」
みんなで心配して、「もっとしっかり探せば?」「全部のポケット探してごらんよ」と言ってみるが、青ざめたベティは首を振る。
「きっと昨夜のアルベルゲに忘れて来たんだわ」
昨夜のアルベルゲからここまでの距離は6kmぐらいである。
歩いて戻れない距離ではないけど、せっかく歩いた道をまた戻るのは気がめいる。
しかも上り坂だったし。
まずはアルベルゲに電話して落し物があるか確認しようということになったが、誰も電話番号を知らない。
バルのマスターに聞けば知ってるか、イエローページみたいなのがあるんじゃないかと言って相談してみるが、全く分からない。
それではタクシーを呼んで戻ろうかというと、この小さな集落にはタクシーがない。
Portomarín辺りから呼び寄せないといけなくなり、結構な費用もかかってしまう。
う~ん、困った。
悲壮感漂うベティ。
スィナやルーが、「クレデンシャルがないと、これまで歩いた記録がないので、最後に巡礼証明書はもらえないけど、言ってみればただそれだけのこと。来た道を戻るのが嫌なら、諦めて新しいクレデンシャルを次の町で買うという選択肢もあるよ」と提案する。
が、悩んだ末彼女は覚悟を決め、リュックはこのバルに置いて、身一つで来た道を戻ることにした。
かなり落ち込んでいるが、荷物がなければそんなにつらい道のりじゃないので、がんばってほしい。
無事クレデンシャルが見つかりますように!
ベティのクレデンシャル紛失事件があったため、かなり長い時間このバルにとどまっていた。
ただでさえ出発時間が予定より遅れたのに、今日の行程にさらに遅れが生じるなと思ったのは私だけだろうか。
Sarria以降、確実に人が増えているし、昨夜初めてベッドを確保できないという事態に陥ったこともあり、心に余裕がなくなっている自分がいる。
ところでこのバルで休んでいる時、昨夜の公営アルベルゲで「一晩中、携帯電話が鳴ってばかりで大声でしゃべって迷惑なスペイン人」が到着した。
スィナは「本人に『あなたはお忙しい方なんですね』って皮肉のひとつも言ってやりたかったけど、勇気が出なかった」と言ってた。
その張本人が目の前に現れたのだ。
意を決したスィナは、極力明るく「あなたは電話ばかりして、お仕事がお忙しいのね」と声をかけた。
おお~、やるな、おばちゃん!
すると返ってきた返事は意外なものだった。
「友人が病気になり、その連絡が入ってきてた。病院を探したり色々してたので」とのこと。
もちろん「迷惑かけてごめんね」的なセリフは皆無なのだが、そういう事情があったのならしょうがないのかな。
でも一言周りの人たちに事情を話してくれれば、みんなあんなに殺気立たずに済んだのに。
JJなんか、かなり怒ってたよ。
バルを出発し、しばらくカミーノを進んでいくと、広場の様な場所で何か集会をしており、その前でパンフレットを配る人がいたり、小さな小屋の前にビスケットやコーヒーが用意されている場所に出た。
巡礼者のための休憩所のようだ。
するとそこで思いがけない人に再会
馬で旅をしていたハビエルだ。
嬉しくて抱き合って再会を喜ぶ。
で、相棒のグリンゴは
「あそこで草を食べているよ」とハビエルが指さした方向を見ると、ほんとだ、グリンゴちゃんがいる。
「グリンゴ~」と抱きつきに行くと、一応顔は覚えているらしく、「おお、お前か」ぐらいの反応があった。
が、鞍を外したグリンゴの背中を見ると、背骨が浮き出るほど痩せている。
スィナがハビエルに「ちゃんとご飯食べてるの?」と聞くと、「う~ん、まあ、食べれたり、食べれなかったり」とのこと。
そこでスィナは、20ユーロ札を取り出し、ハビエルの手に握らせた。
ハビエルは「いや、そんなことをしてもらっては困る」と辞退したものの、スィナが「これでちゃんとご飯食べなさい」と無理に受け取らせる。
う~ん、どうなんだろ。
キリスト教徒だから施しの精神があるのは分かる。
でも食べ物とかシェアするならまだしも、直接的にお金渡すのってどうなんだろう。
ここまできてもまだ私はハビエルの正体が分からないし。
でもポーランドのマリアが、同じくお金を持たずに巡礼しているメキシコ人のダニエルにお金を渡していたように、彼女らの感覚ではそういう困っている人に寄付することが徳を積むことと言うか、クリスチャンとして正しいことなんだろうなあ。
ちなみにそのダニエルにもこの場所でかなり久しぶりに再会した。
相変わらずスペイン語しか通じないが、元気そうではあった。
さて、人間のハビエルはともかく、グリンゴがかわいそ過ぎる。
ただでさえ重い荷物を背負わされ、ハビエルを乗せてこの長い長い距離を巡礼しているのだから。
しかもこの先まだアメリカにまで行かされようとしている。(ハビエルの説が本当なら)
ふと、リュックにリンゴが入っていたのを思い出し、一応スィナと共同で買った食材なのでスィナの許可を得て、グリンゴにリンゴの差し入れをしたら、嬉しそうに食べてくれた。
こんなことならもっと沢山果物を買っておけばよかったよ。
本当にかわいそうなグリンゴ。
胸が痛む。
そうこうしているうちに、マークが82歳のフランス人を伴って現れた。
名前は忘れてしまったが、巡礼者の中で最高齢ではなかろうか?
これまで何度もカミーノを歩いてるが、さすがにもう体力的にきついので、今回を最後にしようかと思っているらしい。
ここから次の町、Palas de Reiまで、マーク、82歳のフランス人と一緒に歩く。
昨日からルーも私たちと一緒に歩くこととなった。
スィナと2人だけでもちょっとしんどかったのに、ますます人が増えて、団体行動がちょっときついなあと思い始める。
Palas de Reiは、日本語のガイドブックに「人口800人の村」と書いてあるが、手持ちの地図には4,500人と書いてあるのはどうしたことか?
アルベルゲもお店もたくさんあるので、そこそこ大きな町に見える。
途中通り過ぎたアルベルゲ前には、ものすごい数の人がいた。
多くの巡礼者がこの町に宿泊するとみられる。
マークも今日はここでストップするらしい。
教会でスタンプをもらい、ランチの場所を探す。
ルー、スィナと3人でランチしていると、遠くにエリザベスを発見。
手を振ると気づいて近づいてきた。
エリザベスは昨夜、Portomarínのホテルでぐっすりと快適に眠り、今日もここでホテルに泊まるそうだ。
いいなあ、お金持ちって。
しばらくすると向こうのテーブルに東洋人のおじさん2人を含む巡礼者のグループがやってきた。
ルーは中国で英語を教えたこともあるので、アジア人の顔の区別にはある程度自信を持っている。
ルーの見立てでは、日本人。
私は、微妙なところだけど、韓国人ではないかと思う。
確認のため、声をかけてみたら、やっぱりおじさんたちは韓国人だった。
このように、ルーが加わってからまたアジア人巡礼者の国籍当てクイズが始まることとなる。
そういえば今日、ここに至る前に休憩したバルで、アジア人の若い男の子がいた。
長髪で、なんとなく日本人っぽい風貌だったので、ルーも私も「日本人に違いない」と思い、ルーが話しかけてみると韓国人だった。
日本人と確信していたルーは、かなりショックを受けていた。
その韓国人の男の子、私が日本人と知るとかなり興奮した様子で、「日本人?日本人?トモキに教えてあげなきゃ!」と喜びだした。
彼のかなり入門編な英会話と、一緒にいたオーストリア人の男の子のまあまあな英語から察するに、トモキと言う名の日本人と一緒に歩いてきたけど、彼は少し手前のバルで休憩しているらしい。
トモキはこの2人についてこれなかったのか?
ランチ後、次の村San Xuliánに向けて出発。
Palas de Reiからは若干の下り坂。
それでも今日も炎天下を20km近く歩いているのでしんどい。
1軒目に出て来たアルベルゲは、残念ながらフル。
もう1kmほど進むともう1軒あると言われたので、ベッドが開いていることを祈りつつ目指す。
2軒目はベッド1つだけ空いている。
昨日と同じパターンか。
どうしようかと相談していると、オスピタレロの1人が「3名1室で30ユーロの部屋ならある」と言ってきた。
背に腹は代えられないので、それでもいいと返事をしたが、なにやら手違いだったようで、実はその部屋はすでに他の巡礼者が押さえていた。
またかよ…。
そういう手違い多いよね、スペイン。
「しょうがないから先へ進もう」と、スィナとルーが歩きはじめる。
え?ちょっと、さっきのベッド1台は?!
私的には、何も3人一緒の場所でなくていいからさ、せっかくベッドが1つ空いてるんなら、この中の誰か1人が泊まればいいんじゃない??
が、2人は「あのベッド、あとからベティがやってきて確保できるといいわね」って、あんたたち一体どんだけ善人なんですか
もしかして、自己中心的なのは私だけ?
なんか、何が何だか分からなくなる。
西洋人と一緒に歩いてみて分かったことだけど、やっぱり彼らは体格が大きい分、基礎体力がある。
普段山歩きなどしていなかったスィナでさえ、この巡礼中にメキメキと力をつけてきている。
西洋人軍団と一緒に歩いていると、結構歩くペースが速かったりして、ついて行くのが大変だ。
彼女らはまだそれほどでもないかもしれないが、こちらは疲れがピークに達して来ている。
次のアルベルゲでまたベッドが1つだけとかなら、絶対誰か1人がそれを確保することを主張する!
もし2人が遠慮して取らなかったら、その時は私が取る!
こんな時にチームワークなんかいらない!
気遣い、思いやりはいらねえ!
と、半分怒りながら歩く。
Casanovaという標識が現れたので、そろそろこの辺りにアルベルゲがあるはず。
目の前に現れた建物がアルベルゲかと思い、中庭に足を踏み入れてみると、そこは普通の民家だった…。
おばあちゃんが中庭の井戸でベリーを洗っている。
「あの~、すみません。アルベルゲどこですか?」と聞いてみると、「この先よ」と教えてくれたついでに、「このベリー、1ユーロで買わない?」と。
あ、巡礼者相手に商売してるんですね。
でもブルーベリーやら木イチゴやらいくつか種類があっておいしそう
何かフレッシュなものを口にしたかったので、迷わず購入。
私がベリーを買っている間に、スィナとルーはどんどん先へ進んでしまった。
しばらく坂を上って16:00、ようやく小奇麗な私営アルベルゲに到着。
幸いにもベッドはたくさん空いていたので、ここに決まり!
宿泊料は5ユーロだった。
オスピタレラのおばさんの話によると、この辺りには食べるところが全くないので、希望者は宿の車で1つ先の村にあるアルベルゲのレストランまで連れて行ってくれるという。
ディナーは8ユーロ。
車は19:00に迎えに来るとのこと。
アルベルゲに入ると、今日途中で会った韓国人とオーストリア人の青年2人も到着していた。
あいかわらず「トモキ」の姿は見えないようだが、追いつけなかったのか。
ベッドルームに入ると、大柄でスキンヘッドのスペイン人の若者がいた。
名前はマルコス。
早速ルーがスペイン語会話の練習をしている間に、私とスィナはシャワーと洗濯を済ませる。
夕方になり、お迎えの車で夕食場所へ。
人数が多いので、ピストン輸送だ。
レストランがあるアルベルゲは、車ではすぐだが、この道を歩くとなるとやはりきつかったと思う。
Casanovaでベッドが確保できてよかった。
ディナーの席にはマルコスの他にスペイン人の19歳と24歳の青年たちがいた。
19歳の方は警察学校に行ってるらしい。
24歳の子は、かかとにとてつもなくひどい靴ずれを起こしており、見ていて痛々しい。
「大丈夫?」と声をかけると、「大丈夫じゃない」という素直な答えが返ってきた。
そ、そうだよね…。
その他、オーストラリア人女性2名、スロバキア人男性1名がテーブルを囲む。
第1皿はミックスサラダ、第2皿は肉団子にしてみた。
デザートはサラダ。
帰りはまたピストン輸送で、元来た道を戻る。
寝る前にスィナがまた足のマッサージをしてくれた。
タイガーバームをたっぷり塗って、プロの技で疲れを癒してくれる。
ルーもタイで買ったというタイガーバームみたいな軟膏を持っており、それを使ってマッサージを受ける。
その後は就寝時間まで、スペイン人のマルコス、スロバキア人のトマスを交えて話に花が咲く。
到着時にはたくさん空いていたベッドだが、夜になって人がたくさん到着し、最後には空きベッド1つのみとなっていた。
本日の歩行距離:約24km
本日の歩数:33,714歩