ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

不滅のロックンローラー、復活す!

2011-12-06 21:33:24 | 文化
“Rock and Roll”が縮まって“Rock’n Roll”。ロックンロールというコトバは、1953年にアメリカのDJ、アラン・フリードが使い始め、定着させたのがその由来だそうです。

アメリカでロックンローラーと言えば、まず思い出されるのが、もちろん世代にもよりますが、エルヴィス・プレスリー。キング・オブ・ロックンロールです。1950年代から60年代初頭を中心に活躍し、1977年に42歳で亡くなってしまいました。

ロックンロールも歴史の中でさまざまに変容し、プレスリーの活躍した1950年代から60年代初めの初期の音楽をロックンロールと呼び、それ以降のロックとは別の音楽という解釈もあるようです。

しかし、日本のミュージック・シーンでは、ロックンロールへの憧れは根強いのでしょうか、Mr.Childrenも『ロックンロールは生きている』で、♪♪レヴォリューションと歌っていました。

そして、「ロックンローラー」は「ロック」以上に不滅。年齢を重ねてもその反逆的な生き方は変わらない! 日本では、「永ちゃん」こと、矢沢永吉。そして、最近では事業仕分けの会場に現れるなど、音楽以外で話題となる内田裕也。

そして、そして、フランスでロックンロールと言えば、後にも先にも、この人を置いては語れない・・・そう、ジョニー・アリディです。

Johnny Hallyday:1943年6月15日、パリ生まれの、68歳(因みに、私とは一回り違いの未年で、同じふたご座。関係ないですが・・・)。本名、Jean-Philippe Smet。生後8カ月にして両親が離婚したため、伯母に育てられる。その家庭のいとこ二人がプロのダンサーだったため、3歳の頃からショー・ビジネスを見て育つ。いとこの一人が結婚したアメリカ人ダンサーが、Lee Holliday。このリー・ホリディがジョニー・アリディという芸名の名付け親であり、ジョニーはリーを心の父と慕っている。

ジョニーは11歳頃からステージで歌うようになり、やがて、エルヴィスの歌にショックを受ける。リーの勧めもあり、このアメリカ発のロックンロールに熱中するようになる。そして、デビュー。フランスでロックをはじめて歌った歌手という確認は取れないが、少なくともフランスにロックンロールを広めた歌手ではあることは間違いない。

それからの活躍は、言うまでもない。アイドルから、大スターへ。今までに、スタジオ録音のアルバム47枚、ライブ録音のアルバムを26枚。180回に及ぶコンサート・ツアーで、動員した観客総数は2,840万人。今日でも、もっとも有名なフランス語で歌う歌手の一人であり、最もメディアに登場するフランス人のアーティストの一人である。

プライヴェートでは、さすが、フランス男、華麗な女性遍歴。お馴染み、シルヴィー・ヴァルタン(Sylvie Vartan)との結婚は1965年。一粒種のDvid Hallydayを儲けるも、1980年に離婚。それからは、1981年12月から1982年2月まで、1982年から86年、1990年から92年、1994年から95年、そして1995年から、と合計6人のパートナーとの生活を送っている。

政治的には、右派の支持者で、ジャック・シラク、ニコラ・サルコジの支持者として有名。また、節税に熱心で、現在は税率の低いスイスに居住。フランスの税務当局との法廷闘争も続いている。

さて、こうした経歴のジョニー・アリディ、2009年以降は、さすがのロックンローラーも寄る年波には勝てないのか、病気との戦いが続いています。まず、結腸癌の手術をしていたことを公表。この年の秋には椎間板ヘルニアの手術を受け、その後ロサンジェルスで入院生活。予定されていたコンサート・ツアーをキャンセルしています。

しかし、2年ほどの休養を経て、復活の日を迎えたようです。新たなコンサート・ツアーへ。そのスケジュールなどを語る記者会見の模様を4日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

国民的アイドルが復活の場に選んだのは、フランスでもっとも有名なモニュメントだった・・・ジョニー・アリディが3日夜、病魔から復活して初めて行うコンサートツアーの詳細をエッフェル塔で発表した。

腰を手術し、ロサンジェルスで長い入院生活を送ったため、ジョニー・アリディは前回のツアー“Tour 66”の終盤をキャンセルせざるを得なかった。

3日の記者会見で、68歳のジョニー・アリディは、フランス国内外での32回のコンサートを行う、デビュー以来181回目となるコンサート・ツアーのスケジュールを明らかにした。そのスタートは、来年4月24日、ロサンジェルスでのコンサートで、その後、モンペリエ(Montpellier)、ナンシー(Nancy)、ジュネーヴ(Genève)、ソショー(Sochaux)、アンヴェール(Anvers)、ボルドー(Bordeaux)、ナント(nantes)、ルマン(Le Mans)で行う。また、6月15日から17日まで、パリ郊外のフランス競技場(Stade de France)でも3回のコンサートを予定している。

一方、ロシアのモスクワ、イスラエルのテルアビブでも初めて歌うことにしている。さらには、10月15日・16日にはロンドンのロイヤル・アルバート・ホール(Royal Albert Hall)での2回のコンサートをスケジュールに組み込んでいる。「以前は、海外でのコンサートを好まないプロデューサーと組んでいたから」と、ジョニーは後悔しているが、記者会見場でのジョニーは元気そうで、饒舌だった。今回のコンサート・ツアーはプロデューサー、ジルベール・クリエ(Gilbert Coullier)との初めての仕事になる。

今回のツアーで、ジョニーは最近のヒット曲と共に、ファンのお気に入りだが、長い間コンサートなどで歌ってこなかった曲も歌うことにしている。コンサートは特殊効果も交え、素晴らしいスペクタクルになると確約しているが、ジョニー自身がどうやって舞台に登場するかは明かさず、めくるめくようなものになるとだけ語り、ファンの期待を膨らませている。

ジョニーはまた、「特別病気だったわけではない。多くの人と同じように、腰に問題を抱えていただけだ。この1年ほど運動を続けているし、タバコも止めた。今度こそは、禁煙に成功した」と、語っている。

2012年末には新たなアルバムを発表することを明かし、常により良い曲作りを目指していると述べている。“Autoportrait”(自画像)というタイトルの新曲をすでにネット上で公開し、無料でダウンロードできるようにしている。ジョニーはこの曲を「ファンにとってのクリスマス・プレゼントであり、ファンに対する愛の歌だ」と紹介している。

記者会見の後、23時30分、ジョニーはエッフェル塔の2階で非公式のコンサートを行った。その模様は12月22日からネット上のサイト“Liveathome”で公開され、また12月31日にはテレビ局・TMCでオンエアされることになっている。

・・・ということで、フランス版「キング・オブ・ロックンロール」は今なお健在。癌にもヘルニアにも打ち勝ち、大した病気ではなかったと平然と語り、68歳にて、新曲発表とコンサート・ツアー。まだまだ意気軒高です。

有名人の人気ランキングで必ず上位に顔を出し、また高額納税者としてもアーティストとしてはトップクラス。どんな障害も弾き飛ばして、ロックンロールの道をまっしぐら。その生き方や、よし。その生き方こそが、衰えを知らない人気の秘密なのかもしれません。生涯、ロックンローラー。頑張れ、中高年の星。Bon courage !
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「事件」は起きたのか・・・幼稚園前にたたずむ「不審者」。

2011-12-05 22:08:58 | 社会
昨日に引き続き、取り調べ中に起きた死亡事故です。なんだ、また同じ話題か、と決めつけず、ぜひご一読を!

伝えているのは、11月30日の『ル・モンドp』(電子版)です。何が、どう起きたのでしょうか。あるいは、起きなかったのでしょうか・・・

ある高齢者、退職した年齢と思われる老人が、ブレスト(Brest)にある幼稚園の門の前にたたずみ、毎日、下校時の子どもたちを眺めていた。その態度を怪しいと思った父兄が、根拠もなく不審な幼児性愛者と決めつけ、警察に通報。警察の取り調べを受け始めてすぐ、その老人は心臓発作を起こして死亡してしまった。28日のことだ。その老人は、ブレスト郊外の人口密集地、ベルヴュ(Bellevue)地区に住んでおり、そこには瀟洒な家と小さな集合住宅が混在している。そして、その地区にある幼稚園“Auguste Dupouy”(オーギュスト・デュプイ)の門の前に、その老人は2週間、毎日たたずんでいたという。

前歴はないものの、成年後見人の保護下(sous curatelle)にあるその老人は、幼稚園の授業終了のベルが鳴ると、校門に面した歩道にたたずんでいたのだが、その態度が父兄の不安を掻き立てることになった。28日、幼稚園の近くで不審な態度を取ったとして警察に通報されたのだが、そのことは現行犯(flagrant délit)としての取り調べの理由となった・・・このように、翌29日、ブレスト市警察の治安担当警視、Yves Floc’hが語っている。彼によれば、「老人は父兄に追われ、自宅のあるビルの玄関先で捕まった。手錠をはめられ、パトカーに乗せられた。老人に暴力は振るわれなかったが、突然、彼は気分の悪さを訴えたのだ」ということで、警察は非難されるようなことは一切やっていない、という点を強調している。

老人は、数日前、母親が目を離したすきに、集団から離れてしまった少女と共にいるところを目撃されている。しかし、老人は、少女を捕まえ、学校の前まで連れて来て、幼稚園の関係者に引き渡したのだった。だが、その少女の父兄によって、ベルヴュの近くの警察署に被害届が提出された。「幼稚園の周囲を歩き回るのを日課としていた老人の行動を他の父兄たちも不審に思っていた」と警官は述べている。通信社・AFPの取材に、子どもをその幼稚園に通わせている母親たちは、警察に通報したことは認めたが、老人を建物の入り口まで追いかけたことははっきりと否定している。

「老人は不審な態度を取っていたし、服装も清潔ではなかったの。だからみんな不安に思っていたわ。私も娘を私の陰に隠れるようにしていたの。子どもたちのことが心配だったから。彼はいつも子供たちを見ていたので、とても怪しげだったわ」と、その幼稚園に子ども3人を通わせている若い母親、ナタリー(Nathalie)は述べている。「何度か警察に電話したのだけれど、来てくれなかった。そこで幼稚園の園長先生に伝えたところ、老人に話しに行ってくれて、幼稚園の前にたたずまないように頼んでくれたの。父兄は誰も彼に近づこうとはしなかったわ」と、別の母親は語っている。

一方、老人の住んでいた、幼稚園から300mしか離れていない6階建ての灰色の建物で、老人と同じ階に住む住民は、「彼は決して意地悪じゃなかったわ。ちょっと変わっていたけれど。老人を恐れていたので、多くの人は一緒にいることを嫌がっていたのね。彼は自分を守る術をよく知らなかった。とってもシンプルな人だったけれど、上手く話せなかったので、みんな彼のことを理解できなかったのね。歩道にいると、苛められていたわ。若者は彼に蔑む言葉を浴びせていたし。でも、苛められたり、蔑まれるような人じゃなかったのに」と語っている。そして、「しょっちゅう会っていた訳じゃないけれど、警察のことが怖かったのじゃないかしら」と、老人の心臓発作の背景を説明している。老人は成年後見人の保護下にあり、8月からそのエリアに住むようになったのだ。ブレストの検察は、死因を突き止めるために、検視を要求した。

・・・ということで、幼稚園の前にたたずみ、子どもたちを見ていた老人を、気味悪がった父兄たちが、警察に通報した。その老人は成年後見人の保護下にあり、何か揉め事を起こすことを恐れていた。それが手錠を掛けられ、パトカーに押し込まれてしまった。その時の、恐怖・・・心臓発作を起こして、死んでしまった。

父兄の態度を非難することはできないと思います。毎日、幼稚園の周囲を歩き回り、下校時には門の前で子どもたちを眺めている。幼児への性的悪戯はフランスでも多い。連れ去られ、死亡するケースも。従って、父兄が不安に思うのも理解できます。園長に連絡し、ついには警察に通報したとしても、それは非難されることではないと思われます。事件に巻き込まれてからでは、遅すぎる。悔やんでも、悔やみきれない・・・

また、警察も、特に暴力を振るったりした様子も見られません。手錠は掛けましたが、現行犯としての逮捕、取り調べであり、これまた、問題視されるような対応ではなかったようです。

では、老人はなぜ、幼稚園の前にたたずみ、子どもたちを眺めていたのでしょうか。幼児だけは純真だという思いなのか、子どもたちには、自分と同じような人生を歩んでほしくないという想いなのか。あるいは、何かの事情で家族と別れてしまったが、今、幼稚園児くらいの孫がいるのではないか。または、家族と別れた時、自分の子どもが幼稚園児だったのではないか。家族と別れた事への後悔、家族と一緒だった時への懐かしさ・・・

たぶん、子どもたちを見つめる老人の目には、微笑みがたたえられていたのではないでしょうか。年を取り、自分の人生もそう長くはない。しかし、孤独の中に暮らし、話す相手もいない。孫のような年齢の子どもたちを見ている時だけは、心も穏やかになる・・・親と離れてしまった子どもを心配して、慌てて連れ戻しに行った老人。しかし、そのことがいっそう不審を呼ぶことになってしまった・・・

父兄の態度は責められない。警察にも落ち度がない。もちろん、老人に、子どもに危害を与える気など、毛頭なかった。事件など、起きてはいなかった。それなのに、老人は、死んでしまった・・・老人は、何を、それほどまでに恐れたのだろうか。子どもたちを、どのような気持で眺めていたのだろうか・・・確かめてみたいことだらけです。しかし、もう、その答えを聞くことはできません。やりきれない思いを人々に残して、老人は旅立ってしまいました。
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取り調べ中の死亡事故、警官にはお咎めなし。その背景は・・・

2011-12-04 21:11:50 | 社会
足利事件や布川事件という冤罪事件、そして厚労省の村木元局長に対する証拠改ざん事件などを通して、取り調べや裁判における公平性について疑義が生じています。警察官による誘導尋問、検察にとって都合の悪い証拠の隠匿・・・そうしたことを解決するために取り調べの可視化が求められていましたが、完全可視化には至っていません。

戦前では、言うまでもなく、状況はさらに悲惨。少し前に『蟹工船』で再び脚光を浴びた作家・小林多喜二が取り調べ中に死亡するなど、取り調べに関わる多くの疑惑が残されています。

こうした取り調べ中における被疑者の死亡、日本に限ったことではないようです。しかも、人権の国・フランスでは、この21世紀でも起きている・・・11月30日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

アムネスティ・インターナショナル・フランス(Amnesty International France)は、取り調べ中に死亡した5人の例を引き合いに、暴力を振るったと疑われる警官が罪を受けていないことを批判するとともに、取り調べにおける公平性を求めた。取り調べ中の死亡事件に関するレポートを公表するにあたって、アムネスティのヨーロッパ事務局長、パトリック・ドゥルヴァン(Patrick Delouvin)は、「5人の取り調べは、はじめはごくありふれたものだったが、最終的にはとんでもないことになった。尋問開始から1時間で死亡したケースもある」と述べているが、「警官に職務逸脱があったというものではない」ことを強調している。

しかし、「いくつかのケースにおいては、死亡後何年も経過しているにもかかわらず、裁判が行われることはなく、関係した警察官は相変わらず通常勤務をしており、懲戒手続等も行われていない」と、アムネスティの調査員、Izza Leghtasは述べている。

アルジェリア人、アリ・ジリ(Ali Ziri)、69歳の場合は、2009年、アルジャントゥーイユ(Argenteuil)市で交通取り締まりに基づく尋問を受けた後で、窒息死している。また、モロッコ人、モハメッド・ブクルルー(Mohamed Boukrourou)、41歳は、ヴァランティニェー(Valentigney)市で、同じく2009年、取り調べ中に心不全で死亡した。二人のケースによって、構造的な問題、特に関係した警察官が不問に付されるという問題が明らかになっていると、アムネスティ・インターナショナル・フランスのジュヌヴィエーヴ・ガリゴ(Genevière Garrigos)事務局長は指摘している。

アムネスティは、検察と予審判事に、有効で公正な取り調べをより短時間で行うよう求め、また、内務省には取り調べにおける危険な身体的拘束(締め付け)を禁止すること、警察官への人権教育をより徹底すること、問題を起こした警官には自動的に停職処分か懲罰を科すよう要求している。

マリ人、アブ・バカリ・タンディア(Abou Bakari Tandia)、38歳は、クールブヴォワ(Courbevoie)市で2004年、警察署内で意識不明となり、その後死亡している。関係者は当然、訴追されるべきだと、弁護士のヤシヌ・ブズルー(Yassine Bouzrou)は主張し、「関わった警察官は司法の取り調べを受けておらず、警察と司法はそれでいいとお互いに納得している」と、語っている。

内務省と司法省は、11月29日の夜の時点で、何ら反応を示していない。5人が死亡した後、その残された家族にとって、捜査が終わらない限り、人生は宙に浮いたままであり、公判は未だ行われていない。「警察や検察に対する評価や信頼は、はなはだしく傷ついている」と、Izza Leghtasは述べている。

・・・ということで、アムネスティが指摘している取り調べ中の死亡事件は5件。詳細は3件しか明らかにされていませんが、どうも、2004年以降に発生しているようです。21世紀において、警察の取り調べ中に死亡した人が、少なくとも5人いる。しかも、その詳細が明かされることもなく、関わった警察官には一切お咎めがない。これで、人権が守られていると言えるのだろうか・・・という指摘がアムネスティ・インターナショナルからなされているようです。ただ、詳細が明らかでないだけに、警察側に落ち度があったとも、判断しかねる状況ではあります。

ところで、3件のケースからは、『ル・モンド』が指摘していない、もうひとつのことが見えてきます。それは・・・

アルジェリア人、モロッコ人、マリ人・・・3人とも、アフリカ出身、あるいはアフリカ系の2世。当然、皮膚の色も違うでしょう、骨格も異なっているでしょう、服装だって違っているかもしれません。“minorités visibles”、つまり、人種が、ち・が・う。この3つのケースは、たまたまそうなっただけなのでしょうか。それとも・・・

「白色人種の結束を乱してまで、黄色人種を支援することはない」・・・今、テレビ『坂の上の雲』で西田敏行演じる高橋是清が、そのようなことを言っていました。世界を知るほどに、そう思えてくるのかもしれません。

異なる人への違和感、嫌悪感、あるいは恐怖心・・・解消される日は来るのでしょうか。まずは、せめて日本国内において、異質を排除しないように心がけたいものです。異質な人や物があるからこそ、多様性が広がり、人生も面白くなる。そう思うのですが、どこまで異なることを受け入れることができるだろうかと自問すれば、つまらないことで言い争ってしまう日常が思い出され、100%受け入れられると胸を張れないことが哀しく・・・慙愧です。
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失業者数の記録的増加・・・債務危機の影響か、失政か。

2011-12-02 21:54:58 | 社会
“Occupy Wall Street”をはじめ、世界各国に広がっている“les indignés”、怒れる人々の抗議運動。その背景にあるのは、長年解決されてこなかった失業問題だとも言われています。

日本の失業率も次第に増加傾向を示すようになってきました。しかし、まだ4%台。欧米各国では、10%前後で、ソブリン・リスクを喧伝されている地中海諸国では、それ以上の高率になっており、特に若者(16~24歳)の失業率は、例えばスペインでは、45%! 二人に一人が失業中です。

因みに、2011年秋の速報によれば、主要国の失業率は、

韓国:3.1%
日本:4.5%
オランダ:4.8%
ドイツ:5.8%
ロシア:6.1%
スウェーデン:7.5%
イギリス:8.3%
イタリア:8.3%
アメリカ:9.0%
フランス:9.1%

となっています。それほどでもないじゃん、と思ってしまいますが、他の国々の失業率もカバーする2010年のデータでは、

スペイン:20%
旧ユーゴスラビア諸国:20%前後
バルト三国:16~18%
アイルランド:13%
ギリシャ:12%
ポルトガル:12%

となっていたようで、“PIIGS”諸国はイタリアを除いて、やはりというか、高い失業率になっています。

こうした数字を見ると、驚くばかりの失業率ですが、その背景にあるのは・・・歴史的な求職者数、つまり失業者数を記録し、“PIIGS”諸国に近づきつつあるフランスのケースを、11月28日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

何ら仕事をしていない求職者の数が10月末時点で2,814,900人に達したと、11月28日、労働省が発表した。この数字は、9月末に比べて1.2%の増加、つまりハローワーク(Pôle emploi)に登録した人の数が34,400人増えたことになる。対前年同月比では、4.9%も増えている。この求職者数を上回るのは、2,823,400人を記録した1999年まで遡らなければならない。

臨時の職についてはいるが、正規の職を求めている人も含めると、全求職者数は9月より0.4%、つまり17,200人増え、4,193,000人に達している。その増加率は、年率換算すると、5.2%にもなる。

しかし、この数字の発表は、特に大きな驚きとはならなかった。28日、労働省の発表に先立ち、OECD(経済協力開発機構:仏語ではOCDE:Organisation de coopération et de développement économiques)が、フランスにおける雇用創出が減少しており、失業率が2012年末には10%ラインを超えて10.4%になり、2013年はそのレベルで安定してしまうという予想を発表していたからだ。

27日の夜、ベルトラン(Xavier Bertrand)労相も、求職者数を示すデータはよい傾向を示していない、と語っていた。具体的には、「未だに抜け出せずにいる債務危機の影響で求職者数が増えているのは誰もが分かっていることだ。実際、状況は悪化しており、経済状況が改善されない限り、雇用環境も改善されないだろう」と述べていた。

大統領選挙まで5カ月となった今、政府は失業者数を減少させ、今年末には失業率を9%以下にしようという計画を断念した(今年の第二四半期の失業率は9.1%だった)。この目標の達成は現時点では難しいと、ベルトラン労相も認めている。

労働市場の悪化は、経済成長の突然の減速と歩調を合わせている。OECDは今年末において、フランスは短期間とはいえリセッション入りしていると見ており、来年の成長率はわずか0.3%になるだろうと予測している(政府の予測は1.0%)

大統領選の社会党公認候補、フランソワ・オランド(François Hollande)は、「失業者数の増加は政策へ制裁を加えるべく明らかになったようなものだ。それも、現職大統領の失政のシンボルとして。債務危機はフランスが直面している困難の一部であり、もちろんそれを過小評価しようとは思わないが、雇用に関して誤った政治的判断がいくつかあったことも事実だ」と、セーヌ・サン・ドニ(Saine-Saint-Denis)県のヴォジュール(Vaujours)町を訪問した際に述べている。

誤った決断として、オランドは次の事柄をあげている。残業手当に対する社会保障費負担を免除したこと、消費の停滞、投資意欲の減退、企業に対する不十分な金融支援、国債発行の遅れ、将来設計に基づかない予算の単なるばらまきなど。

ヨーロッパ・エコロジー緑の党(EELV:Europe Ecologie-Les Verts)の全国書記、セシル・デュフロ(Cécile Duflot)は、「たった一期の任期が終わる前に、100万人以上も失業者が増えた。この劇的変化を前に、右派は無意味なスローガンと失業者が自己嫌悪を感じざるを得ないような声明を叫ぶことしかしていない」と、現状を嘆いている。

また、極右・国民戦線(FN)、マリーヌ・ルペン(Marine Le Pen)党首の大統領選挙対策本部長を務めるフロリアン・フィリポ(Florian Philippot)は、「ニコラ・サルコジの壊滅的な実績は、ますますお粗末なものになってきている。失業の大統領(le président du chômage)と呼ばれることになるのではないか。求職者の記録的な増加は政府の政策に直接的に由来するものであり、政府が庶民の懐よりも富裕層の財布を膨らませることを目指した結果だ」とコミュニケで語っている。

・・・ということで、大統領選挙まで半年を切って、現職のサルコジ大統領には逆風となる数字が続けて発表されています。増加する失業者数、そして停滞する経済。

前回の大統領選挙では、“Travailler plus pour gagner plus”(より働いて、より豊かになろう)と訴え、喝采を浴びたサルコジ大統領ですが、現状は・・・“Travailler plus sans gagner plus”(より豊かになることなく、より働く)、あるいは“Travailler plus pour gagner moins”(より働いて、いっそう少ない稼ぎ)という声が聞こえる状態になっています。

こうした状況では、社会党候補のフランソワ・オランドが圧勝するのではないかとも思えますが、どうも、「政治不信」が世界同時進行で進捗しているようで、既存の二大政党への不信感が大きく、UMP(国民運動連合)でなければSP(社会党)というわけにはいかないようです。政治を含めた社会的閉塞感、何か打破してくれるものはないか・・・

こうした気分に乗じて勢いを伸ばすのが、極左や極右、あるいはアナーキーな団体なのですが、フランスの今日では極左の諸政党からは、2002年、2007年と連続して立候補し、それなりの票を集めた人気のオリヴィエ・ブザンスノ(Olivier Besancenot)が早々と不出馬を宣言してしまっており、受け皿がありません。そこで、今まで社会党へ投票していた工員などの層も含め、極右のマリーヌ・ルペン候補へかなりの票が流れそうです。

そこで思い出されるのが、2002年の大統領選挙。マリーヌの父、ジャン=マリ・ルペン(Jean-Marie Le pen)が第1回投票で社会党のリオネル・ジョスパン(Lionel Jospin)候補を破り、現職のジャック・シラク(Jacques Chirac)大統領との決選投票へ。さすがに最後は大差で敗れましたが、極右が決選投票に進出と、世界的な話題となりました。その再現、なるか?

あるいは、右でもダメ、左でもダメなら、中道で、ということで、2007年と同じように、Modemのフランソワ・バイルー(François Bayrou)候補が大健闘することになるのでしょうか。

フランソワ・オランドとマリーヌ・ルペンの決選投票となる可能性が高いような気がしますが、なにしろ、政界、一寸先は闇。まだ5カ月あります。何が起きるか分かりません。他人事ならぬ、他国の政治、興味津々で覗き見気分・・・しかし、国際化の時代、バタフライ効果(Effet papillon)と言われるまでもなく、どこかの国の変化が自分の暮らしに直接跳ね返ってくることも十分に考えられます。覗き見ではなく、しっかり両目を開いて見ていたいと思います。
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