横尾寛と平和の鳩

横尾寛と清水友陽の「平和の鳩」は札幌で演劇を検証し実践。
清水はいろいろと忙しそうだなあ。

緒形拳さんのこと

2009-02-08 | 日々
金曜日
緒形拳さんを偲ぶ会に出席。赤坂プリンスホテル。

今の仕事を始めた2003年、僕の初仕事が緒形さんと串田和美さんの『ゴドーを待ちながら』だった。入って3週間後、何も分からず函館空港で待ってたら、イカツイ舞台スタッフに囲まれて黒のコートを着た緒形さんが現われた。怖かった。
ある劇場でロビーに飾ってある人形を見て、「おいお前、これはアンティークか?」と聞いてきた。分からなかったから「すいません、わかりません」と答えた。緒形さんは「・・・そうか、分からないのか。」と言った。でも、なんか僕のことを覚えてくれて、最後には「おい、北海道」と呼んでくれた。たぶん、北海道のやつ、ということだったのだろう。
3年後、『白野』で東北と北海道に。翌年は同じく『白野』で西日本をまわった。
ツアーの何箇所目だったか、場当たりで声の響きとかを確認していた緒形さんは、いきなり「おい、横尾、お前やれ」と言った。しょうがないので、本を読みながら
冒頭の部分をやった。緒形さんが動くであろうところをグルグル歩きながら。しばらくやって、「どうもありがとう。・・・お前、下手だなあ」と言われた。でも、それから旅の間、毎回場当たりで緒形さんの前で読んだ。
あのでっかい手で頭をぶん殴ってくれたりもした。
旅の最後のほうで「『白野』で、また北海道まわろうな、面白い場所で」と言ってくれた。でも、それは叶わなかった。

緒形さんの芝居をみて思ったこと感じたことをここで全部書くことはできないからやめておく。緒形さんと出会って何を得ることが出来たか、なんて、とてもいえない。「私は何かを得ることができました」なんて、怖くて言えない。
ただ、僕はこの先も舞台に立つ以上、緒形さんがひとりっきりのあの最後の舞台になにを携えて何を考えて立っていたか、あのスクエアの舞台にどんな思いで立っていたのか、そのことは想像し続けるだろう。