歴史とドラマをめぐる冒険

大河ドラマ・歴史小説・歴史の本などを中心に、色々書きます。
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「青天を衝け」と「司馬遼太郎さん」のこと

2021-12-26 | 青天を衝け
「青天を衝け」はオリジナル作品ですが、多くの「優れた作品がそうである」ように、先行する諸作品の良いところをよく吸収して描いています。その先行作品として真っ先に挙げたいのは、司馬さんの「最後の将軍」「明治という国家」です。

そもそも徳川慶喜を同情的に描いた名作は「最後の将軍」ぐらいしかないような気がします。司馬さんは彼を「怜悧な人、政治家」として描きましたが、大森さんは「情の篤い人」として描きました。

「青天を衝け」はそもそも渋沢栄一を描くことが主眼で、「歴史」はさほど詳しく描かれませんが、歴史認識については「明治という国家」を大いに参照したようです。

私は近代史をあまり知りませんが、それでも旧幕臣である小栗、栗本、川路といった人々は知っていました。たしか「明治という国家」に登場すると思います。

「司馬遼太郎は明治維新を賛美した」などというのは、司馬さんを読んだことがない人間の暴言で、司馬さんは「幕府側の人間」を多く、同情と尊敬をもって描いています。

・徳川慶喜
・河井継之助
・松平容保(会津藩主)

などです。たまたま「竜馬がゆく」が大ヒットしたことで、明治維新を賛美したとされているのでしょう。でもそうなると「燃えよ剣」「最後の将軍」「峠」「王城の護衛者」などの作品はどうなるのか。

特に「峠」における薩長批判は鮮烈で「時流に乗って人を人とも思っていない官軍に、人間とは何かを思い知らせてやらねばならない」とまで主人公に言わせています。