少年カメラ・クラブ

子供心を失わない大人であり続けたいと思います。

カーボンDPアンテナの特性

2022-08-06 14:43:12 | アマチュア無線

1.ロッドアンテナダイポール

アンテナエレメントをロッドアンテナにしてDPの特性を計測してみた。

エレメント長:118cm(片方)

高さ:285cm

ちょっと背景の電線と被って見にくいけど、給電点にアナライザーを直結して、Bluetoothでデータを転送。できるだけ周囲の影響を受けないようにし、体もはなして測定した。

金属エレメントのDPの周波数特性

リアクタンス分がゼロになる共振点の周波数が62.1MHZで、その時の抵抗値が86.96Ωとなった。

共振周波数61.2MHzに対応する波長は4.9m、0.25波長で1.22mとなる。

短縮率を0.96とするとエレメント長さは1.18mとなり実測値ともぴったり一致した。共振時の抵抗値は高さにより多少変化するが、80オーム程度でまあまあの感じ。大体ちゃんと測れているといってもよさそう。

さらにエレメント長を短くすると、抵抗値は75Ω(エレメント長:97cm)、70Ω(エレメント長:72cm)となった。共振周波数が高くなると相対的なアンテナの地上高が高くなるので、抵抗値がだんだん小さくなっていくのも納得。(最終的には73Ωに収れんするはず。)

やはりアンテナの特性は、ケーブルの長さをできるだけ短くして、周りの影響を受けないような配慮が大切ということか。

2.カーボンダイポール

カーボンロッドのDP

次にカーボンざおの一番下から2番目のロッドを抜いてきてダイポールにしてみた。

エレメント長:72cm

給電点高さ:285cm

エレメントの端をクリップで挟んだだけだと、直列共振は起こらず(リアクタンスがゼロにならず、ずっとキャパシティブ)そこで大きな紙クリップで給電し、さらにクランプでしっかり固定すると、共振周波数98.3MHz、抵抗値56.3Ωとなった(短縮率:5.2%)。カーボンなのに抵抗値が小さいのも不思議。同じエレメント長のロッドアンテナの場合は、92.2MHz、抵抗値70.2Ω(短縮率11%)となった。以前にも報告した通り、カーボンの場合周波数が高めにシフトする傾向がある。

現在実際に運用しているカーボンアンテナの給電部の構成。

 

エレメント長0.72mのDPの特性。カーボン(左)、金属ロッドアンテナ(右)

 

クランプで締め付けをせずエレメントは反対にして(紙やすりをかけてない。)抵抗値を大きくすると、共振周波数は102MHz、抵抗値は89Ωとなった。今回の実験では、クランプを使ってしっかり固定することはそれほど結果に影響しなかった。何度も使っているロッドなので、クリップで挟むだけで抵抗値が十分小さくなっているということかもしれない。この辺のデータの再現性の悪さが、このアンテナの解析を難しくする。

クランプをつけずクリップだけで接続。ロッド表面も未処理。共振周波数が高くなる。

さらにロッドにサランラップを巻いて完全に静電容量結合にすると、共振周波数は111.5MHz、抵抗値は82.3Ωとかなり高くなった。

サランラップを巻いて抵抗接続をなくして計測を行う。共振点が高くなった。

これらの結果からは、給電部の抵抗値がアンテナ性能に大きく影響していることが言えるのではないだろうか。接続部の抵抗が小さくなると、共振周波数もロッドアンテナの時に近づくが、より容量性の結合になると共振周波数が高くなる傾向になる。

(3)多段構成

さらにカーボンロッドをもう一段接続して測定すると、

エレメント長:123cm

給電点高さ:285cm

共振周波数は58MHz、抵抗値は104Ωとなった。短縮率は4.2%。接続はクランプを使ってしっかり接続した。2段目もしっかりアンテナエレメントして動作していることは確認された。

さらにエレメント数を増やした時の特性についても今後検討したいと思う。

 

 

 

 

 

 

 


DPアンテナの特性とケーブルの影響

2022-07-27 20:28:48 | アマチュア無線

ちゃんとアンテナの特性が測れるれるようになりたいと少しづつ実験を継続。今日は1.2m×2のダイポールアンテナ。エレメントはロッドアンテナで給電部にはミズホのものを使った。中にバランが入っているかどうかは不明。半波長の共振周波数は約62.5MHzとなる。1.5mで50MHzのDPになるから、まあそんなものかな。

早速アンテナの特性を測ってみる。アンテナに約2mとの同軸ケーブルを接続してからアンテナアナライザーに接続。結果がこれ。

60MHz付近にもかすかな共振ポイところもあるが、42MHzと90MHZ付近に大きな共振が現れた。なんじゃこりゃ?

そこで今度は同軸の長さを約半分の1mにして図った結果がこちら。

40MHzの共振はきれいに消えて、85MHzあたりの共振は残っている。どうもこれは同軸ケーブルの影響のようである。ケーブルの電気的長さにより0.25波長と0.5波長の共振が二つの大きなピークと思われる。

短縮率を0.67とすると、最初の共振点は約43MHzくらいだから

300/43=6.97m 短縮率をかけて6.97X0.67=4.67m が一波長。ケーブル長さが約2mなので、この共振は0.5波長となる。(ちとずれが大きいな。)

 

ということで、アンテナの特性を測るにはケーブルの長さもよくよく考える必要があることを実感した。実際にアンテナの特性によるカーブは1mの同軸で測った55MHz当たりの小さなピークだと思われる。HFでは短いケーブルならそれほどでもないかもしれないけど、アンテナの計測ではケーブル長さも大きなパラメータであることを実感した。

(続く)

 

 


アンテナの基本特性

2022-07-17 13:45:55 | アマチュア無線

なんかイマイチカーボンアンテナの性能に納得がいかないので、まずは電線のアンテナをアンテナアナライザーで計測してみた。

 

(1)水平電流給電ダイポール

エレメント長2.3mの電線を2本、真ん中で給電するダイポールを作成。高さ1.5mほどのところに固定して測定。

 

40MHz付近と55MHz付近に並列共振のような変化がみられる。

30MHzでリアクタンスが0になり直列共振していおり、その時の抵抗値が70Ω程度。

これは4.6mを半波長と考えるときの周波数32.6MHzに短縮係数0.95を掛けた値にぴったり一致する。ま、あたりまえだけど。

ただ、一波長以上の共振点は必ずしも計算と一致しない。まだ何か変な共振が紛れ込んでいる?

(2)1/4波長GP+1/4波長CP

 

上のダイポールのエレメントの一つを地面に這わせてみた。  

地面に電線を這わせると周波数特性が急に複雑になった。この辺がGPの調整のしにくさと関連している?

かろうじて28MHzくらいで並列共振、その時の抵抗値は280Ω位。

(3)1/2波長垂直構成

ENFHWアンテナと同じ構成。上記のエレメントをそのまま使って、給電点を真ん中ら下の端に変更。

カウンターポイズは接続せず、アース側はオープンのままで計測した。

ずっとリアクタンスはマイナスのままで全然共振していない。それっぽく抵抗値が大きくなっているのが、30MHz付近、60MHz付近、90MHz付近に見られる。

(4)カウンターポイズをつけてみる

なんかよくわからないので、カウンターポイズをつけてみた。25cm。一番下の共振点での抵抗値がすごく大きくなった。わずか25cmのカウンターポイズをつなげるだけで大きく特性が変化した。リアクタンスは相変わらずずっとマイナスで直列共振は起こっていない。

(5)さらにカウンターポイズ

さらに長いカウンターポイズ(272cm)をつなげてみた。2点でリアクタンスがゼロになり並列共振していることがわかる。18と35MHzくらいだろうか。

 

うーん、ただの電線なんだからもっとはっきりとした共振特性がみられると思ったのだけど、なんかよくわからない。

計測器の使い方とか間違ってなければいいけど。これじゃあカーボンの影響とかちゃんと評価できるレベルではないなあ。

 


7m竿での特性

2022-07-10 11:43:21 | アマチュア無線

7m竿でも同様にクランプの仕方による特性の違いを観察した。正確には8m竿で、給電点から先までの長さが7m。

(1)クリップだけの場合

クリップだけの時の特性。周波数が隠れてしまっているけど、今回も60MHz弱のところにピークが見られた。共振時の抵抗値は240Ω程度。

(2)クリップをクランプ2個で締めた場合

抵抗ピーク値は300Ωを少し超えたくらいになった。

(3)クランプだけ

大きく変化はないが、共振後の抵抗値が、ペーパクリップの時と比べると大きい。このことがアンテナ性能にどのような影響を与えるかは不明。

 

まとめ

・高い周波数に出る強力な共振はアンテナの特性とは関係ない。アンテナの接続線を短くしないとアンテナ特性にも影響。

・クランプだけで接続するとクリップ+クランプに比べ非共振時の抵抗値が大きくなる。

・竿の長さがだいぶ短くなったにもかかわらずアンテナの共振周波数がほとんど変化しなかった。これはちょっと不思議。


VHF帯の共振について

2022-07-10 10:56:55 | アマチュア無線

カーボンロッドの共振特性を見ると、120から150MHzあたりに強烈な共振が見られる。これもカーボンロッドの特性なのかとも思ったが、こんなに高い周波数でなんで共振するのかよくわからなかった。結果だけ言うと、100MHz付近以上の周波数でみられる強烈な共振は、アナライザーの電線とカップリング部の静電容量によるものであり、アンテナそのものの共振ではないということである。今回の実験は7mの中華性の竿を用いた。

(1)何もしないときの共振特性

50MHz帯の共振のほかに130MHz付近に強烈な共振がある。

(2)カップリング部の静電容量を小さくする。

ちょっと気になって、カップリングのクランプの結合を疎にして静電容量をできるだけ小さくしてみた。

すると、共振周波数が一気に高くなって200MHzあたりに移動した。どうやらカップリングのところの静電容量がこの共振には関係しているらしい。

(3)アナライザとの接続線を長くする。

さらに、アナライザーとアンテナを接続している線の長さを約2倍に伸ばしてみると、

今度は共振周波数が100MHzを切るところまで下がった。この結果からわかることは、100MHz付近以上の周波数でみられる強烈な共振は、アナライザーの電線とカップリング部の静電容量による。

 

カーボンアンテナとチューナーの接続線をあまり長くすると、カップリングのコンデンサとの容量によって共振する周波数がどんどん低くなり、アンテナそのものから電波の輻射が効率よく行われないことが示唆された。アンテナとチューナーの接続はできるだけ短くするのが望ましいのではないだろうか。

 


カーボンアンテナの給電点における接触の問題

2022-07-09 16:52:51 | アマチュア無線

カーボンアンテナにおいて、電力を給電するポイントの処理について検討したところ、多くの人がやっているクリップで単純に竿を挟むやり方では十分でないことが分かった。実際にクリップをねじ式の金属クランプで上下を締めたところアンテナの性能が大きく変化、今まであまりうまく動作しなかったHFローバンド(14,7MHz)におていも実用的なレベルで動作することをSOTAアクティベーションで確認した。

https://youtu.be/e0igwwcbk50

 

 

何とかその変化をアンテナの物理的な挙動から確認したいと思い、アンテナアナライザーで測定を行ったので報告する。

使用した竿は中華製の10mもので、下から二本目の竿に給電、給電点から先までの長さは8.58mであった。

(1)カーボン竿にクリップをつけただけ

120MHz付近に大きな共振があり、55MHz付近にもうちょっと小さい共振が見られる。

ちょっと周波数が高い気がするけど、今回は55MHz付近の共振に注目すると、共振点での抵抗値はおよそ90Ω程度で、共振を超えて一定値を示しているところでの抵抗値がおおよそ20Ω程度だった。

(2)クランプでクリップを締めたとき

クリップをクランプで上下を締めでも共振周波数が変化することはない。120MHzでの共振点のそばにいくつかの副次的な共振っぽいものが見えるけどこれはよくわからない。低い方の共振点は、54.8MHzで抵抗値は198.8Ωに増大した。共振点より高い部分での抵抗値は15Ω位で、こちらも5Ω位低下した。明らかに共振がシャープになっているのがわかる。

(3)クランプのみの場合

クランプを締める効果が何となく見えてきたので、もしかしたら目玉クリップ使わなくてクランプだけでも行けるのではないかと思い、写真のようにクランプ一個だけを取り付けて、適当に締め付けてみた。

結果は共振点が54.8MHzで、抵抗値が206.75Ωとなり、予想通りクリップをつけたときとほとんど変わらない結果となった。共振を外れたところの抵抗値も15Ω程度であった。

 

(4)紙を挟んだ場合

まったくオーミックな接続がない場合はどうだろうと思い、コピー紙を挟んでみた結果がこちら。120MHzあたりの共振点は周波数が高い方にシフトして150MHzあたりまで移動した。容量成分が効いているんだろうと思う。これに対して低い方の共振点はそれほど大きく周波数変化はないが、共振時の抵抗値は100Ω程度になった。

考察

ちょっと共振周波数が50MHz台というのが高すぎる気はする。1波長で共振しているとして約6m程度の長さということになるが、竿は8m以上ある。竿がすっぽ抜けたりして接合部に接着材をつけたりしているので、段間の結合が悪くなっている可能性があるのではないかと思う。この辺は結構微妙な感じ。

見かけの抵抗成分が、共振点では大きくなり、そこに給電部の抵抗値が下駄をはくような形になるのではと予想したが、実際にはそうはならず、接触抵抗も含めたアンテナ系の共振におけるQが変化していることが分かった。共振時の見かけの抵抗値は、接続の仕方によって100⇒200Ω程度と2倍も変化した。

共振点から外れた部分ので見かけの抵抗値は、締め上げの程度によって5Ω程度の変化が確認された。この値と共振時の抵抗のピーク値の変化との関係は今のところよくわからない。

ということで、確かに給電点の接続をしっかりやるとアンテナの特性に変化がみられることは確認できたけど、まだすっきりみんな分かったわけではない。接続をちゃんとするというのは単に接触抵抗を変えることなのか、もう少し何か意味があるのか、もうちょっと考えてみたい。あと、共振周波数が高いのも気になる。段間の接続ももう少し丁寧にやってみよう。あとフィールド的にはクランプ一個持っていけばいいんじゃないかと思っている。少しでも持っていくものが減らせればありがたい。

 

 

 

 


カーボン竿のやすりがけについて

2022-05-20 17:46:17 | アマチュア無線

カーボンロッドの段間の抵抗について、最初は静電容量でつながっているから直流的な抵抗は大きくてもかまわないんだろうと思っていた。でも、いろいろ調べてみると:

●カーボン抵抗→放射抵抗との比率で効率がきまる。(低い周波数ではエレメントが対波長で短くなる分放射抵抗が小さくなり性能劣化)したがって、できるだけ小さい方がよい。

●コンデンサ→短縮効果で竿の実効長が短くなる。(プラスの短縮率の原因)できればこれもあまりない方がよい。

ということであることが分かってきた。

正直今まで竿のつなぎ目をやすりがけなんか全然やってなかったんだけど、上記の理由でやっぱりちゃんとやすりしてみることにした。ダイポールを作ろうと以前同じ竿を二本買ってきていたので、そのうちの一本だけ各段のつなぎ目を紙やすりで磨いてみた。例によって近所のRBN局の信号で比較した結果がこれ。

どうもやすりをかけた方が数dB程度強く受信されているよう。バンドを変えても同じ傾向なので、まあ間違いない。

ということで竿の段間のやすり掛けは結構効果があることが分かった。

実は他の局が結構7MHzでもカーボンでしっかり交信されているのを見て、少し不思議に思っていた。

当局は21以上ではカーボンよく動くけど、14以下では??な感じだったのだが、もしかするとこの辺の問題があるのかもしれないと思えてきた。

追記

よく見たらヤスリがけありなしのデータが逆でした。よくわからないね。

翌日再度実験したので結果をあげておく。RBNは伝搬状態によって数値が変わるのであてにならないという意見をうかがうので、自宅で常設しているエンドフェッドとの受信強度との相対値でグラフを描いてみた。受信するたびに1-2dBは動くこともあるので断定的なことは言えないが、やはりやすりかけてないと少し強度が落ちる感じがある。どうかな。


カウンターポイズの意味

2022-05-08 17:51:52 | アマチュア無線

カーボンアンテナは普通垂直型の構成になるので、もう一方の端子をグランドしなければならない。実際にいわゆるアースをするわけにはいかないので、電線をその辺に転がしてカウンタポイズという構成をとるのが普通である。参考文献によれば、ラジアルは電波の放射を行うエレメントなので地面から離して長さも1/4λに合わせることになっている。これに対してカウンターポイズは地面に這わせて設置し長さも適当でよく、何本も設置して仮想グランドとして動作するということになっている。しかしながら、結局どちらの構成でもアンテナエレメントの反対につないだ電線であるわけで完全に別物というわけにもいかないだろう。カーボンアンテナの場合もカウンターポイズとして電線をつなげたが、その長さは性能に影響を与える可能性もある。そこで今回はカウンタポイズの長さの影響を調べた。SOTAの時にメインで出ている14と21MHzの性能を比較した。

実験条件:カーボンロッド:8.6mに銅線を接続(長さW)

CP=5.5m

W (m)        7.6        6.2         5         4.2

14MHz      -2          -5         -2        -4

21MHz      -2          -5        -1          -1

数値は常時設置してあるEFHWの受信レベルを基準にした時のカーボンのRBN相対レベル。(自宅から3.5km離れた局のデータを使用)銅線の長さによって多少の変動はあるが、すべてマイナスでEFHWアンテナに比べてあまり電波は飛んでない印象となった。次にカウンターポイズを0として実験を行った。

CP0

W (m)        8         7.5        6.5        4.4

14MHz    +1        +1            -1        +1

21MHz    +5     +4          +4         0

カウンターポイズ無しで測定したところ、いずれもEFHWを上回るレベルで予想に反してよい性能となった。

カウンターポイズをなくしたらなぜ性能がよくなったのか。それは、そこから電波が無駄に放射されていたということではないだろうか。そもそもカーボンロッドに銅線をつける方式は、

①アンテナを長くしての放射抵抗を大きくして

②カーボンロッドに流れる電流を小さくし、

③カーボン抵抗による熱損失を小さくする。

ことを狙ったものである。カーボンロッドを流れる電流が減るが、銅線のエレメントにも電流を流れるので、そこからも電波を放射される。効率よく電波を輻射するために、できれば銅線も地上から離す方が良い。地面に接しているカウンターポイズも短くした方が結果が良かったのは、カウンターポイズからも電波が輻射されていたことの証左ではないだろうか。

共振周波数の測定

アナライザーで調べてみると、8.6mポールのみの場合の並列共振周波数(1λ)は32.1MHz、1/2λで16MHz程度となる。14MHzは半波長以下、21MHzは半波長以上。

また4.4mの銅線をつなげたとき(全長13m)の並列共振周波数は25MHz、1/2λで12.5MHzとなる。14,21MHzともに半波長以上の長さとなる。

チューナーでのマッチングを行うので、エレメント長さを1/2λにぴったり合わせる必要はない。実際エレメントの長さに対する性能の変化はブロードだった。ただ、あまり長くなると放射パターンが崩れるので大体このあたりに収めておくのが望ましいのではないだろうか。インピーダンスが高くなってチューニングが困難な場合はエレメント長さを多少調整する。

まとめ

今回の実験の結果より、14,21MHzでの特性を考えると、8.6mのカーボンロッドに、6から8mの銅線エレメントを追加、マッチングが取れればカウンターポイズ無しの構成にしてEFHWと同様あるいはそれ以上の結果が得られた。できるだけ銅線エレメントも地上から高い場所に設置する。

 


7m延長したカーボンアンテナの実験結果

2022-05-05 17:41:54 | アマチュア無線

自宅に帰って早速実験に取り掛かった。10m(実際には9mほど)のカーボン竿の下に、7mの銅線をつないでRBNの数値を比較した。カウンターポイズは2mほど。前の解析ではこのくらいの線をつなげると14MHzにおける性能の改善が期待できるはずだった。

14MHzは予想通り大きく性能が改善

結果はグラフに示す通り、ここまで理論通りにいくかというくらい想定通りの結果となった。グラフの縦軸はカーボンアンテナのSNRからEFHWのSNRを引いた値なので、0より上になればEFHWよりも性能が上ということになる。C10が10mカーボンポールに直接給電、C10+7はそれに7mの銅線をつなげたアンテナの特性である。顕著な改善が見られたのはやはり14MHZで、10mの竿単体では、EFHWよりも若干信号が弱かったが、7mの銅線をつなげたことによりプラスに転じ、EFHWを若干上回る結果となった。

21MHzはほとんど変化しないが28MHzは大きく性能低下

14MHz以外のバンドでは、銅線をつなぐことによっていずれも性能が低下した。21MHzではほとんど差はなく、EFHWを上回る性能を発揮しているが、28MHzでは極端に性能が劣化した。これはエレメント長が波長に比べてかなり長くなっているため、様々な方向に電波が輻射されるようになっていることがSNRの低下につながったと考えられる。以前議論した通り、28MHzでは7m程度の長さのカーボン竿のみで良い結果が出るだろう。

7MHzはさらに性能低下

7MHzでは静電容量による短縮効果が効くために、効率よくアンテナを動作させるためにはかなり長い銅線が必要になる。したがって7m程度の延長では不十分である。さらに延長した銅線部分に大きな電流が流れるが、今回の実験ではその部分が自宅の軒下になっており、あまり効率的に電波が輻射されていない傾向があると思われる。SOTAのような場合にはこのくらいの延長銅線でも効果が期待できるかもしれない。あまり長い銅線は結局地面に這わせることなるのでアンテナ性能的には多分よろしくない。

 

今回の実験では2階のベランダにポールを設置し、延長銅線がほぼ垂直になるように配置して実験を行ったが、実際の運用ではなかなかそうはいかないかもしれないので断定的なことは言えないが、14~21MHzで運用する場合は、10mのカーボンポールに5m以上の延長銅線を接続、2m程度のカウンターポイズでの運用すればかなり良い結果が期待できるのではないだろうか。

あまり長い銅線をつなげると何のためにカーボンロッドを使っているのかわからなくなる。やはり、カーボンの軽量と強靭な機械的性能を活用して地上高を高くとることができることが最大のメリットであるはずであり、対波長で考えると比較的高い周波数帯の方がその効果は大きいことはうなずける。HF各バンドにおける使い方についてもだいぶチューニングできてきた感じがする。

 


対立概念の生成と消滅

2022-05-03 19:33:46 | 哲学

レーザーを使ったガス漏れ検知器の製造販売を長くやっている。この機械は、メタンガスに強く吸収される波長の光を使うことによってガスを検知する。そのことはずっと昔から知られていることで特段我々のオリジナルということではない。実はガス検知をするためには、ガスに吸収される光だけではだめで、光に吸収されない光とセットで放射することによってはじめて定量的なガス検知が可能になる。詳しい説明はしないが、ガス検知器として機能するためには、ガスに吸収/非吸収される2種類の光の存在が不可欠なのである。レーザーメタンは、いわば光吸収のコントラストによってメタンガスを検知するのだ。

趣味でやっている無線、最近はカーボン製の釣り竿をアンテナに使うプロジェクトに取り組んでいる。以前は、やってもうまくいかないと誰もが思っていたのだけれど、使ってみるとこれが案外そうでもないことがわかってきた。少し理論的に分析をしてみるとこれがなかなか面白い。こういう新しいプロジェクトに取り組んでいる時には、新しいアンテナでよく電波が飛ぶということをいくら言ってもあまり説得力がない。

「それは、あなたの思い込みじゃないの?」

という声が必ず聞こえてくる。そういう時には、アンテナの条件を変えてうまく電波が飛ばない状態とのコントラストを作るのが一番だ。他のパラメータを全て同じにして、キーになる性能を比較する。ここでもコントラストが大事であり、そういうコントラストがうまく作れるようになると、面白いことに今起こっている現象の背景にある物理的意味が見えてくる。アンテナの話に限らず、技術・科学の探求においては必ずコントラストを作ることが必ず課題になる。逆に言うと、そういうコントラストが今やっているプロジェクトでは明確に意識されているかという問いが大切だ。

こんな風な考えをさらに延長すると、コントラストというのは科学にこだわったことではない事に気が付く。以前から言っているけど、モノクロ写真において写真に意味をもたらすのは白と黒のコントラストだし、文学においては愛と憎しみという2つの軸が中心課題としてとらえられることが多い。それは宗教においても言えることかもしれない。ちょっと興味があって、親鸞の教えについて少し本を読んでいるが、親鸞の思想の中には善と悪という二つの概念があり、その上で人は何が善で何が悪かなどわからないから、とにかく念仏しなさいと説く。

分野に限らず、意味というのはどういうプロセスで生まれてくるのかがだんだん見えてきた気がする。つまり、まずは二つの対立する軸を探す事から始めるのだ。技術的な課題だったり、社会の問題とかなんでもよいのだけれど、その問題を解決する方法や考え方を考える。まあ、ここまでは誰でもやることだ。そこにある程度はっきりしたポジショニングが出来たら、今度はそのコンセプトをま反対に振るのである。そしてその対立軸の中でアイデアを評価することが大事だ。そこに生まれるコントラストが明確になればなるほど、そこに明快な意味が生まれてくるのだ。そして、その意味がはっきりしてきたとき、最初にあった二つの対立は消えていくのだと思う。より高次の概念の前では、二つの対立軸は絶対的な意味を失うのである。

なぜ親鸞が念仏を唱えればよいといったのか、まだ確かにはわからないのだけど、ここで議論した「対立する概念の生成と解消のプロセス」が念仏という行為の中に凝縮されているのではないかと思っている。それは、素粒子の生成と消滅のプロセスにも似ているのかもしれない。


具体的なカーボンロッドアンテナデザイン

2022-05-03 11:19:52 | アマチュア無線

これまで10mの竿を使って21MHzで最も良い結果が得られ、28MHzでは少し性能が落ちた。さらに14MHz以下のバンドでは性能は低下している。そこで21MHzでの長さを最良と仮定して他のバンドでのアンテナをデザインしてみる。

21MHzでの状況確認

以前の実験結果から短縮率から、ほぼ1であることがわかっている。したがって、

波長=300/21=14.28m

10mのエレメントの長さは21MHzでは、

10/14.28=0.7

となり、3/4波長程度の長さになっている。1/2波長より長めにして性能が出ていることになる。

これは放射抵抗が1/2波長よりさらに大きくなっていることと、電流の腹が上に移動するのでより効率的に電波が放出されているのではないかと思われる。あるいはカウンターポイズの長さが約3mであるので、ほぼ1/2波長のアンテナとして動作したと考えた方がいいのかもしれない。いずれにしても、他のバンドにおいても同様の対波長長さのエレメントを構成してみることにする。

28MHzでの状況確認と最適エレメント長

以前の実験結果から28MHzでの短縮率は0.95程度。したがって、

波長=300/28=10.7m  短縮率を考慮して1波長相当のエレメント長は10.16mとなる。

10mのエレメントの長さは28MHzでは、

10/10.16=0.98

となり、ほぼ1波長のエレメント長となり、ここまで長くすると放射抵抗は大きくなるものの、放射パターンが崩れて(?)性能が劣化した。あるいはカウンターポイズもありさらに実行エレメント長は長くなっているのかもしれない。21MHzの時のように0.7波長程度に長さを抑えておくのが望ましいのではないかと思われる。0.7波長程度にするとすれば、エレメント長は7.1mに縮めるのが望ましく、実際7mのロッドを使ったとき10mのロッドより良い結果が得られている。

14MHzでの状況確認と最適エレメント長

以前の実験結果から短縮率から、ほぼ1.1であることがわかっている。したがって、

波長=300/14=21.43m 縮率を考慮して1波長相当のエレメント長は23.6mとなる。

10mのエレメントの長さは14MHzでは、

10/23.6=0.42

となり、1/2波長より短い長さしかない。カーボン竿の段間の静電容量による短縮効果も効いてきており、見た目以上にエレメント長さは短い。21MHzの時のように0.7波長程度に伸ばすためには、

23.6×0.7=16.52m

16.52-10=6.52m

となり、6.5mの線をカーボン竿の下につなげてエレメント長さを延長する。実際には6mは無理にしても数メートル以上のエレメント長延長しないと性能のアップは望めないかもしれない。またクリップ接合部には大きな電流が流れるポイントになるので、接触抵抗もできるだけ小さくするよう配慮が必要になる。

7MHzでの状況確認と最適エレメント長

以前の実験結果から短縮率から、ほぼ1.3(程度)であることがわかっている。したがって、

波長=300/7=42.86m 縮率を考慮して1波長相当のエレメント長は55.72mとなる。(!)

10mのエレメントの長さは7MHzでは、

10/55.72=0.19

となり、7MHzでは10mのカーボン竿は0.2波長程度の長さしかない事になる。

カーボン竿の段間の静電容量による短縮効果がさらに効いてきており、見た目以上にエレメント長さは短い。21MHzの時のように0.7波長程度に伸ばすためには、

55.7×0.7=38.99m

38.99-10=28.99m

となり、半波長ダイポールの長さ以上の導線をつなげないと最高の感度は得られないことになった。

1/2波長まで伸ばすにしても17.85mの延長導線が必要となり、現実的には7MHzでは十分な感度を得るのはかなり厳しい状況になった。

以上の結果をまとめると

0.7波長のアンテナを構成するためのエレメント長

周波数    最適エレメント長    10mロッドへの追加銅線長

 

28      7.1           -2.9

21      10            0

14      16.52          6.52

7      38.99          28.99

(カウンターポイズ長:約3m

 

以上の計算からは、カーボンロッドの抵抗値の影響を軽減するために対波長エレメント長さを長くする際に、竿の段間容量の影響で実効エレメント長さが短くなることが大きく影響し(静電容量をワイヤーのインダクタンスで相殺するといってもよい)、特にHFローバンドにおいては厳しい結果となった。

 


今考える高性能カーボンアンテナ構想

2022-05-01 22:37:05 | スケッチ

方針

とにかく放射抵抗を大きくしてカーボン抵抗による熱損失の割合を低減する。段間の接続は、静電容量結合にした方が損失が少なくてベター。下手に抵抗接続すると損失が増加する。クリップ接続したところの接触抵抗値はできるだけ小さくなるように工夫する。

2821MHz帯

カーボンロッドの長さが1/2波長+アルファある場合は、そのままクリップ接続で使う。給電点でのインピーダンスが高くなるように調整すれば、クリップ部分に殆ど電流が流れないので損失を小さくできる。1/2波長より少し長くするとさらに放射抵抗が上がるが、クリップ部の電流が大きくなる。エレメントが長くなりすぎると放射パターンが崩れる可能性もある。短いカウンターポイズ。実験で10m竿と7m竿で信号強さが逆転したのは、放射パターンの影響ではないかと思われる。設置位置が高くできるならできるだけ高くする。

14MHz

10mのロッドでも少し長さが足りなくなってくるので、エレメントを少し足して1/2波長程度以上になるように伸ばす。クリップ部分は電流がゼロではないので、できるだけ抵抗が小さくなるように工夫する。短いカウンターポイズ。

7MHz

どうやっても1/2波長までは長くできないが、できるだけ電線をつなげて長さを長くする。クリップ部分の電流値はさらに大きくなるので、抵抗値が小さくなるよう気を付ける。カウンターポイズは、合わせて1/2波長になる程度に伸ばす。カウンターポイズからの電波の輻射もあるので地面に接触させずに浮かす。

外に行けないので妄想が膨らみます。()


放射抵抗の意味

2022-04-30 20:35:55 | スケッチ

放射抵抗の物理的意味

放射抵抗の定義は、

PI^2R

ここでPはアンテナへの投入電力、Iはエレメント上の最大電流である。

濱田 倫一、Mr. Smithとインピーダンスマッチングの話、【第36話】 アンテナと空間のインピーダンス(その4 アンテナの放射抵抗)https://www.fbnews.jp/202110/mrsmith/

短いアンテナでは短い長さで電流を一杯流さないと電力を放射できないし(抵抗小さい)、エレメントが長くなるとその分電流値をそれほど大きくしなくても電力を空間に放射できる(抵抗大きい)ということである。その程度を放射抵抗Rで表している、というのが物理的な意味である。

電力を一定とすると、エレメント長さが長くなればなるほどエレメントに流れる電流は小さくなる。今カーボンエレメントにおけるオーム損を考えてるわけであるから、エレメントに流れる電流を小さくすることは、すなわちエレメントにおけるオーム損を小さくすることにつながる。(損失は電流の2乗に比例するから電流を小さくする効果は大きい。)

エレメントは長ければ長い方がよい?

放射抵抗を大きくして、エレメントに流れる電流が小さくなっても、長いエレメントから電磁波が輻射されて同じ大きさの電力が輻射されるとすれば、輻射効率的には特段問題はないと思われる。とすれば、できるだけエレメントを長くした方がオーム損を少なくするためにはよいようにも思えるが、エレメント長が1/2波長を超えると、逆位相の電流がエレメント上に流れることになり次第に放射パターンが複雑になっていくという別の問題が発生する。垂直アンテナの場合、特に3/4波長を超えると真上に向かう成分が大きくなって電離層伝搬通信をする場合には不利になるという。

 

参考:遠藤敬二監修、ハムのアンテナ技術、日本放送出版協会、昭和451020p.108

 

このように考えるとエレメント長はいたずらに長くするのではなく、1/2波長程度にしておくことが良いのではないかと思われる。


短縮率から見積もったカーボンアンテナの容量成分とその意味

2022-04-29 20:04:27 | アマチュア無線

 

カーボンアンテナの特徴の一つとして、短縮率がプラスになることが挙げられる。これは明らかに、カーボン釣竿の段間の静電容量によるものと考えられる。ここでは短縮率の周波数特性からカーボンアンテナの持つ静電容量を推定してみる。

ダイポールの1/λ共振点付近でのリアクタンス変化の直線モデル化

ダイポールアンテナの特性カーブを見ると、1/2波長付近におけるリアクタンスの変化は、0.05波長に対して100Ω程度である。変化を直線近似すればXオームのリアクタンスをキャンセルするために必要なエレメントの長さLは、

L=X0.05・λ/100=λX/2000 (m)

L1/2λの長さで正規化、rであらわすと

r=L/(1/2λ)X/1000

短縮率による静電容量の見積もり

すなわち周波数fで10%の正の短縮率が発生したとし、それが静電容量によって起こったとすれば、

0.1=1/(1000×2πfC)

今回の実験では、12MHzで概ね10%程度の正の短縮率だったので、これを代入すると、

C=132pF

が得られる。(周波数と短縮率の間には反比例の関係があるので、周波数の逆数と短縮率をプロットすれば、その直線の傾きから、もっと正確に静電容量が求められるはず。)カーボン竿の格段の静電容量が数百pF程度と見積もられているので、コンデンサの直列接続でトータルがこの程度の値になるのもまあまあではないかと思う。いずれにしても短縮率が静電容量の大きさ見積もるファクターになっている。静電容量が大きくなればなるほど正の短縮率は大きくなり、そのために実効的なアンテナの長さが短くなる。

段間静電容量のアンテナ性能への影響

静電容量そのものはエレメントの追加あるいはマッチング回路によってキャンセルされるので、それ自身がアンテナの性能を劣化させることはない。しかし、実効的なアンテナの長さが短くなるため、その分放射抵抗が小さくなり、その分がアンテナの効率を悪化させる。したがって、静電容量によるリアクタンスを小さくするためにアルミ箔を巻き付けるなどの作戦はあまり効果がないばかりか、アンテナの実行長を短くするデメリットがあると思われる。

 


ハイブリッドカーボンロッドアンテナ

2022-04-28 21:18:06 | アマチュア無線

1/4波長バーチカルアンテナにおける接地抵抗の影響

1/4波長バーチカルアンテナでは、給電点におけるインピーダンスが低いため、給電点において大きな電流が流れる。この電流は空間に電波として放射された後、地面を介してアンテナに戻されることになる。したがって、接地抵抗が大きいとそこで消費される電力が大きくなりアンテナの効率を著しく低下させる。実際にアースをとることによってこの抵抗を小さくすることは困難であることから、カウンターポイズやラジアルといった構成によってこの問題に対応している。ちなみにカウンターポイズは、導線によってアースを模擬するもので長さは適当でよく本数を増やすと効率が向上、ラジアルの場合は、ダイポールを折り曲げたような構成のため1/4波長に調整する必要があり、他の導電体から距離をとる必要がある。

 

参考:木下重博、カウンターポイズとエレベーテッド・ラジアルCQ Ham Radio 2017,6, pp.94-97

 

カーボンアンテナにおける抵抗の問題

カーボンアンテナにおいては炭素繊維の持つ抵抗が放射エレメントに含まれる。この抵抗がアンテナの性能にどのように影響するかが問題となるが、アンテナから電波が輻射されてアースを通って還流する回路を考えるとき、アンテナエレメントに直列に入っているこの抵抗は、前述のバーチカルアンテナの接地抵抗と全く同じ位置づけになることは明らかである。つまり、アンテナに供給される電力は、通信に寄与するアンテナの放射抵抗と接地抵抗(あるいはカーボン抵抗)によって分圧されることになり、カーボン抵抗を放射抵抗に比べて相対的に小さくすることがアンテナの効率を高める要点となるはずである。

 

アンテナの放射抵抗について

カーボン抵抗そのものが小さくできればよいが、それは材質によって決まってしまうのでユーザーとしてはあまり改良の余地がない。他方、放射抵抗はアンテナの構成によっていろいろ異なるのでカーボンアンテナに向く構成を考えることが有用である。よく知られているように、1/2波長ダイポールの放射抵抗は約73Ωになる。100Ω程度のカーボン抵抗があると想定すると、1/2波長ダイポールにおける放射効率は抵抗がない時に比べて約半分程度に低下することが考えられる。一般にエレメント長を長くすると放射抵抗は増加する方向に変化し、1波長の時の放射抵抗は93.4Ω、1.5波長で105.5Ωになる。逆にエレメント長を短くすると、0.35波長で40Ω程度となる。例えば7mのエレメント長のダイポールアンテナは7MHzにおいては0.175波長しかないことから、7MHzにおける放射抵抗は20Ω程度しかなく、カーボンアンテナでは効率は20%程度に低下する。

ここで注意しておくことは、エンドフェッド型アンテナのようにアンテナの端から給電するタイプのアンテナにおいては、給電点の抵抗は数キロΩになるが、アンテナそのものの放射抵抗が大きくなるわけではない。1/2波長ダイポールであれば、その場合でも放射抵抗は73Ωになることからアンテナ効率が改善されることはない。

 

参考:遠藤敬二監修、ハムのアンテナ技術、日本放送出版協会、昭和45年10月20、p31

 

カーボンアンテナ向きのアンテナ構成

 

バーチカルタイプ

上記のような議論から、カーボンアンテナにおいてはできるだけエレメントを長くして、放射抵抗を大きくした構成のアンテナが効率の面からは有利になる。少なくとも1/2波長程度以上の長さがあれば、アンテナとして十分動作するものと思われる。さらにアンテナを長くして例えば5/8波長程度まで長くすることができれば、放射抵抗の増加並びに電流の最大部分を高い位置に持ってこられるのでさらに有利であろう。1/4波長のバーチカルの場合、アンテナの高さを高くした方が放射抵抗は大きくなることから、給電点を少しでも高くしたほうが、放射抵抗は大きくできるのではないだろうか。他方注視しなければいけないことは、エレメントの長さが長くなればその分カーボン抵抗も大きくなることである。カーボン抵抗の増加を上回る放射抵抗の増加が必要となる。なお、給電点において電流の大きなアンテナでは、接地抵抗の問題も考えなくてはいけないので、できればエンドフェッドのような電圧給電に近いタイプのアンテナの方が望ましい。

 

参考:遠藤敬二監修、ハムのアンテナ技術、日本放送出版協会、昭和45年10月20、p.155

 

ダイポールタイプ

ダイポール型の構成では、エレメント間の角度ができるだけ水平に近いほど放射抵抗は高くなるので、インバーテッドV型の構成よりも水平型の構成の方が望ましい。また、放射抵抗はアンテナの高さにも依存し、アンテナ高さが極端に低いと(0.2波長以下)放射抵抗も著しく低くなることからできるだけ地上から離した位置での展開が望まれる。ダイポールの場合、カーボンポールを2本使って構成するので、例えば7m×2本=14mとなり長尺のアンテナを作りやすいメリットもある。

 

参考:遠藤敬二監修、ハムのアンテナ技術、日本放送出版協会、昭和45年10月20、p.148

 

カーボンハイブリッドアンテナ

カーボン釣竿を使ったアンテナを利用する最大のメリットは、その軽量性と強靭性である。山岳運用などの場合にこの2つのメリットは相当大きい。一方で上記のようにカーボン抵抗によってアンテナとしてのいくつかの制限があることも明らかになった。そこで、カーボンアンテナの下部に導線を接続することにより、アンテナの全体を長くして放射抵抗を増加させる方式を提案する。銅線を追加することから抵抗値はほとんど増加せずアンテナ長を長くすることができ、アンテナ性能の改善も期待できる。他方カーボン釣竿のメリットを生かして、木に引っかけて設置すれば容易にエレメントを展開できて高い位置からの電波の輻射が可能になると思われる。