歴史とドラマをめぐる冒険

大河ドラマ・歴史小説・歴史の本などを中心に、色々書きます。
ただの歴史ファンです。

壬辰戦争(朝鮮出兵)のこと。イベリアインパクトのこと。

2020-12-12 | 豊臣秀吉
文禄の役、1592-93、慶長の役1597-98

最近は「壬辰戦争」という名称でまとまりつつあるようです。とにかく呼び名が沢山あります。

壬辰戦争・文禄慶長の役・朝鮮出兵・朝鮮侵略・唐入り・壬辰倭乱などです。

理由も沢山あります。ウィキペディアによると

鶴松死亡説(鬱憤説)・功名心説(好戦説/征服欲説)・動乱外転説・領土拡張説・勘合貿易説(通商貿易説/海外貿易振興説)・国内集権化説(際限なき軍役説)・国内統一策の延長説・東アジア新秩序説・キリシタン諸侯排斥説・朝鮮属国説(秀吉弁護説)

教科書的にはさらっと「明を征服しようとして」となっていた気がします。よく覚えていません。

大河では「独裁者の暴走」と描かれることが昔は多かったと思います。史実じゃなくても「それでよい」気もします。「そうしておいたほうがいい」ということです。

そこで「日本の良心」として「なか」が登場します。秀吉の母、大政所です。「人様の国にいって、人を殺すなんて、それだけは絶対いかん」「秀吉は頭がおかしくなってしもうた。家康殿、利家殿、お願いじゃ、お願いじゃ、藤吉郎を止めてくだされ」、、、個人的には「この描き方でいい」し、この大政所の姿勢は「感動的」です。自分の母を見ているようで「ありがたい」とも感じます。「頭がおかしくなっていかなった」という「エビデンス」(笑)もありません。

ただ歴史学者でこの説をとっている人は多くはありません。昨日読んだ本(東大の黒嶋敏さん)は「日本国王としての冊封と貿易狙い」ということでした。ドラマでは「冊封なんか受けるか」と言いますが、あれは嘘みたいです。「日本国王」として冊封を受けていたという史料も、明から与えられた服などの「現物」も残っていて、動かしがたいようです。国内向けにはむろんそれは「不都合な真実」なので、「明が頭を下げてきた」と説明されました。

さらにイベリアインパクト(スペイン、ポルトガルの衝撃)の影響を指摘する説もあります。スペインの世界征服計画です。これも嘘みたいな話なんですが、計画そのものは事実です。実際「スペイン帝国」が成立しています。

ただ実際、アジアではフィリピンを奪った程度で、スペインは早くも衰退していきます。「紙の上の計画」では、「アジアキリスト教化計画=アジア征服計画」が存在しました。繰り返しますが「紙の上」の話です。

それを知った秀吉が「明がスペインにとられたら、次は明から日本が攻撃される。先手を打って明を奪う」となったという説もよく目にします。NHKの「戦国」も「それに近いこと」を言っていました。

なんだか「大東亜共栄圏みたい」です。大東亜戦争も、日本の意識としては「帝国列強からアジアを守り解放する」というものでした。もちろん「みたいだから駄目」なのではありません。言い方が難しいのですが、よくよく注意して考えるべき問題だなということです。

イベリアインパクトを重く考えようという説には共感を覚えます。単なる宣教師の来訪ではないようです。ただ歴史学者も指摘するように、それがバランスを欠くと、自らの政治信条の表明になってしまいます。壬辰戦争は強い政治性を含む問題だからです。イベリアインパクトは、大事だが、慎重に考えるべき問題だと思います。