ついに来るべきときが来た・・・一年前から喧伝されていたGDPランキングでの2位から3位へのランクダウン。2010年の名目GDPでついに日本は中国に追い越され、3位に。事業仕分けでは、2番じゃどうしていけないんですか、という名台詞がありましたが、GDPに関しては、3番じゃどうしていけないんですか、という声はあまり聞こえてきません。勢いの差はいかんともしがたい。しかし、国民一人当たりのGDPではまだ中国の10倍もある(日本は39,758ドル、中国は3,744ドル)、と別の数字を出して安心する向きもありますが・・・
経済力に関する日の出の勢い、その日本から中国への交代を、フランスはどう見ているのでしょうか。“La Cine est devenue la deuxième éonomie mondiale”(中国が世界で第2位の経済国になった)。『ル・モンド』(電子版)、14日の記事です。
2010年、日本は第4四半期の消費・輸出の低迷にもかかわらず、一年を通しては再び経済成長の足音が聞こえ始めたのだが、それにもかかわらず、経済力世界第2位の座を中国に明け渡すことになった。2010年の名目GDP(仏語ではPIB:le produit intérieur brut)は、14日に日本政府が発表した数字によれば、日本が5兆4,742億ドル(約454兆円)だったのに対し、中国は5兆8,786億ドル(約488兆円)。
この結果、1968年以降保ち続けてきた世界第2位の経済大国の座を明け渡した。新たに第2位の経済大国となった中国は、世界銀行や他の金融機関の予測によれば、2025年までにアメリカを抜いて世界最大の経済国になるようだ。しかし、IMF(仏語ではFMI)による国民一人当たりのGDP調査によれば、日本は中国の10倍を保っている。
中国は数年前から(実際には10数年前から)10%前後の経済成長を続けてきており、2010年の実質GDPも10.3%を達成した模様だ。日本は、経済危機以降のリセッションにより、2008年にはマイナス1.2%、2009年はマイナス6.3%という景気後退局面を迎えたが、2010年にはようやく立ち直りプラス成長(1.2%)に転じた。しかし、この程度の回復では、経済危機以前のレベルを回復することはできず、2位の座を失った。
2010年の日本経済は、第3四半期までは新興国、特に最大の貿易相手国である中国への輸出および消費を喚起した政府の補助金により牽引されて成長を遂げた。しかし、第4四半期には、エコカー減税の終了と家電製品へのエコ減税の縮小により消費が冷え込み、経済成長率は年換算でマイナス1.1%へと減速してしまった。また、GDPの200%に達するという巨額な財政赤字に歯止めをかけようと財政投資の引き締めを行ったことも、景気減速の原因となった。
日本経済の牽引役である輸出も、対ドルでは15年ぶり、対ユーロでは9年ぶりという円高局面のため、第4四半期に減速を余儀なくされた。しかし2011年は、アメリカ経済の順調な回復に助けられて、第1四半期から回復基調に乗るようだ。また昨年末に中道左派の与党によって提出され可決された6兆円の景気追加対策によって、ここ2年程のデフレ傾向に対処することができるかもしれない。
・・・ということなのですが、民主党はフランスから見ると、明確に「中道左派」(centre-gauche)なんですね。また、日本の今後については、直接法未来形ではなく条件法で書かれています。『ル・モンド』も自信を持って日本経済が2011年に回復するとは思っていないのでしょうね。回復するかもしれない、あるいは回復するようだ、といった程度の書き方です。
中国がGDPでは世界2位になっても、国民一人当たりのGDPでは、まだまだ途上国並みということは、先日のFrance2のニュースでも、トルコより低いと強調されていました。西欧に出稼ぎに来るあのトルコより低い、といったニュアンスが感じられる報道ぶりでした。また同じニュース番組で、GDPランキングを見せる際には、フランスが5位に入っているということを強調していました。フランスはまだまだ頑張っている、捨てたものではない、さすがフランスだ、といった言い方に聞こえました。自国愛はつねに強く・・・
日本は経済力第3位へ。しかし、ジャック・アタリ(Jacques Attali)が『21世紀の歴史』(“Une brève hositoire de l’avenir”)で述べている予測によれば・・・
「日本は世界でも有数の経済力を維持し続けるが、人口の高齢化に歯止めがかからず、国の相対的価値は低下し続ける。一〇〇〇万人以上の移民を受け入れるか、出生率を再び上昇させなければ、すでに減少しつつある人口は、さらに減少し続ける。日本がロボットやナノテクノロジーをはじめとする将来的なテクノロジーに関して抜きん出ているとしても、個人の自由を日本の主要な価値観にすることはできないであろう。また、日本を取り巻く状況は、ますます複雑化する。例えば、北朝鮮の軍事問題、韓国製品の台頭、中国の直接投資の拡大などである。こうした状況に対し、日本はさらに自衛的・保護主義的路線をとり、核兵器を含めた軍備を増強させながら、必ず軍事的な解決手段に頼るようになる。こうした戦略は、経済的に多大なコストがかかる。ニ〇ニ五年、日本の経済力は、世界第五位ですらないかもしれない。」
2025年に中国は世界最大の経済大国になる一方、日本は5位ですらないかもしれない。どうして5位ではいけないんですか、6位だっていいじゃないですか。こう言いきれるでしょうか。さまざまな不満が嵩じて、ジャック・アタリの言うように、軍事的な解決手段に頼るようになるのでしょうか。いつか来た道・・・
ジャック・アタリは、日本の課題も上げています。これら10の課題を解決できれば、経済力は回復するかもしれない・・・
(『21世紀の歴史』より)
最後に、ニ一世紀日本の課題を一〇ほど列挙しておきたい。
1 中国からベトナムにかけての東アジア地域に、調和を重視した環境を作り出すこと
2 日本国内に共同体意識を呼び起こすこと
3 自由な独創性を育成すること
4 巨大な港湾や金融市場を整備すること
5 日本企業の収益性を大幅に改善すること
6 労働市場の柔軟性をうながすこと
7 人口の高齢化を補うために移民を受け入れること
8 市民に対して新しい知識を公平に授けること
9 未来のテクノロジーをさらに習得していくこと
10 地政学的思考を念入りに構築し、必要となる同盟関係を構築すること
しかし、経済回復だけではなく、安寧な日々をぜひ送りたいと思うのですが、それはすべて私たち日本人の肩にかかっています。望むべき21世紀の日本像を自ら明確に描きだし、その実現へ向けた課題と処方箋を提示し、国民的合意を得ることが必要です。それは政治の手の中にあることが多いのではないでしょうか。政治へ向ける私たちの眼差し、もっと厳しくて良いのではないかと思います。
経済力に関する日の出の勢い、その日本から中国への交代を、フランスはどう見ているのでしょうか。“La Cine est devenue la deuxième éonomie mondiale”(中国が世界で第2位の経済国になった)。『ル・モンド』(電子版)、14日の記事です。
2010年、日本は第4四半期の消費・輸出の低迷にもかかわらず、一年を通しては再び経済成長の足音が聞こえ始めたのだが、それにもかかわらず、経済力世界第2位の座を中国に明け渡すことになった。2010年の名目GDP(仏語ではPIB:le produit intérieur brut)は、14日に日本政府が発表した数字によれば、日本が5兆4,742億ドル(約454兆円)だったのに対し、中国は5兆8,786億ドル(約488兆円)。
この結果、1968年以降保ち続けてきた世界第2位の経済大国の座を明け渡した。新たに第2位の経済大国となった中国は、世界銀行や他の金融機関の予測によれば、2025年までにアメリカを抜いて世界最大の経済国になるようだ。しかし、IMF(仏語ではFMI)による国民一人当たりのGDP調査によれば、日本は中国の10倍を保っている。
中国は数年前から(実際には10数年前から)10%前後の経済成長を続けてきており、2010年の実質GDPも10.3%を達成した模様だ。日本は、経済危機以降のリセッションにより、2008年にはマイナス1.2%、2009年はマイナス6.3%という景気後退局面を迎えたが、2010年にはようやく立ち直りプラス成長(1.2%)に転じた。しかし、この程度の回復では、経済危機以前のレベルを回復することはできず、2位の座を失った。
2010年の日本経済は、第3四半期までは新興国、特に最大の貿易相手国である中国への輸出および消費を喚起した政府の補助金により牽引されて成長を遂げた。しかし、第4四半期には、エコカー減税の終了と家電製品へのエコ減税の縮小により消費が冷え込み、経済成長率は年換算でマイナス1.1%へと減速してしまった。また、GDPの200%に達するという巨額な財政赤字に歯止めをかけようと財政投資の引き締めを行ったことも、景気減速の原因となった。
日本経済の牽引役である輸出も、対ドルでは15年ぶり、対ユーロでは9年ぶりという円高局面のため、第4四半期に減速を余儀なくされた。しかし2011年は、アメリカ経済の順調な回復に助けられて、第1四半期から回復基調に乗るようだ。また昨年末に中道左派の与党によって提出され可決された6兆円の景気追加対策によって、ここ2年程のデフレ傾向に対処することができるかもしれない。
・・・ということなのですが、民主党はフランスから見ると、明確に「中道左派」(centre-gauche)なんですね。また、日本の今後については、直接法未来形ではなく条件法で書かれています。『ル・モンド』も自信を持って日本経済が2011年に回復するとは思っていないのでしょうね。回復するかもしれない、あるいは回復するようだ、といった程度の書き方です。
中国がGDPでは世界2位になっても、国民一人当たりのGDPでは、まだまだ途上国並みということは、先日のFrance2のニュースでも、トルコより低いと強調されていました。西欧に出稼ぎに来るあのトルコより低い、といったニュアンスが感じられる報道ぶりでした。また同じニュース番組で、GDPランキングを見せる際には、フランスが5位に入っているということを強調していました。フランスはまだまだ頑張っている、捨てたものではない、さすがフランスだ、といった言い方に聞こえました。自国愛はつねに強く・・・
日本は経済力第3位へ。しかし、ジャック・アタリ(Jacques Attali)が『21世紀の歴史』(“Une brève hositoire de l’avenir”)で述べている予測によれば・・・
「日本は世界でも有数の経済力を維持し続けるが、人口の高齢化に歯止めがかからず、国の相対的価値は低下し続ける。一〇〇〇万人以上の移民を受け入れるか、出生率を再び上昇させなければ、すでに減少しつつある人口は、さらに減少し続ける。日本がロボットやナノテクノロジーをはじめとする将来的なテクノロジーに関して抜きん出ているとしても、個人の自由を日本の主要な価値観にすることはできないであろう。また、日本を取り巻く状況は、ますます複雑化する。例えば、北朝鮮の軍事問題、韓国製品の台頭、中国の直接投資の拡大などである。こうした状況に対し、日本はさらに自衛的・保護主義的路線をとり、核兵器を含めた軍備を増強させながら、必ず軍事的な解決手段に頼るようになる。こうした戦略は、経済的に多大なコストがかかる。ニ〇ニ五年、日本の経済力は、世界第五位ですらないかもしれない。」
2025年に中国は世界最大の経済大国になる一方、日本は5位ですらないかもしれない。どうして5位ではいけないんですか、6位だっていいじゃないですか。こう言いきれるでしょうか。さまざまな不満が嵩じて、ジャック・アタリの言うように、軍事的な解決手段に頼るようになるのでしょうか。いつか来た道・・・
ジャック・アタリは、日本の課題も上げています。これら10の課題を解決できれば、経済力は回復するかもしれない・・・
(『21世紀の歴史』より)
最後に、ニ一世紀日本の課題を一〇ほど列挙しておきたい。
1 中国からベトナムにかけての東アジア地域に、調和を重視した環境を作り出すこと
2 日本国内に共同体意識を呼び起こすこと
3 自由な独創性を育成すること
4 巨大な港湾や金融市場を整備すること
5 日本企業の収益性を大幅に改善すること
6 労働市場の柔軟性をうながすこと
7 人口の高齢化を補うために移民を受け入れること
8 市民に対して新しい知識を公平に授けること
9 未来のテクノロジーをさらに習得していくこと
10 地政学的思考を念入りに構築し、必要となる同盟関係を構築すること
しかし、経済回復だけではなく、安寧な日々をぜひ送りたいと思うのですが、それはすべて私たち日本人の肩にかかっています。望むべき21世紀の日本像を自ら明確に描きだし、その実現へ向けた課題と処方箋を提示し、国民的合意を得ることが必要です。それは政治の手の中にあることが多いのではないでしょうか。政治へ向ける私たちの眼差し、もっと厳しくて良いのではないかと思います。