放射抵抗の物理的意味
放射抵抗の定義は、
P=I^2R
ここでPはアンテナへの投入電力、Iはエレメント上の最大電流である。
濱田 倫一、Mr. Smithとインピーダンスマッチングの話、【第36話】 アンテナと空間のインピーダンス(その4 アンテナの放射抵抗)、https://www.fbnews.jp/202110/mrsmith/
短いアンテナでは短い長さで電流を一杯流さないと電力を放射できないし(抵抗小さい)、エレメントが長くなるとその分電流値をそれほど大きくしなくても電力を空間に放射できる(抵抗大きい)ということである。その程度を放射抵抗Rで表している、というのが物理的な意味である。
電力を一定とすると、エレメント長さが長くなればなるほどエレメントに流れる電流は小さくなる。今カーボンエレメントにおけるオーム損を考えてるわけであるから、エレメントに流れる電流を小さくすることは、すなわちエレメントにおけるオーム損を小さくすることにつながる。(損失は電流の2乗に比例するから電流を小さくする効果は大きい。)
エレメントは長ければ長い方がよい?
放射抵抗を大きくして、エレメントに流れる電流が小さくなっても、長いエレメントから電磁波が輻射されて同じ大きさの電力が輻射されるとすれば、輻射効率的には特段問題はないと思われる。とすれば、できるだけエレメントを長くした方がオーム損を少なくするためにはよいようにも思えるが、エレメント長が1/2波長を超えると、逆位相の電流がエレメント上に流れることになり次第に放射パターンが複雑になっていくという別の問題が発生する。垂直アンテナの場合、特に3/4波長を超えると真上に向かう成分が大きくなって電離層伝搬通信をする場合には不利になるという。
参考:遠藤敬二監修、ハムのアンテナ技術、日本放送出版協会、昭和45年10月20、p.108
このように考えるとエレメント長はいたずらに長くするのではなく、1/2波長程度にしておくことが良いのではないかと思われる。
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