ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

文化の懸け橋になれるか、ソルボンヌ・アブダビ校。

2011-02-17 20:51:44 | 文化
昨年末のクリスマス休暇をエジプトで過ごし、直後に退陣することになったムバラク大統領の厚遇に浴したのが問題視され批判されたフィヨン首相(François Fillon)。北アフリカでの強権政治打倒の民衆運動がアラビア半島や湾岸地域にも波及するのを見通していたかのように、12日からサウジアラビア、アブダビへと公式訪問に出かけました。

13日に訪問したアブダビで出席したのが、ソルボンヌ・アブダビ校(la Sorbonne-Abou Dhabi)の新校舎落成式。ソルボンヌ自体は、1253年に創設された大学で、その歴史的建造物であるパリ中心部の校舎は、1635年にリシュリュー枢機卿(Cardinal Richelieu)の依頼で建設されたもの。今日では、パリ第4大学とも呼ばれ、要人の輩出ではエナ(ENA:l’Ecole nationale d’administration:国立行政学院)をはじめとするグラン・ゼコールにその座を譲っていますが、伝統と格式が今に息づいています。

そのソルボンヌがアラブ首長国連邦を形成する首長国・アブダビに分校を建設することを決めたのは2006年で、その調印式には、当時ソルボンヌ文明講座のディレクターを務めていた教授も出席していました。3度ほど直接話をする機会があった教授でしたので、テレビのニュース番組でその顔にすぐ気付いたことを、それこそ昨日のように覚えています。

さて、フィヨン首相ですが、その新校舎落成式でスピーチをしたそうです。どのような内容だったのでしょうか。13日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

13日、フィヨン首相はソルボンヌ・アブダビ校の、豪華な新校舎の落成式に出席したが、その建設費はすべてアブダビ側によって負担された(2,000~3,000万ドルと言われていましたから、今のレートで換算すると約16億6,000万~24億9,000万円の負担になります)。

アラブ諸国での暴動に刺激されて他の国々でもイスラム主義が台頭するのではないかと西欧諸国の当局が心配している折、フィヨン首相はスピーチを断行した。その中で首相は、文明の衝突という命題は、フランスの知的伝統に属さないものであり、危険な考えであり何ら価値を持たないものだ。世界の秩序にいかなるビジョンも提示せず、結果として破壊とニヒリズムしか持ちえない。もたらすものは、恐怖と無知のみだ。こう述べ、最後にソルボンヌ・アブダビ校のスローガンを繰り返した。それは、文明に懸ける橋(Un pont entre les civilisations)。

アブダビ校の校舎建設は、サルコジ大統領が礎石を置いた2008年に始められ、計画では2,000人の学生が学ぶことになっていた。しかし、現在600人の学生しかおらず、そのうち100人ほどは現地に暮らすフランス人の子弟たちだ。

このアブダビ校については、昨年8月、皮肉的な論調でお馴染みの週刊紙『カナル・アンシェネ』(le Canard enchaîné)が噛み付いていた。ソルボンヌ・アブダビ校は、まさに桃源郷の大学だ。教授たちは大金持ちであり、学生たちは試験にシステマティックに合格していくことになる。

『カナール・アンシェネ』のこうした批判に、フィヨン首相は、次のように反論した。金儲けに走り、知の評判を危うくするような人が大学にいると批判する人々がフランスにいたとは、驚きだ。重要なことは別にある。アブダビというパートナーと共に、文明の対話に貢献できる教育機関を創ったことをフランスは誇りに思うべきだ。

しかし、フィヨン首相のサウジアラビア、アブダビ訪問には、別の目的もある。フランス企業のビジネス上の契約を支援するというものだ。

・・・ということなのですが、一説には「中東のパリ」をめざすとも言われるアブダビ。ソルボンヌの新校舎が完成した。後は学生を増やすだけ。ルーブル美術館のアブダビ別館も、2013年には完成する。「ルーブル」の名に恥じないだけの入場者数をいかにして達成するか。ソルボンヌにしろ、ルーブルにしろ、器はできる。後は、中身をどう充実させるか、ですね。果たしてうまくいくものでしょうか。国民がどこまで付いてくるかでしょうか。ソルボンヌの学生数からは、王族がいくら笛吹けど、国民踊らず、となりそうな気もします。金はいくらでもある。文化だって、買ってくればいい。そんな気持ちがあるのではないかと、推測してしまいます。

そうした、「大金持ち」のアブダビから金を巻き上げるがうまいのが、これまたフランス。ソルボンヌの建設維持費はすべてアブダビ持ち。お陰で、湾岸諸国にいるフランス人子弟を受け入れる教育機関が完備した。ルーブルは、開館後15年間作品を貸し出すことにより10億ユーロ(約1,120億円)を手にすると言われています。サルコジ大統領によって削減された文化予算をルーブルとしては補えることができる。実にうまいものです。

金ならあり余るほどある国、知略に長けた国・・・企業はもちろんですが、「国」としても国際大競争の時代。見渡せば、強敵だらけです。がんばれ、日本!
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