飛騨さるぼぼ湧水

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連載小説「幸福の木」 398話 消防団の出初式?

2024-03-31 21:26:57 | 小説の部屋

ハイハイハイハーイ、おまたせ、飛騨の小路 小湧水でーす、急に熱くなりました、ウチの先生も畑で種イモでも植えようか?なんて言ってます、はい、原稿も届きましたので、早速、小説に参りまーす、開幕開幕!

398 消防団の出初式?

夜中に村の警察官と消防団が突然踏み込んできたのを一番驚いたのは、村長だった。
「ワシじゃ、ワシじゃ、村長じゃ、どうしたんじゃ不意に乗り込んできて、泥棒でも追い駆けているのか?」
驚いている村長を、先頭の警察官が厳しい顔でにらみつけて、
「ああ、やっぱり村長だ、村長も村長ですよ、恥ずかしいとは思わないんですか?こんな場所にいるなんて、ちょっと留置所で反省してもらいましょうか?」
「えっ、なに?留置所だって?何でじゃ?何も悪い事などしていないのに、ああ、きっと何か誤解か勘違いしているな・」
と言いながら、村長は最後尾で小さくなっている大家さんの姿を見つけた。
「あっ、何じゃ、そこに大家がいるじゃないか?その大家に聞けば誤解か勘違いが解けるじゃろうに、おーい、大家さんよ、何してるんじゃ?」
と村長は大家に声をかけた。
「いやーっ、村長さん、これは村長さんが悪いんですよ、変なメールを送ってくれるもんだから、私の言い訳よりもメールの方が信用されてしまって・・」
と大家は情けない顔で答えた。
すると警察官が、さらに厳しい声で近くの人達に、
「さあ、お前達、早く白杖しろ!ストリップショーはどこでやっていたんだ?ここでやっていたのか?
それにしても、これは何だ?三人とも奇妙な格好だが?」
と目の前の床ステージの上で組み合っているような太郎とタタロとエアロビクスのお姉ちゃん達を見た。
すると、突然、修験者が声を上げた。
「ああ、分かった!メールに使ったストリップなんて言葉が悪かったんじゃ、ワシのせいじゃ、ストリップって言葉を使ったのが誤解の元になったんじゃ」
すると村長も、懸命に言い訳をした。
「そうじゃ、ワシがストリップって言うメールを送ったのが悪かったんじゃ、それが誤解の元じゃ、ここは子育て長屋じゃ、青少年の教育場じゃ、今夜の余興の踊りもストリップなんて全く無関係じゃ」
すると、警察官と消防団員は、太郎達とエアロビクスのお姉ちゃん三人をチラチラ見ながら、まだ怪訝な顔のまま、
「それじゃ、これはいったい何だ?」
と尋問した。
それにすぐに答えたのは、ハナとハナナだった。
二人は黙って成行きを見守っていたが、とうとうシビレを切らしたように大声を出した。
「あの、警察と消防の皆さん方、どうぞ後ろに振り向いて大画面のスクリーンをよくよく見てくださーい、そこに、この三人が映っています」
それを聞いて、警察官と消防団員達が、慌てて、後ろへ振り向いた。
そこには大スクリーンに空中を飛んでタンゴを踊っているエアロビクスの先生の美しい姿と、それを太郎とタタロが格好良く受け止めている姿が映っていた。
皆は、驚き感動した。
「えーっ、何だ、この踊りは?すごいー!こんなのは初めて見る踊りだ。すご過ぎる!こんなアクロバット的な踊りなんて、生まれて初めて見た」
警察官と消防団員達は、口を開けたまま、いつまでも立ち尽くしていた。
結局、と言う訳で、ようやく誤解も解けた。
突然の警察官の姿を見て、大広間にいた皆が家へ帰ってしまい、余興も自然閉会となってしまった。
慌てて大家がママさんと水族館のお姉ちゃんに頼んで、酒や酒の魚を持って来させた。
こうして警察官と消防団達が、中断した大家さん宅での酒宴を、改めてこの場で飲み直す事になった。
太郎やエアロビクスのお姉ちゃん達三人は、まだ練習を兼ねてかスクリーン上での空中タンゴを踊り続けていた。
そのスクリーンの映像は、消防団達にとっては格好の酒の魚になった。
「それにしても、どうして、このまるでレスリングのような動きが、あの大画面のスクリーンの中では、華麗な空中タンゴになるんだろうな?」
酒を飲みながら、警察官と消防団員達が、床ステージの三人とスクリーン上の三人を不思議そうに見比べていた。
すると大家が気をきかせて、発明兄ちゃんを呼んで、vrやセンサーバンドによるアバターについて説明させた。
「なーるほど、そう言う訳で、この体の動きが、スクリーン上では拡大されてアバターの素晴らしいタンゴの動きになるんだ」
消防団員の独りが感心した。
すると、別の団員が、
「あのー、それなら、ちょっと聞きたいんですが、私達は毎年、正月の出初式で、ハシゴの上に乗って舞いのようなものを披露しているんですが・・・、
それもこの三人のタンゴのように、アバターでスクリーン上で華麗に映す事ができないでしょうかね?」
と質問した。
すると、発明兄ちゃんは、いとも簡単そうにあっさりと答えた。
「はい、すぐにできますよ。もしかして、あなたのスマホにその時の写真などがありますか❓」
「はい、あります、これです」
と消防団員がすぐにスマホの写真を何枚か見せた。
ああ、これがあれば大丈夫です、これを人物や背景のデーターとして取り込めばaiによってスクリーン上に映像として映す事ができます。
そうです、あの三人のようにスクリーン上に再現できますよ、今、やってみますか?」
と聞いてきた。
あまりにも簡単そうに言われたので、消防団員達は、しばらく互いに顔を見合わせていた。
が、すぐに、
「はい、是非とも、お願いします」
と言って、写真の入っているスマホを手渡しした。
発明兄ちゃんは、それを受け取ると、素早く自分のパソコンにデーターを取り込んだ。
そして、太郎達三人の背中を叩いて、
「あのー、ちょっとの間でいいですから、そのvr装置とセンサーバンドを貸してもらえませんか?」
と頼んだ。
「ああ、いいわ!ちょうど休憩したかったのよ」
とエアロビクスの先生が機嫌よく、簡単に貸してくれた。
すぐに三人の消防団員がゴーグルやヘッドホーンやセンサーバンド等装置を装着した。
しばらくすると、スクリーンには高いハシゴが何本か映り、遠くに乗鞍岳など飛騨の雪の峰々が映っていた。
「あの、内緒ですが、アバターには重力が6分の1ほど軽く設定しておきます。ちょうど月の上の重力と同じです。なのであなた方が思いっ切り飛び上がると、アバターは天高くまで飛んでいってしまいますので、慣れるまでは気をつけてください」
やがてスクリーン上ではハシゴの上で三人の消防団員が鮮やかな舞を披露し出した。
もちろん落ちても大丈夫だし、体も1/6ほど軽くなっているので今まで見た事のない動きの舞いができた。
消防団員達がスクリーンを見ながら面白がったり夢中になって荒業に挑戦したりして楽しんでいる様子を見ながら、村長がつぶやいていた。
「いやいや、世の中も変わったもんじゃ、特に最近のaiには驚きじゃのう、いろいろとすごい事までできるようになったもんじゃ」
すると、修験者が思い出したように、
「あっ、思い出した!ワシは女神の裸踊りの映像を見ている途中で、太郎達に装置を取り上げられたのじゃった。ちょうどこれからがいい所って時にじゃ」
と悔しそうな顔をした。
「えっ女神の裸踊り?、そうだ、裸と言えば」
と何かを思い出した警察官が、発明兄ちゃんに質問した。
「あの、ちょっと教えてほしいんだけど、最近、カクシ撮りが減ってきたらしい。その原因は、カクシ撮りしなくてもaiでふつうの写真から着ている服を取り去って裸体を撮れるようになったからだと言う人がいるが、本当にそう言う事ができるのだろうか?教えてほしいのだが・・」
すると、発明兄ちゃんは、少し考えこんでいたが、すぐに、
「はい、分かりました、では、このパソコンで試してみましょう」
と言って、パソコンを操作して画面を見せた。
「まず、この絵は有名なスペインの画家ゴヤの「聖衣のマハ」と言う絵です。
そう言われ、警官や村長や爺達が覗き込んだ。
ベッドの上で、絹の衣装を着た若い小柄な女性が横たわっていた。
「では、aiによって、この女性の衣服をすべてはぎ取って裸にします」
と言って操作した。
すると、画面には同じ顔の同じような体つきの女性が、裸体で同じようにベッドに横たわっていた。
「はい、これがaiが衣服を脱がせた姿です」
思わず爺達は、興味深そうに覗き込んだ。
「ところが、実は、このゴヤの絵には正解の絵があるのです。
つまり、ゴヤがこの女性をモデルにして裸体の絵を別に描いていたのです。
はい、これが、ゴヤが描いた裸体の絵です。」
と言って、発明兄ちゃんは、両方の絵を画面に並べた。
「はい、ゴヤが描いた裸体の絵とaiが描いた裸体の絵を比べて見ると、ほとんどが一緒です。このモデルの女性はアジア系のような体つきですが、aiはそのように描いています」
「・・・」
皆は無言のまま見比べていた。
「つまり、女性のふつうの写真があれば、aiによってその女性の裸の写真ができると言う訳です」
「・・・」
再び沈黙となった。
「本当だ、まさかこんな事ができるとは・・」
警察官がつぶやいた。

(つづく)

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