ある歴史ドラマにリスペクトを込めて。
金ケ崎から逃げ帰った信長は岐阜城に戻った。帰蝶は急いで信長の部屋を訪れた。いつもにもまして、信長は孤独に見えた。
帰蝶の顔を信長は見た。抑えていた感情がはじけたのだろう。信長は泣き崩れた。
「またおれの兵が死んだ。あの権助も死んだ。弥太郎も死んだ。子供のころから親しくしてきた友が死んだ」信長は顔を覆った。
「また、、、まただ、、、また殺してしまった」
帰蝶は涙を堪えた。ここで泣くわけにはいかない。
「信長様のせいではありません。信長様は天下静謐のため尽くしているのです」
信長の涙顔が怒りに変わった。
「帰蝶、よくそんなことを言えるな。おれの為に働いてくれた家臣が死んだのだ。朝倉は、すぐにも降伏すると思っていた。人の死は多くはないはずだった。浅井が裏切った。そして朝倉の兵も死んだ。浅井の兵も死んだのだ。おれは、長政を殺さなくてはならなくなった。また殺さなくてはならないのだ。」
「信長様のせいではございません」
「おれが殺したのだ。そしてこれからも殺さなくてはならぬ。何人殺せば、何人殺せば、この世に静謐が訪れるのだ。」
「信長様のせいではございません」
「己の手を汚したことのない、おのれごときが何を言うか。おれのせいなのだ。おれの兵が死ねば、それはおれのせいなのだ。いや今やおれは天下にいる。天下で起こることは、全ておれのせいだ。花が落ちるのも、子供らが死んでも、それはおれのせいだ。天下を担うとは、そういうことなのだ」
「信長様のせいではございません!」
「まだ言うか」信長は力なく帰蝶にもたれかかり、そして帰蝶の手を握った。その手は温かかった。
帰蝶の目から堪えていた涙がこぼれた。
「帰蝶泣くな。おれの為に泣くな。これは命令だ。おれの為に、、、一滴の涙も流してはならぬ。帰蝶が支えてくれなけばおれは倒れる。お前は揺らぐな。」
帰蝶は信長の手を握り締めた。そして体を抱きしめた。
了。
金ケ崎から逃げ帰った信長は岐阜城に戻った。帰蝶は急いで信長の部屋を訪れた。いつもにもまして、信長は孤独に見えた。
帰蝶の顔を信長は見た。抑えていた感情がはじけたのだろう。信長は泣き崩れた。
「またおれの兵が死んだ。あの権助も死んだ。弥太郎も死んだ。子供のころから親しくしてきた友が死んだ」信長は顔を覆った。
「また、、、まただ、、、また殺してしまった」
帰蝶は涙を堪えた。ここで泣くわけにはいかない。
「信長様のせいではありません。信長様は天下静謐のため尽くしているのです」
信長の涙顔が怒りに変わった。
「帰蝶、よくそんなことを言えるな。おれの為に働いてくれた家臣が死んだのだ。朝倉は、すぐにも降伏すると思っていた。人の死は多くはないはずだった。浅井が裏切った。そして朝倉の兵も死んだ。浅井の兵も死んだのだ。おれは、長政を殺さなくてはならなくなった。また殺さなくてはならないのだ。」
「信長様のせいではございません」
「おれが殺したのだ。そしてこれからも殺さなくてはならぬ。何人殺せば、何人殺せば、この世に静謐が訪れるのだ。」
「信長様のせいではございません」
「己の手を汚したことのない、おのれごときが何を言うか。おれのせいなのだ。おれの兵が死ねば、それはおれのせいなのだ。いや今やおれは天下にいる。天下で起こることは、全ておれのせいだ。花が落ちるのも、子供らが死んでも、それはおれのせいだ。天下を担うとは、そういうことなのだ」
「信長様のせいではございません!」
「まだ言うか」信長は力なく帰蝶にもたれかかり、そして帰蝶の手を握った。その手は温かかった。
帰蝶の目から堪えていた涙がこぼれた。
「帰蝶泣くな。おれの為に泣くな。これは命令だ。おれの為に、、、一滴の涙も流してはならぬ。帰蝶が支えてくれなけばおれは倒れる。お前は揺らぐな。」
帰蝶は信長の手を握り締めた。そして体を抱きしめた。
了。
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