少年カメラ・クラブ

子供心を失わない大人であり続けたいと思います。

放射抵抗の意味

2022-04-30 20:35:55 | スケッチ

放射抵抗の物理的意味

放射抵抗の定義は、

PI^2R

ここでPはアンテナへの投入電力、Iはエレメント上の最大電流である。

濱田 倫一、Mr. Smithとインピーダンスマッチングの話、【第36話】 アンテナと空間のインピーダンス(その4 アンテナの放射抵抗)https://www.fbnews.jp/202110/mrsmith/

短いアンテナでは短い長さで電流を一杯流さないと電力を放射できないし(抵抗小さい)、エレメントが長くなるとその分電流値をそれほど大きくしなくても電力を空間に放射できる(抵抗大きい)ということである。その程度を放射抵抗Rで表している、というのが物理的な意味である。

電力を一定とすると、エレメント長さが長くなればなるほどエレメントに流れる電流は小さくなる。今カーボンエレメントにおけるオーム損を考えてるわけであるから、エレメントに流れる電流を小さくすることは、すなわちエレメントにおけるオーム損を小さくすることにつながる。(損失は電流の2乗に比例するから電流を小さくする効果は大きい。)

エレメントは長ければ長い方がよい?

放射抵抗を大きくして、エレメントに流れる電流が小さくなっても、長いエレメントから電磁波が輻射されて同じ大きさの電力が輻射されるとすれば、輻射効率的には特段問題はないと思われる。とすれば、できるだけエレメントを長くした方がオーム損を少なくするためにはよいようにも思えるが、エレメント長が1/2波長を超えると、逆位相の電流がエレメント上に流れることになり次第に放射パターンが複雑になっていくという別の問題が発生する。垂直アンテナの場合、特に3/4波長を超えると真上に向かう成分が大きくなって電離層伝搬通信をする場合には不利になるという。

 

参考:遠藤敬二監修、ハムのアンテナ技術、日本放送出版協会、昭和451020p.108

 

このように考えるとエレメント長はいたずらに長くするのではなく、1/2波長程度にしておくことが良いのではないかと思われる。


短縮率から見積もったカーボンアンテナの容量成分とその意味

2022-04-29 20:04:27 | アマチュア無線

 

カーボンアンテナの特徴の一つとして、短縮率がプラスになることが挙げられる。これは明らかに、カーボン釣竿の段間の静電容量によるものと考えられる。ここでは短縮率の周波数特性からカーボンアンテナの持つ静電容量を推定してみる。

ダイポールの1/λ共振点付近でのリアクタンス変化の直線モデル化

ダイポールアンテナの特性カーブを見ると、1/2波長付近におけるリアクタンスの変化は、0.05波長に対して100Ω程度である。変化を直線近似すればXオームのリアクタンスをキャンセルするために必要なエレメントの長さLは、

L=X0.05・λ/100=λX/2000 (m)

L1/2λの長さで正規化、rであらわすと

r=L/(1/2λ)X/1000

短縮率による静電容量の見積もり

すなわち周波数fで10%の正の短縮率が発生したとし、それが静電容量によって起こったとすれば、

0.1=1/(1000×2πfC)

今回の実験では、12MHzで概ね10%程度の正の短縮率だったので、これを代入すると、

C=132pF

が得られる。(周波数と短縮率の間には反比例の関係があるので、周波数の逆数と短縮率をプロットすれば、その直線の傾きから、もっと正確に静電容量が求められるはず。)カーボン竿の格段の静電容量が数百pF程度と見積もられているので、コンデンサの直列接続でトータルがこの程度の値になるのもまあまあではないかと思う。いずれにしても短縮率が静電容量の大きさ見積もるファクターになっている。静電容量が大きくなればなるほど正の短縮率は大きくなり、そのために実効的なアンテナの長さが短くなる。

段間静電容量のアンテナ性能への影響

静電容量そのものはエレメントの追加あるいはマッチング回路によってキャンセルされるので、それ自身がアンテナの性能を劣化させることはない。しかし、実効的なアンテナの長さが短くなるため、その分放射抵抗が小さくなり、その分がアンテナの効率を悪化させる。したがって、静電容量によるリアクタンスを小さくするためにアルミ箔を巻き付けるなどの作戦はあまり効果がないばかりか、アンテナの実行長を短くするデメリットがあると思われる。

 


ハイブリッドカーボンロッドアンテナ

2022-04-28 21:18:06 | アマチュア無線

1/4波長バーチカルアンテナにおける接地抵抗の影響

1/4波長バーチカルアンテナでは、給電点におけるインピーダンスが低いため、給電点において大きな電流が流れる。この電流は空間に電波として放射された後、地面を介してアンテナに戻されることになる。したがって、接地抵抗が大きいとそこで消費される電力が大きくなりアンテナの効率を著しく低下させる。実際にアースをとることによってこの抵抗を小さくすることは困難であることから、カウンターポイズやラジアルといった構成によってこの問題に対応している。ちなみにカウンターポイズは、導線によってアースを模擬するもので長さは適当でよく本数を増やすと効率が向上、ラジアルの場合は、ダイポールを折り曲げたような構成のため1/4波長に調整する必要があり、他の導電体から距離をとる必要がある。

 

参考:木下重博、カウンターポイズとエレベーテッド・ラジアルCQ Ham Radio 2017,6, pp.94-97

 

カーボンアンテナにおける抵抗の問題

カーボンアンテナにおいては炭素繊維の持つ抵抗が放射エレメントに含まれる。この抵抗がアンテナの性能にどのように影響するかが問題となるが、アンテナから電波が輻射されてアースを通って還流する回路を考えるとき、アンテナエレメントに直列に入っているこの抵抗は、前述のバーチカルアンテナの接地抵抗と全く同じ位置づけになることは明らかである。つまり、アンテナに供給される電力は、通信に寄与するアンテナの放射抵抗と接地抵抗(あるいはカーボン抵抗)によって分圧されることになり、カーボン抵抗を放射抵抗に比べて相対的に小さくすることがアンテナの効率を高める要点となるはずである。

 

アンテナの放射抵抗について

カーボン抵抗そのものが小さくできればよいが、それは材質によって決まってしまうのでユーザーとしてはあまり改良の余地がない。他方、放射抵抗はアンテナの構成によっていろいろ異なるのでカーボンアンテナに向く構成を考えることが有用である。よく知られているように、1/2波長ダイポールの放射抵抗は約73Ωになる。100Ω程度のカーボン抵抗があると想定すると、1/2波長ダイポールにおける放射効率は抵抗がない時に比べて約半分程度に低下することが考えられる。一般にエレメント長を長くすると放射抵抗は増加する方向に変化し、1波長の時の放射抵抗は93.4Ω、1.5波長で105.5Ωになる。逆にエレメント長を短くすると、0.35波長で40Ω程度となる。例えば7mのエレメント長のダイポールアンテナは7MHzにおいては0.175波長しかないことから、7MHzにおける放射抵抗は20Ω程度しかなく、カーボンアンテナでは効率は20%程度に低下する。

ここで注意しておくことは、エンドフェッド型アンテナのようにアンテナの端から給電するタイプのアンテナにおいては、給電点の抵抗は数キロΩになるが、アンテナそのものの放射抵抗が大きくなるわけではない。1/2波長ダイポールであれば、その場合でも放射抵抗は73Ωになることからアンテナ効率が改善されることはない。

 

参考:遠藤敬二監修、ハムのアンテナ技術、日本放送出版協会、昭和45年10月20、p31

 

カーボンアンテナ向きのアンテナ構成

 

バーチカルタイプ

上記のような議論から、カーボンアンテナにおいてはできるだけエレメントを長くして、放射抵抗を大きくした構成のアンテナが効率の面からは有利になる。少なくとも1/2波長程度以上の長さがあれば、アンテナとして十分動作するものと思われる。さらにアンテナを長くして例えば5/8波長程度まで長くすることができれば、放射抵抗の増加並びに電流の最大部分を高い位置に持ってこられるのでさらに有利であろう。1/4波長のバーチカルの場合、アンテナの高さを高くした方が放射抵抗は大きくなることから、給電点を少しでも高くしたほうが、放射抵抗は大きくできるのではないだろうか。他方注視しなければいけないことは、エレメントの長さが長くなればその分カーボン抵抗も大きくなることである。カーボン抵抗の増加を上回る放射抵抗の増加が必要となる。なお、給電点において電流の大きなアンテナでは、接地抵抗の問題も考えなくてはいけないので、できればエンドフェッドのような電圧給電に近いタイプのアンテナの方が望ましい。

 

参考:遠藤敬二監修、ハムのアンテナ技術、日本放送出版協会、昭和45年10月20、p.155

 

ダイポールタイプ

ダイポール型の構成では、エレメント間の角度ができるだけ水平に近いほど放射抵抗は高くなるので、インバーテッドV型の構成よりも水平型の構成の方が望ましい。また、放射抵抗はアンテナの高さにも依存し、アンテナ高さが極端に低いと(0.2波長以下)放射抵抗も著しく低くなることからできるだけ地上から離した位置での展開が望まれる。ダイポールの場合、カーボンポールを2本使って構成するので、例えば7m×2本=14mとなり長尺のアンテナを作りやすいメリットもある。

 

参考:遠藤敬二監修、ハムのアンテナ技術、日本放送出版協会、昭和45年10月20、p.148

 

カーボンハイブリッドアンテナ

カーボン釣竿を使ったアンテナを利用する最大のメリットは、その軽量性と強靭性である。山岳運用などの場合にこの2つのメリットは相当大きい。一方で上記のようにカーボン抵抗によってアンテナとしてのいくつかの制限があることも明らかになった。そこで、カーボンアンテナの下部に導線を接続することにより、アンテナの全体を長くして放射抵抗を増加させる方式を提案する。銅線を追加することから抵抗値はほとんど増加せずアンテナ長を長くすることができ、アンテナ性能の改善も期待できる。他方カーボン釣竿のメリットを生かして、木に引っかけて設置すれば容易にエレメントを展開できて高い位置からの電波の輻射が可能になると思われる。

 


カーボンアンテナ実験

2022-04-24 17:01:43 | アマチュア無線

久しくほおってあったブログ。アンテナ実験の備忘録としてちょっと復活させてみる。

 

バーチカル構成でのカーボンアンテナの評価

以前の実験ではカウンターポイズの影響などを除外するためにダイポールで評価したカーボンアンテナ。実際にはダイポールではなくバーチカル系の構成で使用するので、ぞれに近い形での評価を開始した。

ダイポールの時には、カーボンもきれいな共振特性をし示しており、結構いいなあと思った。ところがバーチカルにすると銅線による構成に比べて随分なまった感じの特性になっていることが判明。アンテナ系のQはだいぶ低い感じ。また、銅線の時は共振していないときの抵抗値がほとんど0に落ちるのだけど、カーボンの場合は数十オームの抵抗が残る。これはカーボンの抵抗の影響か?

両方のグラフは長さが少し違うので直接の比較はできないが、ほぼ似たような場所に並列共振が起きている。これはアンテナ長さとカウンターポイズの長さを足したエレメント長の1波長と半波長あたりとざっくり一致する。(かな?)銅線アンテナの方もリアクタンスはずっとマイナスで容量性のまま。なんかちょっとよくわからない。カウンターポイズが一本しかないのが問題か?

放射抵抗の影響

MLAアンテナでは、放射抵抗がすごく小さいので、抵抗分をすごく小さくしないと放射効率が著しく低くなると聞いた。カーボンアンテナにおいても多分同じことが言えるのではないかと思う。ダイポールの時は放射抵抗は73オームぐらいだけれど、バーチカルになるとこの値はもっと低くなる。とすれば相対的にカーボンアンテナの抵抗分による損失は大きくなる。抵抗分のあるアンテナではできるだけ放射抵抗が大きい方が効率的になるということだ。ダイポールのように2本の竿をつなげた構成はカーボンロッドアンテナにはよいのではないかと思う。さらに言えばできるだけバンザイ構成にせず横一文字にした方が放射抵抗は高くなるはず。

高い周波数の方が有利

さらに、アンテナが波長に対して短くなると、放射抵抗はやはり小さくなっていくことから、同じ長さだったら高い周波数の方がアンテナは効率よく働くし、低い周波数において使いたいときは、できるだけ長いアンテナを使った方がよいことになる。この辺は以前の実験結果ともよく符合する。

段間容量の影響

自分で調べて竿の段間に容量があって、容量結合によってアンテナは動作していると指摘した。まあ、それはそうなんだろうけど、そのことがアンテナ性能の劣化につながるかというところが、実は正直呑み込めていない。例えばアンテナが短くなると容量性の特性を示すので、コイルをつなげてこれキャンセルすればアンテナはちゃんと動作する。ローディングコイル入りのアンテナがそれに相当する。とすればカーボンアンテナでも容量をキャンセルするようなコイルを入れればそれはそれでいいのではないかと思うのだ。実際ATUをいれて同調させるときには、そういうことをしているんだと思う。

 

あと、カーボンロンドの中に電線を入れてみるのもやってみた。それなりの特性は示したけれど、裸の電線に比べるとやはりQは低そうな感じ。周囲に胴体があると影響は受けるようだ。

研究は続く

実験結果は、まだよく整理ができないけど、もう少しカウンターポイズをしっかり張って再度実験してみたいと思う。カーボンアンテナがダメとかそういうことではなく、どういう風に使えば一番そのポテンシャルを発揮できるのか、その辺を探ってみたいと思っている。なんか少なくとも山ではだいぶ無理なアンテナに無理やり波を乗せていたことが判明した気がする。