飛騨さるぼぼ湧水

飛騨の山奥から発信しています。少々目が悪い山猿かな?

連載小説「幸福の木」 399話 ヌー美術館?

2024-04-09 15:18:38 | 小説の部屋

ハイハイハイハーイ、おまたせ、飛騨の小路 小湧水でーす、いよいよ列島は満開、飛騨も来週高山祭にさくらが花を添えそうです。
急に寒くましたが、新一年生の入学式等々、希望いっぱいの春です、はい、遅れながら原稿が参りましたので、小説に参ります、はい、では開幕開幕!

399 ヌー美術館?

長い沈黙を破って修験者が最初に口を開いた。
「ああ驚いたのう、なあ、発明兄ちゃんよ、こんな風にしてaiで女性の服を脱がせられるんなら、ワシもわざわざ大昔の神話まで遡って天岩戸の裸踊りの動画を見なくてもいいんじゃ。神話でなくてもふつうの映画を見て、その主演女優の衣服を脱がせればいいんじゃ、これは実にすごい事じゃ、ああ、今日はすごい事を教えてもらったのう、まさかこんな事ができるなんて夢にも思わなかった、まだ知ってる人は少ないんじゃろうな?」
すると村長も続いた。
「そうじゃ、この事を子供達が知ったら大変じゃ、子供達や若い者達は好奇心が旺盛じゃから、あまりにも夢中になって学校へ行かなくなるかも知れん。そうなると大変な社会問題じゃ」
すると最初に質問した警察官もますます心配になって、聞いた。
「あのー、教えてほしいんだが、これはネット上で誰でもアクセスすればできる事なのかな❓子供でもできる事なのかな?」
すると発明兄ちゃんは、冷静な面もちで静かに答えた。
「はい、これはネット上でアクセスさえすれば誰でもできます。
しかし、今はまだアクセスが大変厳しくなっていて、会員に登録しないとアクセスできないようになっています」
その答えに、ちょっとホッとした警察官は、
「ああ、やっぱり、・・でっ、君は、発明兄ちゃんは登録して会員になっているんだろうな?」
「いえ、このサイトは誰でも入会できますが、有料です。その入会金が桁外れに高いので、現在はかなりの富裕な人でないと入会できません」
「えーっ、でも君は会員になっているんだろ?こうして見られるんだから?」
「いえいえ、とんでもない、私にはそんなお金はありません。今私が試して見せたのは、ほんの一部の、無料のお試しコースです、この無料のお試しコースは一度だけなら試す事ができるのです」
「えっ、一度だけ?」
「はい、そうです、宣伝のためですね、映像の素晴らしさを見せているんですよ。この映像の画数がすごいので、あのような大スクリーンで見てもきめ細やかですごい迫力となります」
と発明兄ちゃんは消防団員達が見ているスクリーンに目を向けた。
「ふーん、なるほど、そう言う事か、お試しが一度だけなら世の中にはそれほど広がらないだろうな・・」
警察官が考え込んでいると、発明兄ちゃんが、
「あっ、そうだった、実はそれとは別の方法もあります。
それは、有名美術館の会員になる事です。そうすればその美術館のサイトに入れますから、そこを通じて専門的にさっき話した有料サイトにアクセスできます。
それは美術品の補修や修理等に関わる専門家達のサイトで、一般の人達には無縁のサイトです」
その時、消防団の1人がパソコンを覗きにきた。
パソコンにはゴヤの「着衣のマハ」と「裸のマハ」の絵画の映像が並んでいた。
「あっ、何かと思ったら、なーんだ、爺さん達、女性の裸なんか見てたんだ、ずるいよ内緒でなんて、俺達にも見せろよ!」
すると、それを耳にした他の消防団員達が叫んだ。
彼等はもう自分達のハシゴの舞いには見飽きていた。
「そうだよ、ずるいぞ、自分達だけで見てるなんて、俺達も見たいよ、そのパソコンの映像をこの大スクリーンに映してくれ、そうすれば皆で見られるから、さあ早く映してくれ!」
と発明兄ちゃんに向って大声を上げた。
ちょうど、その時、ママさん達やハナやハナナ達が、大広間へもどってきたところだった。
「あらっ、どうしたの❔あの若い団員さん達が大声を出しちゃったりして?酔っぱらってしまったのかしら?」
ママさんが聞くと、
「いやいや、何でもないんじゃ、これから有名な美術館の美術鑑賞の時間じゃ」
修験者が慌てて答えた。
「おーっ、いいぞ、いいぞ!」パチパチパチパチ!
スクリーンの映像に消防団員達の完成が沸いた。
大スクリーンには左右にベッドが現れ、二人の女性が横たわっていた。
大スクリーンのため女性達の大きさも実物に近かった。
ところが、その内の1人は、前述のように丸裸だった。
ママさんやハナ達女性達は驚いて目を丸くした。
「えーっ、あきれた!裸じゃないの?まあ、こんなものを見たりして」
ママさんが怒り出した。
すると、村長が慌てて説明を始めた。
「いやいや、ママさん、それは大きな誤解じゃ。これは有名なスペインの画家ゴヤが描いた着衣のマハと裸のマハと言う絵じゃ、スペインのマドリードのプラド美術館にある有名な絵じゃ。
それが、この大きなスクリーンで見ると、驚いた事に、まるでスペインへ行って本物の絵を見ているようじゃ。そんな迫力をひしひしと感じる」
しかし、ママさん達やハナ達は、不信に満ちた顔のままだった。
「へー、ふーん?・・美術観賞だって?・・ふーん?」
と互いに疑いの顔を見合わせていた。
「おーい、発明兄ちゃんよ、この絵を見るのはもう十分じゃ、次、次の絵じゃ」
修験者が叫ぶと、次の絵が映った。
「わーっ、スゴー、美しい!」パチパチパチパチ
また消防団員達の完成が上がった。
スクリーンの中央に、貝殻の上に立ったほぼ裸体の美しい女性が映っていた。
(えっ、また?また若い女性の裸体だわ)
ハナやハナナとママさん達は心の中で怒鳴っていた。
「これはルネサンス時代の有名なビーナス誕生と言う絵じゃ」
また村長のもっともらしい説明が始まった。
ハナ達は、村長の話よりも絵の中の様々な物が気になった。
「あっ、あれは何かしら?」
右下の角に描いてある小さなかわいい天使がハナの目に止まった。
「ほんと、かわいいわ、あっ持っている内輪に何か画いてあるわ、えーっ、なになに、いたずら天使だって。それに、ここを押してだって?」
興味ふかそうに見ていたハナナが答えた。
「あのー、発明兄ちゃん、このいたずら天使って何ですか?」
「いや、分からない、僕も初めてのサイトなので、何の事か分からないな」
「それじゃ、試しに押してもいいですか?」
ハナとハナナが尋ねた。
「???・・・」
駄目とは言われなかったので、ハナ達は、パソコンの画面の小さな天使の内輪を指で押した。
すると、大スクリーンの中で、角にいた小さな天使がチョコチョコと動き出した。
皆は、そんな事には感心がなく、中央の裸のビーナスに目を奪われていた。
愛と美の女神ビーナスは、均整のとれた美しい白人女性として描かれていた。
そして、前の大切な部分は、自身の長い髪によって隠されていた。
左にいる風の神の西風によって、その髪が吹き飛ばされないように手で押さえていた。
「あらあら、大変、あの子ったら」
ハナナが思わず声を上げた。
小さな天使が、風の神の傍へ寄って、猛烈な勢いで内輪を仰ぎ始めた。
そしてビーナスが押さえている腰の長い髪を吹き飛ばそうとした。
猛烈な内輪の風は、ビーナスの長い髪を瞬く間に吹き飛ばし、ビーナスの隠されていた部分はもちろん、全身が露になった。
「をォーーっ!」
男達の低いどよめきが起こった。
「おお、これじゃ、これじゃ、一糸まとわぬ姿とは、正にこの事じゃ!」
興奮した修験者がつぶやいていた。
「もしかして、いたずら天使のイタズラって、この事なの?」
ハナナとハナがつぶやいていた。

(つづく)

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