野菜を先に食べる「ベジ・ファースト」やしわやたるみを予防する食材など、“老化を早める原因”を抑える食べ方を解説する本連載。3回目はちょっとした調理法と朝の工夫のポイントを紹介しましょう。
野菜を先に食べる「ベジ・ファースト」については本連載1回目で解説しました。これを実践するうえで、さらに効果アップを期待できる方法を、専門家に聞きました。
野菜は大きめに切ってよくかむ、加熱しすぎない
抗酸化力が強く、秋冬野菜の代表格でもあるゴボウやレンコンなどの野菜は、大きめに切って。「かむ回数が多いと量が少なくても満足感があるため過食を防ぎ、肥満の予防にもなります。一口30回以上かむとなおいい」と金本さん(専門家の紹介は末尾)。また、「ニンジンは、ゆですぎると、白米と同じくらい血糖値が上がりやすくなる」(金本さん)というケースもあるので、加熱しすぎに注意して。
朝こそ「低GI」の食事を
血糖値の上昇が穏やかな低GI[注1]の食事に変えるなら、朝食がおすすめ。朝食後の血糖値上昇を抑えるだけでなく、昼食後の血糖値上昇を抑制する効果もあるためです。例えば、食物繊維が豊富なマイタケとご飯を朝食に食べた後、昼食にご飯だけ食べた試験では、朝食後だけでなく、昼食後も血糖値の上昇が抑えられました。
「すきっ腹にコーヒー」は控えて
朝一番や食時前にコーヒーを飲む人も多いのでは。でも、「カフェインの多いコーヒーはインスリンの利きを悪くして、血糖値を上がりやすくするという報告があります」と金本さん。甘いパンなどのGIの高い食事と一緒に飲んだ場合も、同様の結果が。「コーヒーを飲むなら食後がいいですよ」(金本さん)。
白米よりも大麦、雑穀炊き込みご飯を
白米に比べて、「雑穀や大麦、玄米ご飯はGI値が比較的低く、食後の血糖値の上昇を抑えることを確かめました。食物繊維の量が大きく影響するため、30%以上は混ぜて」と高崎健康福祉大学健康福祉学部教授の鶴見克則さん。ほかにもキノコやゴボウ、シラタキなど食物繊維豊富な具だくさんの炊き込みご飯もおすすめです。
夜遅い時間の食事は避ける
夜9時以降など、遅くとも寝る2~3時間前の食事は避けて。「夜間も食後の血糖値が高い状態が続くので肥満を招きやすく、カロリーのとりすぎにもつながります。体内時計やホルモンバランスなどにも悪い影響が出る。このような食生活は、いずれ糖尿病を発症します」(竹内さん)。
加工食品はなるべく減らす
老化たんぱく質(AGEs)を、直接食品から摂取してしまうこともあります。「食品由来のAGEsの10%が腸管から吸収され、そのうち約6~7%は2~3日間は体の中に残存することが分かっています」(竹内さん)。また、井上さんも「体の中にあるAGEsの55~60%が食べ物由来といわれています」と説明します。竹内さんが市販の食品を調べた結果、高温で長時間調理したスナック菓子などの加工食品は、AGEsをたくさん含むことが分かりました。加工食品はなるべく減らして、「家庭で食材を調理して食べましょう」と竹内さんはアドバイスします。
便秘解消で早く体外へ排出
AGEsが、腸管から体内に吸収されるスピードはゆるやか。そのため、「腸の中の滞留時間を減らすことで、体内に吸収する前に便と一緒に出ていく」と井上さん。腸内環境を普段からよくして、便秘をしないようにすることも大切です。
AGEsは、人が生きる過程で体内に発生するもの。ゼロにはできませんが、食べる順番や食材選びなど、体内のAGEsを増やさない方法を知識として頭に置いておき、食事を楽しみながら、できるところから実践しましょう。
お酒なら赤ワインをシメ対策はそばで
“とりあえず1杯”は、赤ワインを選んだほうがよさそう。「食前に、ビールやジン、赤ワインを飲んで血糖値の上昇を比較したところ、赤ワインが最も上がりにくい、という報告があります」(金本さん)。さかなは、GI値の低い酢の物や冷ややっこなどにして、「シメは、お茶漬けよりそばを選んで。ナメコやとろろ入りなら血糖値もさらに上がりにくくなります」(金本さん)。
~“ベジ・ファースト”で血糖値の急上昇は本当に抑えられるのか?~
野菜を食事の最初に食べる“ベジ・ファースト”は、本当に血糖値の上昇を抑えるのか? 本連載の第1回で城西大学の金本さんが行ったカレーライスと野菜サラダを食べる実験を参考に、編集部員3人が試してみました。
“サラダが先”で実際に差があった! 麦ご飯はさらに血糖値を抑える
カレールーは市販のレトルトカレー(200g)、ご飯は電子レンジで加熱するパック(200g)を使用した。サラダは、1人当たり60gのキャベツを粗い千切りにして、オリーブ油、食酢各10gであえたもの。血糖値の測定には、血糖測定器「テルモ メディセーフミニ」を使用した
サラダを食べてからカレーライスを食べたほうが、カレーライスを先に食べるよりも、血糖値の上昇が穏やかになる、というのは本当でした。
カレーライスを先に食べると、食べ始めから30分で血糖値が最高値に達したのに対して、サラダを先に食べた場合では90分以降に最高値に達しました。血糖値の上昇幅も、食後30分では3人の平均で約30mg/dl低く抑えられていました。また、サラダを先に食べると、カレーライスを先に食べた場合に比べて血糖値の上下幅が小さく、下がっていくスピードも穏やかになっていることが分かります。
ご飯の半分を大麦にしてみると、血糖値の上昇するスピードも上下幅ともに、さらに穏やかになっていて驚きました。大麦は食物繊維が多く、精白米の約19倍も含んでいます。大麦は、かむとプルンとした弾力があります。かむのに時間がかかり、食べるスピードが自然とゆっくりになっていたことも、血糖値の変化に影響していると考えられます。
この人たちに聞きました
竹内正義さん
金沢医科大学総合医学研究所先端医療研究領域糖化制御研究分野教授。北陸大学大学院薬学研究科修士課程修了。富山医科薬科大学で薬学博士号取得。北陸大学薬学部教授を経て現職。生体内で生成し、病気の原因となるAGEs(TAGE)研究の第一人者。
金本郁男さん
城西大学薬学部教授薬品安全性学講座。富山医科薬科大学大学院修了後、同大学付属病院などを経て現職。専門は医療薬学。メタボリックシンドロームの予防を目的とした低GI食の最適な摂取方法などを研究。「小腹がすいたときは花茶豆、朝食前には低脂肪乳がおすすめ」
丹羽真清さん
デザイナーフーズ社長。椙山女学園大学家政学部卒業。菅理栄養士。食品メーカーの商品開発などに従事。1999年に野菜や果物の機能性などを研究、コンサルティングを行うデザイナーフーズを設立。「外食産業でもベジ・ファーストの流れが広がりつつあ
ります」
(ライター 松岡真理)
野菜を先に食べる「ベジ・ファースト」については本連載1回目で解説しました。これを実践するうえで、さらに効果アップを期待できる方法を、専門家に聞きました。
野菜は大きめに切ってよくかむ、加熱しすぎない
抗酸化力が強く、秋冬野菜の代表格でもあるゴボウやレンコンなどの野菜は、大きめに切って。「かむ回数が多いと量が少なくても満足感があるため過食を防ぎ、肥満の予防にもなります。一口30回以上かむとなおいい」と金本さん(専門家の紹介は末尾)。また、「ニンジンは、ゆですぎると、白米と同じくらい血糖値が上がりやすくなる」(金本さん)というケースもあるので、加熱しすぎに注意して。
朝こそ「低GI」の食事を
血糖値の上昇が穏やかな低GI[注1]の食事に変えるなら、朝食がおすすめ。朝食後の血糖値上昇を抑えるだけでなく、昼食後の血糖値上昇を抑制する効果もあるためです。例えば、食物繊維が豊富なマイタケとご飯を朝食に食べた後、昼食にご飯だけ食べた試験では、朝食後だけでなく、昼食後も血糖値の上昇が抑えられました。
「すきっ腹にコーヒー」は控えて
朝一番や食時前にコーヒーを飲む人も多いのでは。でも、「カフェインの多いコーヒーはインスリンの利きを悪くして、血糖値を上がりやすくするという報告があります」と金本さん。甘いパンなどのGIの高い食事と一緒に飲んだ場合も、同様の結果が。「コーヒーを飲むなら食後がいいですよ」(金本さん)。
白米よりも大麦、雑穀炊き込みご飯を
白米に比べて、「雑穀や大麦、玄米ご飯はGI値が比較的低く、食後の血糖値の上昇を抑えることを確かめました。食物繊維の量が大きく影響するため、30%以上は混ぜて」と高崎健康福祉大学健康福祉学部教授の鶴見克則さん。ほかにもキノコやゴボウ、シラタキなど食物繊維豊富な具だくさんの炊き込みご飯もおすすめです。
夜遅い時間の食事は避ける
夜9時以降など、遅くとも寝る2~3時間前の食事は避けて。「夜間も食後の血糖値が高い状態が続くので肥満を招きやすく、カロリーのとりすぎにもつながります。体内時計やホルモンバランスなどにも悪い影響が出る。このような食生活は、いずれ糖尿病を発症します」(竹内さん)。
加工食品はなるべく減らす
老化たんぱく質(AGEs)を、直接食品から摂取してしまうこともあります。「食品由来のAGEsの10%が腸管から吸収され、そのうち約6~7%は2~3日間は体の中に残存することが分かっています」(竹内さん)。また、井上さんも「体の中にあるAGEsの55~60%が食べ物由来といわれています」と説明します。竹内さんが市販の食品を調べた結果、高温で長時間調理したスナック菓子などの加工食品は、AGEsをたくさん含むことが分かりました。加工食品はなるべく減らして、「家庭で食材を調理して食べましょう」と竹内さんはアドバイスします。
便秘解消で早く体外へ排出
AGEsが、腸管から体内に吸収されるスピードはゆるやか。そのため、「腸の中の滞留時間を減らすことで、体内に吸収する前に便と一緒に出ていく」と井上さん。腸内環境を普段からよくして、便秘をしないようにすることも大切です。
AGEsは、人が生きる過程で体内に発生するもの。ゼロにはできませんが、食べる順番や食材選びなど、体内のAGEsを増やさない方法を知識として頭に置いておき、食事を楽しみながら、できるところから実践しましょう。
お酒なら赤ワインをシメ対策はそばで
“とりあえず1杯”は、赤ワインを選んだほうがよさそう。「食前に、ビールやジン、赤ワインを飲んで血糖値の上昇を比較したところ、赤ワインが最も上がりにくい、という報告があります」(金本さん)。さかなは、GI値の低い酢の物や冷ややっこなどにして、「シメは、お茶漬けよりそばを選んで。ナメコやとろろ入りなら血糖値もさらに上がりにくくなります」(金本さん)。
~“ベジ・ファースト”で血糖値の急上昇は本当に抑えられるのか?~
野菜を食事の最初に食べる“ベジ・ファースト”は、本当に血糖値の上昇を抑えるのか? 本連載の第1回で城西大学の金本さんが行ったカレーライスと野菜サラダを食べる実験を参考に、編集部員3人が試してみました。
“サラダが先”で実際に差があった! 麦ご飯はさらに血糖値を抑える
カレールーは市販のレトルトカレー(200g)、ご飯は電子レンジで加熱するパック(200g)を使用した。サラダは、1人当たり60gのキャベツを粗い千切りにして、オリーブ油、食酢各10gであえたもの。血糖値の測定には、血糖測定器「テルモ メディセーフミニ」を使用した
サラダを食べてからカレーライスを食べたほうが、カレーライスを先に食べるよりも、血糖値の上昇が穏やかになる、というのは本当でした。
カレーライスを先に食べると、食べ始めから30分で血糖値が最高値に達したのに対して、サラダを先に食べた場合では90分以降に最高値に達しました。血糖値の上昇幅も、食後30分では3人の平均で約30mg/dl低く抑えられていました。また、サラダを先に食べると、カレーライスを先に食べた場合に比べて血糖値の上下幅が小さく、下がっていくスピードも穏やかになっていることが分かります。
ご飯の半分を大麦にしてみると、血糖値の上昇するスピードも上下幅ともに、さらに穏やかになっていて驚きました。大麦は食物繊維が多く、精白米の約19倍も含んでいます。大麦は、かむとプルンとした弾力があります。かむのに時間がかかり、食べるスピードが自然とゆっくりになっていたことも、血糖値の変化に影響していると考えられます。
この人たちに聞きました
竹内正義さん
金沢医科大学総合医学研究所先端医療研究領域糖化制御研究分野教授。北陸大学大学院薬学研究科修士課程修了。富山医科薬科大学で薬学博士号取得。北陸大学薬学部教授を経て現職。生体内で生成し、病気の原因となるAGEs(TAGE)研究の第一人者。
金本郁男さん
城西大学薬学部教授薬品安全性学講座。富山医科薬科大学大学院修了後、同大学付属病院などを経て現職。専門は医療薬学。メタボリックシンドロームの予防を目的とした低GI食の最適な摂取方法などを研究。「小腹がすいたときは花茶豆、朝食前には低脂肪乳がおすすめ」
丹羽真清さん
デザイナーフーズ社長。椙山女学園大学家政学部卒業。菅理栄養士。食品メーカーの商品開発などに従事。1999年に野菜や果物の機能性などを研究、コンサルティングを行うデザイナーフーズを設立。「外食産業でもベジ・ファーストの流れが広がりつつあ
ります」
(ライター 松岡真理)