∞ヘロン「水野氏ルーツ採訪記」

  ―― 水野氏史研究ノート ――

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B-1>秋葉山明王寺の鰐口

2011-04-22 17:03:06 | B-1 >水野太郎左衛門系
A.秋葉山明王寺(舞木町明王堂=まいぎちょう みょうおうどう)
 愛知県豊田市舞木町丸根164 Visit :2011‎-04-‎20‎‏‎ 12:01

 本寺は通称、明王堂と呼ばれ無住であり、弘法大師縁日以外の日は開扉されていない。
宗派:曹洞宗 本尊:釈迦牟尼如来
その他由緒などについては未詳。

B.豊田市郷土資料館
  愛知県豊田市陣中町1-21 Visit :2011‎-04-‎20‎‏‎ ‏‎13:13
●天正五年(1577) 第二代水野太郎左衛門(範直・則重)(*1)作 鰐口
 [秋葉山明王寺所有、昭和四十五年(1970)、豊田市郷土資料館に寄託]

天正五年(1577) 十月二十九日 清水洞小太郎、三河国猿投社西宮に鰐口を寄進する
 一二四八 銅造鰐口陰刻銘 豊田市 明王堂
三州加茂郡高橋庄(西宮)舞木邑鰐口清水洞小太郎寄進
天正五年十月廿九日 大工水野太郎左衛門(範長)

                     (『愛知県史』資料編11 織豊1)

◆鰐口(わにぐち)とは、仏堂や神社社殿の正面軒先に吊り下げられた金属製梵音具(ぼんのんぐ=仏具の中で音の出るものの総称)の一種で、鋳銅や鋳鉄製のものが多い。形状は、鐘鼓(かねとたいこ)を二つ合わせた、鈴を扁平にしたような形をしており、鰐口の上部には、吊すための耳状の吊輪が二個あり、下側半分の縁に沿って細い開口部が設けられている。鼓面は、圏線によって内側から撞座区、内区、外区に区分される。

[寸法]cm
外径 31.4 径面27.0 厚胴8.1 (添付図参照)
 
◆本鰐口の由来
 鰐口に陰刻された銘によると、天正五年(1577) 十月二十九日、清水洞の小太郎が、猿投神社西宮(*2)に、鰐口を寄進したことがわかる。この「清水洞」については、現在の「愛知県豊田市雑敷町清水洞」という地名に比定され、この地を本貫とする小太郎は、猿投神社の氏子中として信仰する西宮に鰐口を奉納したものと推測される。清水洞の小太郎については、どのような身分の者であり、どういった理由から寄進したかについては、この銘のみからは判明しないが、おそらくは同地の有力者であったろうと推察される。また、この銘から、清水洞の小太郎が、第二代水野太郎左衛門(範長・則重)に鰐口を発注し鑄造させたことになるが、当時水野太郎左衛門は、春日井郡上野村(*3)に在住しており、上野村で鋳たものを清水洞か西宮に納入したと考えられる。さらには、陰刻の「西宮」の文字の上から「舞木邑」と改竄されていることから、当初は西宮社殿の正面軒先に吊り下げられていたが、いつの頃か猿投神社の麓にある舞木邑の明王堂に下げ渡されたものであろうことがわかる。四百三十余年もの間、風雨や吹雪の吹き抜ける軒下で、よくぞ耐えて当時の面影を伝えてくれている鰐口に愛おしさを覚える。

[註]
*1=二代目水野太郎左衛門の諱については、『愛知県史』では、「範直」としているが、水野平蔵家(水野分家道握系図)では「則重」と記されている。
*2=猿投山の山麓に猿投神社本社、東峯に東宮、西峯に西宮が鎮座し、古来、猿投三社大明神と称されていた。
*3=この場所については、現在の「愛知県名古屋市千種区鍋屋上野町」と「愛知県春日井市上野町」の二説がある。


☆旅硯青鷺日記
 この明王堂鰐口については、2005年に水野太郎左衛門についての研究を始めてから、豊田市高橋町を中心に色々と調べており、関係博物館や寺社など各所にも問い合わせをしましたが、残念ながらその所在地が判らず終いでありました。
 それから六年経った、つい先日、何のキーワードであったかは覚えておりませんが、ネットサーフィンしておりましたら、「『豊田市郷資料館だより』N0.71 P.3 2010.03」の記事にこの鰐口のことが書かれていることを承知し、「高橋庄」が、不覚にも北は猿投神社までの広範囲に渡っていたことに気付かされました。この鰐口陰刻銘からは、さらには猿投山の東北に位置する愛知県豊田市雑敷町(ざっしきちょう)清水洞の辺りまでもが、高橋庄であったことが分かりました。
 この情報を頼りに、豊田市郷資料館の所定手続きを経て、数日で鰐口の撮影許可が下りました。こうして一昨日同館を採訪し、ようやく念願の鰐口にお目にかかれることが出来ました。
 この採訪では、秋葉山明王寺の近くで、桃の花の手入れをなさっておられた農家の方が、お忙しいのにお手を止めて丁寧に明王堂のことを教えて下さいました。また鰐口の取材では、同館長様並びに学芸員様には、寛大なご配慮をいただきました。ご協力いただきました皆様に、心から深謝申し上げる次第です。



雑敷町清水洞→猿投神社西宮→秋葉山明王寺











猿投山


猿投神社本社


秋葉山明王寺


Sanageyama03.jpg‎ (480×360ピクセル、ファイルサイズ:108キロバイト、MIMEタイプ:image/jpeg)
猿投神社西宮(ウィキペディア)

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